暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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転校生の時間 二時間目

 6月15日。僕を含めると三人目の転校生がやってくる。

 そして彼こそ「本命」だそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝から雨が降っている。憂鬱な日。僕らが映画に行った後、渚とカルマも映画を見にハワイまで連れて行ってもらったらしい。やるねぇ。殺せんせー。

 

「烏間先生から聞いていますね。今日は新しい転校生が来る日です」

「まぁ、ぶっちゃ暗殺者だろうね」

 

 朝、殺せんせーがそう言うと、皆がざわつき始める。え?マジで?転校生来るの?

 

「律さんの時は甘く見て痛い目をみましたからね。先生も今回は油断しませんよ」

 

 油断ねぇ……

 

「ねぇ、律~。同じ転校生暗殺者だとしたら何か聞いてないの~?」

 

 ここまで盛り上げておいてただの転校生だったら笑い物だ。

 

『はい、少しだけ。当初、私と「彼」の2人の同時投入で私が遠距離、「彼」が肉薄攻撃で殺せんせーを殺す、と言うものでした』

 

 ……はい?殺せんせーに……肉薄攻撃?

 

『ですが、二つの理由でこの命令はキャンセル。一つ目は「彼」の調整に遅れたから。もう一つは、私では「彼」のサポートに力不足だから。……私が「彼」よりも暗殺者として()()()に劣っていたから』

 

 ……嘘でしょ?あの律より圧倒的に優れた暗殺者がいる……人間なのかそいつは?

 そんな疑問をクラスの皆が持つ中、戸は開く。入ってきたのは一人の男。全身白づくめの男だ。

 

「え?転校生が中学生じゃない?」

 

 思わず声に出してしまう。すると、入って来た人は手を殺せんせーの方に向け、

 

「驚かせてしまったね」

 

 そう言いながら白いハトを出す。

 

「ああ、私は転校生じゃないよ?私は保護者、シロ……とでも呼んでください」

 

 なお、この一連の流れで殺せんせーはあまりにもビビり、脱皮とは別の、液化という奥の手まで出し、教室の天井の隅の方にいた。……いや。本当にビビりすぎだろ。

 

「………はじめまして、シロさん。それで肝心の転校生は……?」

「まさか!さっきの手品のハトか!やっぱり中学生じゃないね!」

「ははは。面白い子がいるようだ。皆いい子そうだし、あの子も馴染みやすそうだ」

 

 面白い子?どこにいるの?

 

「おーい!イトナ!入っておいで!」

 

 シロさんも含めた全員が、ドアを見る……が。

 

 ガシャ!

 

 イトナと呼ばれた生徒が後ろの壁を突き破って入って来た。

 なんだこのクレイジーは。

 そしてそのままカルマと寺坂君の間の席に座る。

 

「俺は勝った……。この教室の壁より強いことが証明された」

「「「いや!ドアから入れよ!」」」

「そうだよ!壁から入ると痛いでしょ!」

「「「ツッコむとこそこじゃねぇよ!」」」

 

 え?壁から入ろうとしたら痛くない?

 

「それだけでいい………それだけでいい」

「全く~どうして此処に来た転校生って皆頭おかしいの~?」

 

(((お前も頭のおかしな転校生の一人だろうが……!)))

 

 皆困った感じだが、それは殺せんせーも同じこと。

 なんか、顔が中途半端だ。笑顔と真顔の境目って感じ?

 

「堀部イトナだ。名前で呼んであげて下さい」

 

 ここで、カルマと僕はあることに気付く。

 

「ねぇ、イトナ君。ちょっと気になったんだけど……なんで濡れてないの……?」

「そ~だよ。傘も何も持ってないのにこの土砂降りの中、どうやってきたの~?」

 

 すると、イトナ君は立ち上がり、周りをキョロキョロとみる。

 そして、カルマの席のところに近寄り、僕らに話かける。

 

「お前はこのクラスで一番強い。その奥のは二番目に強い。けど安心しろ。俺より弱いからお前らは殺さない」

「いや、殺されても困るんだけど」

 

 僕らは暗殺者であって標的(ターゲット)じゃない。殺されても困る。というか、僕よりカルマが強いって言われるのは釈然としない。

 

「俺が殺したいのは、俺より強いかもしれないやつだけ」

 

 と言って、殺せんせーの前まで行く、

 

「この教室で俺より強いのは、殺せんせー。アンタだけだ」

「強い弱いは喧嘩のことですか?力比べでもするのでしたら、私と君では次元が違いますよ?同じ土俵にすら立てません」

 

 まぁ、無理だね。 

 

「立てるさ……………だって、俺たちは血を分けた兄弟なのだから」

「「「きょ、兄弟!?」」」

「せんせー!兄弟が同じクラスって普通はあり得ないですよね~?裏金ですか~?」

「「「だからお前は驚くところがズレてる!」」」

 

 え?普通そこ気にならない?あ、あの2人はどうせ兄弟じゃないから関係ないか~。

 

「負けたほうが死刑な兄さん。今日の放課後。この教室で勝負だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後になりました。僕らはせっせと机を囲み教室にリングを作りました。

 昼休みは殺せんせーとイトナ君が兄弟かどうかという話で持ちきりだった。甘党好き、表情読みずらいなど類似点は多い。……まぁ、人とタコという決定的な違いはあるが。

 不破さん曰く生き別れた兄弟説。岡島曰く巨乳好きは皆兄弟説。

 なら、僕の考えはと聞かれたら大きく三つ。

 一つ、ただの作り話。二つ、造られたのがイトナ君の方が後。三つ、殺せんせーが人間だった時の兄弟。

 

「ただの暗殺は飽きてるでしょ。殺せんせー。ここは一つルールを決めないかい?リングの外に足がついたら死刑。どうかな?」

 

 なるほど上手い。殺せんせーはこのルールを破れば先生としての信用が落ちる。この手の縛りは意外と効く。

 

「いいでしょう。ただし、観客に危害を加えた場合も負けですよ」

 

 頷くイトナ君。

 

「では合図で開始しようか。暗殺……開始」

 

 シロさんの開始宣言と同時に吹き飛ぶ殺せんせーの触手。しかし、そこはほとんど注目されない。

 皆の目はある一点……

 

「触手!?」

 

 イトナ君の触手に釘付けだった。

 

「なるほどねぇ~こりゃ、雨に濡れないね」

「全部触手で弾いた……ということ?」

「正解だよ有鬼子」

 

 そんな中、殺せんせーが怒っている。

 

「何処だ……何処でそれを手に入れた!その触手を……!」

 

 殺せんせーが真っ黒だ。完全に怒ってる。

 ……何者なんだ……アイツは。

 

「どうやらあなたにも話を聞かないといけないようだ……!」

「聞けないよ。死ぬからね」

 

 そういうとシロさんの左袖から殺せんせーに光が放たれる。

 

「この圧力光線を至近距離から浴びると君の細胞は一瞬硬化する」

 

 なんだよそのチートは。その固まってる間に殺せんせーに触手で攻撃するイトナ君。

 

「脱皮か」

 

 月一の技を使わざるを得ない殺せんせー。

 しかし、シロさんは脱皮の弱点を語る。どうやら脱皮直後はエネルギーを使ったためにスピードが落ちるらしい。後は、腕を再生させたりするのも実は体力を使うらしい。

 しかも、触手の扱いは精神状態に左右される……なるほど。シロさんはクロだ。こいつは何かを知っている。いや、知ってるで済めば可愛いものだ。下手するとコイツは殺せんせー誕生と月の蒸発。二つに大きく絡んでる。

 試合はイトナ君の猛ラッシュを頑張って殺せんせーが避けてる感じ。

 

「この時点でどちらが優勢なのかは生徒諸君の目にも一目瞭然だろう。さらには献身的な保護者のサポート」

 

 バキッ

 

 その音はシロさんの左腕から聞こえた。

 

「何の真似だい?和光風人君」

「悪いけどさ。オレらにはアンタらが殺せんせーを殺してもメリットがねぇんだわ」

「メリット?ははっ。地球が救われるという重大なメリットがあるじゃないか」

「はっ。言ってろシロクロ野郎。殺せんせーの言葉で分かったよ。あのタコにもアンタにも聞くことは山ほどある。今殺されては困るんだわ」

「そうかい」

「まぁ……卑怯だなんて言わないですよね~シロさんも外野からの援護しましたし~僕はその援護を止めただけでイトナ君には直接攻撃してないですし~」

 

 あのリングに乗り込んでもいいけど、どうせイトナ君じゃ、殺せんせーを殺れない。まぁ、殺されたらその程度の存在ってだけだ。僕らのせんせーは。

 

「確かにこの形式での暗殺というのはよく計算されている。おまけに試合に勝たねば貴方たちはなにも話しそうにありませんからね」

「まだ勝つ気でいるのかい?」

「シロさん。二つ計算に入れ忘れていますよ」

「確かに和光風人君の乱入は計算外だった。でもそれがどうした?その程度で狂うほど私の計画は作られてない。やれ。イトナ」

 

 そして、イトナ君の攻撃が殺せんせーに刺さる。

 

「な……っ!」

 

 ……が。ダメージを受け溶けたのはイトナ君の触手の方だった。

 

「おや~?落とし物を踏んづけてしまったようですね~」

「本当だね~僕らのナイフ。いつの間にか落としちゃったみたい~」

 

(((い、いつの間に……!)))

 

 皆『いつの間に!?』とか思ってるだろうね~。まぁ、僕がシロさんのところ行くまでに何人かのをスッておいて、それをハンカチにくるんで一瞬で殺せんせーに渡してって、感じかな?

 そして脱皮した皮を被せられるイトナ君。触手を失って動揺していたようだ。

 そのまま抵抗するも抜け出せず、脱皮された皮に包まれて窓をぶち破り外に投げられる。

 

「先生の抜け殻で包んだからダメージは無いはずです……が、君の足はリングの外に着いている。せんせーの勝ちですねぇ~」

 

 せんせーは顔色を緑の縞々に変化させてニヤニヤと笑っている。うわぁ~ムカつく~。

 

「ルールに照らせば君は死刑。もう二度と先生を殺れませんねぇ。生き返りたいのならこのクラスで皆と一緒に学びなさい。君と私の勝敗を分けたのは経験の差です。君より少しだけ長く生き、少しだけ知識が多い。この教室で先生の経験を盗まなければ君は私に勝てませんよ」

「勝てない……俺が、弱い……?」

 

 殺せんせーの話の聞いて、イトナ君の反応は……

 

「黒い触手!?」

「やべぇ、キレてんぞあいつ!」

 

 完全にキレている。

 イトナ君は血走った目で外から一気に跳躍し、壊された窓縁に降り立ち、再び跳躍。狙うは殺せんせー。

 

「俺は、強い。この触手で、誰よりも強くなった。誰よりも…………ガァッ!!」

 

 怒り任せに雄叫びを上げて突っ込んでくるイトナ君。しかし、殺せんせーのところに行きつくことは無かった。

 隣から聞こえたピシュッ!という音。その音の直後イトナ君は崩れ落ちてしまう。

 

「……すいませんね、殺せんせー。どうもこの子はまだ登校できる精神状態じゃなかったようだ。暫く休学させてもらいますよ」

 

 殺せんせーがイトナ君を連れてこうとするシロさんの服を掴み止めようとするが、せんせーの触手が溶けてしまう。そしてそのまま去っていくシロさん。僕らは誰も止められなかった。ただ眺めることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イトナ君の暗殺終了後。僕らは後片付けをしていた中、殺せんせーは一人、教卓の前で顔に手をやり恥ずかしいと連呼していた。

 

「シリアスな展開に加担してしまったのが恥ずかしいのです。先生、どっちかと言うとギャグキャラなのに」

「自覚あるんだ」

「それに真面目な話しようとしても風人君がいつも壊してくれたからよかったのに、今日はそれもなかったですし」

「酷いよせんせー!僕のことそんな風に思ってたの!?」

 

 酷い!この言葉は僕が夜枕を濡らして寝ることを決定させたよ!

 

「……でも驚いたわ。あのイトナって子、まさか触手を出すなんてね」

 

 ビッチ先生が真面目なことを言って、空気は変わる。この言葉を切っ掛けに殺せんせーの恥じらいは収まり、片付けをしていた皆の手も止また。クラス全員の視線が殺せんせーへと自然と集まる。

 

「……ねぇ殺せんせー」

「説明してよ。あの二人との関係を」

「先生の正体、いつも適当にはぐらかされてきたけど……」

「あんなの見たら聞かずにいられない」

 

 殺せんせーの正体。おそらく開けてはならないパンドラの箱。ブラックボックスだ。皆が意識的に、また無意識に逸らしていたその箱の前に立つ僕ら。

 皆に詰め寄られた殺せんせーは、観念した様子で語り始める。

 

「…………仕方ない。真実を話さなくてはなりませんねぇ。実は先生…………人工的に造り出された生物なんですよ」

 

 ……半分……か。

 

「…………だよね。で?」

「にゅやッ、反応薄っ!これ結構な衝撃告白じゃないですか!?」

 

 皆の反応は薄かった。

 

「……つってもなぁ。自然界にマッハ二十のタコとかいないだろ」

「宇宙人でもないのならそん位しか考えられない」

「で、あのイトナ君は弟だと言っていたから先生の後に造られたと想像がつく」

 

 すると渚が語り始める。

 

「知りたいのはその先だよ、殺せんせー。どうしてさっき怒ったの?イトナ君の触手を見て。殺せんせーはどういう理由で生まれてきて、何を思ってE組(この場所)に来たの?」

 

 殺せんせーの核心に迫る疑問をぶつける渚。

 

「…………残念ですが、今それを話したところで無意味です。先生が地球を爆破すれば、皆さんが何を知ろうが全て塵になりますからねぇ」

 

 殺せんせーは笑みを浮かべる。笑顔じゃない。どちらかというと獰猛な笑みだ。

 そりゃそうだ。真実を知ってもどうにもならない。だって、地球が爆破されれば変わんないもん

 

「逆にもし君たちが地球を救えば、君たちは後でいくらでも真実を知る機会を得る。もう分かるでしょう。知りたいならば行動は一つ……」

 

 せんせーは表情を戻し、言った。

 

「殺してみなさい。暗殺者(アサシン)暗殺対象(ターゲット)。それが先生と君たちを結びつけた絆のはずです。先生の中の大事な答えを探すなら、君たちは暗殺で聞くしかないのです。質問がないなら今日はここまで」

 

 そう言って教室から出て行ってしまった。あ、

 

「せんせー!日誌まだ提出してない!あ、待って~!」

 

(((平常運転に戻ったな……)))

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