暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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新任の時間

 七月になりました。

 

「視線を切らすな!次にターゲットがどう動くかを予測しろ!全員が予測すればそれだけ奴の逃げ道を塞ぐことになる!」

 

 今日も太陽の下暗殺訓練です。現在はカルマとペアになってナイフを振るう。

 

「というか烏間先生が前より手加減してくれなくなったんだけど~」

「あの人は丁度いい手加減をしてくれてるよ。そりゃあ当てられなくなるのも分かるよ」

 

 烏間先生に当てる時はペアか単独のどちらかを選べるが、僕とカルマは基本単独。理由としては単純。相手に合わせるのが難しいから。僕らみたいなトリッキーなタイプの人間は即興で何かとやることも多いから合わせる方が負担かかりまくりである。

 まぁ、問題児は問題児らしく問題児と仲良くやっていますよ~っと。

 

「へぇ~当てさせてくれないね」

「風人こそ。割と本気出してんのに」

 

 お互い。あの手この手でナイフを当てようとするが、一向に当たらない。すると、

 

「ケホッ……」

 

 渚が烏間先生の防御で吹き飛ばされた。

 

「……いった……」

「すまん、ちょっと強く防ぎすぎた。立てるか?」

「へーきです」

 

 烏間先生が駆け寄りながら心配してる。手加減でもミスったのか?渚も笑いながら上体を起こして立ち上がれてるから大事には至らないだろうけど……。うーん。あの人がそんな些細なことでミスしたのか、それとも……

 

「他事考えてる余裕ある?」

「ないね~」

 

 まぁ、今はいいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 体育の授業の終わりを告げる鐘が鳴る。

 

「いやーしかし当たらん」

「隙なさすぎだぜ」

 

 今日もいつも通りトリッキーに攻めたけど当たらなくなってきた。うーん。ナイフ五本使えば動揺するかなぁ?

 

「せんせー。放課後皆でお茶しようよー」

 

 倉橋さんが烏間先生にお誘いをかける。が、

 

「誘いは嬉しいが、まだ仕事が残っていてな」

 

 と、断られてしまう。

 

「私生活も隙がねぇな」

 

 ほんとね。

 

「ていうか、私たちとの間に壁っていうか……距離を保ってるような」

「私たちのこと大切にしてくれてるっていうのは分かるけど、でもそれって、ただ任務だからなのかな」

 

 烏間先生に対する気持ちを口々に漏らす。

 そんな中、烏間先生の前に、何か大量の荷物を持った男の人が現れた。

 

「よぉ、烏間!」

 

 うーん。知り合い?

 

「今日から烏間を補佐して働くことになった鷹岡明だ。よろしくな。E組のみんな」

 

 ふーん。

 そして、グラウンドまで降りてきてご丁寧にビニールシートを引いた後、その荷物の中身を並べる。見るとそれは高級なスイーツばっかりだ。

 …………ふーん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君はいいのか?」

「別に~。僕、あの人のこと胡散臭すぎると思うので~」

「そうか」

「明日の体育からあの人が担当ですか~?」

「そのようだが……」

 

 窓から見ると、グラウンドではみんなでスイーツを仲良く食べている。……カルマもどっか行ったし、僕は教員室の方で烏間先生と話している。

 

「まぁ、僕は甘いもので釣られて気を許す程、甘くはないですよ?」

 

 このクラスは気を許せる人が多い。でも、あの人はダメだ。

 貼り付けたような笑顔。心の奥に燻ぶる野心。どうやってもあの人は取りつくろってるようにしか見えない。

 

「先生~。僕、帰りますね~ばいばーい」

 

 さっさと着替えて教室から出る。

 

「あれー?風人も今帰り?」

「ん~?カルマ~そうだよ~」

 

 すると山の中腹で、カルマと出会う。あ、そうだ。

 

「律。有鬼子に『カルマと帰ったから~』って送っておいて~」

『分かりました!』

 

 うんうん。やっぱり便利だね、モバイル律。

 

「えぇー俺がお前の保護者やるの?」

「やらなくていいよ~」

「じゃあ、ジュース買ってきて」

「君は保護者の意味を履き違えていないかい?」

「保護者は保護者でしょ?ほら、世話してやってんだからさっさと働けって言える立場の」

「それ何か違くない!?」

「ははは。でも風人の場合、神崎さんには逆らえないでしょ。お前の保護者なんだから」

「別に~逆らえるし~」

 

 何かこのやり取り修学旅行の時にもやったような……。

 

「で、風人は何で行かなかったの?甘党でしょ?」

「そうだよ~。そういうカルマは何で~?」

「うーん。気分が乗らなかったから?」

「じゃあ、僕も今日はそういう気分じゃなかったってことで~」

「オッケー」

 

 なるほど。多分同じ考え……とまでは行かなくても割と近いだろう。

 

「でも、明日の体育からあの人が担当だって~」

「えぇー。……サボろ」

「へぇーカルマもサボるつもりなんだ~」

「風人もか。まぁ、俺はあの人より烏間先生の方が良さそうだしね」

「それ同感~」

 

 どういうスタンスでいくかは知らない。でも、そんなのどうでもいい。

 嫌いな先生の授業をサボる。

 ここが暗殺教室であれ、たったこの一言で済む。他に理由はいらないし、運がいいことにあの人は烏間先生の補佐。教えるのは体育くらいだろう。別に体育(訓練)だったら放課後とか早朝に烏間先生に頼めば稽古くらいしてくれるだろうし、技術も教えてくれるだろう。あの人に教えてもらう必要がない。

 

「あの人って防衛省の人だよね~?」

「多分ね。烏間先生が知っているっぽい感じだったから」

「……じゃあ調べれば出て来るか」

 

 と、こんな感じで話をしながら帰ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の体育の時間です。今日から烏間先生に代わり鷹岡先生が教えるそうですが、風人君が学校を初めてサボりました。

 朝、いつもの時間に風人君の迎えにいったけど一向に出て来る気配がないので、風人君のお母さんに聞いたところ、『あれ?あの子はもう出かけたよ?』と言われた。それで学校に来ているものだと思ったけど、居なかった。どこかで迷子になってるかと心配して、とりあえず律に聞いてみたところ『今日はサボる~』とのことらしい。

 なるほど、今回はしてやられた。今度から律に風人君が家を出る時間でも教えてもらおう。……って、これだけ聞くと私って風人君のストーカー?それは違うと思うけど……

 

「よーし。今日からはちょっと厳しくなるかもだが、終わったらウマいもん食わせてやるからな」

 

 よく見るとカルマ君も居ない。……まぁ、あの二人は何か似たようで互いに違う存在だからなぁ。もしかして、一緒にサボってる?……ってそれはないか。カルマ君は学校には来ていたし。

 

「さて、訓練内容の一新に当たって、新たな時間割を組んだ」

 

 配られる新たな時間割。それを見ると、月曜から土曜まで、しかもどの日も最低でも4限から10限までは訓練で埋め尽くされている。一言で言うなら異常な時間割。

 

「うそ……だろ」

「10時間目……?」

「夜九時まで訓練……?」

 

 何を言ってるのこの人は……?このカリキュラムに付いて来られれば能力は上がると言っているがそういうことじゃない。私たちの本分は勉強。暗殺者である前に中学三年生。こんなのおかしい。

 

「では早速」

「ちょ、待ってくれよ!無理だぜこんなの」

 

 前原君から声があがる。

 

「これだけじゃ勉強の成績落ちるよ!」

 

 そして鷹岡先生の前で抗議する。

 せっかく、殺せんせーが私たちに勉強させるような環境を整え、やる気を出してくれているのに、こんなのじゃ……

 

「遊ぶ時間もねぇし、こんなの」

 

 次の瞬間。鷹岡先生は前原君の頭を掴み、腹に膝蹴りを叩き込んだ。

 

「カハッ!」

「出来ないじゃない。やるんだよ」

 

 地面に倒れ込む前原君。……なに、この人。

 

「言っただろ?俺たちは家族で俺は父親だ。世の中に父親の命令を聞けない家族がどこにいる?」

 

 恐ろしく高圧的。しかも、抜けたい人は抜けてもいい……その代わり新たな生徒を補充する。こんなの私たちを潰す気じゃ……

 すると、鷹岡先生は私たちのところに来る。

 

「家族みんなで地球を救おうぜ!なっ!」

 

 鷹岡先生の腕に捕まれる。……とても怖い。

 

「な、お前は父ちゃんについて来てくれるよな?」

 

 私に聞かれた。

 

「は、はい……」

 

 恐怖で今にも震えそうだ。でも、立ち上がって、鷹岡先生の方に向く。

 

「私は……」

 

 でも、私は嫌だ。この人の授業は受けたくない。だから、

 

「私は嫌です」

 

 私は正直に言う。嘘を付いてまでこの人の授業の方がいいだなんて言いたくない。

 

「烏間先生の授業を希望します」

 

 瞬間、手を挙げる鷹岡先生。私は迫りくる恐怖と痛みを耐える為に目を閉じる。

 

 

 パンッ!

 

 

 少し、背中に引っ張られた違和感を感じた直後、音が響き渡る。でも、不思議と痛みはなかった。

 

「おい、クソデブ。テメェ今有鬼子に何をしようとした」

 

 目を開けると私を庇うようにして立つ……

 

「答えやがれ……このクソ野郎」

 

 風人君がいた。声だけでわかる。今の風人君は……完全にキレてる。

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