暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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修学旅行の時間 三時間目

「これさ、オメェだろ。去年の夏頃、東京のゲーセン」

 

 私たちは車に乗せられ、そのまま手と足をしばられて連れてこられました。

 そこでリーダーと思われる男の人に見せられたのは一枚の写真。

 

「目ぼしい女は目をつけ、報告するよう言ってあってな」

 

 紛れもない。去年風人君と会った時の私だ。

 

「八月の終わりがけにさらおうとしたんだが、あの男に邪魔されてな。で、気付けば見失っちまってたってわけ」

「あの男ですか……?」

「ほらオメェがゲーセンで一緒にいたあのチビだよ。まぁ、そいつにも復讐してやりてぇが、この場にいるわけでもねぇから今はどうでもいいけどな」

 

 一緒にいたチビ?それって……風人君のこと?でも、そんな素振りは見せなかった……あっ。

 

「まさか、あの名門椚ヶ丘中学の生徒だったとはな。でも俺には分かるぜ。毛並みが良いやつほどどっかで台無しになりたがってるんだ。これから夜まで台無しの先生が何から何まで教えてやるよ」

 

 私にはこの言葉の意味が分かりました。だけど、今の私たちには何もできないです。逃げることも抵抗することも何も出来ない……

 

「さっきの写真……真面目な神崎さんもああいう時期があったんだね。ちょっと意外」

 

 不良の人たちが撮影班を待つとかで向こうで大声で話す間、茅野さんが話かけてくる。

 

「……うん。うちは父親が厳しくてね、良い肩書きばかり求めてくるの。そんな肩書き生活から離れたくて、名門の肩書きを脱ぎたくて、知ってる人がいない場所で格好も変えて遊んでたの」

 

 そして、その時に風人君と出会った。あの時はまさか三年生で転校して来て同じクラスになるなんて思いもしなかった。

 

「……馬鹿だよね。遊んだ結果得た肩書はエンドのE組。もう自分の居場所が分からないよ……」

 

 家にも学校にも私の居場所なんてどこにない。風人君の隣にいても、彼にとっては私はただの邪魔者。あの頃と違って、今の彼にとっては私は迷惑な存在。だって、あんなに修学旅行の班一緒になるの嫌がってたし。毎日のように私が怒ってばっかりだし。嫌がるのも無理はない。……それに嫌いって言われたし。

 

「俺らの仲間になればいいんだよ。俺らもな、肩書きとか死ね!って主義でさ。エリートぶってる奴らを台無しにしてよ。なんつーか。ありのまま、自然に戻してやる?みたいな。そういうアソビを俺ら沢山して来たからよ」

 

 あまりのことにも最低な言葉。でも私は……

 

「……サイッテー」

 

 茅野さんが一言そう言う。

 

「何エリート気取りで見下してンだ!?お前もすぐに同じレベルまで堕としてやンよ!」

 

 近くのソファーに投げられ咳ごむ茅野さん。

 

「いいか?宿舎に戻ったら涼しい顔でこう言え。『楽しくカラオケしてただけです』ってな。そうすりゃだ~れも傷つかねぇ。東京に戻ったらまた皆であそぼーぜ?楽しい修学旅行の記念写真でも見ながらなぁ……」

 

 私は……一体どうしたら……

 

 ギィィィ

 

「お、来た来た。うちの撮影スタッフがご到着だぜ」

 

 そう言って入って来たのは既にボロボロで気絶している二人の彼らの仲間と思われる人物。

 

「――修学旅行のしおり1243ページ、班員が何者かに拉致られた時の対処法。犯人の手掛かりがない場合、まずは会話の内容や訛りなどから地元の者かそうでないかを判断しましょう」

 

 その人物は後ろに立っていた人たちに襟首を手放されその場で捨てられます。

 

「地元民ではなく更に学生服を着ていた場合、1344ページ。……考えられるのは相手も修学旅行生で、旅先でオイタをする輩です」

 

 そして入って来たのは残りの四班の五人。

 

「みんな!」

「テメェら!何でここが分かった!」

「土地勘のないその手の輩は、拉致した後、遠くへとは逃げず、近場で人目に付かない場所へと向かうでしょう」

 

 その後は付録の134ページに先生がマッハ20で下見した拉致実行犯潜伏マップが役立つとのことですが……

 

「凄いなそのしおり!カンペキな拉致対策だ」

「いやー修学旅行のしおりは持っとくべきだね」

「ふふ~ん。僕も持ってきてたりするのだ~」

「「「ねぇよ!そんなしおり」」」

 

 ……普通はありませんよね。確かに。

 

「……で、どーすんの?お兄さんら。……こんだけの事してくれたんだ。あんたらの修学旅行、この後の予定は全部入院だよ」

「でも、安心していいよお兄さんたち。……たっぷり絶望を味わって目が覚めたらベッドの上で寝かされてるだけだからさ」

 

 完全にキレてるカルマ君と風人君。風人君のあんな表情……今まで見たことない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、ここで時は遡り、拉致されてから少し経ったころ、

 

「あれ?奥田さんは無事だった?」

 

 気がつくと残っていたのは、僕、渚、カルマ、杉野、奥田さんの五人。

 

「はい。思い切り隠れていました……」

「いや、それが正しいよ。というか、あいつら、直接俺の手で処刑させて欲しいんだけど」

「はっ。お前一人にはやんねぇーよ。オレにも処刑させろ。連れて行ったことを後悔させる」

 

 キレてるのはこっちも同じだクソ野郎が。有鬼子に妙なことしてみろ。ぜってぇコロス。

 

「んじゃ行こうか。風人」

「そうだな。カルマ」

「待って二人とも」

 

 敵陣に乗り込もうとすると渚が止めてくる。

 

「まずは殺せんせーと烏間先生に連絡するのが先だよ」

 

 まぁ、確かにこの状況、警察より殺せんせーの方が使えるな。あの高校生共。見た感じ手慣れていやがるし。……というか、ビッチ先生にはいいのね。

 

「んじゃ、その間にしおりでも見ておくか」

「そうだね。多分、このしおりに……あった。班員が拉致られた時の対処法」

「どこまで想定してんだよ!」

「おそろしくマメだね~で、どうすんの?」

 

 と、会話してる時に殺せんせーが現れ、オレらはここを。殺せんせーはそれ以外をしらみつぶしに回っている。

 で、現在に至るわけだ。

 

「……フン、チューボーが粋がんな」

 

 背後から聞こえる足音のようなもの。

 

「呼んどいたツレどもだ。おめぇらみたいないい子ちゃんはな見たこともない不良ども……」

 

 そして現れたツレとやらは確かに見たこともない不良どもだった。

 いやねぇ。丸坊主に丸眼鏡の不良って……笑いが止まらないよ?

 

「ふりょ……えぇぇ!?」

「不良なんていませんねぇ。全員せんせーが手入れしてしまったので」

「って、そいつらさっき俺と風人が倒して捨てておいた奴らじゃん」

「あーほんとだー。何自分がかっこよくやりましたみたいに言ってんの?」

「だ、黙ってなさい!」

「「へーい」」

 

 全く。いいとこどりとはずるいなぁー

 

「遅くなってすみませんねぇ」

「それはいいんだけど……何?その顔隠しは?」

 

 殺せんせーは黒子のようなかんじの帽子を被っていたが……顔が大きすぎてはみ出ている。

 

「暴力沙汰ですので。この顔が暴力教師と覚えられるのが怖いのです」

 

 ……はぁ。

 

「渚君と風人君がしおりを持っていてくれたから迅速に連絡が出来たのです」

 

 そういうと、カルマ、杉野、奥田さんの手にしおりが。……あれ予備かな?

 

「先公だと?ふざけんな!」

 

 武器を持って突撃してくる不良たち。僕とカルマが応戦しようと拳を握ると、

 

「ふざけるな?」

 

 一瞬で不良たちに殺せんせーが平手(触手?)打ちを喰らわせた。

 

「それは先生のセリフです」

 

 すると、殺せんせーの顔はどす黒く、怒っていた。

 

「ハエが止まるようなスピードと汚い手でうちの生徒に触るなど……ふざけるんじゃない!」

「てめぇもエリートだから、俺らをバカ高校だと見下すのかよ!」

 

 そういうと、一斉に構えるナイフ。よし、こっちも新武器を……

 

「エリートではありません」

 

 出す前にせんせーが殴り始めた。しかたない。別のことしよう。

 

「確かに、彼らはエリート校の生徒ですが、学校ないでは落ちこぼれ呼ばわりされ、他クラスの生徒からは差別の対象とされています。ですが、そんな中であっても、彼らは多くのことに前向きに取り組み、前へと進んでいます」

 

 まぁ、そのうちの大半が暗殺なんだよな……

 

「君たちのように。他人を水の底に引っ張るような真似はしません。学校や肩書など関係ない。清流に住もうが、ドブ川に住もうが前へと泳ぎ進めば、魚は美しく綺麗に育つのです」

「そして美味しく食べられるのです」

「風人君!今は先生の決め台詞の最中だから口を挟まないで下さい!」

「ほーい」

 

 いや、美(味)しく育ったら食べるのが普通じゃない?あ、音消して移動しよっと。

 

「コホン。さて私の生徒たちよ。彼らを手入れして差し上げましょう。修学旅行の基礎知識を身体に染み込ませてあげましょう」

 

 ゴンッ!

 

 僕らは持っていた修学旅行のしおりという名の鈍器を思い切り振りかぶる。

 不良も気絶。これにて一件落着。

 

「杉野ー二人の拘束を解いてあげてー」

「分かってるよカルマ」

「ん?あ、コレ」

 

 何となく床に転がっていた携帯を開けると、そこには去年会ったころの有鬼子の写真が……

 

「プフッ。久しぶりに見たけど似合ってない~ププッ」

 

 とりあえず、写真を撮って~

 

 バキッ

 

「殺せんせー口開けて~」

「こうですか?」

「はい餌だよ~」

「ムシャムシャ。これは携帯の味ですね。レアメタルの味がします」

 

 よし。証拠隠滅。

 

「風人君……」

「あ、無事だった?何かされてない?されてたら殺せんせーにのこぎりかチェーンソー持ってきてもらって奴らのアソコを一人ずつ斬り落とすけど」

 

 慈悲は無い。殺さないだけマシだと思え。

 

「そんなことされてないから大丈夫だよ」

「よかった~怖い思いさせてごめんね~」

 

 僕は有鬼子の頭を撫でる。

 

「大丈夫だよ。それより、風人君。口元に血の跡が」

「あ、切ったのかな?気にすることないよ~」

 

 自分では気づかないもんだ~。うんうん。

 

「他にも怪我してない?」

「うん~。多分してないと思うけど~……」

「あれ?この左手首の傷は?」

「……昔のだから気にしなくていいよ~」

「そう……でも、ありがと。助けてくれて」

「いいっていいって~」

「ふふっ」

 

 あれ?何か変わった?まぁ、気のせいか~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~一時はどうなること思ったよ~」

 

 そして外に出る。既に夕日は傾いている。

 

「うーん。俺一人なら何とかなったと思うんだけどね~」

「そうだよ~僕一人でも何とかなったと思うよ~」

「怖いこと言うなよ」

「でも二人ともさらに厄介な問題を起こしそうだけど」

「「こいつと一緒にしないでよ」」

「「「はははっ」」」

 

 全く、失礼だな~

 

「でもよかった~大丈夫?神崎さん」

「ええっ。大丈夫」

「何かありましたか?神崎さん。こんなことがあったのに迷いが吹っ切れたような顔をしてますから」

「……特に何も。殺せんせー。ありがとうございました」

「いえいえ。それでは修学旅行を続けますかねぇ」

 

 と、いいつつも今日はこれで終わり。後は宿に戻るだけだ。

 

「そういやウチの班。暗殺できなかったなぁ」

「それどころじゃなかったですから……」

「いいよ。今殺せば」

「そーだねー」

「あ、風人。殺せんせー殺した方勝ちにしない?」

「あーあの不良の倒した数の勝負のこと~?」

「そそ。今6対6で互角でしょ?」

「うん。いいよ~」

「君たち。あの状況でそんなことやってたんですか……」

「お前らなぁ……」

 

 いやねぇ。そっちの方が良かれと思って。

 ちなみに全部避けられて引き分けだったことを記す。

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