暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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激突の時間

 場所はリタイアした人たちが集う待機所スペース。

 そこに開幕早々に脱落した片岡と竹林の姿はあった。

 

「まさかすぐやられるなんて……」

「お疲れ様です二人とも。それもそのはずですよ。彼らは片岡さんの力を知っててやっている。竹林君も、何かしようとしていたのでしょう?」

「これで、敵陣にインクの雨を降らせようと思っていましたよ」

 

 このルールは相手チームのインクが付いたら負け。だから竹林の策は効果は絶大だっただろう。勿論、決まっていたらの話ではあるが。

 

「あそこでユキコとカゼトが出会ったわね。どちらが勝つのかしら?」

「さぁ。ただ……面白い戦いにはなるでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして場面は風人VS有希子に切り替わる。

 風人に向けて銃を乱射した有希子。だが、

 

「それぐらいで当たると思う~?」

 

 風人は全てを見切って躱していた。

 

(普通はそれで当たるんだよ……)

 

 有希子は半ば呆れる。

 

(でも予想の範囲内だ。やっぱりゲームとリアルは違う。ゲームではあんなことは起こるはずがない)

 

 細かく移動を繰り返し風人との距離を取る有希子。

 ただ、今更風人に対し常識が通用しないことくらいは知っている。故に驚きはなかった。

 

(風人君は本気で勝負しようと言った。なら、私も答えないと)

 

 ゆっくりと歩いて自身が投げたナイフを回収する風人に対して、すかさず背後から狙い撃つ。

 

(どうやって勝つ?風人君は動体視力、思考力はバケモノ級。その上スピードやパワーなどは私を凌駕する)

 

 風人は放たれたペイント弾を全て完璧に避ける。

 そしてゆっくりと歩き出す。

 それに対して再び銃を構え撃つ有希子。

 

(銃を撃ち続けても当たらないことは明白。近接戦闘に関しては分が悪い……ただ)

 

「このままではジリ貧だ。そうするしか勝ち筋はない。だから近接戦闘に切り替えるしかない」

「…………はぁ。全てお見通しなんだね」

 

 銃を一つ捨て置き、代わりにナイフを取り出す。ナイフとハンドガンを手にして風人の前に現れる。

 所持しているペイント弾に限りがある以上遠距離から攻め続けることはどのみち不可能だったのだ。

 

「言ったよ?僕は本気で勝負するって…………ぶっ殺す」

 

 次の瞬間。風人の目の色が変わる。そんな彼の殺気を当てられ、一瞬足がすくみそうになる有希子。

 そしてそんな彼女に急接近する風人。

 

「ぶっ殺すか…………いいよ。私も君を――ぶっ殺す」

 

 およそ付き合ってる二人とは思えない言葉の応酬。そして殺意の応酬。

 有希子はそんな風人に対し自身も接近してハンドガンを構える。そして銃を撃とうとして……

 

「遅い!」

 

 風人の蹴りによってハンドガンを弾かれる。そして流れるように回し蹴りを叩き込む。

 

「容赦しないね……!」

 

 回し蹴りを腕をクロスさせることでガードし、そのまま後ろに跳んで威力を殺すのと同時に距離を離す。

 

(ふぅーん……今のを対処してくるんだ……面白い……!)

(この目……この威力……凄い。本気になってくれている……!)

 

 風人は笑みを浮かべていた。目の前の獲物に対して、本気で喰らい殺さんばかりの獰猛な笑みを浮かべていた。

 有希子はそれに応えるように笑っていた。自分に本気になってくれていることに嬉しさと高揚感を感じていた。

 だからこそ二人は思った。

 

((絶対に殺してやる……!))

 

 距離が離れた有希子に対して追撃を仕掛ける風人。彼女に向かって一つ、上空に向かって一つナイフを投げ付ける風人。

 対して有希子は投げられたナイフをしゃがんで躱し、向かってくる風人に対し足払いを仕掛ける。

 それをジャンプして躱した風人。そのまま右足を振り上げて踵落としを喰らわせようとする。

 地面を転がることで踵落としを躱す有希子。転がりながらハンドガンが落ちている場所まで移動し、立ち上がりながら銃を放つ。

 上空に投げたナイフが落ちてきたところをキャッチし、迫るペイント弾を躱しながら投げつけたナイフを回収する。

 

 二人の距離がいったん離れる。

 再度激突する二人。風人が殴りかかれば有希子が空いた胴に蹴りを叩き込む。有希子が斬りかかれば、風人がカウンターを喰らわせようとする。

 互角と言ってもほとんど差し支えない攻防が繰り広げられる。だが身体能力やリアルでの戦闘経験からして風人が圧倒的に有利である。対して有希子は今までのゲームでの経験や風人の思考を読むことにより何とか喰らい付いているのだ。

 そして両者の距離が再度離れた。

 

(へぇ……流石だね。仕留めきるつもりだったのに……ははっ。僕の手持ちがナイフ二本しかないのが惜しいよ)

(踵落としとか殴りかかるとか……容赦ないなぁ……ほんと。でも、手加減されるよりは断然こっちの方がいい)

 

 有希子にとって幸いだったのは風人の手持ちがナイフ二本しかないところだろうか。そのおかげで風人の攻撃のパターンが激減し、ある程度対処しやすくなっている。

 

「ふぅ……もっと楽しみたいけど……そろそろ決めさせてもらうよ」

「へぇ……じゃあ、もっと楽しもうよ風人君。…………なんなら時間終了までさ」

 

(あくまでチーム戦なのが惜しい。この時間をずっと続けたいくらいだが……有希子にこれ以上時間をかけるのは戦略的にマズい)

(私という戦力で風人君を押さえられるなら圧倒的にプラスだ。もっとも、殺せるならそれに越したことはないのだけど)

 

 向き合った二人。両手にナイフを持った風人はゆっくりと歩き出す。その目はずっと有希子を見ていた。そして、左手に持っていたナイフをゆっくりと左側に放り投げる。

 

(ナイフを……!来た!風人君のミスディレクション!でも種さえ知っていれば……!?)

 

 左手のナイフに視線が誘導された有希子。だが、風人のこの技を知っている以上すぐさま注意を風人に切り替える。しかし……

 

(……っ!右手のナイフが消えている!?一体どういう……)

 

 しかし、その視線は風人に向かい、流れるように風人の右手に集中する。左手のナイフだけを落としたはずなのに何故か右手のナイフも消えているのだから。

 そして、その一瞬の停止が命取りだった。

 

「これで終わりだよ」

 

 動きや思考が固まった次の瞬間。風人は有希子に急接近。足払いを仕掛け押し倒す。

 抵抗しようとする有希子。だが彼の左手にナイフがあることに気付き思考と動きを止めてしまう。

 そして、その隙を突いた風人は左手で有希子の持つナイフを弾くと共に、持っていた自身のナイフで首を切り裂いた。

 

「…………え?」

 

 有希子の首筋に入る赤色のインク。だが彼女の中では状況整理が追いついてない。

 左手のナイフを捨て、気付けば右手のナイフが消え、そして左手にナイフが現れた。

 

「もう~なんて顔してるのさ~整理が追いついていなくてポカーンとしてるよ~」

 

 彼女を押し倒した状態でいつもの調子に戻る風人。さっきまでの殺意やら殺気やらはどこへ消えたのか。

 そして思考がまとまらない可愛い彼女のために風人はゆっくりと話し始めた。

 

「信じていたよ。有希子なら僕の捨てたナイフへの注意は一瞬で戻ることを。だから二段構え……ううん三段構えか。左手でナイフを捨てた一瞬後に右手のナイフを上に放り投げた。そして今度は右手に注目させることで動揺を誘い左手でナイフをキャッチ。最後に押し倒して反撃させないよう、左手のナイフに注目させた。状況を二転三転もさせて、有希子の思考を奪った」

 

 風人は確信していた。有希子ならばこう動くだろうと。彼女を信じ。先を読んで手を打っていた。

 

「……あーあ、完敗だったなぁ。やっぱり風人君には全然かなわ――」

 

 ――ないと続けようとした有希子の言葉は続かなかった。何故か?単純である。

 

 風人が有希子にキスをして唇を塞いだからである。

 

 そして数秒の後、顔を離して風人は伝える。

 

「有希子は強かったよ。本気でやってなかったら絶対に負けていた。だからさ……過ぎた謙遜はやめてよ。僕に対して劣等感を感じなくていいんだよ」

 

 そのまま有希子に抱き付く風人。

 さっきの攻防でもそうだ。本来なら視線誘導は一回で事足りる。なのに三回連続で使わなければ仕留められなかった。そこまでしないと仕留められなかった相手が弱いわけがない。

 

(風人君……)

 

 有希子は風人に対して劣等感を感じていたのは事実だ。死神の一件以来一回りも二回りも成長した彼に対し、自分はたいした成長もなく見合っていないと心の中でずっと思っていた。

 でも、本気で殺り合って、風人は有希子を認めていた。心の底から本気を出せる相手だと認めていた。

 

(バカだなぁ……私。勝手にそうやって思い込んでたなんて……)

 

 さっきの風人が話している時の辛そうな表情からしてもそうなのだと有希子は思う。

 風人は対等だと思ってるのに有希子自身が自分のことを下げて見ていた。

 

「ありがと……」

 

 風人は彼女のことを認めていた。

 有希子の心の中にあった重りが一つとれた気がした。

 

「…………そ、そろそろどいてくれるかな?流石に……その……恥ずかしいから…………」

 

 ただ、それとこれとは話が別なのだ。

 お忘れかもしれないが、現在、風人は有希子を押し倒した状態でさらに抱きついているのだ。近くに人が今はいなくても外では流石に恥ずかしいだろう。

 

「あはは~安心してよ。…………次はベッドで押し倒すからさ」

「…………っ!も、もう……そういうことを……!」

 

 顔を赤らめる有希子。当然だろう、外でそんな爆弾発言をされたのだから。

 

「じゃあね~また後でね~」

「うん……頑張ってね」

 

 そして有希子の上から飛び去り、彼自身のナイフを回収してそのまま駆けて行く風人。

 

 サバイバルバトル、風人VS有希子。

 勝者、風人。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 余談であるが一つ思い出してほしいことがある。

 今回、超体操着に追加性能として内蔵通信機が取り付けられた。

 当然、今回は赤チームは赤チームの、青チームは青チームの会話が聞こえるようになっている。

 二人は指示を聞いたり状況把握のために通信機をONにした状態でいるのだ。

 …………もうここまで言えば後は分かるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(((風人の野郎……!後でコロス)))

(((…………っ!)))

 

 一部を除く男性陣はその会話に嫉妬と怨嗟を。それ以外の大多数の面々は大胆な発言に頬を染める。

 有希子がそのことを知るまで後三分……。

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