家庭教師ヒットマンリボーン[二度目の人生] 作:ツナさん
京子や花、それから獄寺君の教えもあってか問7まで順調に課題を埋めることが出来た。それにしても山本ってやっぱり要領良いよね。数分教えてもらっただけなのに公式理解しちゃうし俺だったら無理だよ。
「それにしても沢田。あんた意外と解けるじゃない」
京子と花に教えてもらいながら俺も答えを導き出していた。教えてもらってるのに答えをわざと間違えるのは教えてくれている人に失礼だと思った。それに...京子の前で情けない姿を見せたくは無い。
「たりめーだ!10代目にかかればこの程度の問題朝飯前なんだよ!」
「あはは、そんなことないよ獄寺君。京子ちゃんや黒川、それに獄寺君の教え方が上手かったから解けたんだよ。俺一人だったら一問も解けなかったよ」
「ほんと皆サンキューな。獄寺は随時教科書見ながらだったけど」
「うるせー野球馬鹿!答えは全部この中に書いてあるんだよ!」
懐かしいやり取りに少しだけ頬が緩んでいく。
「そうだ、京子。次のテストまで沢田の勉強見てあげれば?」
「ええ!?それは嬉しいけど...京子ちゃんに悪いよ」
「それは京子次第なんじゃない?」
そう言いながら視線を京子に向ける。気のせいか頬が赤くなっているような気がする。怒ってる?わけじゃないよね?
「私は...良いよ。ツナ君が迷惑じゃなければ」
「よ、よろしく!よろしくお願いします!」
京子からの上目遣いに視線を合わせられなくなり土下座してしまう。
「良かったわね沢田」
「うん!」
京子に勉強を見てもらえるなんて高校の入試勉強以来かもしれない。その時はハルも一緒だったけ...あれ?そう言えばそろそろハルが来てもおかしくないはずだけど。色々変わっちゃってるのかな?
「けどいくら考えても問7だけは分かんねーや」
「ははは!流石野球馬鹿だな!貸してみろ!!」
高校生問題で獄寺君の解けない問題はあり得ない。だけど問7に関しては違う。あきらかに大学生の、それも教授クラスの問題になっている。どう考えてもこんな問題が課題として出るわけがない。なんなら担任だって解けないはずだ。そんな問題を考えられるのは一人しかいない。
「わかんねえ...」
「まじかよ、参ったな。これが出来なきゃ退学だってーのに」
「なっ!?それを早く言いやがれ!野球馬鹿が!」
教科書を黙々と見ている獄寺君。その表情は真剣そのもので少しだけ罪悪感に心が痛くなる。
「確かに問7だけおかしいわよね」
「うん。花も分からない?」
「生憎ね。私の知ってる公式じゃ解けないわね。ていうかこんな問題。習ってないんだから学校に文句言えばなんとかなるんじゃない?他の問題は解いたんだから」
流石花だ。その発想は獄寺君に山本、勿論俺にも無かった。でもこの問題を作ったのが雲雀さんなら話は変わってくる。並森町に住んでいる限り雲雀さんの言葉は絶対だ。雲雀さんの考えを捻じ曲げるには雲雀さんに勝つしかない。
現在の雲雀さんに勝つことはそんなに難しい事じゃない。だけど顔を合わせるたびに勝負を仕掛けられるのは避けたい。それに雲雀さんを倒してしまったら風紀は間違いなく乱れるし、俺の印象もある。今まで何をやっても駄目な駄目ツナが皆の畏怖の対象でもあり憧れでもある雲雀さんを倒すことは絶対良くないことが起こる。雲雀さんあっての並森中学であり並森町なんだ。
そんな時だった。
ノックも無く開かれた部屋の扉。一瞬だけ姿が見えたビアンキ。
その扉を光のような速さで閉めた獄寺君。未来では気分が悪くなるくらいまでには慣れたのにね...。
「はあはあ...ど、どうして姉貴がここに」
「今誰かいたような?」
「獄寺何してんだ?」
そういえば獄寺君は、ビアンキがうちにいるって知らないんだっけ。
「あら隼人。姉を女として見てしまっては駄目よ。恥ずかしいのは分かるけどここを開けなさい」
「そうじゃねえ!!」
「姉?」
「全く。しょうがない子ね。ポイズンクッキング``溶解桜餅''」
あードアノブが...。母さん怒るかなぁ。
「あ、あね.....」
「うっわ。美人、沢田のお姉さん?」
「ううん。獄寺君のお姉さんなんだ」
「へー。で、獄寺はなんで倒れてんの?」
正直に話すか迷ってしまう。ビアンキの作るポイズンクッキングが原因なんだけど、そもそもポイズンクッキングを教えるわけにはいかないから、単純に獄寺君がお姉さんが苦手と伝わってしまうし...。
「それは分からないかな」
困った時は知らんぷりだよね。というかハルは来ないのにビアンキは記憶通りに来るのか。今回は課題を破られないようにしたいけど。
「それよりこの問題見てもらわない?もしかしたら分かるかもしれないわよ?」
「うん、そうだね!」
「だな!」
花の提案に京子も山本も乗ってくる。山本のプリントが破られるのを避けるとなると必然的に俺のを渡すしか無いんだよね。ため息を心で吐きながらビアンキにプリントを渡すと無情にもプリントは破られていく。
「ちょ!ちょっと!」
「こんなものどうでも良いことよ。大事なのは愛だわ」
ビアンキのよく分からない哲学に花は一瞬放心してたけど自分が聞こうと言い出したのが原因だと思ったのか立ち上がるのを手で制する。破られるのは分かっていた事だしビアンキに目を付けられたら嫌だしね。俺は気にしてないと花を宥めているとビアンキは部屋を出て行った。結局何しに来たんだ?
「ごめんね沢田。私のせいで」
「花だけのせいじゃないよ。ごめんねツナ君」
「悪いなツナ。あとで俺のコピーするから」
「黒川も京子ちゃんも山本も気にしないでよ。それに山本がコピーしてくれるって言うし、ありがとね山本」
そんな感じで日も暮れてきて夕方になってしまった。あれからいくら考えても答えは出てこない。記憶ではハルのお父さんが来てリボーンが間違いを指摘して終わったんだよね。ハルが来ないってことは...終わらないんじゃ?答えが分かっているだけに罪悪感が募っていく。皆そろそろ帰らないといけない時間になってしまうだろうし。リボーンに助けを求めようにも寝てるし。偶然を装って解けた事にしようかとも考えたけど偶然に解けるような問題じゃないし、今更実は解けましたなんて言えない。最悪雲雀さんに直談判して戦うしか...そう思っている時だった。
「答えは3よ。貴方達の頭は固すぎなのよ。計算式に入らないなら入るように書き換えれば良いだけ。有り得ない定理を出されているなら有り得る定理にすれば良いだけじゃない」
それだけ言っていつのまにか戻ってきたビアンキは何処かに行ってしまった。
「今のって?」
「獄寺君のお姉さんだよね?」
「なんだか分からないけど教えてくれたのな!」
ビアンキがどうして?そう思ったけど考えても何故ビアンキが答えを教えてくれたのか全然分からなかった。でも寝ている筈のリボーンの口が笑ったような気がした。
「皆、今日は本当にありがとう!お陰で退学にならずに済みそうだよ!」
「案外沢田と山本だけでもいけたかもね」
「うん!二人とも本当に頑張ってたもんね。それに最後の問題は獄寺君のお姉さんが教えてくれなかったら解けなかったよ」
「姉貴が?...何を企んでやがるんだ」
「ほんと助かったのな!プリントはコピーして明日ちゃんと持ってくからな!」
「よろしくね、山本。本当に助かるよ」
皆を玄関まで送ると母さんがエプロンを付けながら歩いてきた。
「あら?皆んなもう帰り?どうもう遅いし夜ご飯食べていかない?ツー君の勉強見てもらったみたいだし、お礼がしたいわ」
「母さん!皆んなの前でツー君は止めてって!」
あら?どうして?と笑う母さんには敵わない。
「でもこんな大人数じゃ迷惑じゃないですか?」
花の言葉に母さんは何もないように答える。母さんの巧みな話術?によって数分で皆で夜ご飯を囲む事になっていた。元々京子と花は帰りにご飯を食べに行く予定だったらしくご飯の用意はしてもらってなかったみたいで、山本は電話してみたら仲良くしてもらってるんだから有り難く好意には甘えさせてもらって来いと言われたらしい。なんだか山本のお父さんらしいな。獄寺君は10代目のお母様のご飯を!?と少し大袈裟に言いながらお礼を言っていた。
友達とこんな風に一緒に食事をするなんて思っても見なくて本当に楽しくて、母さんから語られる俺のエピソードが恥ずかしかったりで...本当に楽しかった。
ご飯を食べ終わり直ぐに帰ると思ったけど京子と花と母さんが意気投合してしまい俺のアルバムを引っ張ってきた所で恥ずかしさが限界になり山本と獄寺君と一緒に俺の部屋に戻ってきた。
「流石10代目のお母様!素晴らしい人でしたね!」
「ほんとにな!料理も美味しかったし」
「ごめんね、こんな時間まで」
「気にすんなって。うちに門限とかないからさ」
「俺は元々一人暮らしですから!」
そう言えば獄寺君はシャマルに修行つけてもらってるんだっけ?今日は行かなくて大丈夫だったのかな?
「あ、そうだ。二人とも少し待っててもらえる?ちょっとトイレに行ってくるから」
「ああ。ゆっくりで大丈夫だぜ」
「分かりました!」
先程から感じる微かな殺気と視線に皆が帰る前に確かめに行く事にした。靴を履いて玄関を出る。何故かリボーンまで付いてきてるけど隠しててもしょうがない。
「ツナ。どうしたんだ?」
「うん。ちょっと気になってね...骸いるんだろ?」
超直感が働き右手で何も無い空を掴む。ギリっという感触と共に懐かしい声が聞こえてくる。
「クフフ。よく分かりましたね、いくつか質問してもよろしいでしょうか?」
「ああ」
「何故僕のことを知っているのでしょうか?初めて会うと思うのですが」
「裏の世界では有名だからな」
「嘘ですね。有名なのは影武者の筈ですから」
ランチアさんは囚われのままなんだよな...。早く呪縛から解いてあげたいけど骸を倒して呪縛が解ける保証はないし。
「影武者がランチアなのも知ってる。悲惨な事件を起こさせた張本人がお前だってこともな」
「クフフ。これは嬉しい誤算ですね」
掴んでいた三叉の槍が霧のようになり、骸はバックステップで距離を取る。
「ツナ。どうしてお前がそんなこと知ってるのか気になるとこだがここで始める気か?」
「それはないかな。少し忠告しにきただけだしね」
「忠告?」
「骸。俺の知り合いに手を出すな、俺が目当てなら直接俺にこい」
「クフフ。成る程、残念ですがそれは約束出来ませんね。貴方の身近な人物を捕らえて貴方を誘き出したほうが面白そうですし効果がありそうだ」
「リボーン」
ズガァアアン。静かな夜に一発の銃弾の音が木霊して俺の額に炎が灯る。地面を強く踏み骸目掛けて駆ける。今の俺に出せる全力で骸に突っ込んでいく。骸の目は俺を捉えきれていない。見えていない。だが直線的な攻撃は威力を半減させてしまう。骸の目の前で右側に跳ぶ。先程まで俺がいた位置に三叉の槍が骸から突き出されている。経験から目で追えなくても行動した骸だが二度目は遅い。三叉の槍目掛けて拳を振るう。砕け散る三叉の槍に驚愕の表情を浮かべる骸の腹に拳をぶつける。
「ぐっ...かはっ」
アスファルトで出来ている塀が壊れ崩れている。確かあの家は正一君の家だったような。今の物音で外に出てくるかもしれないし場所を移した方がいいと思い気絶した骸を背負って走る。見られないように死ぬ気で走ったお陰か並森神社まで来ていた。
「っ...ここは」
「目が覚めたんだね」
「何故殺さなかったんですか?」
「殺す理由が無いし、殺したく無いから」
「クフフ。甘いですね、拳を振るう際に眉間にしわを寄せながら殴るのは貴方くらいですよ、手加減しましたね?」
「どうだろうね。それよりそのダメージなら暫くは襲ってこれないよね?」
「それはどうでしょうね」
「それと仲間に頼って俺を誘き寄せるのも無しでね。まっ憑依弾を使わなきゃ復讐者に捕まることも無いと思うし。暫く大人しくしててよ」
「...誰にも知られていない筈なんですがね。貴方は一体何者なんですか?」
「いつか、分かる時が来るかもね」
それだけ言って家に向かって走る。皆を待たせてるしトイレで一時間はちょっと無理がある。慌てる気持ちを落ち着かせながら急いで家に向かうのだった。
「完敗ですね...」
「骸さん、大丈夫ですか?」
「犬触らない方がいい。骸様大丈夫ですか?」
「犬と千草ですか。すみませんが肩を貸してもらえますか?」
「勿論です!ほら柿ピーも!」
「あれがボンゴレ10代目...骸様行ってきても良いですか?」
「よしなさい。今のままでは勝てませんよ。僕の幻術も見破られてしまいましたしね。困ったものです」
「「!?」」
「暫くは体を回復させるとしましょう。計画の練り直しですね」
家に戻ると皆既に帰っていた。
どうやらリボーンが上手いこと誤魔化してくれたみたいだ。骸の視線には気づいていたからいずれこうなるとは思ってたけど、リボーンの前であれだけやっちゃうと疑われるよなぁ。それでも聞いてこないのは殺し屋としての意地なのか。ポリシーなのかは分からないけど隠し通せる気がしないから助かっている。それにしてもハルはどうして来なかったんだろう?リボーンと面識があるから来ると思ってたんだけど。マフィア言ってるか分からないから反感を買ってないのかもしれないけど。出来ればこの世界でもハルとは友達になりたい。そう思いながら寝た。
だから驚いた。
土曜日なので修行の為に外に出ると鎧武者のような格好をしたハルを見たときは。
「勝負です!」