暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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才能の時間

 頬に痛みが走る。凄い痛いがどうでもいい。

 

「何しようとしたって教育だよ」

「あぁっ?この威力、女子にふるっていいもんじゃねぇだろ?」

「ちゃんと手加減したさ」

 

 オレだからどうとは言わねぇが、この威力で振るうのは普通あり得ない。たとえ、手加減したと言われてもな。

 

「文句があるなら拳と拳で語り合おうか?そっちのほうが父ちゃん得意だぞ」

「そうかよ。それはよかった」

 

 オレは奴の目を見て告げる。

 

「それはオレも得意分野だ」

 

 瞬間、拳を振るう……が、そのまま拳を受け止められると同時にカウンター。

 それを避けるも脚払いで体制を崩され、そのまま蹴り飛ばされ地面を転がる。

 

「おいおいこの程度か?父ちゃんがっかりだよ」

 

 土の味がする。だが、知ったこっちゃない。

 

「生憎なぁ……オレの父さんは一人しかいねぇんだわ。そしてアンタみてぇなクソヤロウじゃねぇ」

 

 間合いを詰め、パンチと見せかけ蹴りを喰らわせる。

 

「バレバレだぜ?」

 

 再び受け止められる。が、今度は受け止められた足を支点にして逆足で蹴りを喰らわせようとするが、支点にしていた足を離され、地面に倒れ込む。そこを踵落としを喰らわせようとするが、転がって避け、背後に回る。そこから、脚払いを仕掛けるも、

 

「なっ!」

 

 見た目のわりにスムーズに動きやがる。まさか、跳ぶとはな……!そのまま膝が飛んで来ようとするがそれを避け体制を立て直す。

 

「まだまだガキだなぁ」

「言ってろ。バイオレンスファザーモンスター」

 

 コイツは律と朝から調べた情報だと、烏間先生の同期で優秀な兵を育て上げている。烏間先生以上の手腕だと見えるが、実態は暴力による恐怖での支配。だからコイツは、自分が教える奴に暴力を振るうことを厭わない。それが例え、中学生であろうと。

 

「口のわりに弱い」

「そうかよ。っていうかさ。アンタ……」

 

 オレは奴にとって致命的となるであろう一言を()()()言う。

 

「――烏間先生より弱いな」

 

 瞬間、顔めがけて拳が飛んでくる。それを避け、手を奴の喉元目掛け突き刺そうとするが、手首をつかまれそのまま引き寄せられ、

 

「ガハッ!」

 

 鳩尾に膝蹴りが入り、そのまま顎を蹴り上げられる。その瞬間、蹴りを放った足に当てるものの、そのまま飛んでいく。そして、追撃のために向こうが拳を構えたところで、

 

「そこまでだ。暴れたいなら俺が相手を務めてやる」

「烏間先生……」

「大丈夫か?和光君。それに前原君も」

「……オッケーです」

「へ、へーきです」

 

 身体を起こしてみるが、流石に今のは効いた。クソいてぇんだが。骨は折れてなさそうだな。

 

「そろそろ横やりを入れてくるころだと思ったよ」

「これは暴力じゃない教育さ」

「何が教育ですか……!」

 

 そう言いながらやってきたのは真っ赤にした殺せんせー。

 

「おいおいモンスター。俺には俺の教育方針がある。今のも立派な教育さ。暴力でお前や烏間とやりあう気はない」

 

 ……教育方針って、こんなに便利な言葉だっけ?

 

「やるならあくまで教師としてだ。どちらの教育が上か証明しよう」

 

 そう言うと、自身の荷物に向かっていく。

 

「お前の育てた生徒からイチオシを一人選べ。その生徒が俺と闘い、一度でもナイフを当てられたのであれば、お前の教育のほうが上だったと認め、俺は出ていく。ただし、使うのは……!」

 

 そういうと殺せんせー用のナイフを地面に置き、それを本物のナイフで突き刺す。

 

「本物の刃物だ。殺す相手は俺だからなぁ……!」

 

 一言で言えば狂気。だけど不思議と怖さはない。

 

「安心しな。寸止めでも当たったことにしてやるよ」

 

 なるほど。これが例のヤツか。奴はこうやって最初の訓練で新兵のうち一人にナイフを持たせ、今のように言った。そこを奴が素手でボコボコにし格の違いを思い知らせるというもの。そして恐怖を植え付け逆らえないようにする。

 

「さぁ、烏間。一人選べよ。嫌なら俺に服従だ」

 

 ナイフを投げ渡される烏間先生。そのまま先生は少しの間考えて、

 

「……渚君。出来るか?」

 

 僕の予想通り渚を選んだ。しかし、皆はその決定に驚く。

 

「俺は地球を救う暗殺任務を依頼した側として、君たちとはプロ同士だと思っている。プロとして君たちに払うべき最低限の報酬は当たり前の中学生活を保障することと思う。だから、このナイフを無理に受け取る必要はない。その時は俺が鷹岡に頼んで報酬を維持してもらえるように努力する」

 

 烏間先生はまっすぐ渚の目を見て話す。

 

「……やります」

 

 この条件であいつに勝てるのはお前だけだよ、渚。……というか律使えば解決じゃね?反則スレスレだけど。それかイトナ君。

 

「お前の目も曇ったなぁ、烏間。よりによってそんなチビを選ぶとは」

 

 阿呆が。曇ってるのはテメェの目だよ。

 

「同じチビでもさっきのやつの方がいいんじゃねぇのか?そう思わないか?」

 

 ん?僕に向かって話しかけてる?えぇ?それで代われとでも言うと思った?

 

「んーもしも渚が負けたらね~と言うわけで渚。気楽にやっちゃっていいよ~」

 

 僕はのんびり座る。アイツはまだ気付いていない。アイツは少なくとも今のままじゃ勝ち目がゼロだということに。

 

「大丈夫かな……渚君」

「大丈夫さ~。まぁ、見てなって~」

 

 どうやら渚も気付いたようだね。渚は僕みたく闘う必要はない。

 

 渚はアイツを殺せば勝ちなんだ。

 

 すると渚は笑顔で自然に歩いて近づく。鷹岡はそんな渚とぶつかる距離まで、構えたまま動かない。

 そして、渚はナイフを振るう。狙いは頸動脈……だが、鷹岡はすんでのところで避けた。まぁ、ギョッとし体制を崩したんだけど。その体勢を崩した時に服を引っ張り、背後に。鷹岡の目元に手を当てつつナイフは首に添えた。

 

「捕まえた」

 

 戦闘の才能なら、僕やカルマはこのクラスの誰にも負けないだろう。でも暗殺の才能では確実に渚に劣る。僕は比較的騙し打ちが得意だけど、もし渚がこの才能を伸ばしたとしたら僕は彼には暗殺で勝てない。

 

「あれ?峰打ちじゃダメでしたっけ?」

「そこまで。勝負ありですね、烏間先生」

 

 ナイフを取り上げる殺せんせー。

 

「まったく……本物のナイフで勝負をするなんて正気の沙汰ではありません。怪我でもしたらどうするんですか」

 

 そしてバリボリと食べる。ナイフを食べるとか正気の沙汰じゃないよ。 

 さてと、僕も皆のところで渚を祝おう~

 

「このガキ……父親も同然の俺に歯向かって、まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか!?」

 

 血管を浮かび上がらせ立ち上がる鷹岡。いや、まぐれだろうと勝ちは勝ちじゃん?

 

「もう一回だ!心も身体も全部残らずへし折ってやる!」

 

 今にも襲いかからん勢いだなぁ~

 

「……確かに、次やったら絶対に僕が負けます。でも今回のではっきりしました。僕らの担任は殺せんせーで、僕らの教官は烏間先生です。これは絶対に譲れません」

 

 あれ?ビッチ先生は?

 

「……本気で僕らを強くしようとしてくれてたのは感謝します。でもごめんなさい。出ていって下さい」

 

 おーさすが渚。言うね~

 

「黙っ……て聞いてりゃ、ガキの分際で……大人になんて口を……」

 

 完全に我を忘れ、襲いかかる鷹岡。しかし、渚の元に鷹岡が来ることは無かった。

 

「あ、さっきまでの分やり返したから、これで満足だよ?」

 

 襲いかかる鷹岡の脚を引っかけ顔を鷲掴みにして地面に叩きつける。

 

「ごめんね烏間先生~。僕もやり返しておかないと性分に合わないから~」

 

 僕らを庇うように前に出ていた烏間先生に謝る。

 

「……こちらこそ。俺の身内が迷惑を掛けてすまなかった。後の事は心配するな。俺一人で君たちの教官を務められるように上と交渉する。いざとなれば銃で脅してでも許可をもらうさ」

「「「烏間先生!」」」

 

 やっぱカッコイイなぁ~烏間先生は。

 

「くっ……やらせるか、そんなこと。俺が先に掛け合って……」

 

 起き上がろうとする鷹岡。

 

「交渉の必要はありません」

 

 そんな中響いた声。

 

「新任の先生の手腕に興味があったので、拝見させていただきました」

 

 いつから見てたんだろう?最初からだと……どういう評価になるんだろう?

 

「鷹岡先生、あなたの授業はつまらなかった。教育に恐怖は必要です……が、暴力でしか恐怖を与えることができないのならその教師は三流以下だ」

 

 アンタの方がこえぇよ理事長先生。あと、何の紙を咥えさせた?

 

「解雇通知です」

 

 わーお。

 

「此処の教師の任命権は貴方方にはありません。全て私の支配下だということをお忘れなく」

 

 荷物を持って帰る鷹岡。鷹岡正式にクビということに喜び合う僕らE組。

 

「はぁ……疲れたぁ」

 

 いたた。今まで何だかんだで忘れてたけど、色んな箇所にダメージ喰らってたの忘れてた。ついでに制服だし……あ、思い出したら凄い痛い。あ、ヤバい。

 

「ところで烏間先生?生徒の努力で体育教師に返り咲けたわけだし、なんか臨時報酬あってもいいんじゃない?」

「そーそー。鷹岡先生、そういうのだけは充実してたよねー」

 

 うわぁ。ちゃっかりしてるなぁ。

 

「……ふん。甘いモノなど俺は知らん。これで食いたいものを」

 

 烏間先生が財布を取り出した瞬間。それをスるビッチ先生。

 

「甘いもの~甘いもの~」

 

 殺せんせーが土下座しながら着いてきてるけど知らない~痛み?甘いもので忘れたよ~

 

「風人君、ちょっと」

「ありゃ?」

 

 と、思ったら襟元を引きずられて行く。

 

「誰かぁ……助けてぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、現在。なぜか僕は保健室のベッドの上で座らされています。ついでに言えば有鬼子に脱がされ上裸です。殺せんせーに頼んで僕らは後から合流すると有鬼子が言っていました。後、新品の制服を用意してもらうよう烏間先生にも頼んでいました。……行動早いなぁ。

 よく思い出せばあんだけ、蹴り飛ばされたり転がったりして、制服……もといカッターシャツが無事なわけなかった。切れて汚れておまけに血がにじんでいる。

 

「これでよし」

「ありがとね~」

 

 と言っても、自分ではこんなに傷だらけとは思わなかった。まぁ、些細なものが多いけど、それにしてもである。

 

「さて、皆のところにいこうか」

 

 殺せんせーに予備をとって来てもらったのでそれに着替えようと立ち上がろうとするが、

 

「風人君」

 

 何故か有鬼子に押し倒されました。そしてそのまま床ドン。いや、ベッドの上だからベッドドン?略してべッドン?え?でも、本当に何で?

 

「……言ったよね?」

 

 何を?

 

「風人君が傷付くのは見たくないって」

 

 あー修学旅行でですね、はい。

 

「あの時、風人君が居なかったら私は打たれていた。でも、だからって……」

「それでいいじゃん~。有鬼子に怪我がなかっただけで、僕はいいよ~」

「私がよくない!」

「…………」

「風人君。私は嘘までついてあの人の方がいいって言いたくなかった。暴力を振るわれることを分かったうえで言ったの。だから……」

「だから何?僕はあの人のこと最初に見た時から嫌いだった。別に、僕がその後戦ったのは結局自分のためだよ。だから、気に病む必要はない。たまたま有鬼子との間に割り込んでそのために僕が打たれた。それだけだよ」

 

 僕は、例えあの人が有鬼子に暴力を振るわなかったとしてもあの人のことは嫌いだった。たまたまなんだ。たまたまの産物でキレてボコられただけなんだ。だから、有鬼子が気に病む必要はどこにも無い。

 

「…………分かったよ。もうこの話はおしまい」

 

 そう言うと、納得してくれたのか、手を――

 

「えーっと、まだ何か御用でしょうか……」

 

 ――放してくれない。何か前にもあったっけ?こんなこと。

 

「お仕置き」

「へ?」

「次、危険な真似したらお仕置きって言った」

「…………あ」

 

 落ち着こう。落ち着くんだ僕。よし、ここは、

 

「今回のは危険な真似に入らない。だからノーカンだ!」

「入らないと本気で思ってるの?」

「うん!だって、防衛省のヤバい人に向かって近接戦闘を仕掛けて……」

 

 ……あれ?この時点でかなり危険じゃね?例えるなら素手でライオンとかに戦いを挑むものだ。

 

「……早く皆のところに……ね?お仕置きなんて……ね?ほ、ほらしても良いことないよ~?」

「……今から私がすることに抵抗しないでね」

「ちょ、ちょっと落ち着こう。話せばわかるよ~。ね?ね?」

「目を閉じて」

「い、いやー視界が塞がれると恐怖が……あ」

 

 手で覆い隠される僕の視界。あ、やべぇ。これかなりの恐怖だ。暗殺された時の鷹岡の恐怖が分かる。

 すると、頬に何かが当たる感触。そうそれは、何か柔らかい……

 

「ありがとうね。守ってくれて」

 

 耳元で囁かれる感じがする。彼女の吐く息が耳に当たってる感じがする。

 そして、手を放してくれ、視界が開ける。見ると目の前には顔をほんのりと赤らめた有鬼子が立っていた。

 

「じゃあ、着替えてくるから待っててね」

 

 そういうとささっと出ていく有鬼子。

 

「まさか……」

 

 僕は何かが触れたであろう場所を手で触る。まさか……ね。

 

「キスされた……?」

 

 僕は少々の間、放心状態に陥っていた。

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