暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 作:黒ハム
そして球技大会当日となりました。
『それでは最後に、E組対野球部選抜の余興試合エキシビションマッチを行います』
放送を受けて僕らE組と野球部がそれぞれグラウンドに入っていく。僕らジャージなのに向こうユニフォームって。気合入ってるなぁ~
準備を終え整列。先頭に並んでいた相手主将が杉野に話しかけている。
「学力と体力を兼ね備えたエリートだけが選ばれた者として人の上に立てる。お前はどちらも無かった選ばれざる者だ」
学力いるけど、体力っているの?
とりあえず、挨拶を終えたのでベンチに戻ってきた。すると、辺りを見回した菅谷君が疑問を口にする。
「そーいや、殺監督どこだ?指揮すんじゃねーのかよ」
「あそこだよ。烏間先生に目立つなって言われてるから。遠近法でボールに紛れてる」
え、遠近法……。ちなみに指示の出し方は顔色らしい。いや。顔色変化させたらバれるでしょ。あ、殺監督の色が変わった。
「何て?」
「やっほ~せんせー」
「元気かい~?」
僕らが手を振ると地面に隠れる殺せんせー。恥ずかしがり屋?
「えーと、あれは『殺す気で勝て』ってさ」
え?そんな指示まであったの?どんだけ作ったの。
でも、この言葉ほど僕らを殺る気にさせてくれる言葉はない。
「よっしゃ、殺るか!」
「「「おー!」」」
とりあえずE組の先攻。僕はベンチでのんびり観戦だ~。
「やだやだ、ドアウェイで学校のスター相手に先頭打者かよ」
ちなみに愚痴りながら打席に向かう一番打者は木村君だ。
そして一球目。評判通りの豪速球に木村君はバットを振らず見送る。しかし、二球目。殺監督の指示通り難なくバントを成功させ、持ち前の俊足によって一塁へと出塁。このことに野球部の面々からは苦々しい表情が漏れる。
続いてE組の二番打者は渚。プッシュバントで捕球しにきた相手の脇を転がして出塁。第三打者である磯貝君もバントを決め、ノーアウト満塁と流れは僕らに来ている。
これには野球部だけでなく。観客からもザワつきが聞こえ始めた。
「作戦通りだね~」
「そ~だね~あ、そっちいったよ」
「おっけー」
ちなみに僕とカルマは協力して大型モンスターを狩っている。
何故、彼らがあそこまでバントが狙い通りできるか。単純。僕らは時速300kmの球を投げられる化け物相手に練習させられたからだ。
ノーアウト満塁。この状況でE組が迎える四番打者は野球経験者の杉野。そして杉野は最初からバントの構えを取る。それにより、野球部からは動揺が伝わってくる。まぁ、そりゃぁここまでバントしかやってないしね。当然かな。
相手のピッチャーが投げると、バントの構えを取っていた杉野だったが、投球されたと同時に打撃へとチェンジ。狙いすました一撃を思い切り叩き込み、ボールは深々と外野まで突き抜けた。ボールが戻って来る頃には杉野は三塁まで出塁、残りの三人はホームに帰ってきていてE組の三点先制。
「あーあ。これは僕らの出番あるかな~」
「どうやらあるみたいだよ」
そう言って、向こうのベンチを指さすカルマ。
そこには泡を吹いて倒れた野球部顧問。医務室にグッバイ。そして代わりに理事長先生の姿が……え?
「もうラスボス戦~?」
まだ一回の表、四人しか回ってないよ~?はやいはやい~
『え、えー今入った情報によりますと野球部顧問の寺井先生は試合前から重病で』
いや、たかだかエキシビションの為になんで重病人が監督してんだよ。
『生徒たちも先生が心配で試合どころでは無かったとのこと』
じゃあ、最初から棄権しとけよ。
『それを見かねた理事長先生が急遽指揮を取られるそうです』
おっと。こりゃあ、マズイ。
五番の前原君がバッター席に立つ……すると、普段の野球ではまず見ることのない光景がそこにはあった。
『こ、これはなんだ!全員内野守備!』
あーあ。
「バントしかないって見抜かれてるなぁ」
「つってもダメだろ!?あんな至近距離で!」
「ルール上ではフェアゾーンどこを守っても自由だね」
「まぁ~審判が絶対だからダメって言えば終わりだけど……どうせ審判向こう側でしょ~」
五番前原君はバントを試みるも打ちあげてしまいワンアウト。
六番岡島は殺せんせーに策を求めるも、ワンツーと同じ顔でスリーで打つ手なしと言わんばかりの表情だ。そのまま三振でツーアウト。
七番千葉君も何もできずにそのままスリーアウト。一瞬で流れが向こうに行った。
「さぁ~守備だ~」
と思うも一回裏。杉野が三者奪三振?で、何もせずに交代となった。
二回表、八番カルマから打つのだが……
「どうした?早く打席に入りなさい」
打席に立ってない。何してんの~?
「ねぇーこれズルくない?理事長センセー。こんなに邪魔な位置で守ってんのにさぁ。審判の先生も何も注意しないの」
カルマ抗議する。
「お前らも何にも思わないの?ははっ。そうか。お前らバカだから守備位置とか理解してないんだね」
カルマ観客を怒らせる。『小さいことでガタガタ言ってんじゃねぇよ!』とか『エキシビションの癖に守備にクレーム付けてんじゃねぇよ!』とか言われている。うわぁ。やっちゃったねぇ。
その姿勢に殺監督は丸サインを出している。アンタの策かい。
で、カルマが三振でアウトになり続く九番。
「やっと僕の出番かぁ~」
バットを持ってバッターボックスへと向かう……が。
ズコッ
「あぅ……!」
思い切り躓いてこけてしまう。
「お、次は神崎ちゃんのペットが出るみたいだね」
「ペットじゃないから!」
はぁ……ペット扱いって、風人君の評価というか価値がドンドン下がってるような……
ちなみに女子の方は負けて、男子の応援に全員で来ている。
ズコッ
「あぅ……!」
と、いつも通り何もないところで転ぶ風人君。あーやっちゃった……
(((あ、コイツダメだ……)))
と、E組女子の心が一致した。
「アイツって運動神経悪くないんじゃないの?カラスマ」
「あぁ。悪くはないはずなんだが……」
むしろ私的にはさっき守備に行く時に転ばなかっただけ褒めてあげたいです。って、ここまで来るともう重症な気がし始めました。手遅れかな?
『ストライク!』
一球目。全く動かずに見送る。
「あーやっぱアレでは無理か」
「だね。殺せんせーの作戦も見破られてるし」
と、思い思いに言ってるが私だけは何か違和感を感じていた。
『ストライクツー!』
……やっぱり。
「風人君……何か言ってる?」
「え?」
「何か口元が動いているから……」
さすがに、大声じゃないけどあの人が最初に投げた時からずーっと、何か言ってる。
『ファール!』
三球目。二球目までと違いバットを振る風人君。ボールには当たったもののボールはあらぬ方向へと飛んでいく。
そして四球目。風人君はバットを振るい、
カキーンッ
ボールが当たった音がする。打球はそのまま遠くまで飛んで行き……
『ほ、ホームラン!』
ホームランです。
普段の感じというか、別に喜ぶわけでもなくのんびりと一周回って……
ズコッ
「ふぎゃっ!?」
ホームベースを前にこけていました。
「へぇ~こりゃあたまげたわ~」
「だね~皆打てなかったのに」
「打った上にホームラン」
「中々やるじゃない」
(((最後に転ばなければカッコよく終わったのに……)))
あれは、完全に狙っていた。まぐれじゃない。
(ヌルフフフ。風人君の強みは動体視力の良さと分析力にありますからねぇ。彼には打てる力もありましたし、球種がストレートだけに限られた以上、彼が点を取れるのは必然でした。流石ですね~まぁ、最後にコケるなど締まらないのも御愛嬌ということで)
その後は二人が三振。結局打てたのは風人君だけ。
二回表も終わり現在は4対0でE組優勢。しかし、この後、野球部からの反撃に苦しめられることになるのでした。