暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 作:黒ハム
「いや~そもそも僕は転校生暗殺者じゃないよ~?」
カルマの言葉に返す僕。そう、僕はただの時期外れの転校生であって、律みたく暗殺するために転校してきたわけじゃない。
「違うよ~転校してきた奴は全員転校生暗殺者だよ。暗殺のために転校してこなかったとしてもね」
酷い話だ。
「ヌルフフフ。風人君の暗殺ですか……興味ありますね」
いや、何で興味持ってんだよ
「分かったよ~。やればいいんでしょ?」
このクラス全員で暗殺を仕掛ける事はまぁ、毎朝の銃乱射くらい。ただ個人や小グループで暗殺も大なり小なりで考えれば割とほぼ全員がやっていること。僕はまだ単独でもグループでも修学旅行以外で仕掛けたことがあんまりない。
聞くところによると。カルマは僕が転校してくる少し前、単独で暗殺を仕掛けるも屈辱的な仕返しを受けたらしい。ピンクのエプロン姿のカルマとか見てみたかったな~
「じゃあ、せんせー。明日の放課後殺すから予定開けといてね~」
「おやおや予想より急ですね」
「別に~いつでもいいでしょ~?」
「分かりました。では、この辺で話を終わらせて授業に戻りますか」
さてと、僕個人で仕掛けても精々触手一本破壊できれば御の字。殺すと考えたら協力者が必要。まぁ、僕メインで行けば誰も文句は無いでしょ~。
風人君が暗殺の準備があるから先に帰ってくれと言われました。『手伝おうか?』と聞いたけど『大丈夫~』と言われたので、これ以上しつこいとダメだと思うので、すんなり帰宅します。
「あれ?神崎さんが一人で帰るのは珍しいね」
「本当だ。風人君は?」
茅野さんと渚君の二人と山の途中で会いました。
「うん。明日の準備があるって」
「うーん風人君の暗殺かぁ……想像つかないなぁ……」
「そうだよね。彼、私たちの予想外のことしかしないもんね」
そう。風人君の最大の長所であり短所は何をするか予測不可能な点。これは烏間先生も言ってたんだけど、本当に風人君は何をするか読みにくいらしい。まぁ、そのせいで協調性は皆無かもしれない。……律に協調性云々を教えた張本人が協調性皆無でどうするの?
「はぁ……昨日怒りすぎたかなぁ」
「昨日……あーあれね」
顔を引きつらせる渚君。どうやら昨日のアレを思い出したようだ。
「うん。私も風人君に悪気はないのは分かってるんだけど……何だろう。律は機械と言え、女の子。なんか風人君が他の女の子のために睡眠時間を削ってまで頑張ってるって聞くと……」
心がモヤモヤする。でも、このモヤモヤの正体は分かってる。
嫉妬だ。
機械相手にバカなって思うかもしれないけど断言する。これは嫉妬だ。
「……後は身体の隅々まで見たと聞くとね」
「と言っても中は電子回路とかばっかだと思うけど」
だとしても、女子の身体を覗くだなんて……はぁ。昨日は理不尽に怒ってしまったお詫びも兼ねて、せっかく、風人君を保健室で寝せてあげようとしたのに、断られてしまった。
「風人君って、私のこと嫌いだよね……やっぱり」
((それは絶対ないと思う!))
こんないつも風人君に余分なことすると怒ってばっかで……そんな人好かれるわけないよね。でも、怒らないと風人君は暴走しちゃうし……はぁ。ジレンマってやつかな。
「そういえば渚ー。男子は修学旅行の夜、恋バナとかしなかったの?」
「何でそう思うの?」
「いや、男子は何であの時殺せんせーを追いかけていたのかな~って」
そういえば何でだろう。私たちの場合は女子部屋に性別男(?)の殺せんせーが入って話を聞こうとしたからだ。じゃあ、男子は何で追いかけていたのだろう?
「あはは……お察しの通り恋バナかな?まぁ、正確には気になる女子が誰かランキングにしただけなんだけど」
その集計結果の紙を殺せんせーに盗み見られ、メモされ、逃げたから追いかけていった。とのことだった。
やってること変わらないなぁ……。
「へぇーということは男子皆の気になる女子がお互いに分かってるということ?」
「うーん。匿名というか何と言うか、ほとんどの男子が誰に入れたかは分かんないだけど、カルマ君と風人君は堂々と言ってたんだよなぁ」
「その二人が堂々と言っちゃうの!?何か意外……じゃあ、和光くんは誰って言ってたの?」
「か、茅野さん!?それを聞いたら――」
私の精神が持たなくなると言おうとした。だって、その人に負けているという事実が分かってしまうのだから。
しかし、私が制止よりも早く渚君は答えを言った。
「神崎さんって言ってたよ」
「……え?」
あまりのことに固まってしまう。え?風人君の気になる女子は……私?
「いや、風人君のことだから。きっと気になる女子っていういう意味を理解出来ていなかっただけだ。うん。そうだ。だから両想いとかそう言うのじゃない。うん。そうだ」
だから舞い上がってはいけない。彼のことだ。可能性があるだなんて思ってはいけない。
「ねぇ、渚。ここまで両想いを否定するのも珍しいと思わない?」
「あはは……風人君が相手だしなぁ。でも割とあるかもよ」
「で、どんなところがいいって言ってたの?」
「どんなところと言うか、一緒にいて気楽とか楽しいって言ってたよ」
私といて……気楽?楽しい?本当なのかな……。
「あ、じゃあ、僕こっちだから」
「私も。じゃあね。神崎さん」
「あ、うん。またね。二人とも」
翌日の放課後。帰りのHRが終わった時、
「んじゃ、せんせー。教室で暗殺を行うから~。あ、悪いけど皆は教室の外にいてくれる?多分危ないから」
「分かった。じゃあ、外から見てるよ」
机とか椅子を外に出し教室には不必要なものが除かれた。……というか、ほとんどの人が外から見てるんだけど……そんなに気になる?僕の暗殺。
「ヌルフフフ。君の暗殺ですか。楽しみですね」
僕は教室を一周壁伝いにのんびり歩く。
「あ、せんせー。別にこの教室に出るなとか言わないので好きに逃げて下さい~」
「その必要があるといいですねぇ」
顔は緑色のしましま模様。舐め切ってる顔だ。
「おや。君の武器はそれですか」
「そうだよせんせー。烏間先生に頼んで、作ってもらったんだ~。本当は修学旅行でお披露目したかったんだけど、どっかの誰かが出番を取っていったからね~」
僕は自分の武器を右手の指でくるくる回し始める。
「じゃあ、一発撃ったら始めますね」
そう言って、左手にハンドガンを持つ。
「では……スタート!」
バンッ!と撃つのと同時に律が起動し、左右から銃が出てくる。
『では射撃を開始します』
前までより少し大きめの右側の銃の銃口から球を発射する。
「ヌルフフフ。律さんとの連携ですか」
「僕
僕は左手に持ってたハンドガンをポケットにしまい武器を取りだし、投げる。
「君の武器は手錠。中々ユニークですがそれだけですねぇ」
律の撃った球を避ける殺せんせー。
「あ、殺せんせー。その球普通のBB弾じゃないんで!」
黒板に当たり跳ね返ってきたそれを思い切り手錠で跳ね返す。
「にゅや!?」
普通のBB弾なら弾き返してもたかが知れてる。でもねぇ、
「まさかスーパーボールですか!」
「正解!」
既に律から何発もの対殺せんせー用スーパーボールは発射されている。
「さぁ、アンタはどこまで計算できるかな!」
せんせーは、普段の弾幕を避ける時完璧に避けている。それは避けた球に二度と当たらない確証があるから。じゃあ、その球が避けても跳ね返ったとしたら?せんせーの処理する量はかなり増える。処理が追いつかなければ当たる。実にシンプルだ。
(まさか、こう来るとは……しかも、風人君に当たっても軌道が変わる為、そこまで考慮して完璧に避ける事は不可能に近い。さらに風人君はまだ手錠を隠し持ってる。彼の戦法は面白い。だけどね……)
「ヌルフフフ。やってくれますねぇ!でも、逃げることは出来るのですよ!」
そう言って予想通り戸に向かう殺せんせー。僕はその周りに向かっていくつか手錠を投げる。そして、戸に手(触手?)をかけて開けようとするが……
「開かない!?」
「ワンヒット」
殺せんせーが手をかけ力を込めた瞬間。一本の触手に手錠が当たり、触手が溶ける。
「ツーヒット」
すぐさま反対側の戸に走ろうとする殺せんせー。だけど、それぐらい読めたわけであって、先読みして投げておいた手錠に触手が当たりツーヒット。
「スリーヒット」
そして立て続けに二本の触手にダメージが与えられたことで動揺して一瞬動きが止まる。……そこに対殺せんせー用のスーパーボールが当たりスリーヒット。
「少々取り乱し過ぎました」
が、一瞬で僕の背後に回る殺せんせー。どうやら、少し落ち着いたらしいね。まぁ、想定通りだけど。
「ですが、この特製のスーパーボール。私の服に当たると意味を無くしますねぇ」
そう。殺せんせーは柔らかく変幻自在。故にボールを服に当てて意図的に跳ねさせないことが可能なのだ。でも、
「だから?」
僕は落ちているスーパーボールを蹴りつける。と、同時に手錠を一個上に投げつけ、一個を殺せんせーに。
「戸が駄目なら窓から逃げるまでです!」
「でしょうね!」
僕は窓の前に移動し、右足で蹴る体勢に。その間に殺せんせーは窓の鍵を開ける。
「律!」
『はい!』
律の左側の銃から球が発射される。カギを開けた殺せんせーが窓枠に手をかける。そして、
「ここもですか!」
やはり開かない。殺せんせーが声を出したその瞬間。律の発射した球が僕の右足の踵に当たり、蹴りのスピードが急激に加速する。僕の爪先部分が何本かの触手に当たり切り落とすことに成功した……が。
ドンッ!
「いった~!」
バランスが取れずに床に直撃。凄い痛い。
その間に殺せんせーは窓を開けて外へ脱出。あー失敗かぁ。やっぱ、ぶっつけ本番はダメだね~。
「降参だよ~戻って来たら~」
「まさか、ここまでやられるとは思いませんでした」
すると、戻ってくる殺せんせー。
「す、すげぇ!」
「何だよ今の……」
「息するの忘れてた……」
「アクション映画みたい……」
皆の評価はこんな感じ。この暗殺そのものは一分かかってないだろう。そんな短い時間のやりとりだ。
「まさか、これを窓枠に貼っていたとは」
見せてきたのはセロテープ。そう。殺せんせーが戸や窓を開けられなかったのは僕がテープで固定していたから。でもテープの固定なんて強度は知れている。だから僕は暗示をかけた。教室は簡単に出られる。って言うね。
そりゃあ皆がその戸から普通に出ていって時間がそう経ってない。誰も戸に細工したとは思わないだろう。それに、殺せんせーは戸を全力で開け放つわけにはいかない。いや、開け放つ必要がない。だって、力をそう込めなくてもいつも開けられるからね。それに強引に開ければ教室が破壊されかねない。だから、いつもの感覚で開けようとして、テープによるストップが掛けられた。それに焦り思考能力の低下。その戸に何らかの仕掛けがしてあって開かないと思い込み、別のところに向かう。
「まぁ、違和感に気付いてすぐに別の場所に行こうとするあたり流石だね~。それも読んでたけど」
「ヌルフフフ。ですが、失敗ですねぇ。あそこで転ばなければもっと良い線行っていたかもしれませんよ」
良い線行っただけで殺せはしないだろう。まだ脱皮や液状化というの奥の手を出してないし。
帰り道……
「疲れたぁ~」
あの後、外に出した机を元に戻したり、仕掛けておいた残りを外したり、スーパーボールと手錠を回収したり割とやることがあった。殺せんせー曰く『準備から片付けまでが暗殺です』とのこと。いや、何かのパクリ?
「ありがとね~手伝ってくれて」
「いいよ。風人君だけだと大変でしょ?」
おぉー。有鬼子の優しさに触れた気がする。
「最後のアレ。靴に対せんせーナイフを仕込んでおいたの?」
「まぁね~でも、もうやらないと思うけど」
そう。靴から殺せんせー用のナイフの先端が飛びだし、不意打ちで何本かって感じかな。
ちなみに、どこかで『あれ、真似しようかな……』と言っていたけど、まぁいっか。
「でも、風人君。たった一日であれだけの準備を?」
「ううん~。靴にナイフ仕込んでたのは割と前からだし~手錠なら修学旅行にも持ってたし~昨日やったのは律に交渉ぐらいだよ~」
「ふーん。でも、手錠って、手錠の形をしただけで、対殺せんせー用のものなんでしょ?」
「ううん」
そう言って、有鬼子の両手に手錠を嵌める。
「烏間先生に頼んで作ってもらったの~元々の警察とかが使うような手錠に対殺せんせー用の武器とかを細かくして満遍なく拭きつけた感じ~。だからこうやって普通に使えるよ~」
「へぇ。……あれ?これ外せないんだけど……どうやって外すの?」
「え?本物の手錠がベースで作ってもらったんだから鍵がないと外せないよ~」
当たり前だ。カチャカチャやって外せるなら手錠の存在意義を感じない。
「じゃあ、外して」
「いやだ」
「外して」
「いやだ」
だって、今外したら面白くないじゃん。
「はぁ。どうしたら外してくれるの?」
うーん。特に考えていなかったや。
「じゃあ外そ~」
というわけで、怒られる前に外そう。
そんな感じで僕の暗殺は終わりました……。