暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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大人の時間 二時間目

 翌日の朝……

 

「ふぁぁあああ。いってきまーす」

「いってらっしゃい」

 

 いつも通りゲーム機を片手に持ちながら家を出る。

 

 ガチャ

 

「おはよう。風人君」

「…………」

 

 バタン

 

 ……幻覚?

 

 ガチャ

 

「どうしたの?行かないの?学校」

「…………」

 

 バタン

 

 どうやら、本物のようだ。

 

「母さん~頭痛くて幻覚見え始めて幻聴が聞こえ始めたから学校休むね~」

「……何をバカなことを言ってるのよ」

 

 あからさまに呆れている母さん。すると、

 

 ピンポーン

 

 インターホンが鳴った。

 

「はーい。って、風人。アンタ邪魔よ」

「じゃあ部屋で寝てるね~」

 

 そう言って二階に上がろうとする。すると、

 

「風人。こっちに来なさい。アンタにお客さんよ」

 

 ……ですよねー

 

「……へーい」

 

 180度方向転換をし、玄関に向かう。すると、

 

「アンタ。こんな美人さんが迎えに来たのに、学校をサボろうとするとは最低ね」

 

 そいつは見た目は美人でも中身が鬼と変わんねぇんだよ。という言葉を僕は口に出そうとしてやめた。今ダブルで怒られるのは面倒~。危ない危ない~。

 

「そんな美人だなんて……」

 

 と言いつつどこか嬉しそうなご様子。

 

「ごめんね。このバカ。超マイペースでゲームばっかやって、一言も二言も余計なことを平然と言ってると思うけど……迷惑かけてない?」

 

 おそらく、迷惑しかかけていないですね~。はい。

 

「いえ、そんな」

「そう。……っと、ゆっくり話したい気持ちもあるけど、学校遅刻されたらマズいでしょ。とりあえず、コレを学校までよろしくね。あなた名前は――」

「神崎有希子です」

「そう。有希子ちゃん。コレをよろしくね」

「はい!任せて下さい」

 

 最近母親の僕に対する扱いが酷い気がするな~。

 

(有希子ちゃんか。……あの子によく似ていた……まぁ、関係ないか)

 

 え?父さんはって?もう仕事行ったけど?

 

「ぶーぶー。何でわざわざ迎えに来たのさーぶーぶー」

「ぶーぶー言わないの。殺せんせーからのお願いでもあるからね」

「殺せんせー?」

「『風人君の登校の様子を見ると危なっかしいです。神崎さん。お願いですが彼と一緒に登校してもらえませんか?』ってね」

 

 わざわざそんなこと言われたんだ~

 

「中学三年生が一人で登校させると危険だから送っていってって、どんな風に登校してるの?」

「普通だよ~。普通に5回ほど電柱にぶつかって、3回ほど車と事故を起こしかけて、10回ほど平坦な道で転んで……ね?普通でしょ~?」

「……はぁ」

 

 あまりのことに頭を押さえため息をついてる。

 

「何でそうなっちゃうのかな~ねぇ~風人君~」

「いひゃいれすゆひこしゃん」

「…………はぁ。昨日私から逃げる時にそんな転んだりしてなかったよね?山道とかでも」

「だから~普段、ぼーっとゲームしてるか、ぼーっと空を見上げて雲を眺めながら歩いていたらね~。あ、この前なんて空見上げて歩いていたら一個山を間違えちゃった~」

「……遅刻の理由がそれなの……?」

「いやぁ~そういうことない?山一個間違えるとか~」

「……これは殺せんせーの心配も凄い分かる」

「ほへぇ?」

 

 そういうと、まるで可哀想な子を見るような、凄い温かい目になって、

 

「これからは私が一緒に登下校するからね」

「……はぁ」

 

 何だこれ。まぁいいや、

 

「今日はスマホでゲーム……」

「ダメです。ゲームは登下校中禁止」

「えー」

「えーじゃなくて、はいでしょ?」

「ほーい」

 

 というか、昨日までも下校一緒だったよね?という野暮なツッコミはなしで行こう。うーん。有鬼子の態度というか接し方が子どもを接する時の母親そのものだ。全く、僕は子供じゃない――

 

 ゴンッ

 

「ふぎゃ」

「もう!何で言ってるそばから電柱に当たるの?」

「め、面目ないです……」

「元から風人君に面目なんて存在しないでしょ?」

「うわぁあああああ。そんな酷いこと言うなんて有鬼子なんて嫌いだぁあああああ。うわぁああ」

「え?ちょっと風人君!?」

 

 僕の心は凄い傷つきました。ということで、校舎までダッシュしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、今日の英語の授業。まぁ、ビッチねーさんの担当なんだけど、黒板に書かれている文字は自習。ビッチねーさんはタブレットを操作し、次の暗殺の計画を立てているご様子だ。

 

「ああもう!なんでWi-Fi入んないのよこのボロ校舎!」

 

 あ、それ分かる~。

 

「必死だね~ビッチねーさん~」

「あんなことされたらプライドズタズタだろうね」

 

 こちらを睨んでくるビッチねーさん。しかし、何も言い返せない。

 

「先生」

「何よ」

 

 話かけたのは男子学級委員磯貝君。

 

「授業してくれないなら殺せんせーに交代してくれませんか?俺ら今年受験なんで」

 

 皆を代表し、磯貝君が言う。が、ビッチねーさんは僕らをバカにした表情で言う。

 

「は、あの凶悪生物に教わりたいの?地球の危機と受験を比べられるなんて。ガキは平和でいいわね~それに、聞いたんだけど、アンタたちE組ってこの学校の落ちこぼれらしいじゃない。勉強なんて今更しても意味ないでしょ?」

 

 ビッチねーさん。地雷を踏むの巻き。

 何でそんな見え見えの地雷を踏んじゃうんだろうね~ところで、E組って落ちこぼれクラスだったの?確かに、規則で本校舎に必要な時以外立ち入り禁止とは言ってたけど……今度聞いてみよ~っと。

 

「そうだこうしましょ?私が暗殺に成功したら一人頭500万円あげる。無駄な勉強するよりマシでしょ?だから私に協力――」

 

 コンッ

 

 黒板に消しゴムの当たる音がする。

 

「出てけよ」

 

 物凄い低い声。皆から恐ろしいほどの殺気が放たれる。そして、

 

「でてけよクソビッチ!」

「殺せんせーと変わってよ!」

 

 一斉に投げられる色んな物。

 

「な、なによ!殺すわよ!」

「上等だ!」

「そうよ!巨乳なんていらない!」

 

 あれ?今の人何か間違ってない?

 

「あーあ。荒れてるね~」

「うるさいから外行こうよ。風人」

「いいね~カルマ」

 

 と、荒れる教室から僕ら二人は脱出した。これが学級崩壊かな?

 

「さてと、今日一日ここで過ごしますか」

「五限までね~六限は水曜だからテストだよ~」

「あぁ、あの個人に合わせたテストか」

「本当に凄いよね~一人一人に合わせてるって」

「まぁ、タコの意図が分かってない奴らも居そうだけど」

「そーだね~。でも、いつか分かるでしょ~。それか殺せんせーが教えるか」

 

 この後、本当に六時間目までサボったら、帰り道有鬼子に説教されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、ビッチねーさんの授業。教室に来てチョークを取り、自習と書くかと思いきや英文を書き始めた。あれ?何だっけ?この英文の意味。

 ビッチねーさん曰く、アメリカのとあるVIP様の暗殺をした時に、そいつのボディーガードに言われた言葉だそうだ。

 

「意味は『ベッドでの君は凄いよ』」

 

 ……やっぱコイツダメかも。中学生だよ?僕ら。

 

「外国語を短期間で身につけるにはその国の恋人を作るのが早いと言われているわ。相手の気持ちを知りたいから。必死で言葉を理解しようとするのね。だから私は必要に応じて各国に恋人を作った。だから、私は恋人の口説き方を教える。プロの教える直伝の会話術。外国人と会った時にきっと役に立つわ」

 

 ほへぇ~

 

「受験に必要な知識なんてあのタコに教わりなさい。私が教えて上げられるのは実践的な会話術だけ。もし、それでアンタたちが私を先生と認めないのなら、私は暗殺を諦めて出ていくわ。そ、それなら文句ないでしょ?……あ、あと、悪かったわよ。色々と」

 

 あまりのことに固まるが、すぐに、

 

「「「あはははは」」」

 

 教室が笑いで埋め尽くされる。

 

「全く~昨日まで殺すとか言ってたのに~」

「何びくびくしてんのさ」

「何か、本当の先生になっちまったな」

「もうビッチ姉さんって呼べないね」

「あ、アンタたち……分かってくれたのね」

「考えてみれば先生に向かって失礼な呼び方だったよね」

「うん。呼び方変えないとね」

 

 感動の涙を流すビッチねーさん。新しい呼び方?そんなの決まってるよ~

 

「「じゃあ、ビッチ先生で」」

 

 これにはクラスの皆も納得。唯一ビッチ先生だけが反対したが、何がともあれビッチ先生もこのクラスに馴染んだようである。めでたしめでたし。


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