俺妹のいわおがこんなにロックなわけがない   作:nasigorenn

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今回もブラック成分は少なめです。


第6話 こうして彼女と彼は結ばれた

 今までとは違い明らかに京介を意識させるような格好にイメージチェンジした麻奈実。

そんな彼女に京介は今まで感じていたイメージが吹き飛ばされ、改めて幼馴染みの魅力にドギマギしていた。

 彼は今、まさに、彼女を完璧に『異性』として認識したのであった。

今まではただの幼馴染みだった。でも今はもう違う。目の前にいるのは『可愛い女の子』であると。

 それがまさか…………ロックの思惑だと気付きもせずに………。

 

 

 

 ロックがやったのはごく単純なイメチェン。

世間に於ける『女性らしい姿、造形』というものを麻奈実にさせただけ。

 麻奈実自身は当然女子なのだが、その髪型はショート。勿論似合っているし可愛いということは分かるのだが、世間に於ける女性らしさというものは得てしてロングなのである。そして普段とは全く違う姿というのは見る者に深い印象を与えるものだ。その二つにより『麻奈実=短髪の幼馴染み』という印象を無くした。

 更に服装も普段着ているものから変更させる。ここでロック自身は特に言ってはいない。服装に関してロックは麻奈実にこう言った。

 

「姉さん、服に関しては新垣 あやせさんに相談するといい。オーダーは勿論、『清楚な淑女風』だ。あぁ、当然京介さんの名を出さないでくれよ。感づかれると厄介だからね。まぁ、既に気付いたところで遅いけど」

 

 ライバルに親交からの善意を用いて協力させたのだ。

何せ相手は現役雑誌モデル。ファッションに関しては此方よりも詳しく流行に関しても良くわかっている。そして麻奈実に世話になっていることから『善意的』に協力を得ることに。まさか相手も此方が『電撃作戦』を仕掛けてくるとは思っていないだろう。向こうに関して多少は申し訳なく思わなくはないが、これも一つの戦争だ。先手必勝とまでは行かなくても先手を取って優位に立つのは当たり前である。

 これらにより麻奈実は今までのイメージを払拭し、京介の好みな女の子へと変貌させたのである。

 まさかこれがロックが差し向けただろうとは思うまい。今の京介は自身が気付かない内に理想の女の子と相対しているのだ。ロックの誘導もあって胸が高鳴りっぱなしで考える余裕もないだろう。

 そんな京介と麻奈実は今晩の夕飯の買い出しと称したデートをすることになったのだが、ここで更に京介をドキドキとさせるイベントが多発した。

 スーパーで一つの籠に二人で商品を入れてる最中に二人の手が触れあうことがあり、それを意識してしまって顔を赤くして慌てて手を離す二人の姿があったり、また麻奈実行きつけの商店街の店では二人の仲を見て『まるで新婚さんみたいね』と定番の台詞を言われ真っ赤になる二人。特に麻奈実は京介にナニカを期待する眼差しを向けているだけに京介は余計ドキドキするハメにあった。

 と、そんなこんなで買い物を終えた二人は田村家に帰還。

 

「やぁ、京介さん。いらっしゃい」

 

居間で会ったロックは京介にそう言葉をかけると京介もやんわりと言葉を返す。その様子はいつもと違い若干落ち着きのなさを感じさせており、ロックはそんな京介を見ながら笑みを深める。

 

「経過は良好、槍は見事に効果絶大ってところか………悪くないね」

 

 

 

 

 そうして始まったお泊まり会。

京介はいつも通り行き慣れたはずの麻奈実の部屋に行くことになったのだが、そこで奇妙な居心地の悪さを感じる。見慣れたはずの部屋なのに、どういうわけか彼方此方が気になって視線が彼方此方に移動する。その度に見つけるのは今まで知らなかった彼女の女の子っぽさ。タンスの上に置かれた小物や小さなぬいぐるみ。ベットに置かれているファンシーなクッション。また勉強机の上に置かれているパステルカラーの文房具、そして写真立て。写真には麻奈実と京介のツーショットが取られていた。

 それらが余計に京介の意識を刺激する。今まで自分がどれだけ周りを見てこなかったのかを。そして麻奈実がこんなにもも可愛い『女の子』なのだということを。

 知っているはずなのに知らない場所。よくよく感じてみると自分の部屋にはない甘いような香りも感じる。ソレが更に胸をドキドキとさせた。

 そんなこともあり、京介は更に麻奈実を意識することに。それが麻奈実にも伝わっているからか、彼女もまた恥ずかしそうに顔を赤らめていた。それが可愛らしいものだから、更に京介の胸をトキメかせる。

 既に見た限りでは付き合い始めたカップルにしか見えない二人。

それは家族から見て実に微笑ましものだ。故にロックは家族………特に祖父に良く言い聞かせる……茶化すなと。理由は単純、余計な真似をされて台無しにされたくないからだ。

 そんなわけで初々しい二人はお互いに気恥ずかしいながらもどこか嬉しい時間を過ごし、そして夕方になると麻奈実は夕飯の支度を手伝うということで台所へと向かう。

 その後ろ姿を見ながら京介も部屋を出て居間に向かうことに。本当は麻奈実に手伝いを申し出たのだが、女の城たる台所に男子入るべからずと言うべきか、麻奈実に止められたのだ。いつものお泊まりならそんなことを言い出すこともなかったのだが、何故か今日はしなければいけないと京介が思った事が内心嬉しかったらしい。麻奈実のそんな優しい笑顔に京介が見入ってしまったのは仕方ない事なのかも知れない。

 居間に向かった京介が見たものは、コーヒー片手にニュースを眺めているロックであった。

 

「それ、面白いか?」

 

 見ているニュースを指さしながら京介がそう問いかけるとロックは軽く指を口元に添えながら答える。

 

「面白いか面白くないかで言えば面白い話ではないかな、これは。でも考えさせられる話題ではあるさ」

 

 そう答えるロックが見ているのは政治の話だ。政治に興味が無い京介としては何を言っているのか2割も分からない。

 だがロックは分かっているらしい。彼は京介が何かを聞く前にこう答えた。

 

「何、皆お題目を掲げて大層なことを言っているけどやっていることはただの釣りだ。皆に美味いと思わせる餌を釣り針にかけて世論や支持を大量に釣り上げたいだけ。その実自分達は危害が加わらない安全圏で保身に走ってる。ここで仰々しく叫んでる連中は政治家じゃなくて政治屋だよ。政治家以下の下衆に過ぎないのさ。本気で何かを変えるというのなら、その時は仕えるリソースを全て使い切って賭けに出なければならない。賭けられない奴に未来はないよ」

 

 そう答えながらコーヒーを呷るロック。

そんなロックに京介は何とも言えない顔をしながら突っ込む。

 

「本当にお前、中学生かよ」

「最近よく言われるけど、それでも俺は中学生だよ」

 

そう答えるロックと共に京介はずっとテレビを見ていることにした。

 そして時間が経ち夕飯。夕飯の献立は良くある和食。白米に味噌汁、肉じゃがに玉子焼き等々。それらを田村家の皆とちゃぶ台を囲んで食べる京介。

 その味に美味いを舌鼓を打つ京介。そんな京介に麻奈実は嬉しそうに微笑みを浮かべる。そして黙っていられないのが田村家の面々だろう。

 麻奈実の母親がこの料理は全部麻奈実が作ったものだと告白する。

それを聞いた京介は驚き関心すると、麻奈実は気恥ずかしそうにえへへっと笑った。そんな彼女を見てロックは更にワントラップ入れる。

 

「それに京介さん、この卵焼きを食べて見てくれないか」

 

そう言いながら差し出されたのはロックの方に置かれていた玉子焼き。勿論京介の方にも卵焼きは置かれている。

 それが分かっていながらも何か意図があるんだろうと読んで京介は差し出された玉子焼きを一口摘まんだ。

 

「え………これ、俺のと味が違う………?」

 

 自分の玉子焼きと同じはずだと思っていたが、味が違うことに驚く京介。そんな京介の反応を見ながらロックはクスりと笑う。

 

「姉さんが京介さんのために味分けをしたんだよ。何せ京介さんの味の好みは分かりきっているからね。今日の料理も全部京介さん好みの味だ。どれだけ京介さんの事を想ってるのかが良くわかるよ」

「ろ、ロック! そ、そんなこと、ない……とはいえないなぁ………」

 

 ロックに言われ顔を真っ赤にして慌てる麻奈実だが、この歳不相応に落ち着いたロックの分かりきっているという笑みに反論は出来なかった。何よりも言っていることが事実なだけに素直になるしかなかった。

 

「そ、そうか……何というか………美味いな、麻奈実」

「あ、ありがとう、きょうちゃん………」

 

自分のために自分の好みの味付けをしてくれたことが嬉しくて、それでいて自分のことを理解してくれていることに京介は恥ずかしさを感じながらお礼を言うと、麻奈実も気恥ずかしさから顔を赤らめつつもお礼を返す。

 そんな如何にも初々しい光景に田村家の面々が暖かな目を向けるのは無理もないだろう。 

 そんな感じで夕飯は過ぎた。

 

 

 

 そして時間は更に深まり、そこで風呂上がりの麻奈実と京介がブッキングするなんていう定番イベントが起こり、まぁ何とも思春期にありがちな嬉し恥ずかしい展開に。それがまさかロック達によって引き起こされていることを知らずに両者はより意識することに。

 そして最終局面………就寝。

京介が泊まるのは当然麻奈実の部屋。いつも通りの展開だが、二人の状態は『いつも通り』ではない。

 

(くそ~、何か全然落ち着かねぇ!)

 

京介は麻奈実を異性として意識してしまい、彼女が近くにいることにドキドキしてしまっており、また麻奈実も今晩が勝負だと分かっているからこそ顔が紅くなるのを感じている。

 勿論不安だって大きい。今まで打ち明けなかった想いを改めて告げるのだ。振られた場合、京介の前では何とか笑みを浮かべるが、京介が去った途端に泣き出してしまうかもしれない。彼女にとってこれほど恐ろしいものはない。

 だが、それでも絶対に告白するのだと、彼女は意気込む。何せ今回は弟が自分の為に色々と頑張ってくれて相談に乗ってくれたのだ。弟の為にもこの想いを告げなくてはと。

それにロックは言っていた。

 

『何、そんなに不安にならなくてもいいさ。言い方が悪いがこれは出来レースだ。既に勝敗は決定してる。京介さんに刺さった槍は的確に心臓を捉えてるからね。外す方が無理さ。姉さん、貴女の勝ちだ』

 

とのこと。何を根拠にそう言うのか分からないが、今のロックには妙な説得力がある。だから麻奈実はそれを信じて突き進むことにした。

 互いに意識しているだけに相手が眠りについていないことが良くわかる。だからこそ、京介は麻奈実がしていることに直ぐに気付いた。

 

(なっ!? 麻奈実、何俺の布団に入って来てんだ!)

 

布が擦れる音と共にめくられる布団の感触、そして背中に感じる自分とは違う温もり、そしてそっと触れる女の子の柔らかい感触に京介の心臓がバクンバクンと高鳴った。

 そんな京介の驚く通り、麻奈実は京介のもとまでたどり着く。

 

「きょうちゃん………起きてる?」

 

 小さい声だが京介の耳にはしっかりと届いた。

 

「あ、あぁ、起きてる………」

 

本当は何で入ってきたとか色々と聞きたくなる京介だが、それは彼女の方を振り向いた瞬間に忘れた。

何故なら麻奈実の方を見た瞬間、彼女が京介をぎゅっと抱きしめたからだ。自分の胸辺りに同じように胸を押しつけ、顔はキスが出来るほどに近づく。その表情は真面目なような緊張しているような顔である。それだけでもアレなのに、京介の身体は更に強張ることになった。

 胸に感じるのは男にはない柔らかなでありながらボリュームを感じさせる感触。それが薄い布越しで感じられることで彼女が下着を着けていないことが窺える。(女性は寝るときにブラジャーを付けないものらしい)そして京介の鼻腔をくすぐる男ではあり得ない甘い香り。

 感触に香り、そして自分を見るめる熱の籠もった瞳。年頃の男にならまずノックアウトされるような光景がその場にあった。

 故に京介は麻奈実に何かを問いかけることが出来ない。ただ彼女に自分のドキドキが伝わらないかが心配だった。

そんな京介を分かってるからなのか、彼女は真剣ながらに少しだけ微笑みそして口にした。

 

「きょうちゃん………私ね………きょうちゃんのこと………好き」

 

抱きしめられながらの告白。それを聞いて京介は幼馴染みが女の子であるということをより意識させられた。

 今まで一緒にいたのだ。相手が本気なのかどうかなんて、その声を聞いただけで分かる。それに気付かなかった今までの自分はきっと気付かぬふりをしていたのだろう。何故なら、もしその想いを聞いてしまったら、『幼馴染み』という関係が壊れてしまうと思ったから。

 だから気付かぬふりを無意識にとっていた。自分と彼女は幼馴染みなのだと決めつけて、その関係が絶対に壊れないようにしようとした。気付かなければずっと続くと思ってたから。

 でも…………もう無理だ。

だって気付いてしまった。彼女の想いに。告げられてしまった、彼女の告白を。

 京介の頭にそんな思考が過ぎる。その僅かな時間に麻奈実は更に京介を抱きしめた。

 

「女の子として好きなんだよ。私ね、きょうちゃんの恋人になりたい。それできょうちゃんともっと一緒に色々なことを経験して笑いあって、そして結婚してきょうちゃんとずっと一緒にいたいの」

 

そこにあるのは真の愛。不純物など一切無い高坂 京介への愛だ。

 その言葉に京介はドキドキする。当たり前だ、これは彼にとって初めての告白だからだ。

 そしてその答えなど、今抱いている感情を分かれば決まってる。

確かに京介の周りには魅力的な女の子は一杯いる。皆美少女だ。一緒にいて楽しいと思う。でも………こんなドキドキして暖かく、それでいて胸を締め付けられるような気持ちを抱いた相手はいない。目の前にいる女性だけにその感情が発生するのだ。

 だから京介は笑顔を浮かべようとする。きっと緊張で変な顔になっているし、顔が熱くて仕方なく真っ赤になっていることは分かりきってる。それでも、彼女には笑顔で答えたかった。

 

「あぁ、麻奈実。俺もその………お前のこと、好きだ。たぶんだけど………今、初めてお前に恋してる。それでお前のことが、その………愛おしいって思うんだ」

「きょうちゃん!」

 

 京介の返事………告白を受け入れ自分もそうだと答えてくれた。

それに感極まって麻奈実は京介更に抱きつくと泣き始めてしまう。彼女にとって積年の想いが成就した瞬間であり、この涙は感動と喜びからだ。

 そして二人の顔は自然と近づき、静かに合わさる。

 

「………キス、しちゃったね」

「………あぁ」

 

 思春期な男女がテンションを上げるとこんあことが起こる。本人達からしたら自然となったことなのだろう。互いに引き寄せられるとかなんとか。告白成就とその時にキス………まさに少女漫画のような展開。互いに気恥ずかしさを感じつつも嬉しさから笑みがこぼれる。

 今まさに布団の中で一組のカップルが誕生した瞬間であった。

だが、ここで男女の差というものは出るものだ。

 京介は少しだけ身体を離した麻奈実を見てある場所に目が行ってしまう。

それは胸元。若干着崩れはだけたパジャマから彼女の胸の谷間が覗いてしまっていたのだ。思春期男子ならば誰もが目を向けてしまう光景。それも京介の予想外に麻奈実のバストが大きいこともさらに拍車をかけた。

 そんな視線を向けられて女子ならば誰もが怒るであろう状態。

だが彼女は今、正常にあらず。恋が実を結び恋人同士となった喜び、そして今まで意識してくれていなかった彼が自分を性的な目で見てくれるという女としての悦びの二つにより………暴走していた。

 故に彼女は顔を赤らめながら京介の手を自分の胸に押しつけながら、潤む瞳を京介に向けてこう言った。

 

「きょうちゃん、その…………いいよ、きょうちゃんになら。だから………優しくしてね」

 

少女と女、二つの魅力を備えた可憐でありながら妖しい笑み、そして殺し文句。京介は自分の中にある鎖が弾け飛ぶ音を聞いた。

 

「麻奈実ッ!!」

「きょうちゃん、来て」

 

そして二人は溶け合うように重なった。

 

 

 

 

 

 二階のとある部屋が妙に軋むような音がするようだがロックはそんな事を気にすることなく一階の居間にいた。

 

「まだ寝てないのか、いわお」

 

そう声をかけたのは父親だ。どうやら居間に用があってきたらしい。他の家族は皆朝が早いので寝ている。

 父親の登場にロックは少しだけ優しい笑みを浮かべながら答えた。

 

「幸せなカップルのお邪魔虫はよろしくないからね。今『ナニ』をしているのか予想が付くから気を遣ってるんだよ。邪魔はよろしくない………だろ」

 

その言葉を肯定するようにギシギシと二階のどこかが軋む。

 その言葉の意味が分かる父親は少しばかり複雑そうな顔をした。愛娘に恋人が出来たことが嬉しのだが、その後直ぐコレは如何なものかと考えさせられる。まぁ、積年の想いが成就したことは素直に祝いたいし、相手が自分達が望む相手だから喜ばしいのだが。初孫がどれくらいで見れるかなぁ、なんて少しばかり逃避もした。

 そんな父親にロックは苦笑を向ける。父親が考えていることが手に取るように分かるからだ。親というのは難しいと思わざる得ない。

そして父親は少しそんな顔をすると、台所に行って何かごそごそとしはじめた。

 待つこと数分、その手には二つの缶ビールが持たれている。

その持っている缶の一つをロックに向かってほいっと投げた。ロックはそれを受け取ると苦笑しながら話しかける。

 

「俺は未成年なんだけどな」

「今回だけは付き合え」

 

 そう答えると父親は缶ビールのプルタブを開ける。

プシュっと爽快感がある音がなり、それが喉を鳴らせる。ロックも同じようにプルタブを開けた。

 そして二人で飲もうと言うときにロックは少しだけ待てと止めた。

 

「せっかくだから乾杯しようか」

「何にだ?」

 

 分かりきった質問だろう。父親自身分かっていて聞いている。その介錯をすべくロックは大人のような笑みを浮かべながら答えた。

 

「新しいカップルの門出とこれからの幸せを祈って………」

 

「「乾杯」」

 

 そして静かな居間にて、二階のどこかでなっている軋む音をBGMにしながら二人の男が酒を飲んだ。

 

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