暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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地味に日間ランキング……ギリギリ載ってたなぁ。すごい感謝です。
そして、本当に長く待たせていてすみません。


一変する時間

「な……何十万枚撮ったんだか……」

「世界30ヶ国を一日で……」

「しかも一瞬撮ってすぐに移動……」

「観光する暇もなかった」

 

 教室の至る所から荒い息遣いが聞こえる。まぁ、そんな頭のおかしな所業をした後なんだ。余程の体力バカか、疲れを感じないバカじゃない限り、普通倒れているに決まっているか。

 

「ちょ、風人君……さすがに先生疲れて……にゅや!?」

「はっはっはっ!ほらほらそれくらいの速さなら見抜けるよ~!」

 

 と、酸素ガス?を吸っている殺せんせーに手錠とナイフによる連続攻撃を叩き込む。

 

「な、何で君はそんなに元気なんですか……!」

「だって楽しいからね!ほらほらまだまだ行くよー!」

「にゅ、マジ、誰か、助け……!」

 

 全員が疲れてぶっ倒れている以上、僕を止めるものはなにもない。(鬼の)制約から解き放たれた僕は誰にも止められない。

 

「アイツの体力は底なしかよ……」

「もう驚いている気力もないわ……」

「か、神崎さん……ヘルプ……!」

「ごめんなさい……疲れて動けないです……」

「ふはははは!この僕を止められるものなら止めてみろ!」

「「「…………」」」

 

 聞こえるのは皆の荒い息遣いのみ。ふふん。勝ったなこれは。

 

「でも、何で卒アルごときにこんなに……」

「ヌルフフフ、それは楽しいからですよ。楽しいから手間暇をかけて、工夫して、持てる力の限り取り組めるんです。だからまずは自分が楽しむこと。皆さんもそういう場所を見つけてください」

「僕も今楽しいよ~!いつものスピードが出せない、遅いせんせーを追い詰めるの~!」

『確かに。殺せんせーのスピードはいつもの半分くらいでしょうか』

 

(((それでも十分速いけどな)))

 

「……先生。ちょっと、裏山に行ってきますね」

「待てぇ~!逃がすかぁ!」

 

 ということで裏山でチェイス開始。……あれ?そう言えば今日は元々進路面談の予定だったような……ま、いっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は風人君ですか」

「うん~」

 

 数日後。あの日はそもそも教室に帰ってきたのが夕暮れだったし、そこから面談をやる時間やごく僅かな人を残してやる気力もなかったため、面談が流れたのである。

 そんなこんなで、今日は進路相談final。言えた人から帰っていいということで、僕は割と早い段階で来た。まぁ、さっさと帰って行きたい場所あるし。

 

「さて、君のなりたいものは変わらずですか?」

「そーだよ。僕の意思は変わらないからね~」

「ヌルフフフ。入試の方も目標を達成しているようで何よりです」

「えっへん。でも、あくまで通過点。ここからが始まりだよ~」

「君の高校生活ですか……少しは落ち着いた生活を送ってくださいね?」

「……うーん……きっと多分善処すると思うからそう信じて!」

「……不安しかないですね……」

 

 明日は明日の風が吹く。高校生活がどうなるかは未来の自分次第だ。

 

「そうですね。君には一つだけアドバイスです」

「え?有鬼子を怒らせたときに上手く逃げる方法?」

「そこは怒らせないようにしてください!……前へと歩き続けてください」

「……?」

「今後の君の人生の中で、再び大切な人を失ってしまうことも、救えなくて後悔することもあるでしょう。でも、歩けなくなってはダメです。立ち止まってずっと囚われていては、また失うことになってしまう」

「……大丈夫だよ。確かに、僕はずっと立ち止まってしまっていた。でも、ここで皆から前へと歩き続ける力を貰った。心配しなくていいよ。動けなくなってしまう程の悲しみ、その中で藻掻く辛さ……そして、それでも前へと進むことの大切さ。……ここで学んだから大丈夫。僕はもう立ち止まらない。一歩ずつ何があっても前へと進む。だって、それが大切だと信じているから。それに、もし誰かが前の僕と同じ状況に陥っていたなら、今度は僕が力を授ける……何かまとまらないけど、なんとかしてみせるよ!」

「ヌルフフフ。それならいいです」

「あ、そうだ。せんせー。僕からも一つだけ……」

 

 僕はあることを言う。すると、せんせーは頷いてくれる。

 

「じゃ、僕はこれで~」

「気を付けて帰ってくださいね」

 

 見送るせんせーの顔は何処か笑っていた気がする。

 そして、僕は目的地に向かう……その途中で電話がかかってきた。

 

「もしもし~?」

『あ、お兄ちゃん~』

「涼香か~どうしたの?」

『いやぁ~雷蔵君と帰るんだけど暇でさぁー暇潰し?』

「そう?」

『そうそう。ということで少し話そうよ』

「へーい」

 

 といきなり言われても話題なんて思いつかないんだけど……うーん。あ、

 

「そう言えば涼香って高校どこ行くの?」

『あれ?言ってなかったっけ?風人や有希子ちゃんと同じだよ。ちなみに雷蔵君も』

「ほへぇ~」

『いやぁー試験会場では驚いたよ。何か大量の似た顔の人たちが二人を大声で応援しているんだもん。あ、決してそれを見て、二人の友達って思われたくないから見つからないようにしていたとかはないからね。決して違うようん』

「絶対それじゃん~」

 

 と言われたけど、逆の立場なら絶対に避けてるからなぁー……うん。あれは殺せんせーが悪い。

 

『あ、そうだった。前に言ったアレ。日付とか大丈夫?』

「うん。今のところ大丈夫だよ~」

『よかったぁ。それにしても、変わったねぇ~お兄ちゃんは』

「そう?」

『うんうん。去年までと大違い。この成長っぷりには感動を隠せない』

「ふふん。日々進化しているのだよ~」

『いいことだね~あ、雷蔵君来たから切るね~じゃ』

「うん。また今度~」

 

 ということで切れた電話。そっかぁ、同じ高校かぁ……偶然ってすごいなぁ……本当に偶然かは知らんけど。僕が何も情報を得ようとしなかっただけって説は少なからずあると思う。

 そんなこんなで、松方さんのところに行く。いやぁ……顔パスってやつ?働いている人たちに顔を覚えられているから楽に入れるね!

 

「あ!お兄さん!」

「やっほーあおいちゃん」

 

 色んな子がいるけど、ここで一番仲がいいのは相変わらずあおいちゃんだ。仲がいいのはいいことだよね。うんうん。

 

「あれ?この時期は大丈夫なの?」

「うん~一段落ついたからね。まぁ、卒業式とかあるから今度来るのは春休みかな?」

「そうなんだ……お兄さん卒業できるんだ」

「うんうん……ってそこなの心配!?僕はこう見えて優秀なんだよ!?」

「確かに。性格に反して優秀ですよね……でも、本当に優秀な人って自分から優秀とは言わないんじゃ……」

「うぐっ……」

 

 何だろう。彼女の言葉が心に突き刺さる。

 

「そう言えばお兄さん。私ね、来年からはしっかりと学校に行こうと思うの」

「おぉー」

「お兄さんを見ていたら学校生活も楽しそうって」

「そっか~よしよし」

「……お兄さんはこれからも会ってくれる?勉強とか色々と教えてもらいたいなーって」

「もちろん~」

「約束だよ?」

「じゃあ、僕からも。僕よりも楽しむんだよ?学校生活」

「???お兄さんを越えるって大変だと思うんだけど……?」

「あはは~案外そうでもないかもよ」

 

 その後は、他愛もない話をして、軽く勉強を教えてから施設を出て行く。今日はそのまま家に帰るだけだが……

 

「何だろう?」

 

 何かいつもと空気が違うように感じる。気のせいかな?

 

 

 

 

 

 そして、それが気のせいではないことがすぐに分かった。

 家の玄関のドアを開く直前、空から一筋の光が僕らの校舎のある方へと降り注ぐのが見える。

 玄関を開き、鞄を家の中に投げ捨て、屋根の上に登る。すると、僕らの校舎のある山の上を覆うようにして光のドームが形成された。

 何かある。何かが起きている。察すると同時に学校に行こうと思う僕に届いたのは、一通のメール。

 

「先生から……?」

 

 そのメールを開く。烏間先生から届いたのは、自宅待機命令。そして、暗殺のことを他言しないようにする箝口令が改めて敷かれた。

 

「風人?ただいまの前に鞄が飛んでくるって……」

 

 母さんが屋根の上に居る僕を見つけて注意してくる……が、

 

「ごめん。今から出かける」

 

 屋根から飛び降りて校舎の方へと走って行く。

 自宅待機命令?生憎、どう考えても何かとてつもないことが起きているのに、自宅で待つだなんて選択肢は僕にはない。

 

「風人君!」

「有鬼子!」

 

 すると、走ってくる有鬼子の姿が。おそらく他の皆も各々で動こうとしている。

 

「磯貝君から、一旦集まって情報共有したいって」

「分かった」

 

 ただ、バラバラで動いても意味はない。一旦集まるのは正しい判断だろう。

 とりあえず、集合場所に着くと、続々と集まってくるクラスメイト。

 聞こえてくる情報を統合すると、山に繋がる主要な道路は装甲車両が封鎖。光のドームを形成すべく、学校へとレーザーを発射している建物は戦車などの軍事兵器を用いて要塞化。その建物への100m以内の侵入を禁じられている。

 更には、殺せんせーや本体の律とも連絡はできず、あの山に繋がる通信や電源などは全てカットされてしまった。

 

「……要塞化した建物や山に誰にも近寄らせない……兵隊の数も一万を超える万全な体制……」

 

 明らかに一日や二日で計画、実現できる規模じゃない。全て前々から秘密裏に準備されていた。これが国規模での確実で最後の暗殺ってわけか。

 

『まもなく、政府からの緊急発表があるそうです!』

「律!発表の様子を映して」

『はい!』

 

 総理大臣からの発表。巨大光線と光のドームは、月を壊した元凶の怪物を殺すための兵器であること。その怪物を殺さないともうすぐ地球が滅んでしまうこと。また、怪物は政府を脅し、僕らを人質に教師になりすまして学校に潜伏していたこと。各国政府は怪物を暗殺する準備を進めていたこと。

 他にも各国の保身や思惑が混ざった声明。これは、世間に殺せんせーだけが悪者という印象を与えた。

 そして、とどめのレーザー発射日は3月12日。その日は地球が滅ぶかもしれない前日。

 

「…………っ!」

 

 この報道により、世間が騒然となっているのは目に浮かぶ。だが、そんなの関係ない。

 僕らは全員学校へ向けて走り出した。

 

 

 

 

 

「なんだ君たちは!?」

 

 しかし、行く手には警備の兵隊たち。

 

「生徒だよ!あそこの教室の!」

「バリアの中入れてくれよ!」

 

 こちらが通ろうとするのを力尽くで止めようとする。

 

「やめろ!生徒たちに手荒くするな!」

 

 そんな時、烏間先生が現れた。

 

「烏間先生!」

「あれは一体なんですか!?」

「それにあの声明。明らかに殺せんせーだけが悪いみたいじゃないですか?」

「俺すら直前まで聞かされてなかった。おそらく奴に勘づかれないようにするためだろう」

 

 なるほどね……徹底した情報管理ってわけか……烏間先生にさえ流さないなんて……

 

「あの声明は君たちのためだ。脅されたと言えば余計な詮索をされずに済む。全員揃っているならちょうどいい。口裏を合わせるんだ!」

「いくら烏間先生の言うことでも、それは納得できないですよ」

「そうです!殺せんせーと会わせてください!」

「ダメだ。人質に取られてしまえば状況が悪化する」

 

 人質に?本当に声明で流れていたようなせんせーだったらするだろう。

 でも、あの殺せんせーが?僕らが関わってきたあのせんせーが、自分の保身のために僕らを人質にするわけがない。

 

「……っ!」

 

 そう思っていると、人の大群が押し寄せてくる。カメラやマイクの機材を持った集団……マスコミだろうか。

 

「くっ……!」

 

 フラッシュに質問の嵐が僕らを襲う中、現状が非常にマズいことを認識する。

 マスコミ側としては、怪物に支配されてきた生徒たちなんて言うスクープの種。逃すわけがない。それに、状況が状況である以上、彼らもせんせーを始めとした情報が欲しいのだろう。

 僕らの目の前には警備員。後ろには記者などの報道陣。強引に突破もできないし、ここに居てもさらされるだけ。その上、警備員やマスコミはこの騒ぎを聞きつけてドンドン増えていく。

 

「皆!一旦帰ろう!こんな状況じゃ何を言っても聞いてくれない!」

 

 磯貝君の提案で一斉に走り出す僕ら。警備員側は持ち場から動くことはできず、マスコミ側は、鍛え抜かれた僕らに追いつくことなどできなかった。

 双方を振り切った僕ら。話し合い、手分けしてバリアの周囲や発生装置を偵察に行くことにする。

 

「やっぱり、主要な道は全滅だね」

「山にすら入らせる気がないね~」

「バリアの発生装置も警備が分厚い」

「全員で掛かっても建物一つ攻略することができる確率はかなり低い。それが複数……明らかにバリアの解除は無理ゲーだね」

 

 有鬼子と偵察に行くが、どこもかしこも兵隊に武装車両に。いや、それだけじゃないか。マスコミや野次馬などの一般人も僕らからすれば敵に見えてしまう。四面楚歌、八方塞がりってやつだろうか。

 

「たった一日でここまで変わるなんて……」

「一日というか、ここ数時間で、だよ」

 

 とてもじゃないが昨日までの景色とは大違いだ。

 

「そろそろ時間だね」

「そうだね。戻ろっか」

 

 戻ると、他の皆はすでに集まっていた。やはりというか、包囲網は万全。更に明日以降は増援が来る始末。

 

「強行突破でしょ。今夜のうちでも」

「……そうだな」

「明日以降なんて悠長なこと言ってられな……」

 

 次の瞬間。僕らの近くを数台の車が通った。

 ……そして、車の通った後には、誰も居なくなっていた。

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