俺妹のいわおがこんなにロックなわけがない   作:nasigorenn

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何となく書いちゃいました。そういえば俺妹にもロックって呼ばれてる奴がいたっけと思い出しまして………CVをあっちのロックに変えて見てみて下さい。


第1話 こうして彼は『ロック』になった。

 彼は和菓子屋の倅として生まれ、これまでの人生をそれなりに過ごしてきた。

優しい祖母やノリのよい祖父、しっかり者の母に寡黙だがきっちりとした父、それに本当に怒るとかなり怖いが普段は日向のように暖かな優しさをもつ姉。そんな家族に囲まれながら幸せな日々を過ごして来た。

 そんな彼の世界には家族以外にも様々な関係があり、その中で特に繋がりが深いといえば『高坂 京介』だろう。彼からしたら歳が幾つか上の幼馴染みにして兄貴分。正確に言えば姉である田村 麻奈実の幼馴染みであり、彼は姉がよく遊ぶ相手で一緒にいることが一番多い事を知っている。勿論姉がこの人物に恋慕の情を抱いているということは付き合い始めたころから知っている。彼としてもこの兄貴分になら姉を任せて良いと思ってるし、それに彼自身実の兄と思っても遜色無く慕っている。

 そんな家族や兄同然の存在に触れあいながら育った彼は所謂『餓鬼』であった。調子に乗りやすく気さくな性格なのだが、残念な事に簡易的な中二病を煩っていたのだ。自分の頭を五厘刈りにした際に高坂 京介に、

 

『格好いいだろ、あんちゃん! 今日から俺のことはロック(いわお)と呼んでくれよ!』

 

というくらいには可哀想であった。

そんな彼こと田村 いわお、今回からは『ロック』としよう。ロックはそれ以降からもこの呼び方を通しているわけだが本人は格好良いと思っている。だが兄貴分である京介からは若干笑い込みで呼ばれていた。既に中学二年生、京介の妹と同い年なのにその中身はまだまだお子様だと言わざる得ない。

 そんなロックであるが、この度原因不明の病気にかかってしまった。

症状は風邪なのだがその熱があまりにも高すぎる。39~40度の高熱に晒され意識が混濁するという事態。当然医者に診せたのだが病状は判明せず仕方なく入院。それが一週間続いたが、その後に熱も下がり身体はすっかり健康に戻った。

 そう、身体は健康になったのだが……………。

 

 

 

「ロック~、早く起きないと学校に遅刻するよ~」

 

人を起こすのにはかなり不向きなのんびりとした声を扉越しにかけられた。声の主がロックの姉であることは声を聞けば分かることである。故にロックも直ぐに応答する。

 

「あぁ、分かってるよ………『姉さん』」

「う、うん、分かったよ…………」

 

ロックの返事に姉である麻奈実から戸惑いを隠せない声が戻って来た。

 彼女が未だに戸惑うのも仕方ないことであった。何せ病気から回復したロックは『性格が変わっていたからだ』。

 今までのロックはお調子者な子供らしい男子であり、姉を呼ぶときは『姉ちゃん』と呼んでいたが、あの高熱以降ロックの人を呼ぶ時の人称が変わった。姉ならば姉さん、父ならば親父、母親はお袋であり祖父は爺ちゃん、祖母ならば婆ちゃん。祖父母に関しては変わらないが、両親や姉の言い方が変わっていた。

 そしてそれに伴い性格も変わりきってしまっていて、それまでの子供っぽい性格から歳不相応なまでに落ち着きを見せ始めたのだ。まるで社会人のような落ち着きぶりに姉である麻奈実でさえ年上に見えそうになったくらいである。

 結果だけ言えば別人のようになってしまったロック。勿論医者に問い詰めることになったのだが、高熱で脳に何かしらあったかもしれないということしか分からず、調べられる限り調べたが脳は正常、原因不明であった。故に今現在は経過観察の様子見しか出来ない状態になっていた。本人自身の記憶はしっかりあるし気にしていないので本人としては問題ないらしい。

 そんなわけで言うなれば『新生ロック』は麻奈実に起こされて普通に起きて家族とともに食事を取る。家族に声をかけると皆戸惑いつつも受け入れてくれていた。

 学校でもロックの扱いについてはかわってしまい、今までのように馬鹿な真似は出来なくなったようだ。まぁ、本人も気にする様子はなかった。

 そしてロックは日常を過ごしていく。

そのまま過ごしてそれなりの人生を送るはずだった。

だが、いわおはロックになってからあることが気になって仕方ない。それは…………。

 

 

 

 

「姉さん、一体いつになったら京介さんに告白するんだ?」

「ふぁっ!? ろ、ロック、何言ってるの!?」

 

 高校生にもなって未だに進展のない姉のことである。尊敬する兄貴分の事を慕っている姉がもう長い年月片思いを続けているのに未だに告白の一つもしないことがロックには不安だったのだ。姉にはこれまでかなり世話になってきたし、兄貴分である高坂 京介にも親しくさせてもらってきた。二人がくっつくことに反対はない。寧ろくっついてくれた方が嬉しいと感じるくらいだ。それは家族全員の思いでもある。

 だが、そんなに皆が願っているというのに二人の仲は進展を見せない。京介が泊まりに来て姉の部屋に一緒に寝ることがあっても、二人の仲は未だに『友人以上恋人未満』なのだ。見ている側からすればもどかしい上このうえない。当人同士の話といえばそうなのだが、もどかしいものを見させられている身としてはたまったものではない。

だからこそ、こうして姉に発破をかけたのだ。

 姉はロックにそう言われると顔を真っ赤にして慌て始める。身内びいきではあるが、恥じらいながら慌てる姉は見ていて可愛らしい。男なら誰もが見入ってしまうと思われる。

 

「何でも何もそのままだ。もう高校生なんだ、くっついてもおかしくないし寧ろ遅いと言われてもおかしくない。だというのに未だに二人の仲は進展無しだ。いくら姉さんが初心で純情だろうが限度というものがあるだろ。それに未だに告白していないということは今の姉さんの反応を見れば分かる」

 

 姉のためを敢えて厳しめにそういうロック。麻奈実はそう言われ更に慌てるのだが、それでは話は進まないだろう。だからこそ、ロックは更に深い話をすべく近くにあった椅子に座ると足を軽く組んで片手を口元に添えてから自身の考察を口にする。

 

「姉さんにこういうのは悪いが、今の状況は『よろしくない』。いや、最悪ではないだけマシではあるが『よろしくない』んだ。いいか、今現在京介さんに恋人はいない。それがまだマシな状況ではあるが、あの人の周りは寧ろ問題がありすぎる。妹さんの友人が約3人程その影をちらつかせている。俺の見た限りでは皆美少女だといっても差し支えない。寧ろ恋人がいない方がおかしいと思う。二名ほど格好が少しアレだが、素材だけなら一級品だ。その気になれば男の一人や二人は簡単に手玉に取れる逸材といっても言い。その3人がどこまでかは分からないが、皆京介さんに特別な想いを抱いている様子だ。だからこそ、この状態は『よろしくない』んだ」

 

 一体いつ見たんだと突っ込みを入れたくなるが、そこは突っ込んではいけないらしい。ロックがこんな性格になってから彼は随分と観察眼が上がっているようだ。それで京介に会ってからそれなりに調べたんだとか。その結果がこれである。

 その答えに麻奈実は知ってるよと暖かに微笑むがどこか悲しそうだ。

そんな姉にロックはまだ大丈夫だと言い聞かせるように言った。

 

「だがまだ終わりじゃない。結末(エンディング)には到達していない。出演者が増えてきてはいるが、肝心の主役が残念なことに鈍感だ。京介さんは頼りになる人なんだが、どういうわけか恋愛感情に鈍い。性欲とかは思春期なりにあるんだがね。だからこそ、あの人を攻略するに必要な欠片(ピース)を他の出演者が見つける前に此方が手に入れなければならない。それこそが勝利への鍵だ。まずは鍵の入手こそが必要、それを手に入れた後は鍵穴に鍵を差し込めば後は強引にでも扉は開けられる」

 

 回りくどいような言い回しだが、どういうわけか説得力がある。その所為なのか麻奈実はうんうんと可愛らしくも懸命に首を縦に振っている。

そんな姉だからこそ、ロックは応援したくなるのであった。

 

「だからこそ、姉さんにはその鍵をまず手に入れてもらいたいんだ。これこそが事を進める上で必要な最初の欠片(ピース)だ。これがなければ話にもならない。だが、これが手に入れば状況は逆転する。今まで守勢だったのが此方からの攻勢に転じることが出来る」

「その、ロック………私は…………」

 

何か言いたいが口に上手くだせない。そんなもどかしい気持ちに悩んでいる麻奈実。そんな姉にロックは決め手を突きつける。

 

「姉さん、酷い言い方になるが事は簡単だ。姉さんが優しいのは分かってる。だからこそ、これは酷な事になるがそれでも言わなければならない。いいか、姉さん………『皆に気を遣って戦わないで負け犬に興じるか』、『あの鈍い京介さんを真正面からぶち抜くか』、どっちかだ。時は金なり、なれど時間は金では買えない。待っていたって物事は始まらないんだ。物語を進めるには自分でページをめくるしかない。姉さんはページをめくるのか? もしくは本を本棚にしまうのか? どっちだ?」

 

 その問いかけに麻奈実は真剣な表情を本人なりに浮かべ必死に考える。端から見たら可愛らしい困り顔でウンウンと唸りながら悩んでいるようにしか見えない。これもまた可愛らしい。どうしてこんな姉に兄貴分がドキドキしないのかとロックは少し不思議に思う。

 そんな麻奈実はやっと答えを出した。

 

「ねぇ、ロック……私、その本のページをめくりたい」

 

その言葉を聞いてロックはニヤリと口元を笑った。待っていた台詞を聞けたからだろう。

 だからこそ、ロックは麻奈実に手を差し出しながらこう答えた。

 

「分かった。姉さん、それじゃ始めようか………姉さんの『恋愛相談』を」

 

 

 

 こうして田村 麻奈実の恋愛を応援すべく、彼女の恋物語のいく末を見届けるために、田村 いわお(ロック)の『恋愛相談』が始まった。

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