暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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暗殺決行の時間

 食事を終えた僕らは、ホテルの離れにある水上チャペルに移動していた。

 

「さぁて殺せんせー、メシの後はいよいよだ」

「会場はこちらですぜ」

 

 四方は海。中に入っても壁とかがあり、逃げ場はないだろう。逃げるにはリスクがつきものだろうし。

 

「さぁ席につけよ、殺せんせー」

「楽しい暗殺、まずは映画鑑賞から始めようぜ」

 

 中に入るとテレビの横に立つ三村君と岡島君。

 殺せんせーは逃げ場がないことを分かってもまだ余裕そうだ。

 

「まずは三村が編集した動画を見え貰って、その後に触手の破壊権利を持った八人がせんせーの触手を破壊。それを合図にクラス全員で暗殺開始。これでいいですよね?殺せんせー」

「ヌルフフフ。上等です」

 

 ちなみに三村君と岡島はみんながご飯食べてる時も編集作業をしていた。お疲れ様です。

 そんな中、渚が殺せんせーに近づく。

 

「殺せんせー、まずはボディチェックを。幾ら周囲が水とはいえ、あの水着を隠し持っていたら逃げられるしね」

「入念ですねぇ。そんな野暮はしませんよ」

 

 あの水着というのは昼間に使ってたあの水着だ。完全防水かつたとえマッハで泳いでも耐えられる優れものだそうだ。

 

「さて、準備はいいですか?……遠慮は無用。ドンと来なさい」

 

 皆の表情が引き締まる。

 

「始めるぜ。殺せんせー」

 

 岡島が電気を消した。暗殺は既に開始している。

 僕は触手を破壊する権利を持ってる故、クラスの暗殺のトリガーとなる一人。殺せんせーや他の七人と共に動画を見ている。他の人たちは人数を把握させないようチャペルを出入りしている。……多分、千葉君と速水さんがここにいないことはバレバレだろうけどそれぐらいだったら支障はない。

 にしても、選曲といいナレーターといい三村君凄いなぁ。ついつい僕もこの画面に引き込まれ、

 

『…………買収は……失敗した』

 

 ……今写ってる画面は、トンボに擬態?している殺せんせーが顔をピンクにしながらエロ本の山の上でエロ本を読んでいる映像である。

 

「失敗したぁぁああっ!?」

 

 いや、何で買収したんだよアンタは。 

 その後も、女性限定のケーキバイキングに並んで連行されたり(アンタ何やってんの?)、無料のポケットティッシュを大量に貰って揚げて食ってたり(絶対美味しくないよね?それ)と、先生として……いや、生物としての尊厳がなくなるような動画を一時間見続けた……結果。

 

「せ、せんせー死にました……」

 

 精神的にだいぶやられたようだ。

 

『――――さて、極秘映像にお付き合い頂いたが』

 

 何だろう。二学期の終わりとかにバージョン2とか出来てそう。

 

『何かお気付きでないだろうか?殺せんせー』

 

 その言葉と同時に気付いたようだ。……床が既に水面下にあることに。誰も水を流す気配がしなかったのと映像のせいで分からなかっただろう。

 

「誰かが小屋の支柱を短くでもしたんだろ」

「船に酔って恥ずかしい思いして海水吸って……だいぶ動きが鈍ってきたよねぇ」

 

 席を立った僕ら八人は一斉に銃を構えて殺せんせーと向き合う。

 

「さぁ本番だ。約束だ、避けんなよ」

 

 寺坂の言葉。そして、

 

「開始!」

 

 磯貝君の合図で僕らは一斉射撃。そして、五秒後にはチャペルの壁が取り払われる。

 

「にゅや!」

「驚いてる暇はないよ~殺せんせー!」

 

 すかさず間合いを詰めて対せんせーナイフで攻撃を仕掛ける。殺せんせーが逃げようと周りを見渡した時、何人かのE組の面子が、水中から飛び出てきた。

 チャペルからフライボードによる水圧のオリへと環境を一瞬で変化させる。これにより触手の反応はさらに落ちる。

 しかも、上はみんなが肩を組んで一定の高さを保つために逃げられず、横は既に水の勢いが強く逃げだせない。無論、下は論外。

 

「ほらほら!いつもより遅すぎるよ!」

 

 これぐらいの速度なら見える。

 そんな中、触手破壊組の残りの七人はオリの外に。代わりに出てきたのは、

 

『射撃を開始します。照準・殺せんせーと風人さんの周囲1m』

 

 律である。律と外に出た七人が僕らの周りを囲むように射撃を行う。

 せんせーは当たる攻撃には敏感だ。だから、僕は囮でありとどめだ。僕一人がクラスの中で殺せんせーを殺そうと攻撃している。だから、僕に注意を多く向けさせ思考時間を作らせない。皆が張った弾幕に当たっても問題はないしね。

 

「ははっ。遅いよ~!」

 

 ナイフを軽く上に投げ、上を向いた一瞬の隙にしゃがんで足に貼り付けたナイフで攻撃。そのままバク転の要領で起き上がり落ちてきたナイフを蹴り飛ばして当てようとする。

 

(やはり、彼の動きは読めない。だが、彼は囮。最後のトドメを行うであろうスナイパー二人に意識を向けないための役回りだ。だから、そこを警戒していれば……)

 

『……ゲームオーバーです』

 

 来た。僕は床に落ちてるナイフを拾うためにしゃがむ。極自然に、そして素早く。これなら、殺せんせーに銃弾が……

 

 次の瞬間。

 

 殺せんせーの身体が激しい閃光と共に弾け飛んだ。

 

「うわぁ!?」

 

 そんなの予期してなかった僕は。思い切り吹き飛んで海に落ちた。皆も衝撃で吹き飛ばされている。

 でも、これは……

 

「大丈夫?風人」

 

 カルマがやって来る。

 

「うん~でも、これは……」

 

 今までとは違う。本当にやれたか?

 

「油断するな!奴には再生能力もある!磯貝君、片岡さんが中心になって水面を見張れ!」

「「は、はい!」」

 

 烏間先生からの指示が飛ぶ。とは言え、あそこから避けれたとは考えにくい。間近で見てたがあれは避けられないはずだ。

 

「あ、あれ!」

 

 茅野さんが指を指す。海面に気泡が出てきてその数は徐々に増え……

 

「ふぅ~」

 

 ……何か現れた。殺せんせーの顔が小さくなって現れた。

 

「これぞ先生の奥の手中の奥の手、完全防御形態です」

 

(((完・全・防・御・形・態?)))

 

 もうわけわからん。

 

「外側の部分は、高密度に凝縮されたエネルギーの結晶体です。肉体を思い切り小さく縮め、その分だけ余分になったエネルギーで肉体の周囲をガッチリ固める。この形態になった先生はまさに無敵」

 

 何そのチート。火山にぶち込んだら変わるかな?

 

「そんな……じゃ、ずっとその形態でいたら殺せないじゃん」

 

 まさしくその通りだ。

 

「ところがそう上手くは行きません。このエネルギー結晶は約一日ほどで自然崩壊します。その瞬間に先生は肉体を膨らませ、エネルギーを吸収して元の身体に戻るわけです。裏を返せば結晶が崩壊するまでの約一日、先生は全く身動きが取れません」

 

 つまり、自力で解除できないのかその形態は。……そりゃあ奥の手中の奥の手か。

 

「これは様々なリスクを伴います。最も恐れるのは、その間に高速ロケットに詰め込まれて、遥か遠くの宇宙空間に捨てられることですが……」

 

 そっか。確かにそれは凄いなぁ。

 

「その点は抜かりなく調べ済みです。二十四時間以内にそれが可能なロケットは今世界の何処にもない」

 

 これは完敗だ。どうすることもできないね。

 

「チッ、何が無敵だよ。何とかすりゃ壊せんだろ、こんなもん」

 

 寺坂が殺せんせーをレンチで叩く。……何で持ってたの?そんなもの。

 

「ヌルフフフフ、無駄ですねぇ。核爆弾でも傷一つ付きませんよ」

 

 あぁ、なんて残念だ。殺せんせーは僕らの様子を見て余裕そうにしているけど……あぁ、残念。

 

「そっか~弱点ないんじゃ打つ手ないね」

「だよね~あー本当にずるいよね~」

 

 陸に上がった僕ら二人。とりあえず、寺坂に殺せんせーを投げ渡すように要求する。

 受け取ったカルマは自身のスマホを殺せんせーの前に見せて、

 

「にゅやぁぁああ!手がないから顔が覆えないんです!」

 

 さっきのビデオを見せていた。

 

「ごめんごめん。じゃ、取り敢えず……そこで拾ったウミウシもくっつけといて」

「じゃあ、僕の拾ったウミウシもつけておくよ~」

「あと誰か不潔なオッサン見つけてきてー。これパンツの中に捩じ込むから」

「ついでにウミウシも~あー他の生き物でもいいよ~」

 

 さっき以上に楽しむ僕ら。しかし、あまりのことにクラスの皆もノリが悪い。

 そんな中、烏間先生が僕らから完全防御形態の殺せんせー(無抵抗弄り放題のおもちゃ)を取り上げる。

 

「……取り敢えず皆は解散だ。上層部とコイツの処分法を検討する」

「ヌルフフフフ、対先生物質のプールの中にでも封じ込めますか?無駄ですよ。その場合はエネルギーの一部を爆散させて、さっきのように爆風で周囲を吹き飛ばしてしまいますから」

 

 烏間先生が苦虫を噛み潰した顔をする。当然だ。殺せないし、打つ手がないのだから。

 

「ですが皆さんは誇って良い。世界中の軍隊でも先生をここまで追い込めなかった。偏に皆さんの計画の素晴らしさです」

 

 せんせーは僕らの暗殺を褒めてくれた。でも、誰一人その言葉で浮かれたり達成感を感じる人はいなかった。

 僕らは異常な疲労感と共にホテルに戻った。

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