暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 作:黒ハム
気絶した茅野。殺せんせー曰く絶対安静だが一応無事。今は寝ているだけらしい。
で、キスをして動きを止めた王子様こと渚は最悪の悪魔コンビ、カルマアンド中村にいじり倒されていた。
「キス10秒で15HITってとこかしらね……まだまだね」
そんな中ビッチ先生による、先ほどのキスの採点結果が出る。どうやらまだまだのようだ。まぁ、確かに15HIT程度じゃダメだよね。……でも、目的は果たせたしオッケーだしよくない?
「40HITは狙えたはずよ」
「俺なら25は堅い」
「うんうん」
「もうやだこの教室……私も20は行くけどさ」
「ちなみに僕も35くらいなら行けそ~」
「張り合わないの」
と、キスの10秒あたりのHIT数について盛り上がる(どんなクラスだよ)僕たち。
パシュッ!
「はっ……!」
くだらないことで盛り上がり、一方殺せんせーは失いすぎた体力の回復に努めていた頃、一発の銃声が響き渡った。
「瀕死アピールも大概にしろ。まだ躱す余裕があるじゃないか」
そこにいたのはシロ。そしてもう一人……誰あの……なんかこう……何で頭の上までチャックあげてるんだろう。
「使えない娘だ、自分の命と引き換えの復讐劇ならもう少し良いところまで観れるかと思ったがね」
「ふざけんなよシロクロ野郎。勝手に使えない判定とか出してんじゃねぇよ」
「これだったら君の復讐劇の方が面白かったが……まぁいい。大した怪物だよ、いったい一年で何人の暗殺者を退けて来ただろうか。だがここにまだ二人ほど残っている」
するとシロはその仮面を外し素顔をさらす。
「最後は俺だ、全てを奪ったお前に対し、命を持って償わせよう」
………………誰?
「行こう『二代目』。3月には……呪われた命に完璧な死を」
そうして消えていく二人……結局何しに来たんだろうか?
「茅野が目を覚ましたぞ!」
二人が消えて程なくして、茅野が目を覚ます。渚の方を見て顔を赤くして背けた……ほぅ。
「最初は純粋な殺意だったの。お姉ちゃんの仇って……だけど殺せんせーと一緒に過ごすうちに殺意に確信がもてなくなった。この先生には私の知らない別の事情があるんじゃないか?殺す前に確かめるべきじゃないか?って。でも遅かったの。その頃にはもう触手の殺意が思い止まることを許さなかった……バカだよね。皆が純粋に暗殺を楽しんでたのに私だけただの復讐のためだけにこの1年を費やしちゃった」
「茅野。僕は茅野にこの髪型を教えて貰ってからさ、自分の長い髪を気にしなくて済むようになった。殺せんせーって名前もさ、皆が気に入って使ってきただろ?目的がどうとか気にしなくていい。茅野はこのクラスを作り上げてきた仲間なんだから。どんなに1人で苦しんでたとしても全部演技だったなんて言わせないよ。皆と笑った沢山の日が」
凄いな渚は。すごいいいことを言えて。
「殺せんせーは皆揃ったら全部話すって約束した。先生だって聖人じゃない、良い事ばかりじゃないのは皆知ってる。でも皆で聞こうよ」
「……うん。ありがと……私、もう演技やめて……いいんだ」
涙を流す茅野にクラスメイトたちが寄り添う。誰も責めることはしない。彼女の本心を聞けたのだから。
「殺せんせー。たとえ先生にどんな過去があったとしても、それが真実ならすべて受け入れます。だから話してください」
殺せんせーは僕らの顔を見渡した後、語り始めた。
「できれば過去の話は最後までしたくなかった。けれど、こうなってしまってはしなければなりませんね。君たちとの信頼を、絆を失いたくないですから。夏休みの南の島で烏間先生がイリーナ先生をこう評しましたね?『優れた殺し屋ほど万に通ずる』非常に的を得た言葉です。先生はね?教師をするのはこのE組が初めてです。それにも関わらずほぼ全教科を滞りなく皆さんに教えることができました。それは何故だと思いますか?」
察しのいい何人かが気付く。
「そう。2年前まで先生は『死神』と呼ばれた殺し屋でした。それから、もう一つ。放っておいても来年の3月には先生は死にます。1人で死ぬか、地球ごと死ぬか。暗殺で変わるのはそれだけです」
殺せんせー……いや、『初代死神』は劣悪な環境に生まれ『死』だけを信じて生きていた。『初代死神』にとって殺し屋は天職だった。しかし、2年前。唯一の弟子である『二代目死神』によって裏切られ拘束。シロこと柳沢によって実験のモルモットにされた。そしてその時の監視が茅野の姉……『雪村あぐり』彼女はここ三年E組の担任をしながら初代死神の監視をしていた。
そして一年前。月でマウスに対して同様の実験をしたところ月が七割方蒸発するという大惨事。それを見た柳沢は初代死神の殺害を決意する。しかし、それは失敗。触手を操るようになった初代死神の前に左目を失う。
そのまま初代死神は研究所で破壊活動を行う。彼を止めるために雪村あぐりは抱きつき、その瞬間触手地雷と呼ばれる兵器が彼女を襲う。彼女は瀕死の重傷。自らの死を悟った彼女は後の殺せんせーにこう告げる。
『もし……残された1年。あなたの時間をくれるなら…………あの子たちを教えてあげて』
彼は彼女の最後の願いを聞き届けて、三年E組の担任となった。
話を聞き終わったとき、僕らの脳裏をよぎるのはこの一年の思い出。
そして僕らは最大の難題と向き合う。
――――この先生を殺さなくてはならないのかと。
年が明けて1月6日。僕、渚、杉野、奥田さん、有希子の五人はししょーのお見舞いにやってきた。
「大丈夫?茅野?」
「うん。新学期には滑り込みセーフだって」
「よかったね~学校休まなくてすんだじゃん~」
「そうだね。でも、風人君も来るなんてちょっと意外だったな」
「ししょーのためですよ~」
「本音は?」
「有鬼子に家から引きずり出されました……」
「あはは……風人君らしい」
酷い。何も無理やり引きずることはなかったのに。
この冬休み誰も暗殺についての話を出さなかった。
僕自身も結局暗殺は行わず、これからどうするかを悩んでいた。
いや、実際はもっと前から悩んでいたけどズルズルここまで来てしまっている。
いつかは決めないといけない。殺せんせーを殺すかどうするのかを。
勿論、全員が知った以上これは僕だけの課題じゃない。皆の課題だが。
「あ、あと、茅野に謝らないといけないことが……。あの夜のことはごめん!他に方法が思いつかなくて……」
あの夜……ああ、渚がししょーにキスしたことか。
「まさかー助けてくれたんだもん。感謝しか出てこないよ」
((嘘だ))
なんとなく僕と有鬼子の意見が一致した気がする。
「よかったぁ」
渚を見て思う。実は鈍感?
「そろそろお暇しましょう?茅野さんも疲れたようだし」
「だね~ばいばーい。ししょー」
「じゃあ、明後日また」
「じゃあな」
「またね」
そんな感じで五人で病室の外に出て、病院から出ようと歩き出し……
「ああぁっ!思い出した!僕も一個謝ることあったんだ!」
『……えぇ…………』
「ごめん!ちょっと戻りまーす!」
「うん。私たちは待ってるね」
というわけで、僕はししょーの病室へ逆戻り。いやーさっきばいばーいとか言ったのにこれって……
「…………何してるの~ししょー?」
戻ってみると布団が盛り上がってバタバタと世話しなく動いている。そして出て来たししょーの顔は真っ赤に染まっていた。
「は、はわわ!?か、風人君!?帰ったんじゃ……」
「あー僕も一つ言い忘れたことがって思ったけど……」
僕は口元に手をやってニヤリと笑う。
「ほうほう~で、いつくっつくの~?」
「い、いや!渚とはそう言うのじゃないんだから!」
「誰も渚のこととは言ってないんだけどなぁ~あれれぇ~?」
「…………っ!」
「まぁま、ししょー。僕と有鬼子はバッチリ応援するから!ぐー!」
「そ、そうだね……ありが……待って。何で神崎さんも?」
「いや、あの様子だと完全に気付いただろーし」
まぁ、気づけなかったのは渚くらい……だよね?え?あんなわかりやすい演技を見破れなかったの?マジで?
「……そうだなぁ……とりあえずごめん!」
「え?何が?」
「いやぁ……ね。あんなに早い段階でししょーのこと気づいていたのにずっと何もできず……長いこと苦しませて」
「そんなの気にしなくていいよ。私もあの時は脅しちゃったし……酷いことも言ったし。それにごめん!いくら触手のせいとは言え風人君に攻撃を加えようとして……その時にも色々と言っちゃって」
「あ~全然気にしなくていいよ~一撃ももらっていないから~」
「それはそれで地味にすごいような……」
「…………まぁ、有鬼子が暴走して報復に来たら諦めて」
「…………風人君や。私と協力しないかい?」
あくどい顔をするししょー。なんというか前よりも感情を隠さなくなったなぁ……というかそんな顔もできるんだ。
「…………報酬はししょーと渚のイチャイチャで」
「…………風人君。ここに長いこといたら後で処刑されるんじゃない?」
「…………ほほう。脅してきましたか……あはは」
「あはは。何やってるんだろうね。私たち」
「さぁね。でも僕らはこの程度の距離感がちょうどいいよ~」
ある意味では僕らは似た者どうしかもしれない。大切なものを目の前で奪われ、復讐のために生きていて、今は前を向いている。
あの日から彼女に対しての恐怖は消え失せていた。僕にとって彼女は掛け替えのない仲間で
「でもこれ以上は嫉妬しちゃうんじゃない?」
「だねー嫉妬されると何しでかすかわかんないから」
「じゃあ、また明後日ね~」
「うん~今度一緒にプリンでも食べに行こうね~」
そして病室から出た僕。
なお、病院の受付あたりで待っていた有鬼子の頬がむくれていた感じがすごい可愛かったです。
ごめんなさい!(ザーーーー)
「あ、あの駄作者が開口一番にスライディング土下座するだなんて……!」
「な、なんて美しい土下座なんだ……!僕は駄作者を許そう」
ありがとう風人君。じゃあ、次回もおたの――
「ってなるわけないでしょ」
ですよねー
「で?何をやらかしたんですか?」
皆覚えているかは分からないけど『入院の時間』のあとがきでクリスマスの話やるつもり!的な感じで言ったと思います。
「あーいつの話かな?」
半年以上前ですね(キリッ)
「何話前の話かな?」
20話くらい前ですね(キリッ)
「つまり約半年で20話のペースと」
(あれ?意外に投稿してる?もしかして結構投稿してた?)
「駄作者?今『あれ?もしかして投稿してる方?』とか思ってないよね?」
あはは~そんなわけないじゃん~
「で~そのクリスマスはどうなったの~?よく見たら新年になっちゃったよ~?」
あーうん。なんか前はやるつもりだったけど、よく考えたらこのルートなら重要じゃないし、やっても殺せんせーのことで何かイチャつかせるの違うなーって思ってさ。
「……逆に聞くけどもう一つの方だとそんなに重要だったの?」
うん。絶対に外せなかった。
「……はぁ。まぁいいや」
というわけで二学期編無事終了。
「何か、前の話あたりから茅野さんがヒロインに見えてこなくもないような……」
大丈夫。茅野は渚のヒロインだから。
「僕とししょーはプリンによって結ばれた友達だからね~」
この二人はどこまで行っても親友以上恋人未満です。
と、そんな本編も次はいよいよ三学期編。集大成ですね。
この話を投稿する前にUAは120,000を、お気に入り数は800越えました。本当にありがとうございます。ここまで本作に付き合っていただいた方々、どうか次章もお付き合いください。
では恒例(?)の次章予告がございますのでどうぞ。
~次章予告~
殺せんせーの過去を知り、悩むE組。
そして彼らは殺すか殺さないかの決着をサバイバルバトルにてつけることにする。
「僕はね~」
風人は殺す派かそれとも殺さない派か。
彼の選択は……?
受験、バレンタインデーとイベントが過ぎてゆくE組。バレンタインでは有希子が大胆な行動に……?
「このクラス唯一にして随一のバカップルだからね。期待できるんじゃない?」
BY悪魔コンビ片割れ
と、徐々に有鬼子が色んな意味で暴走していく中、卒業及び殺せんせーの暗殺期限までのリミットが迫るそんなある日のこと。
「り、りじちょー……!」
風人は理事長のもとにいた。
一体彼はなぜ理事長のところにいるのか?
暗殺教室も終幕が近付く。果たしてどのような決着を迎えるのか。
次章『終幕の三学期編』
「風人君」
風人は暗殺教室の終わりに何を思うのか。