暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 作:黒ハム
僕は迷わず手にする――赤色のチームの武器を。
「僕はこの一年、皆のお陰でここまでやってこられた。殺意によって結ばれた僕らのクラス。暗殺で始まったんだし、終わらせるのもやっぱり暗殺かな」
僕はずっと考えていた。おそらく皆よりずっと前から。当然助けたい気持ちがないわけじゃない。だって、殺せんせーには、この教室の皆にはずっと救われてきたしね。
僕は自分の成長を、学んできたことを、この思いを、全部暗殺に乗せて伝えたい。この教室ではそうするべきだと思ったから。この教室での成長を示すにはこうするのが一番だと思ったから。
だから、僕は殺せんせーを殺す。
「私は、この先も殺せんせーには、相談に乗ってほしいと思う。助けたいと思う理由はそれだけで充分だよ」
僕が赤色のチームを選んだ後、すぐさま有鬼子がやって来て青色のチームを選ぶ。
「たとえ風人君が相手になっても、私の心は揺らがない」
「僕も有希子が敵になっても容赦しないよ~」
そんな感じで早々に僕らの意見が分かれた。でも、僕も有希子もその目に迷いはない。
誰かによって決められたことでも押しつけられたことでもない。これは自分自身で決めたこと。そして誰が敵に回ってもこの思いを貫き通す覚悟はあった。
と、僕らに続くようにして皆が各々の思う方のチームへと入っていく。
結果、チーム分けはこうなった。
赤(殺す派)
カルマ。岡島。岡野。木村。菅谷。千葉。寺坂。中村。狭間。速水。三村。村松。吉田。風人。イトナ。
青(殺さない派)
磯貝。奥田。片岡。茅野。有希子。倉橋。渚。杉野。竹林。原。不破。前原。矢田。
中立
律。
あれから二つのチームに分かれた僕らE組。審判を務める烏間先生から改めて説明が入った。
お互いのチームの旗の距離は100m。烏間先生は中間地点で判定やゾンビ行為などを見張る審判。ただ、審判のため僕らがどこからどのように攻めようが知らないふりをするとのこと。要するにいくら戦力差があったりしようと先生はずっと中立でいてくれる。
後はこの超体操着に内臓通信機と目を保護する極薄バイザーが追加したから上手く使えとのことだった。
説明の後、両チームは作戦会議に入った。
「風人はてっきり向こうに行くと思ったんだけどね」
「あはは~まぁ、あれは渚の味方をしたと言うよりも、あの形での決着は誰も望んでないし、納得できないと思ったからね~」
ここは暗殺教室。ただの暴力で屈服させるなんてやり方がまかり通っていいはずがない。
「それにしても頭冷えた~カルマ?なんなら僕が指揮しようか~?」
「もう十分冷えた。俺が指揮を執る。それでいい?」
「まぁ、この面子ではお前が相応しいだろ」
「にしてもこっちがすごい有利じゃないか?」
「ああ、この戦いで厄介になってくる男がそこにいるからな」
そう言うと僕の方を見てくる一部の面々。あれ?どうしたの?
「予測不能かつ暗殺、戦闘どちらでも問題ないからね。あぁ、風人。お前には指示出さないから」
「何でさ!」
「どうせ、言うこと聞かないでしょ」
「チッチッチッ。僕だって成長したからね!きっとおそらく多分指示をしっかり聞くと思うよ!」
(((絶対聞くつもりがないだろこの野郎……)))
「風人のトリッキーさを生かすにはその都度その都度の指示は必要ないってね。ただし、二つだけ指示を出しておく」
「二つだけ?」
「一つ。神崎さんを狩れ。二つ。神崎さんが倒した数の分を風人も倒せ」
「ほうほう~」
…………なかなかの注文だ。まぁいいか。元々彼女だけはこの手で殺ろうと思ってたし。
「いいのかよ。そんな指示で……」
「わざわざそんなこと言う必要あったのか?」
「いいんだよ。コイツの思考を一番理解しているのは彼女。そして彼女の思考を一番理解しているのはコイツ。だからぶつけておけばいい……まぁ、最悪相打ちでもいいからよろしくね」
「はーい」
大分うちの彼女は警戒されてるなぁ……わざわざカルマが僕をぶつけると明言しているくらいだし。でもまぁ、向こうのチームは数も少ないしいろいろあるけど一切油断はできない。そもそもこのクラスで油断できそうな暗殺者はいない。皆一人一人武器を秘めているのだから。
僕も自分の武器を見る。ナイフが二本だけ。さてさて、これでどこまで殺れるかな?
「じゃあ、風人以外は初期配置伝えるからそのようにお願いねー」
そして、両チームが初期配置についた。
『よし、両チームスタンバイOKだな。では、クラス内暗殺サバイバル……開始!』
烏間先生の開始の合図。
パァンッ!パァンッ!
その瞬間に響いた二つの銃声。
そして次の瞬間。青チームの片岡と竹林の肩に赤色のインクが付着した。
『なっ……!』
開幕早々に脱落した二人は驚きを隠せない。
青チームの布陣をあらかじめ把握し、千葉と速水による超遠距離スナイプ。BB弾は50mも離れればブレ対象を大きく外すというのに、千葉に至っては100m以上離れた距離から正確にヒットさせてくる。E組のスナイパーコンビには流石としか言い様がない。
そんな感じで二人仕留めた赤チーム。
「流石だな千葉!もっと殺っちまえよ~俺がちゃんと守ってやるからよ!」
「……おう」
遠距離スナイプを決めた千葉。そしてそんな彼を護衛する岡島。
だが二人は気付いていなかった。すぐ背後に鬼が迫っていたことに。
ズドドドドドド!
銃の連射音が二人の近くから発せられる。
気付けば青色のインクがベッタリ付けられた千葉と岡島の姿が……
「嘘だろ……」
そして、笑顔で右手の人差し指についたインクを舐める鬼。次の瞬間には移動するために消えていた。
「完全に気付かなかった……いつの間に背後に……」
「忘れてた……神崎さんはオンライン戦場ゲームの達人だった。FPSゲームとかでも相当強いと有名になってる。敵とかスナイパーの隠れてそうな場所とかが全てわかるってことか……」
そのまま走って移動する有希子。そして隠れていた菅谷を補足し、仕留めることに成功する。
(スナイパーを一人仕留めたのは上々。大体の敵の位置も把握済み。……やっぱり一番危険なのは風人君か。…………彼だけが何処にいるかが分からない)
普段のゲームからも風人は神出鬼没。彼の動きは完全には読めない。だからこそ、
「ねぇ~有鬼子~近くにいるんでしょ~?」
彼の声が何の前触れもなく聞こえたことに驚きを隠せない。
走っていた有希子は咄嗟に木の陰に身を隠す。声も音も立てずに彼の様子を窺う。
「まぁ、いいやーどうせいるだろうしー」
ナイフを手の上でクルクルと回しながら言葉を発する風人。
そんな彼は少し開けた場所に堂々と立っていた。
(風人君は私に背を向けている……つまり、私が近くにいるとは思っても細かい場所までは――)
「分かってない。って考えてるのかな!」
次の瞬間。一切後ろを見ずにナイフを投げ付ける。
そのナイフは有希子の隠れていた木に当たった。
(…………っ!気付かれてる!?)
「あーそのままでいいや~ねぇ、有希子。君は僕を殺りたい。僕も君を殺りたい。だからさ――」
次の瞬間。有希子は隠れていた木から飛び出し、二丁の銃を構えて撃ちまくる。
「――本気で勝負しようよ」
ズドドドドド!
銃の乱射音が辺り一帯に響いた。