暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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作戦の時間

 殺せんせーの暗殺に失敗した僕らは、各々着替えをしたりして、ホテルのデッキに集まっていた……が。全員が沈んで、体力も使ってまぁ、疲れた感じがする。

 僕もなんだかんだ言って、足元は水が張っていて不安定なところであんなに動いたからなぁ。

 

「大丈夫~有鬼子~?」

「大丈夫だよ。ちょっと疲れただけ」

 

 平然を装ってるが明らかに疲れた様子だ。まぁ、無理もないかぁ。

 というか欲を言えば僕もフライボードに乗りたかった。いや、訓練中に乗ったことあるけど、もっかい乗りたかったなぁ。

 

「しっかし疲れたわ~……」

「自室帰って休もうか……もう何もする気力ねぇ」

「んだよてめぇら、一回外したくらいでダレやがって。殺ること殺ったんだから、明日一日遊べんだろーが」

 

 確かに寺坂の言う通りだが……何かおかしくない?これ。

 

「ねぇ~有鬼子。本当に大丈夫~?」

 

 ついに返事をする気力がないのか?……って、ちょっと待って。有鬼子だけじゃない。明らかに異常をきたしてるのは何人かいる。それも一人や二人じゃない。

 

「……っ!?おい、ひどい熱だよ!」

 

 倒れ込もうとした有鬼子を支える。まさかと思い、周りを見ると、中村さんは渚の前で倒れたし、岡島は妄想だけでヤバい出血量(鼻から)、他にも何人か倒れている。

 それを見た烏間先生がフロントの人に尋ねるも、この島は何分小さいから小さな診療所はあっても病院はない。ッチ。打つ手なしかよ!

 

 prrrrprrrr

 

 そんな中、烏間先生にかかってくる一本の電話。

 

「何者だ?」

 

 烏間先生の顔が渋った。まさか、仕掛けた奴からか。

 

「律!烏間先生の電話を傍受及び通話者の逆探知!流して!」

『はい!』

 

 向こうでも茅野さんが同じようなことをしているが、くっ。何だよ一体。

 

「まさか、お前の仕業か」

『察しがいいな』

 

 聞こえてきたのは明らかに変声機を通したであろう声。

 

『人工的に作り出したウイルスだ』

 

 有鬼子を支えながら床に座らせ、奥田さんと共に近くで倒れてる倉橋さんとの二人の様子を見る。

 人工的に作り出されたウイルス……効果は個人差アリだが潜伏期間は一週間くらい。最後は全身の細胞がグズグズになり死を迎えるそうだ。

 こんな話聞いたことない。予想はしていたが治療薬は一種で犯人の持つオリジナルのみ。

 

「渚、これを先生に。電話の相手の場所だよ」

「うん」

 

 犯人は島にいる。だが、どっちが目的だ?せんせーを殺すことか?それとも僕らを殺すこと?どちらにせよ腑に落ちない点がいくつかある。まず、いつ感染した?三村君が感染者であることから、船上レストランではない。中村さんや寺坂組の半分が感染者であることから、今回の暗殺に置いての役目は関係ない。後は、最初の島での班別行動も、特定の班がかかってるってことはない。有鬼子は倒れたけど僕や奥田さんは感染してない。感染力はそこまで低い……なら、空気感染はないだろう。ということは残るは経口感染。………………なるほど。ウイルスにかかった場所はだいたい分かった。

 オリジナルの毒……となると相手は毒使いか?でもただの毒使いがこんな事するか?それにもしそうなら、相手は単独犯とは考えにくい。複数?いや、そもそもの問題、奴は何で全員を行動不能にしなかった?誰も自分が殺されることを警戒してない。だから、全員に毒を盛ろうとすれば出来たはずだ。一体、何が狙いだ。

 

「くっ……!」

 

 分からない。クソが、何を考えてるんだ一体……!

 通話を終えた烏間先生がテーブルに殺せんせーを抑えつけ怒りをあらわにしている。

 

「磯貝君、片岡さん。いずれにせよこのままの状況もよくない。倒れた生徒を寝かせられるよう布団を引いたり、手は打つべきだと思う」

「それもそうだな」

「分かった」

 

 奴の要求はこのクラスで一番背の低い男女。すなわち、渚と茅野さんに殺せんせーを持って山頂のホテルに来いというもの。

 

「意外に冷静なんだね。風人」

「こっちは有鬼子に手を出しやがった犯人への怒りでどうにかなりそうだよ、カルマ。でも、今回は怒りで解決できる問題じゃない」

 

 今必要なのは、暴力で解決することじゃない。今はこの溢れんばかりの怒りを胸の内に秘め、冷静に思考を張り巡らせることだ。

 

「どうするのがべストだと思う?」

「べストは分からないけど、最終目標は犠牲者ゼロ。無論殺せんせーも含めてだけど。それで終わらせること。最悪、殺せんせー以外が全員助かること。あのタコは僕らのうち誰か一人でも死ねば何が起きるか分からない」

「問題は相手は単独犯ではない。複数犯だ。何人いるかも不明な上に、一人倒しても意味がない」

「倒れたのは十人くらい。残った面子で戦おうにも相手が素人でない限り一人一殺はムリゲー」

「残った面子でいざ戦闘となった時に戦力になるのが俺、風人、寺坂。後は最強兵器の切り札として烏間先生」

「暗殺という意味では、渚にビッチ先生、射撃で千葉君に速水さん。指揮能力で磯貝君、片岡さんくらい。後は一般中学生より何かしらが強い程度」

 

 全員で束になって正面から戦うわけにはいかないしね。

 しかも、烏間先生曰く、あのホテルは裏取引やそういうものの場所に使われてるらしい。政府からの問いかけにもプライバシーの一点張りで答えようとしなくて、そういう裏の人たちを黙認している。いや、正確には政府のお偉いさんが絡んできて警察もうかつに手が出せない。伏魔島とはよく言ったものだ。

 

「そんなホテルが俺たちの味方をするわけがない」

「だね。彼らからすりゃ僕らなんてどうでもいい」

「どーすんスか!?このままじゃあいっぱい死んじまう!こっ、殺されるためにこの島に来たんじゃねーよ!」

「落ち着いて、吉田君。そんな簡単に死なない死なない。じっくり対策を考えてよ」

 

 動揺する吉田君を倒れている原さんが宥めて冷静さを取り戻させていた。でも、空元気だろう。それにタイムリミットが一時間しかない。じっくり対策を考えている時間もない。

 

「でも言うこと聞くのも危険すぎんぜ。一番チビの二人で来いだぁ?このちんちくりん共だぞ!?人質増やすようなモンだろ!」

 

 寺坂が渚と茅野さんの頭を叩く。言い方はあれだが、寺坂の言う通りだ。渚と茅野さんだけを向かわせるのにはリスクが伴う。いや、正確に言えば誰が行ってもリスクは伴う。相手の戦闘力が化け物……烏間先生以上となれば、僕とカルマが組んでも勝てるか怪しい。

 

「要求なんざ全シカトだ!今すぐ全員都会の病院に運んで――」

「……賛成しないな」

 

 怒りで荒れる寺坂に対して、落ち着いて反対意見を出したのは竹林君だった。

 

「もし本当に人工的に作った未知のウイルスなら、対応できる抗ウイルス薬はどんな大病院にも置いていない。運んだところで無駄足となれば患者のリスクを増やすだけだ」

 

 そう。問題は奴のオリジナルウイルスに対抗する薬なんて日本の……いや、世界のどんな病院にも置いてたりしない。それこそ運んでも打つ手なしの時間切れで終わり。何も残らない最悪な展開だ。

 

「対症療法で応急処置はしておくから、取引に行った方がいい」

 

 竹林君の言う通りだろう。でもこれにも問題がある。それは、取引に誰がいこうがそいつが無事に帰ってくる保証が無い。最悪なのは取り引きにいった奴らも捕まり、薬も渡されない。

 そうなったらもうゲームオーバーだ。クソ、何か手はないのか。

 

「良い方法がありますよ」

 

 思考を張り巡らせていたその時、殺せんせーが言葉をかける。律になにか下調べをしていたようだが……まぁいい。このせんせーの考える策は一番この状況を打破するのに適してるはずだ。

 

「元気な人は来てください。汚れてもいい格好でね」

 

 汚れてもいい?…………あーなんとなくその言葉で察しがついたよ。

 

「じゃあ、行ってくるね。有鬼子」

 

 僕は倒れている有鬼子のもとに行き、しゃがんで言葉を伝える。

 

「頑張ってね……」

 

 辛そうだけど最大限の笑顔を作って送りだそうとする。

 

「任せろ」

 

 だから僕も最大限の笑顔で応える。そして、有鬼子の頭を軽く撫でる。

 

「奥田さんは残るんだっけ?」

「は、はい。竹林君一人では大変でしょうから」

「そうか。任せたよ。有鬼子のこと……みんなのこと」

「はい」

「奥田さん……私から、一個お願い」

「何でしょう」

 

 僕は立ち上がり元気な人たちのところに向かう。…………絶対くたばるなよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 車へと乗り込んだ僕らは山頂に立つ『普久間殿上ホテル』の裏側、断崖絶壁の下を通る公道まで来たところで車を降りた。

 

「…………高ぇ……」

「だね~」

 

 断崖絶壁を下から見上げてみる。うわぁ。高いなぁ~ 

 

『あのホテルのコンピュータに侵入して内部の図面と警備の配置図を入手しました』

 

 うわぁ。やっちゃったよ。

 

『正面玄関と敷地一帯には大量の警備が置かれています。フロントを通らずにホテルへ入るのはまず不可能……ですがただ一つ、こちら崖を登ったところに出口があります。まず侵入不可能な地形ゆえ、警備も配置されていないようです』

 

 なるほどねぇ。そりゃあ、ここに警備置くだけ無駄だろ。

 

「敵の意のままになりたくないなら手段は一つ。患者十人と看病に残した二人を除いて、動ける生徒全員で此処から侵入。最上階を奇襲して治療薬を奪い取る!」

 

 だよね~知ってた。

 

「……危険過ぎる。この手慣れた脅迫の手口、敵は明らかにプロの者だぞ」

「えぇ。大人しく私を渡した方が得策かもしれません。……どうしますか?全てあなた方次第です」

 

 殺せんせーは僕らに委ねている。何を選択するのかを。

 

「これは……ちょっと」

「難しいだろ」

「ホテルに辿り着く前に転落死よ」

 

 ビッチ先生からも無理と判断され、烏間先生も難しい顔をして悩む。

 

「……渚君、茅野さん。済まないが――」

 

 が、僕らはその結果を聞く前に、

 

「いやまぁ、崖だけなら楽勝だけどさ」

「いつもの訓練に比べたらね」

「視界が悪いくらいでよゆーよゆー」

「調子こいて落ちないでよ」 

 

 断崖絶壁を登り始めた。

 まぁ、課題なのはこの壁を登り終えた後である。律のナビがあってもホテルの最上階までこの人数。見つからずに辿り着くのは困難だ。

 

「でも未知のホテルで未知の敵と戦う訓練はしてないから……烏間先生、難しいけどしっかり指揮を頼みますよ」

「ふざけた真似した奴らにキッチリ落とし前つけてやる」

「だね~ファイト、先生!」

 

 僕らの覚悟は決まった。後は烏間先生、貴方の判断次第だ。貴方が無理だといえば僕らはどうにもできないだろう。

 そんな僕らの様子を見て殺せんせーが烏間先生の背中を後押ししてくれる。

 

「見ての通り、彼らはただの生徒ではない。貴方の元には十六人の特殊部隊がいるんですよ」

「特殊部隊~響きカッコいいなぁ~」

 

 いいよね~そういう響き~

 

「……さぁ?時間はないですよ?」

 

 決断を促された烏間先生。数秒だけ瞑目すると、心配していた様子から一転して決意尾固めた表情で目を見開く。

 

「全員注目!目標は、山頂ホテル最上階!隠密潜入から奇襲への連続ミッション!ハンドサインや連携については訓練のものをそのまま使う!いつもと違うのはターゲットのみ!三分でマップを叩き込め!十九時五十分!作戦開始!」

「「「おう!」」」

 

 皆の息が一つに揃う。

 

「……ところで、誰が風人の御守りするの?」

「「「…………あ」」」

 

 ……そろう?




ここから始まる伏魔島のホテル編。
神崎さん(ヒロイン)の出番なしと風人君(主人公)の暴走(?)という二点を含んでいる予定です。
風人君の制御は……できるのか?
え?前半の真面目な風人君のままホテル潜入?いえいえ、そんなことないですよ。
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