暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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準備の時間

 どうも和光風人です。

 あれから次の日の朝になりました。

 ご存じの通り、昨日から逃亡生活を開始しました。

 さて、そんな僕は今、どこにいるでしょうか?

 

「和光風人君」

「り、りじちょー……!」

 

 正解は、理事長……つまり浅野君の家でした。え?どうしてこうなったんだっけ?

 

 

 

 

 

 というわけで、あの後のことを思い出す。

 とりあえず、昨日、家の二階の窓から飛び出た僕。まぁ、案の定というか何というか、まず監視カメラのあるところに居ると、すぐに捕まえる人たちが飛んでくるため、そういうところに居られない。住宅街……と思ったが、有鬼子の家には見張りが少し残っていたし、あろうことか隣町まで行って、涼香、雷蔵、そして千影の家付近まで行ったけど見張りがいるという事態に。

 やはり……というか、僕が個人的に頼れそうな人の家は全滅していたのだ。監視カメラのあるところもダメということから、残る居場所が限られるなぁと。そう思っていた矢先に一通のメールが来たのだ。差出人は不明。送られてきたのは、暗号化されていたけど、とある住所。そして、指示には、スマホの電源を落とし、追っ手を撒いてから来いと。

 罠……そう考えたが、今の僕にはこの誘いを乗るしかない。考えたけど、流石に警戒が厳しすぎる。身の回りのすべてが敵。人はもちろん、施設なんかもアウト。明日の食事もままならない上、日が昇れば敵は増える。その上、スマホは充電が切れれば使えなくなり、時間が経てば僕自身何もできない状況に陥る。

 ……罠覚悟で行くしかない。そう決意し、警戒しつつも指示に従い、指定された場所に行くと、

 

「和光風人君」

 

 車に乗った理事長が居た。

 相手が理事長……まぁ、担任がダメで、親も説得に応じなかった以上、この人を差し向けるには充分な理由がある。非行に走った(?)生徒の説得……とでも言えば綺麗だが、この人は敵の可能性も充分ある。だって、合理主義者というか……うん。逃がすメリットがない。

 

「私を信じるなら乗りなさい。あなたを保護します」

「…………」

 

 ここで逃げるという選択は大いにある……が、逃げたところどうするって話だ。罠であるなら既に周りには捜索部隊が目を光らせているだろう。それに、この人が本気で僕を捕らえるつもりなら、確実な成功のため保険に保険を重ねているはず。

 何が言いたいかと言うと、この人が敵なら、僕がここに来た時点で詰んでいる。だから、

 

「乗ります」

「よろしい。身をかがめていなさい」

 

 後部座席を開けてくれたが、誰かが居るわけでもない。

 静かに走り出す車。言われたように、身体を低くして外から見えないようにする。

 

「……着きました。降りて結構です」

 

 しばらくすると車が止まる。そこは……

 

「家?」

「私の家です。こちらへどうぞ」

 

 そう言って中に入っていく…………ん?流石に他の皆がここに居るわけないよね?

 

「言ったでしょう?保護すると」

「……本当だったんだ……」

「えぇ。こちらへ」

 

 通されたリビングには……

 

「か、烏間先生!?」

「…………」

 

 頭を抱えていた先生がいた。あれ?防衛省が敵ってことは……この人も敵じゃね?

 

「まぁ、君が予想を超えてくることをするのは、思い知らされていたが……まさか、あの捕獲から逃れるとは……」

「あはは……何か、すみません」

「いや、いい。こっちも君たちを監禁までするとは読めなかった。もしそうなら、もっと対策も出来たが……」

「監禁……やっぱりですか」

「ああ。作戦に支障が出る……君たちを捕らえた集団のリーダー、伝説の傭兵のホウジョウがそう言っていた」

 

 伝説の傭兵って……ああ、何か……うん。名前だけで勝てる気しないや。

 

「捕まった彼らの安全は保障する。君は……大人しく捕まる気はないようだな」

「そうですよ~」

「ただ、君ひとりでは無理だ。クラスの仲間を解放するにも、奴に会いに行くのも」

「……っ!そうだけど……でも……!」

「君はここで数日かくまってもらう。それが君の任務だ」

「でも、数日だなんて言ってたら……!」

「遅くはない。君の仲間たちを信じろ」

「…………分かりました」

「何かあれば秘密裏に伝える……浅野理事長。急な頼みで申し訳ないのですが……」

「構いませんよ。彼も私の生徒の一人ですから。生徒の安全を保障するのは私たちの仕事ですよ」

「ありがとうございます。では、これで」

 

 そう言って家から出て行く烏間先生。

 

「詳しい話は明日以降。今日はもう夜も遅い。風呂に入って寝なさい」

「……はーい」

 

 

 

 

 

 あぁそうか。そんなことがあったな……

 

「……で、何で貴様がここに居る……!」

「あ、浅野君。えっと……遊びに来たよ~」

「違うだろ!何でこんな状況で、お前がここに居る!」

「え?……あ、学校って臨時休校だよね?もしかして、通常通りある?」

「学校は立ち入り出来なくなっている……じゃない!明らかにお前を含めたE組は、この事態の渦中にあるだろ!なぜそんなヤツがここに居ると……!」

「まぁまぁ落ち着いてよ~。ほら、紅茶でも飲む?」

「明らかにおかしいだろう!?」

「あ、しばらくここでかくまってもらうからよろしくね~」

「どういうことか説明しろって言ってるんだ!」

「友達の家にお泊まり会~いぇい」

「さっき、かくまってもらうって言ってただろうが……!」

「じゃあ、私はマスコミの会見に行ってくる」

「あ、いってら~りじちょー。気をつけてね~」

「ちょっ、今この男と残さないで下さ……」

 

 浅野君の声はむなしくも、理事長には届かなかった。

 

「……どんまい」

「うるさい……はぁ。貴様には問いたいことが山のようにある」

「そうだよね……あ、僕の名前は和光風人だよ~よろしく!」

「知ってるわ!」

 

 何だか大変そうだなぁ……まぁ、仕方ないか。世間はこんな状況だし。

 ところで、皆どうしているんだろう……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私たちは保護という名の、囚人のような扱いを受けていた。最低限の食事などが確保されているだけで、私服は没収。クラスの全員が一つの大きな部屋に入れさせられ、重々しい扉が出口を塞ぐ。この部屋から出ることはできない上に監視カメラで監視されている……本当に囚人に近いそれだ。

 さらに映っているモニターからは、流れているのはニュースばかり。専門家の意見や、街頭でのインタビューの様子が流れるも、どれも殺せんせーを非難し、私たちを憐れむものばかり。ただ、事情も知らないような人たちに可哀想に思われる……それが苦痛に思える。

 

「でもよかったね」

 

 そんな中、茅野さんが話し掛けてくる。

 

「うん……無事そうでよかった」

 

 少し前に烏間先生がやって来て、表面上は私たちを諭すように、裏では私たちに情報を渡してくれた。

 当然、殺せんせーの警備に関することもだが、風人君の無事も分かった。一応、これ以上の無茶をしないように釘を刺しておいたらしいけど……

 

「まぁ、大丈夫だよね……」

 

 流石に一人で何とかしようとはしてないようでよかった。……それにしても、よく逃げられたなぁ……全く、無茶するんだから。

 言葉の裏を読むのだったら、風人君にも情報は共有されている。寧ろ、私たちに比べれば、遙かに情報を共有しやすい位置にある。

 脱出のチャンスは必ず作ってくれる……だから、私たちは、殺せんせーに会うために、ここから出られたときの為に作戦を立てることにする。一筋縄ではいかないことは承知の上。だから……

 

「必ず、全員で……」

 

 何処かにいるであろう彼を想いながら私は、今、やれることをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、和光風人君。君には授業をします」

 

 その日の夜。僕の前にはりじちょーがいた。昼間は浅野君と遊ぶ……もとい勉強で対決をしながら、会話をしていた。向こうから探りを入れてきたけど、E組の根幹に関わるようなことは全部ごまかした。いやぁ、大変だったね。

 

「どうにも、ああ言うマスコミばかりを相手にすると疲れてね……私も人間だ。だから、ストレスなどを発散したくなるんだよ」

「…………」

 

 まず思ったこと。それ、授業じゃなくね?

 

「それに身体を動かさなければ鈍ってしまうんだよ。この歳になるとね」

 

 ちなみに、昼間のうちに僕の服や手錠などの諸々がここに届けられた。しばらくは、ここに住めるね。やったね。

 

「君の得意な戦術は騙し討ち……確かに有効だ。普段の生活においても、真正面から殴り合う機会なんて滅多にない。だから、君にはこの数日、一つの課題を与える。……私にこのナイフで一撃当ててみなさい」

「…………!」

 

 そう言って取り出したのは対殺せんせー用ナイフ。それを僕の方に投げてくる。

 

「もちろんバカみたいに正面から向かってきてもいいですよ。ただ、当てられるとは思えないのでやめた方が賢明です」

 

 それを受け取りつつ、イメージしてみる。この人に正面から堂々と……なるほど。そんな愚直な殺り方で殺れるほど僕は強くなんてない。

 

「縛りを設けよう。君が攻撃に失敗すると補習課題を贈呈。また、成功するまで一日経つごとに補習課題を贈呈。この補習課題の提出がない限り、次の攻撃を仕掛けることは出来ない」

「…………」

 

 ……え?めちゃくちゃ嫌なんですけど。補習課題?りじちょーの出す?マジでやりたくないんですけど……?

 

「ちなみに私以外にこのことをバレると失敗。また、君が出たいと思っている時までに一度も当てられなくても失敗。…………君はここから出られないよ」

「…………はい?」

「もちろん、一生とは言わないけどね。ただ、君の担任と会うことはないだろう。……クリアしないと出られない。君のことだ。ゲームみたいで燃えるだろう?」

 

 おっと、僕はどうやら絶体絶命のピンチにあるようだ。

 

「代わりに君の生活と安全は保障しよう」

 

 なるほどなぁ。安全は保障されたかわりに、うかうか遊んでいられないらしい。

 

「ちなみに拒否権はないよ。さぁ、ゲームを始めよう。和光風人君?」

 

 りじちょーを敵に回す……なるほど。まさか、この人がここで敵に回るとは……!

 

「後悔しないでくださいね~!」

 

 理事長のことだ。たとえ、僕が失敗し続けて、時間切れになりそうでも、絶対に手を抜いてこない。このゲーム……いや、理事長からの特別試練というべきか……絶対にクリアする。

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