暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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逃走の時間

 いきなり、目隠しと手錠のようなもので拘束され、何処かに連れ去られた私たち。

 

「……ここは?」

 

 目隠しが外され、周りを見ると、同じく拘束されているクラスメート。そして、黒い服を着た外国人たち……

 

「今作戦の司令本部、防衛省の施設をお借りしている」

 

 眼鏡を掛けた、如何にもこの中で一番偉いって思われる人が答える。

 

「君たちはここで、暗殺の完了まで我々の保護下に置かれる事になる。親御さんにも連絡済みだから安心してくれたまえ」

 

 ……保護と言っているけど、私たちからすれば監禁に等しい。要するに、邪魔をしてきそうな私たちを、作戦が終わるまでここに置いておこうと…………あれ?

 

「……足りない」

「え?」

 

 こういう時に真っ先におかしなこ――コホン。反論とか色々と言いそうな彼が居ない。

 

「あぁ、よく気付いたね。まさか、あの時、一人取り逃がす……いいや、我々の捕獲を避けるものが居るのは予想外でね」

「まさか……!」

「和光風人君だったかな。我々の捕獲を唯一逃れた者。あの動きと判断力。間違いなく普段から追っ手に追われ、逃げ慣れている証拠……やれやれ、まさか逃走の手練れが居たとは。手間を増やしてくれる」

「「「…………」」」

 

 一瞬、クラスメートの視線が私の方を向いた気がした。

 そ、そんなことはないはずなんだけどな……風人君を()()()()()()()()()追いかけて捕まえて調きょ……間違えました。お説教しているのは週に10回くらいだし……最近は前よりこれでも減った方だし……

 

「だが、彼はこちらの手の中と言えよう。彼の捕獲に既にいくつか部隊も動いている。それに、街中のカメラによる監視。更には彼のスマホのGPSを用いて居場所特定……捕まるのも時間の問題と言えよう」

 

 たった一人の中学生を捕まえるためだけに何て労力……でも、こんなことされたらすぐに……

 

「こちらA班!見失いました!」

「こちらB班!完全に撒かれました!」

「こちら監視班!一切カメラに姿が映りません!」

「大変です!何故か彼のスマホの反応が至る所に……!」

「「「…………」」」

 

 謝るべきではないことは分かっている。この状況で、風人君が捕まらない方がよいことも分かっている。……それでも、ごめんなさい。うちのバカな彼氏が……

 

「…………ま、まぁ、所詮はただの中学生。その内ボロを出す」

「そ、そんなことより!殺せんせーを殺すのを待ってください!」

「そうです!爆発の確率は1%以下なんですよ!?」

「殺す理由なんてないじゃないですか!」

「はぁ……子どもには分からないだろう。いいか?1%でも100%でも世論は殺せと言う」

「な、何でだよ」

「大衆はね。一度恐怖に火が付けばもう理屈なんて通用しない。0%にならない限り、恐れて騒ぎ続ける」

「「「…………」」」

「それに1%という数字はね。地球というチップを賭けるには重すぎるんだよ」

 

 …………この人の言いたいことは分かる……確かに、1%……でも、されど1%なんだ。1%を引けば……地球は……私たちは。でも……そうだとしても、

 

「しかも奴の前世は残虐な殺し屋……生かしておけば何を起こすか分からない。要するに、ヤツが死ぬのは自業自得というこ――」

 

 グシャッ!

 

 次の瞬間。寺坂君の足が、偉そうに喋っていた男の人の顔に刺さる。

 

「あのタコを正論で語るんじゃねぇ!」

 

 そして、私たちの言いたいことを思い切り言ってくれた。

 

「そもそも誰だテメェ!名前も知らねぇモブの分際で!」

 

 ……この場に風人君が居なくて本当によかった。絶対にややこしくなる。

 

「失敬な。私の名前は――」

「どうやら、完全に洗脳されているようだ……あの怪物に」

 

 蹴られた人に代わって前に出た男の人。この人……恐ろしく強い。

 

「連れていけ」

「はい」

「私はここで失礼する。君たちのような輩が、何かトラブルを起こさないように見張るのが仕事でね。ああ、安心したまえ。直に君たちの最後の仲間も保護されるだろう」

 

 そう言って去って行く……風人君。あの人は……ううん。あなたの敵は……相当ヤバい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し時間は戻って、何台かの車が過ぎた後……

 

「あっぶな……」

 

 僕は、近くの陰に身を潜めていた。

 車が僕らの横を通る瞬間にドアが開いて、いきなり捕獲されかけるとは……いやはや。それにしても、普段から有鬼子から逃げて来て身に付いた捕獲者の気配を感知する能力……ここに来て役に立つとは思わなかった。まぁ、それを持ってしても有鬼子には捕まるんだけどね。

 

「ただ、僕以外捕まっちゃったか……」

 

 流石に自分一人が逃れるので精一杯。捕らえようとする縄の数々を避け、一瞬車の上に乗ったり、色々と動くことで捕らえさせない……うん。流石に仲間(クラスメート)を気遣う余裕なんてなかった。

 

「……っ!あれは……」

 

 多分、僕を捕まえるためだろうか。さっきの奴らかは知らないが、何人かの集団が僕らを捕まえた場所に集まっている。

 

「どうする……?」

 

 クラスメイトを捕らえたあの手際……間違いなく素人じゃない。完全にプロのそれ。つまり、捕らえようとしたのは国から派遣されたヤツら?確かに、監視カメラとか解析されれば、僕らが情報を集めたりと怪しい行動を起こしているのはすぐに分かるだろう。

 でも、それにしてはあまりに捕らえる判断が早すぎないか?万全を期す……でも、国からすれば僕らなんて30人くらいの中学生集団。放置していても……

 

「いや、最初からか……」

 

 僕らがこんな作戦をいきなり実行されれば、何かしらのアクションを起こすことは容易に想像が付く。つまり、僕らが動いたら捕まえる……みたいなプランを先んじて考え、共有しておいたのだろう。

 

『居たぞ』

『ああ』

 

 ライトが当てられる。見つかるのが思いの外早かった。……いや、待て。流石に早すぎる。気配も消していたし、周りは暗闇……普通はこんなに早く見つからない。

 そうだとすれば、何か見つけたトリック……ああ、なるほど。

 

「律。もしかして、特定されてる?」

『すみません!頑張って抵抗しているんですが……!』

「この声は盗られてる?」

『まだ、このスマホの位置を特定されているだけです……』

 

 いや、それだけでもヤバいっての。まるで、ヤンデレのストーカーみたいだね。

 まぁ、冗談は置いておいて、ハッキング……大体、彼女と(地獄の)かくれんぼをして見つかるときは、本体の律を経由してスマホで位置を特定されているとき。なるほど……本体の律を使わず、モバイル律がやられるってことは……

 

「やっぱり相手がヤバいなぁ……律。座標ズレを起こすとか、複数の機器に僕のGPS情報を偽装できる?」

『や、やってみます!』

 

 僕は僕で、なるべく普通のルートを通る。途中から電源を落とすことも必要だけど……まだ早い。流石に何にも情報を得られていないのに、それは危険すぎる。

 

「こりゃあ長期戦だなぁ……」

 

 流石に長期戦になると……野宿も覚悟か。だとすれば、生きるために最低限の物資が欲しい……流石にこの服装、装備だと持って半日……仕方ない。イチかバチか、家に帰るか。

 

「律。出来るだけ多くのダミーをお願い。危険だけど、一旦家に帰る」

『了解です』

 

 とまぁ、家の付近の屋上に何とか来たけど……

 

「いやぁ……やっぱり厳重警戒かぁ」

 

 家の外には見張りが沢山。家に帰ることは読まれている……いや、家に帰る可能性があるからこれだけの見張り……だけど、仕方ない。この装備だと動きが制限される以上必要なリスクだ。

 

「二階からただいま~」

 

 まぁ、まさか相手も二階から家に帰る中学生(バカ)が居るとは思わず、下しか警戒していないから帰宅(侵入)は難しくなかった。

 

「とりあえず、この体操服に着替えるか」

 

 ぶっちゃけ、これがあれば最悪戦える。食料とか……いや、今はいったん考えないでおくか。

 

 ガチャ

 

「…………っ!」

 

 着替え終わったタイミングで扉が開く。そのことに驚きつつも、臨戦態勢に入ることに。そこに居るのは母親だった。

 

「全く、玄関から帰らないバカ息子が……」

「母さん……」

 

 マジかこの人。音を立てずに静かに帰宅したのにバレたんだけど……?

 

「今、防衛省の方たちから、あなたを保護するって言われたわ。渦中にあるあなたたちの安全と平穏のためにね。……ただ、あなたは断ったらしいわね?全く、そのせいであなたが家に帰ってきたら教えてくれだの、家の周りに見張りを置くだの、息子さんを説得してくれだの……はぁ。とんでもないことに巻き込まれたわ」

「…………っ!」

 

 なるほどね……だから僕らを捕らえることができたんだ。親たちに、国が保護していると説明すれば、最もらしい理由がある以上、反論や反発する親は少ない……いや。そもそも、国という強大な存在がバックに居れば、すぐに納得してしまうか。

 だが、この状況だと非常にマズい。……ここで差し出されたり、報告されたら終わり……。

 

「風人。答えなさい」

 

 何時になく鋭く感じるその目。その目はまるで僕のことを見極めているような、見定めているような目だった。

 

「何であなたはここまでしているの?何であなたはここまでして逃げているの?」

「……殺せんせーともう一度会うためだよ。このまませんせーと別れるなんて嫌だ。相手が国であっても、この答えは変えられない。もう一度会う。会ってどうするかはまだ何にもわかんないけど、そのためには捕まっちゃダメな気がする……だから……!」

「……そう」

 

 大声で反論したらここに居ることがバレてしまう。だから声は抑えたけど……これで伝わったかは分からない。いざとなれば……

 

「…………分かったわ。気をつけて行きなさい」

「……え?」

「あなたの覚悟は伝わったわ」

「いいの……?」

「バカね……いい?相手が防衛省だろうが、何だろうが……自分の息子を差し出せって言われて、素直に差し出せるわけないっての」

「…………!」

「それに、あなたが自分の意志を持って断っているなら尚更……ね?」

 

 この人が……

 

「父さんも同じよ。あなたのやりたいことなんでしょ?なら、全力でやりなさい」

 

 いや、この人たちが僕の両親でよかった。ちょっと恥ずかしいけど、初めてそう思えた。

 

「ただし。すべて終わったら、絶対に帰ってきなさい。今のあなたの帰る場所はここよ」

「……うん。じゃあ、いってきます!」

「いってらっしゃい」

 

 そう言って窓から跳ぶ。その足は普段より軽く感じた。

 レーザー発射、最終暗殺まで後……

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