暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 作:黒ハム
時は少し戻り、球技大会の三日前。
「風人君」
「な~に?」
僕はバットで素振りをしている。
「君はやはり動体視力が中々に高いですねぇ」
「まぁね~」
ゲームやってたら自然に身についた。
「ホームラン打ちたくないですか?」
「どっちでもいいよ~」
「にゅや!ここは打ちたいと言いましょうよ!」
えぇーなんでもいいんだけどなぁ~。
「というか、僕らバントの練習しかしてないじゃん~」
「ヌルフフフ。大丈夫ですよ。君に教えるのはどう打ったらホームランになるのか。それを掴んでもらうだけです」
「それが掴めたら苦労しなくない~?」
「ヌルフフフ。ですから……」
そして現在。二回裏。
「風人凄いね~あんなの打てるんだ」
「まぁ、彼が球種を絞り、速度も同じだったからねぇ~。ここ三日くらい。同じ球しか練習してないもん~」
流石に最初の一回二回は様子見と変更点の洗い出し、速度が少し上がってたのは想定外だったけど別に対応できたので問題なし。三回目で振ってみて感覚を掴んで四回目にズドーン。まぁ、このエキシビションの野球は三イニングだからもう僕の打席まで回ってこないだろうし、回ってきたとしてもあの理事長先生なら何かしらの策を講ずるだろう。
要するに一回限りの不意打ち奇襲作戦である。
「どうりでバントの練習してないわけだ」
「そういうこと~」
と、呑気に話を終え、ポジションに戻ると守備のぼろが露呈しまくり、徐々に追い詰められる。おまけに僕の方にあまり飛んでこないああたりさっきので僕の身体能力の高さを分かったようだ。暇だな~
「で、二点取られて三回の表になったね」
「というか、彼。風人にホームラン打たれたのに動揺してないね」
ほんとそれね~動揺すると思ったのにむしろ球速上がってね?理事長先生の
『ストライクスリー!バッターアウト!』
やばっ。あの杉野が掠りすらしなかったよ。
「ヤバい。さっきまでとまるで別人だ」
「だね~僕のホームランに動揺してくれればよかったものの」
殺監督も僕がホームランを打つことで相手のピッチャーに精神的な揺さぶりをかけるのも一つの狙いだったのに、うまいこと理事長先生にやられた。あの人やべぇーなぁ。
「あーやっぱ打てないか」
打席に立つ前原君。しかし、バットを振るだけで掠りすらしない。と言うか、あれ、バットに当たってもバットが折れるんじゃね?まぁ、殺せんせーの球じゃあるまいし、それはないか。
『ストライクスリー!バッターアウト!チェンジ!』
そして、三回の裏。僕らの守備。ここを守り切れば勝てる……が。
「橋本君。手本を見せてあげなさい」
手本?何かするの?
そして打席に立つ。すると杉野が投げた球を……。
『あーっと!セーフティバント!今度はE組が地獄を見る番だ!』
バントで返される。普通なら素人相手に大人げない!と野球部側が叩かれるだろう。
だけど、僕らが一回の表でバントをしていることによって『手本を見せる為』という大義名分が出来る。あの理事長先生、僕らの策ですら自分の有利な方へと持っていく……やっぱり強いな。
『さぁ、ノーアウト満塁!ここで迎えるバッターは我が校が誇るスーパースター!進藤君だ!』
「絶対ドーピングしてるよね!?」
「踏みつぶしてやる……杉野ォォオオオ!」
思わずツッコんでしまう。いや、あの溢れるオーラ。ヤバそうな目。怪物のような唸り声。間違いない。ドーピングでなければ何かヤバい薬を使ってるよ!
「風人~ちょいちょい」
カルマに呼ばれてトコトコと僕は杉野のところに行く。
「殺監督からの指令~」
『さぁ、試合再開……ですが』
あまりのことに観客がざわつき、実況も止まる。
『こ、この前進守備は……!』
理由は簡単。僕とカルマが前進守備をしているからだ。
「俺らは明らかにバッターの集中を乱す位置に守っている。でも、さっきそっちがやった時、審判は何も言わなかった」
「それに観客も『小さいことでガタガタ抜かすな』とか『エキシビション如きで守備位置にクレーム付けるな』とか言ってたよね~だからさ」
「「文句ないよね?理事長(先生)?」」
まぁ、文句は言えないはずだ。
「ご自由に。選ばれた者は守備位置ぐらいで心を乱さない」
「へぇ~言ったね」
「じゃあ、遠慮なく~」
僕らは理事長先生にも許可を貰ったのでさらに前進。
『ち、近い!前進どころかゼロ距離守備!振ればバットが当たる距離だ!』
あまりのことに目を丸くする
「僕らのことは気にしないで打っていいよ~すーぱーすたーさん?」
「そうそう。ピッチャーの球は邪魔しないからさ」
これでカルマの後頭部とかお尻にボールが当たったらマジで笑える。(僕の)笑いを誘うためにやるんだ杉野!
「くだらないハッタリだ。構わず振りなさい。進藤君。骨を砕いても打撃妨害を受けるのはE組だ」
ニコニコ。さぁ、こんな状態でバットを振れるかな~?
杉野がボールを投げ、
『ストライク!』
(カルマ君の動体視力もE組ではトップクラス。また二人とも度胸もトップクラスですからねぇ。バットを躱すぐらい朝飯前ですねぇ)
「ダメダメ~そんなに遅いスイングじゃあ当たらないよ~」
「そうそう。だからさ……俺らを殺すつもりで振ってごらん?」
もうこの時点で進藤君は理事長先生の戦略についていけなくなっただろう。恐怖している様子が手に取るように分かる。そんな彼に対し、僕らは――
「「…………(☻)」」
――笑いかける。まぁ、本人に僕らの事を見る余裕なんてなさそうだけど。
杉野の二球目。それを悲鳴を上げながら振るう。バットにボールは当たったがその場でボールはワンバン。飛んだところをカルマが素手でキャッチ。
「渚君!」
そのまま渚に投げ渡して、渚はホームベースをタッチし、ワンアウト。
「次、三塁~」
三塁への送球。相手ランナーが来るより早くボールは行きツーアウト。
「木村。次、一塁。ランナー走ってないから焦らなくていいぞ」
「了解」
木村君が一塁へ送球。危なげなくスリーアウト。
『と、トリプルプレイ。ゲームセット。なんと、な、なんと……E組が野球部に勝ってしまった……』
いぇーい。
「ナイス挑発、カルマ~」
「ナイス煽り、風人」
パンッ
とハイタッチするも、カルマの方がかなり高いので僕はわざわざジャンプすることになる。
「渚もお疲れ~」
「お疲れ二人とも。本当にあんな近距離でやるとは思わなかったけど……」
だって、そうしないと威圧できないじゃん。
そして帰り道。
「疲れたぁ~」
「お疲れ風人君」
「うん~」
「カッコよかったよ」
「ありがと~」
「でも、最後のは危険じゃないかなぁ?」
それは否定しない。普通の人ならあんなことしないだろう。
「……全く。女子の方でも皆『大丈夫かな』って心配していたよ?…………最初は」
最初は?
(まぁ、その後は『あの二人だし大丈夫か』とか『むしろあのバッターが可哀想』とかついには『バットが当たれば性格とか治るんじゃね?』で『それだ!』ってなっていたけど)
「大丈夫大丈夫~なんたって僕らだからね!」
「はぁ……私としては凄い風人君が心配だったんだよ?」
どこか心配される要素あったっけ?
(一回目振った時とか直視できなかった。あまりにも心配過ぎて後少しでどうかなりそうだった)
「もう危険な真似はしない。いい?」
「えぇー人生スリルも大切だよ?」
スリルあり。笑いあり。楽しめる時に楽しまなきゃ勿体無い。
「次危険な真似したらお仕置きだからね」
お仕置きとお説教は何が違うのか。ちょっと疑問に思った。
「えぇー」
というか、そんなに危険な真似はしないと思うんだけど……ねぇ。あれ?これもしやフラグ?