暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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勉強会の時間 二時間目

 倒れた風人君を部屋に運び彼の頭を膝の上に乗せている。

 

「不覚だった……」

 

 あの時の光景を思い出してもさすがに最低だと我ながら思う。

 ギャルゲーでありがちなこういう風呂場とかでの俗の言うラッキースケベイベント。そこでのヒロイン側は大抵悲鳴を上げるとか、身体を隠すとか、一発殴るとかそんな感じだろう。

 じゃあ、何故風人君は気絶して倒れているか。私の裸を見て気絶したから?ううん。

 

「まさか……一瞬で風人君の正面に行き鳩尾に肘鉄を食らわせそのまま流れるようにアッパーを顎に喰らわせて、追い打ちをかけるように逆の手で脳天を殴打しトドメに首筋を手刀で打つなんて」

 

 自分でもそんな格ゲーでいう即死コンが決められるとは思わなかった。半ば無意識だったがそれでも自分が恐ろしい。

 気が付くと目の前には倒れた風人君が……しかも服を着たりして話を聞けばこの遭遇イベントは実の母親によって仕組まれたものらしい。つまり、風人君は完全に被害者なのだ。

 

「…………はぁ」

 

 誤解のないように言っておくと私は確かに恥ずかしかった。でも嫌だったからってわけじゃない。何というか……そう。心の準備が出来ていなかった。完全なる不意打ちだったから問題であって……いや、大事なのは色々とあったが私の裸を見られたのと風人君をぶちのめしてしまったという事実だけか。

 期末テストという大舞台を前に何やってるんだろう……。

 

「…………むにゃ……」

 

 すると私の膝の上から声がする。

 

「…………えへへ……」

 

 軽く笑い出す風人君。だが、閉じられた目からは涙が伝っていた。

 

「……もう大丈夫だよ……心配しないでいいよ…………千影」

 

 あぁ、そういうことか。

 何となく察した私は彼の頭を撫でることにする。

 

「……有希子はね……とても優しいんだよ。真面目だし可愛いし……あ、ゲームも強いね……えへへ……僕にとって最高の彼女だよ……」

 

 ……寝言だよね?実は起きているってパターンじゃないのこれ?すごい恥ずかしくなってくるんだけど。……でも、こうやって思われているって思うと……なんだか照れるなぁ。

 

「……ほぇ?さっき鳩尾に肘鉄を食らわされそのまま流れるようにアッパーを顎に喰らわされて追い打ちをかけるように逆の手で脳天を殴打されトドメに首筋を手刀で打たれた?ははは……冗談が好きだなぁ~」

 

 寝言だよね!?寝言にしては流暢とかそういう次元じゃないんだけど!?やめて!さっきの愚行をリピートしないで!凄い恥ずかしくなってくるから!

 そんな感じでもだえること数分。落ち着きを取り戻すことに成功すると、

 

「…………あれ?」

 

 風人君と目が合った。

 

「……僕……何で泣いてたんだろう……?何か夢でも見てたのかな……?……ん?僕は確か……?何でここで寝てるんだろう~?」

「か、風人君。起きたんだね」

「うーん……寝ぼけてる気がする~ま、いっか」

「起きたならお風呂に行くといいよ。うん。いってきたら。今すぐに」

「あ、うん。分かった~……ん?何かとても大切なことを忘れているような~?」

「そ、そうかな?ナニモナイトオモウヨ?」

「なぜにカタコト?ま、いっか~」

 

 そんな感じで風人君はトコトコと風呂場に向かっていく……。

 

「よし、勉強しよう。そうしよう」

 

 私は無心で勉強することにした。うん。雑念も何もいらない。今は勉強するのみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~」

 

 湯船につかりながら僕は考える。いや正確には思い出そうとするか……

 

「一体僕の身には何が起きたんだ?」

 

 この記憶が飛ぶというか時間が跳ぶというか……なんとも懐かしい感覚だ。ん?まさかまた人格変更?実はアレ治っていなかった?

 

「いやそうじゃないか……」

 

 そんな都合良く人格は変わらないだろう。それに人格の入れ替わりなら僕が有鬼子の膝の上で寝かされて……?寝かされていた?なんで?

 

「思い出せぇ……思い出すんだぁ……」

 

 まず、僕の名前は……違うそこからじゃない。今朝食べた……違うそこでもない。確か、有鬼子の両親とトランプしながら雑談。何かを見る。気付けば寝ていた。

 

「……?」

 

 記憶に飛躍がありすぎるだろ。

 確か……風呂に向かったはずだ。そうお風呂に。で………………ああぁぁぁっ!思い出したぁ!確か有希子の裸を見たんだ!しかも風呂上がりの!

 

「……っ!」

 

 いや、鮮明に思い出してきて……その……ご馳走様?ってなんだか……有希子の顔がまともに見れなさそうだけど……だってその……ね。ぶっちゃけて言うなら……はい。最高です。

 

「……モゴモゴ」

 

 湯船に顔を沈める。

 い、いやあれだよ!僕だって同い年の従兄弟に可愛い幼馴染みがいたからね!そりゃあ、女子の裸を見るとかさ!着替えにバッティングするとかさ!お風呂も一緒に入ったよ!で、でもそういう目で彼女らを見ていなかったし!小学生だったから何も思わなかったけど……あああああ!今思うと凄い恥ずかしいじゃん!不可抗力とはいえ彼女の一糸まとわぬ姿を……あああああ!勉強会だよ!?今日の目的は今度の期末テストに向けた勉強会だよ!?

 

「…………いや落ち着け僕……!落ち着くんだ……!相手はあの鬼だぞ……!って違うよ僕のバカ!鬼とかいいながら無茶苦茶可愛かったよ僕の彼女!ってああああ!い、いやここは落ち着くために素数を!素数を唱えるんだ!」

 

 この後風呂から出て、気まずさのあまりか僕らは無言で勉強会を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もうすぐ日付が変わる頃だろうか。風呂上がりから数時間。僕と有鬼子はひたすら無心で勉強に打ち込んでいた。消しゴムを取ろうとほんの少し手とかが触れあっただけでお互いが「「あっ……」」とか何というか少し恥ずかしくなって空気が固まる始末。

 初々しいカップルか!なんだかんだで夏の終わりからの付き合いだぞ!

 

「そ、そろそろ寝ようか……」

「そ、そうだね~……」

 

 あの僕らが何と目を合わせられないというこの空気。どうしようか。いや、どうしようもない。

 そして追い打ちをかけるように……

 

((何で布団が一つしかないの\んだよ!?))

 

 有鬼子は元々床とベッドで分けて――夏の泊まりのようにするつもり()()()。しかし何の因果か知らないが()()()来客用の布団が洗いに出されていて現状ベッドしかないのだ。

 

「ぼ、僕は雑魚寝するよ~有鬼子が使って~」

「う、ううん。風人君にそんなことさせられないよ……」

「…………じゃあ、一緒に寝る?」

「…………うん」

 

 と紆余曲折を得て僕らはベッドの中。お互いに向き合っているが……気まずい。

 

(いや待て。この空気というか……全体的に僕らしくない。そうだよ。発想の転換だ。僕は確かに有希子の裸を見た。でもそれは未来に起こるはずの出来事が何の因果か今になっただけでこの先は何度も……)

 

(よ、よし。ここは一旦落ち着こう。まずは気絶させたことを謝るんだ。……そして私の裸を見た記憶は……絶対あるよね。ないならこんな空気になってないよね。で、でも、この先何度も見せる機会が……)

 

「「…………っ!」」

 

 次の瞬間。僕らは同時に頬が熱くなる感覚に襲われた。

 

「…………ふふっ」

「……どうしたの~急に?」

「……照れている風人君ってレアだなぁ~って思って」

「…………うるさいなぁ~そういう有鬼子だって照れてるじゃん」

「ふふっ。そうだね」

「ははっ」

「どうしたの?」

「ちょっとね~」

 

 何というか……この空気もちょっとだけいいかもって思える自分がいる。

 

「ごめんね」

「なにが~?」

「さっき風人君を気絶させちゃって」

「あーうん。何となく想像通りだよ~」

 

 いや、確かに固まりはしたけど気絶はさすがにない。となると、物理的にやられたと言うことは想像に難くない。

 

「電気消さない?もう眠いよ~」

「そうだね。寝よっか」

 

 明かりが消え暗くなる部屋。

 

「ねぇ……有希子」

 

 僕は彼女の背中に手を回し抱き寄せる。僕と彼女の距離はほぼゼロとなる。

 

「好きだよ」

「……っ!」

「おやすみ」

 

 僕はそっと手をどけようとする……が、反対に背中に手が回ってくる感覚が。

 

「……このままがいい」

「……分かった」

「私も好きだよ……おやすみなさい」

 

 それから程なくして眠りについた。

 恥ずかしさとかそういうのもあるけど、彼女の近くは凄い安心できる。

 こんな時間がずっと続けばいいな。

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