暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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未来の時間

 早朝。皆が起きるより早く目が醒めた。

 眠気覚ましに校舎の外に……そこはまだ暗かった。

 

「んー……!」

 

 土手のところで寝そべる。

 あの後、殺せんせーの面影を求め、涙ながら教室に戻った僕たち。

 待っていたのは全員分の卒業証書、卒業アルバム、そしてそれぞれへのアドバイスブックだった。

 いつの間にかレーザーは放たれたらしいが気付かず、現場検証部隊が来たらしいが烏間先生が外で相手してくれた。教室に、僕らだけにする配慮だろう。

 過去最大級の厚さを誇ったアドバイスブック。というか、見たことないレベルの厚さの本。読んでいるうちに気付けば涙は止まり、というか、アドバイスの内容が無茶苦茶細かすぎることにうんざりしてきて、寝落ちしてました。

 

「……ん?おはよー」

 

 すると、寝そべっていると僕を見下ろしている人が現れる。

 

「うん。おはよ」

 

 有希子である。まだ日が差していないのに早起きだなぁ……人のこと言えないけど。

 

「隣、いい?」

「うん~」

 

 静かに腰掛ける有希子。ただ、僕は身体を起こす気はなかった。

 

「思ったより平気なんだね、風人君は」

「ほへ?」

「ほら、千影さんの時は一週間くらい塞ぎ込んでいたんでしょ?」

「あはは~……まぁ、約束したからね。せんせーと」

「約束?」

「前へと歩き続ける。大切な恩師を失った……でも、僕はそこで立ち止まっちゃいけない。せんせーはそれを望んでいないからね~だから」

 

 よっと、と身体を起こして僕は立ち上がる。

 

「失った哀しみもある。それは間違いないよ。僕はそれを抱えて前へと行く。だって、せんせーと過ごしたこの時間はずっとここにあるんだからさ」

「ふふっ……なんだ。よかった……風人君がくよくよして沈んでいたら……」

「背中を押すとか?ふふふ、僕も成長しているんだよ~」

「……背中を蹴り飛ばしていたところだったよ」

「バイオレンス!?それは流石に酷くない!?」

「静かにだよ?皆、まだ寝ているから」

 

 何だろう。この彼女は相変わらずというか……うん。今度、有希子の制御方法とかアドバイスされていないか読んでおこう。あんだけ分厚くて細かかったんだ。きっと何処かに載っているはず(ちなみに載っていません)。

 

「綺麗な朝日だね……」

「うん……でも、有希子の方が綺麗だよ」

「ふふっ、いつからそんなうまいことが言えるようになったの?」

「最初からだよ~……あ、嘘です。多分つい最近です」

「ありがとね。それと、これからもよろしくね」

「うん~こちらこそよろしく」

 

 近くでは早咲きの桜が揺れていた。

 僕らは他の皆が起きるまで、その桜を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君たちにはこれからも注目されて大変だったり、こちらから箝口令をしかせてもらうこともあるだろう。君たちのことはできる限り守るが……俺から先に謝らせてくれ」

 

 烏間先生が頭を下げる。

 

「平気ッスよ。俺たちも平穏に収まるように努力するからさ」

「烏間先生を困らせたくないしね」

「大船に乗ったつもりでいてよ~」

「いや、風人の船は泥船でしょ」

「風人君は何もしない方がいいでしょ」

「うんうん」

「何でさ!」

 

 いくら何でも、問題は起こさないっての!

 

「代わりに、今日の椚ヶ丘の卒業式に出させてください。本校舎の皆との戦ってきた日々も、大切な思い出ですので」

「……ああ。手配しよう」

 

 その言葉を聞いて安心した。

 

「全員起立!」

 

 磯貝君の合図で立つ。そして、

 

「「「烏間先生、ビッチ先生。本当に色々教えて頂き、ありがとうございました!」」」

 

 声を揃えて感謝を述べ、礼をする。そして、身体を起こすと卒業式に向けてわいわいと話をする。

 

「で?卒業式ってどこでやるの?」

「市民会館だって」

「ほへぇ~……何処?」

「いい?風人君。私たちに付いてくるんだよ?」

「迷子扱い!?僕はしっかりと一人でも行けるから!」

「今、何処って言ったじゃん……それより、制服取ってきてもらわないと」

「あ、そーだった~」

 

 ということで、制服を取ってきてもらい、着替えて市民会館へ。

 

 

 

 

 

 始まった卒業式。特に問題はなく、順調に行われていた。

 

「和光風人」

「はい」

 

 呼ばれたので壇上まで上がっていく。

 

「卒業おめでとう。しっかりと約束を守ってくれて何よりです」

「浅野理事長。今までありがとうございました」

「これからも精進してください」

「はい!」

 

 理事長が証書を渡してくれる。

 最初会ったときとは違い、この人からは温かさを感じた。

 きっと、この一年で理事長も理事長の中で変化したんだろう。そう思うと少しだけ嬉しかった。

 

 

 

 

 

「卒業おめでとう。風人」

「母さん……!」

「ほら、父さんも」

「苦手なんだよ……でもまぁ、おめでとう」

「父さん……二人ともありがとね!やりたいことを応援してくれて!」

「「まさかウチの息子から感謝の言葉が出るなんて……!」」

「酷くない!?僕だって感謝する時はするよ!?」

「ほら、行きなさい。皆のところへ」

「また家でな」

「うん!」

 

 僕は証書片手に皆のところに行く。

 

「……いつの間にか、あんなに大きくなったのね」

「……そうだな。きっと、想像できないようなことを乗り越えたんだろうね」

 

 皆も一言二言家族と話すと自然に集まっていた。

 

「風人君……本当に卒業できたの?」

「実は風人君のだけ留年通知書とかじゃない?」

「何で僕は卒業を心配されてるの!?」

 

 ちなみに、何故か僕は卒業を心配されてました。解せぬ。

 

『卒業式が終わったみたいだ!』

『インタビューだ!』

 

 すると、カメラとマイクを持った人たちが乱入してくる。……えぇー、ここでもマスコミなの?

 

「皆早く駐車場へ!バスを待機させてある!」

 

 と、マスコミの波に呑まれながら烏間先生が言うけど……駐車場って、このマスコミ集団を越えた先じゃ……と、考えている間にもマスコミからの質問殺到、フラッシュで眩しい。

 ……流石に鬱陶しいし、強力な殺気を当てたら黙るかな……?そう思った矢先、僕らE組とマスコミの間に強引に割って入る人たちが。そして、僕らの頭の上には椚ヶ丘学園の旗が……

 

「浅野君~!」

「安心しろ。僕らがお前たちの道を作る」

「ひゅーひゅーかっこいいー」

 

 先頭には浅野君。周りにはA組の皆が。有鬼子に言い寄ろうとしたごえーけつの……なんとかって人は、有鬼子が笑顔でなんか言ったらおとなしくなってた。何言ったんだろう?

 

「……はぁ。君たちは仮にも同じ学校で学んだ生徒。見捨てれば支配者の恥になる」

 

 何というか……変わらないなぁ。

 

「赤羽。君だけはここに残るそうだな。ほとぼりが冷めた頃にたっぷりと吊し上げて吐いてもらう。そこの和光とかいうバカは一切吐かなかったからな」

「へぇー風人って浅野クンのところにいたんだ」

「ぴゅーぴゅー」

 

 というか、今気付いた。カルマが制服を着ている……凄いレアな光景だ。

 

「……和光。次はキサマに勝つ。首洗って待っておけ」

「じゃあ、しっかりお風呂に入っておくね~」

「……どこまでも貴様は……!」

「……じゃあね浅野君。楽しみにしてるから!」

「ふん」

 

 そして、バスに乗り込む僕ら。

 僕らを乗せたバスは静かに走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこからは色々とあった。三百億の賞金は速やかに支払われた。アドバイスブックを参考に学費と将来の一人暮らしの頭金ぐらいを頂いて……色んなところに寄付。ちょっと大きな買い物をして、残りは国に返した。

 

「ふぅー……と」

「綺麗になったね」

 

 3月のある日。僕と涼香は千影のもとを訪れた。雷蔵と有希子も居るけど、二人には少ししたところで待ってもらっている。

 

「よし、いこっか」

「そうだね」

 

 卒業と進学の報告をしにやって来た僕たち。お墓の掃除をして、近況報告をした。と言っても口にはあまり出せないことばかりだから静かにだけど。

 

「そう言えば、何か言ってなかった?」

「ん~?」

「せんせーがどうとか」

「あ~……うーん。内緒だね」

「えぇーお兄ちゃん秘密が多すぎだよ……ただえさえ、今回の騒動のこと全然聞けてないのにー!」

「あはは、まぁ、後で話せるところは話すよ」

 

 殺せんせーとの最後の進路面談の時、終わりがけにお願いしたこと。

 

 

 

 

 

 もしせんせーの暗殺に成功して、もしあの世で千影に会えたら……色々と教えてあげて。

 そして、僕らを導いたように……志半ばで死んだ彼女を導いて。努力家で生真面目だから、きっと、僕よりは扱いやすいよ。

 お願いします。これはせんせーにしか頼めないんです。

 

 

 

 

 

「せんせー……最後に頼んじゃってごめんね」

 

 せんせーも雪村先生とか二代目とか色々とあるけど……約束、守ってくれたら嬉しいな。ううん。あのせんせーなら守るか。あの人は最高の教師だから。

 空を見上げると三日月が少しだけ欠けていた。僕らの象徴である月は、徐々に崩壊をしていくらしい。いつか、また満月が見られるとか何とか。きっと、他の人たちの中では今回のことは薄れて行ってしまう。でも、僕は……僕らは。絶対に忘れない。

 だって、あんな一年を、あんな仲間たちを、あんな恩師たちを忘れることは出来ないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、七年と少しが経過した……

 

「風人君。大切なお話があります」

「……はい。何でしょうか」

「……何でもう正座しているの……?」

「あはは~……け、決してやましいことがあったわけじゃないよ?

 

 もしかして、事件の現場見に行くーって遠くまで行ったとき、ついでに一人で観光していたから怒っているのかな?……でも、お土産買ったし……それとも、この前、事件の資料を整理してついつい時間を忘れて寝落ちして家に帰らなかったことかな?そ、それとも……」

 

「……はぁ。後でお説教ね」

「あ、はい」

「まぁ、もう付き合って八年近く、結婚して少し……そこまで怒るつもりもないけど」

「やったね♪」

「うん。最低でも一週間ゲーム禁止で許してあげる」

「なっ……!ひ、酷い……この鬼!悪魔!有鬼子!」

「…………(ゴンッ!!)」

「…………あうぅ……」

「で、本題なんだけど……」

 

 一枚の写真を見せる。切り替えが早いのはこういうやりとりをもう何年もやってきたからだろう。それはもう熟年の夫婦のように……と、そんなことは置いておいて、痛む頭をさすりながら写真を見る。見せてきたのは写真というより、何かの検査の画像だった。

 

「…………事件?」

「ある意味事件だよ。さて、弁護士さん。何の事件でしょう?」

「…………すみません。探偵じゃないのでヒントを下さい……!」

「ここだよ」

 

 有希子が指したのはその画像の一部分……

 

「何か……違うね。他の場所と」

「はぁ……こういう時だけ鈍いんだから…………赤ちゃんだよ」

「…………へ?」

「妊娠してたの……6週目だって」

「…………じゃあ……!」

「これからこの子が成長して行くに連れて色々と分かるけど……」

「あの有希子がお母さんに……?」

「うん。その言葉そっくりそのまま返すね。あの風人君がお父さんになるんだよ」

「……ということは、色々と気をつけないといけないのか?」

「ふふっ、そうだね。頑張ろうね……あなた」

「うん!頑張って支えていくよ!」

 

 新たな命が二人の間に生まれようとしていた。




『暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~』本編完結!
完結までに2年4ヶ月くらい……本当にありがとうございます!
お気に入り登録も1,000件を超え、色んな人から感想や評価を貰いました!
ここまで付き合ってくれてありがとうございます!


もし、興味があれば、今後の展開など、長くなった後語りを投稿しますので明後日(次回)も見てください。
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