暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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女装の時間

 おじさんぬ討伐に成功した僕ら。しかし、続く六階には問題があった。

 まぁ、簡単に言えば店の中を通って、警備の堅いであろう裏口のカギを開けて、次の階段に進まないといけないんだけど……うん。この集団じゃ目立つよね。

 

「先生たちはここで待ってて!私たちが潜入して鍵を開けるから」

「そうそう、こういうところは女子だけの方が怪しまれないもんね」

 

 女子たちの提案に烏間先生は、

 

「女子だけでは危険だ…」

 

 だよね~

 

「じゃあ、男子も二人程お供につけよ~」

「だね、それに女装すれば解決。というわけで渚君、風人。スタンバイ」

「待った。戦力的に考えるならカルマと寺坂が女装するべき」

「はぁ?よく考えろよ。寺坂と俺が女装できると思ってるの」

「うんうん」

「……はぁ、仕方ないなぁ。中間の策で渚君と寺坂の女装ね」

「分かったよ~。それで我慢するよ~」

「ちょっと待て!」「ちょっと待って!」

 

 すると、女装組から声が上がる。どうしたんだろう?

 

「渚はともかく俺が女装できるわけねぇだろ!」

「僕はともかく!?」

「何言ってんの寺坂?ふりふりのドレスを着れば皆お姫様さ☆」

「そうだよ!髪を伸ばして、顔を優しめな感じにして筋肉そぎ落とせば君も立派な女の子さ☆」

「ふざけんなよドS悪魔コンビ!お前ら本気で言ってるのか!」

「「もちろん!」」

 

 当たり前じゃないか!決して寺坂の女装姿を見て笑い転げたいわけじゃない。

 

「ああもう!今名前の挙がった三人!じゃんけんして負けた人!いいね?」

「僕は!?」

「渚は強制女装」

「拒否権なし」

「酷くない!?」

「ま、待てよ片岡!この三人だったら明らかに風人だろ!?」

「怖気づいたのか寺坂ー」

「逃げる気か寺坂ー」

「お・ま・え・ら・なぁ!」

 

 やれやれ困ったものだ。

 

「はいいくよ!最初はグー!じゃんけん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 店内は賑やかを通り越してうるさかった。

 

「ほら、男でしょ?ちゃんと前に立って守らなきゃ。渚君」

「無理。前に立つとか絶対無理」

「諦めな。和光みたいに」

「ほら」

「どうして……僕が」

「ふふっ。お似合いですよ、渚さん」

「……風人君。キャラ変わり過ぎ……適応し過ぎだよ」

 

 結局、女装したのは風人と渚だった。じゃんけんで負けたのが風人だったか?答えは否である。実はじゃんけんに負けたのはカルマだったのだ。では、何故カルマではなく、風人が女装させられているのか?

 答えはカルマが負けた時に「そもそも俺に合うサイズの女子の服とか誰も持ってなさそうじゃん」と言って、カルマとついでに寺坂の分も新調するのは手間がかかりすぎるため、タイムリミットを考えた結果、渚と同じくらい小柄な風人が選ばれたのだ。カルマとしては自分にはじゃんけんに負けても逃げる一手が用意されていたからじゃんけんを受けたのだろう。

 

「男手も欲しいけど、こういうところは男にチェックが厳しいの」

「だからって」

「作戦なんだから」

「本当に?」

『えぇ。本当です』

「律まで」

「ふふっ。渚さん、男子には諦めも肝心ですよ?」

「風人君。君絶対楽しんでいるでしょ……」

「今の私は風子とお呼び下さい♪」

 

 こう見えて風人は割と真面目だ。真面目に女子の振りをしている…………はずだ。

 

「二人とも自然過ぎて新鮮味がない」

「そんな新鮮さいらないよ」

 

 風人も渚程ではないが見た目は中性。女子に見えても不思議ではない。ただし、中身はアレだが。

 

「そもそもこんな服何処にあったのさ」

「外のプールサイドに脱ぎ捨ててあった」

「まぁ、凛香さんたら。こういう服がお好きなのですか?」

「私は別に」

 

 と、脱ぎ捨ててあった服を身に纏ってる風人。ちなみに下着はもちろん男物だ。そこまで進化していない。

 

「やだやだ。こんな不潔な場所早く抜けたいわ」

「そうですわ。私にはこんな場所似合いませんもの」

「その割には楽しそうだね不破さん。風……子さん」

 

 ノリノリな二人。対称的な渚。

 しかし、列の最後尾を行く渚。そんな彼に話しかける男がいた。

 

「ねぇ、どっから来たの君ら。俺とそっちで飲まねぇ?」

 

 渚に話しかけた男子に向ける目は嫌悪だった。女子プラス風子は関わりたく無いと思い。

 

「はい。渚相手しておいて」

 

 渚に丸投げして置いた。

 

「渚さんに何と伝えたのですか?メグさん」

「男手(?)は足りてるから相手しておいてって」

「まぁ!私なんてかよわいレディーを男手にカウントなさらないで下さる?」

 

(((何なんだ今のコイツは……さっきから女子にしか見えない。中身はアレなのに!)))

 

 普段とのギャップに別の意味で頭を抱えそうになる女性陣。そんなこと露知らずの風子。

 

「えっと、上への階段は……こっちで間違いないわね」

 

 片岡率いる女性陣プラス風子の目の前に二人の男が現れた。

 

「よぉ。お嬢たち女だけ?」

「俺らとどうよ。今夜」

 

 二人の男が絡んでくる。片岡は呆れたように呟き言葉を発しようとする中、矢田が前に出る。

 

「お兄さんたち。カッコいいから遊びたいのだけど、生憎パパ同伴なの。私たち。うちのパパちょっと怖いから、やめとこ?」

「パパが怖くてナンパできっかよ……」

「じゃあ、パパに紹介する?」

 

 そう言って矢田が見せたのはヤクザのエンブレム。一瞬戦く男たちだが、

 

「お兄さんたち?」

 

 そんな男たちの背後に回っていた風子が男たちの首元に手を当てながら言葉を呟く。トドメを刺しに来た。男たちに考える隙を与えない。

 

「もし、桃花お嬢様を始めとしたこちらのお嬢様方に手を出した日には貴方たちの首……繋がってるといいですね?」

 

 最大限の殺気を込めた一言。笑顔で言った風子に対し、男たちは逃げるように帰っていった。

 

「お怪我はございませんか?桃花お嬢様。それに皆様も」

 

 演技をするなら徹底に。風子は周りで誰が見ていたとしてもごまかせるよう演技を続ける。

 

「う、うん。ありがとうね。和こ……風子ちゃん」

「ありがたき幸せ」

 

 と言っても、ここまでする必要があるかは分からないが。

 

「でも、意気地なしだね。アレで逃げてくなんて」

「矢田さんもだけど、和こ……風子ちゃんも凄い」

「ふふっ。お褒めに預かり光栄です。カエデお嬢様」

「まだそのキャラ続けるの!?」

「ふふっ。おかしなカエデお嬢様。これが私の素でございますよ?」

 

(((素なわけないでしょうが!)))

 

「さぁ、行きましょうメグお嬢様。時間は有限でございます」

「そ、そうね……風子ちゃん」

 

 と、お嬢様と呼ばれ、ちょっと嬉しくなりこういう風人ならいいかもと思い始めた片岡を先頭に置きながら歩みを進めるお嬢様たちプラス風子。

 矢田曰く、さっきのバッチはビッチ先生の持ってるバッチのうちの一つらしい。

 

「そう言えば矢田さんは一番熱心にビッチ先生の仕事の話を聞いてるよね」

「うん、色仕掛けがしたいわけじゃないけど……殺せんせーも言ってたじゃない?『第二の刃を持て』ってさ、接待術も交渉術も、社会に出た時最高の刃になりそうじゃない?」

「おぉー矢田さんはカッコいい大人になるねぇ」

「桃花お嬢様がそんなに深く考えていただなんて、私感激いたしました……!」

「巨乳なのに惚れざるを得ない……!」

 

 その矢田の姿は巨乳反対派の茅野の心を揺さぶるほどであった。

 

「大丈夫ですカエデお嬢様!私のこの絶壁のような胸に比べればカエデお嬢様はまだ大きい方ですよ!」

「そ、そうかな……」

 

(((あー確かに風子ちゃんの胸ってカエデちゃんより小さ……ってコイツ男だよ!)))

 

 徐々に風子ちゃんが本物の女にしか見えなくなり始めた女性陣である。ある種の洗脳だろうか?

 

「みんな、アレ」

 

 気付けば一行は店の奥まで来ていた。

 

「辿り着いたのはいいけど、ここからが難しそうだね」

「場合によっちゃ、男手が必要かも」

「そうでございますね優月お嬢様。ここからは私たち女子だけでは厳しいかもしれません」

「茅野さん。渚を呼んできて」

「うん」

 

 走っていく茅野。しかし、誰一人風子の発言のおかしな点に気付いていない。

 

「でもどうする?」

「倒したらダメかな」

「それは頂けません凛香お嬢様。倒してしまった場合。すぐにバれてしまわれるかと」

「そ、それもそうね……」

「ならば、こういう作戦はどうでしょう?」

 

 風子が作戦を伝える。そんな中、茅野と渚が帰還した。

 

「おかえりなさいませ。カエデお嬢様、渚お嬢様。ご無事で何よりです」

「こっちのガードもありがとうね。風子ちゃん」

「この程度のこと当然にございます」

 

 このとき渚は疑問に思った。風人君が引き返せないところまで行ってるのではないか、と。後、僕はお嬢様じゃない、と。

 

「待てって彼女ら」

 

 するとおまけがついて来た。

 

「俺の十八番のダンスを見せてやるよ」

 

 そう言って踊り始める。このとき風子は思った。うっわ下手くそ、と。ちょっと素の部分が出てしまうほどだった。

 

(((邪魔……)))

 

 ただ、残りの人は違うことを思っていたが。

 すると、おまけ君はすぐ近くのヤクザの人のコップに手が辺り、中の飲み物をかけてしまう。胸倉を掴まれるおまけ君。

 

「ひなたお嬢様。チャンスにございます」

「分かった」

「桃花お嬢様は警備員の近くへ。凛香お嬢様、メグお嬢様はひなたお嬢様の後について」

「「「了解」」」

 

 ヤクザの元に近づく岡野。そのまま顔面を蹴り飛ばした。そして、すかさず片岡と速水がヤクザの人を運び、

 

「すみませんー店の人。あの人急に倒れたみたいで」

「運びだして見てあげてはどうでしょう?このままでは何かとあるでしょう?」

「あ、はい。失礼します」

 

 出払う警備員。よし、チャンスと思ったE組潜入部隊は颯爽と出口へ向かう。

 渚がおまけ君と話を終え、全員出たことを確認してから風人も出口に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?渚。着替えるの早かったね」

 

 僕と渚も着替えが終わり、男子と女子が全員階段の前に揃う。いやぁ、全員無事にこれたね。

 

「あれ?風子ちゃんは?」

「さっきまで居たのになぁ……」

「何言ってるの?片岡さんまで。冗談言ってる余裕ないよ?」

「え?だって、風子ちゃんどこかに……」

「風子って風人のことでしょ」

「「「あああああぁぁぁっ!」」」

 

 女子全員が思わず叫んだ。

 

「和光くんと別人過ぎて忘れてた……」

「風子ちゃんはもういないのね……」

「ああ。あんな女の子が存在しないだなんて……」

「人類の損失……」

「もう一度お嬢様って呼んでほしかった……」

「もう会えないんだね……」

「「「さようなら風子ちゃん……」」」

 

 女性陣が全員例外なく目に涙を浮かべて、別れを告げている。…………何この茶番。

 

「ねぇ、カルマ~僕なんて言えばいいの~?」

「うーん。風人が何したか知らないけど、ずっと女装したまんまでいればよかったんじゃない?」

「えぇ~やだよ~」

 

 尚、カルマの手により、僕と渚の女装写真がクラスのメッセージに貼られる事件が起きるんだけど……また別の話。




「人の女装写真を無許可で貼るのはやめましょう。私との約束だよ♪」

以上風子ちゃんからでした。

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