暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

56 / 130
黒幕の時間

 皆が、ガムテープでおじさんをぐるぐる巻きにする。

 

「風人君……その目」

 

 そして、皆が僕の左眼を見てくる。そんなに気になるかな?

 

「なぁに、気にしないでよ~」

 

 僕は目についてる血を拭きとって、目を開く。

 

「「「えぇぇっ!?」」」

 

 すると、皆驚く。え?どうしたの?何か奇妙なものでも見たの?

 

「お、お前!目斬られたんじゃないのか!?」

「まぁね~。だから、多分目の上下付近にうっすらと切り傷がついてるでしょ~?」

「本当だ……でも、あの出血は一体……?」

「明らかにその小さな傷から出る量じゃねぇだろ」

「あーケチャップだよ。切られると同時にキレイにおじさんのナイフにもつけといた~」

 

 いやぁ苦労したよ。適度な切られ方をしてなおかつバれないように細工を仕込むのは。

 

「なるほどね。だから、風人は急いでいたのか」

「どういうこと?」

「相手は殺し屋だよ?ケチャップと血の区別なんて余裕で付く。つまり、時間を与えると気付かれる。せっかく、大きなダメージを与えたと思わせたのにね。だから、そのほんの一瞬の手ごたえを感じている間に殺せんせーを蹴り飛ばし、ナイフの方を見る時間をなくした」

「そういうこと~」

 

 いやぁ、ロブロさんのお陰で勝てたわ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもどんな必殺技ですか~」

「そうだな」

 

 僕はロブロさんの正面に立って、眼を見て話している。と、ここでロブロさんが右ポケットから何かを捨てた。

 

「ってナイフ!?」

 

 一瞬見て驚いた。けどまぁ、すぐに向き直る。何もロブロさん言ってないし、

 

「ちょっと距離を放そう。君は特に動かなくていい」

 

 はぁ。そして、10mほど離れて少しずつ歩いてくるロブロさん。何してくるか分からないし、警戒しておこう。ゆっくり歩いてきて残り5mほど。そのタイミングで今度は左のポケットから何かを横に投げた。

 ロブロさんがその投げ捨てたものを見る。その視線に釣られて僕もそのものを見る。ナイフかな?と思ったソレはただの石ころだった。

 

「分かったかい」

 

 そして、正面を向こうとすると既に首元に手をやられていた。……はぁ?

 

「視線誘導。ミスディレクションと呼ばれる奴だ」

「は、はぁ」

 

 いつの間に……

 

「これはマジックによく使われるものだが、こうやって暗殺に組み込むことも可能だ。君は最初にナイフが出てきて警戒した。そして、捨てた時何が出て来るか警戒がそっちに行く。だが、正面の敵にも警戒は必要。注意が二分されたところで、ターゲットが視線を投げたものに移す。君は釣られてそれを見た。それだけだ」

 

 いや、それだけって次元じゃないでしょ。誘導されたって気付かせずに誘導してるんだから。

 

「下手な奴がやっても上手くいかないだろうし、実戦となれば相手は簡単に引っかかってくれないかもしれない。だが、使えるようになれば。目さえ見えれば誰にでも通用する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロブロさんの言ってた三つの条件。警戒、油断、象徴。最悪油断はなくていいらしいが、油断していれば引っかかりやすいとのこと。

 僕の打つ手すべてに警戒させる。でも、どんな手が来ても自分には通用しないだろうといった油断を誘う。そして、目立つものを投げそこに視線を誘導。一瞬で詰め寄りとどめを刺す。

 いい実験台だった。律のフラッシュのタイミングも完璧だったし。あ、携帯拾って来よう。

 

「さぁ~先へ進も~」

「待って和光くん」

 

 と、ここで片岡さんから呼び止められる。

 

「今、応急手当するから、矢田さん不破さん。ソレ抑えておいて」

「「はーい」」

 

 と、何故か正座させられています。何で僕は毎回正座しているのだろうか。これだと正座キャラとして確立しそうだよ。誰のせいだ全く。

 

「寺坂君。預けていたもの取り出して」

「あぁ、コレだろ」

 

 なんかの袋だ。何だあれ?

 

「まず、ラップにワセリンを塗って……」

 

 すると、ラップを両腕の切ったりした部分に貼ってくる。

 

「後は包帯を……あれ?」

「私がやるよ」

「ありがと、矢田さん」

 

 その上から包帯を巻いてくる。

 

「後、顔と頭と左目の付近も少しか」

「ついでに頭の中も処置しちゃおうよ」

「したいのは山々だね」

 

 そういうと、何か色々して包帯を巻いてくる。

 

「左目見えないんですけど」

「諦めなさい」

 

 何か包帯で隠された。片目だと何か違和感あるんですけど……

 

「でも、片岡さん。よくそんなの持ってきてたね」

 

 渚が片岡さんに聞く。

 

「私のじゃないよ。神崎さんから渡されてね。『風人君が怪我する可能性があるから』ってね。まさか、本当に使うとは思わなかったけど」

「さすが神崎さん。和光くんの性格分かってる~」

 

 ふっ。帰ったら感謝しておこう。……無事に終わればだけど。

 

「さて、行きましょうか」

「おー!」

 

 歩き始める僕ら。

 

「和光君!ちょっとさ、『オレの封印された左腕が疼く……』とか言ってみてよ!」

「本当に疼きそうだからやめてあげて?」

「じゃあ、『オレのこの腕の封印を解く時が来た……』とか」

 

 別の意味で不破さんが興奮してめんどーだった。

 余談だが、殺せんせーを持っていくのを忘れかけたことを記す。後は、殺せんせー。僕の蹴りを喰らって痛くはなかったけどぐるぐる回って軽く酔ったらしい。ざまぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふうぅ~……だいぶ体が動くようになってきた」

 

 烏間先生が見張りの首を絞めて落とす。

 

「まだ力半分ってところだがな」

 

 おかしいなぁ?これでまだ半分なの?

 

「力半分ですでに俺らの倍強ぇ……」

「あの人ひとりで侵入した方が良かったんじゃ……」

「本当だよ~」

 

 そうすれば僕も危険な戦いに巻き込まれずに済んだのに。

 と、僕らが進んでいると律から情報が入った。

 

『最上階部屋のパソコンカメラに侵入しました、上の様子が観察できます』

 

 律はそれぞれの携帯にその映像を送る……やっぱチートだよね?

 

『確認する限り残るのは……この男ただひとりだけです』

 

 どうやら、コイツを倒せば終わりか。にしても、ホテルで皆が寝ているところの監視カメラの映像を見ている。あーあ。…………本当に性格悪いクソヤロウだ。

 

「あのボスについて、分かってきたことがあります」

 

 ここで、殺せんせーが説明をはじめた。

 

「黒幕の彼は殺し屋ではない、殺し屋の使い方を間違えている」

 

 いや、殺し屋の使い方に合ってるも間違ってるもないでしょ。え?違うの?

 

「もともとは先生を殺すために雇った殺し屋、ですが先生はこんな姿になり……警戒の必要が薄れたので見張りと防衛に回したのでしょう。……ですがそれは殺し屋本来の仕事ではない、彼らの能力はフルに発揮すれば恐ろしいものです」

「……確かにあの銃撃戦も戦術で勝ったけど、あいつ……狙った的は1センチたりとも外さなかった」

「カルマ君や風人君もそう。敵が正面から現れず日常的に忍びよられたら、瞬殺されていたでしょう」

「……そりゃね」

「さすがにね~」

 

 いきなり背後とか無理無理。

 敵は殺し屋ではない。その情報に烏間先生は何か思う節があるのかな?

 

「烏間先生?」

「いや……。さぁ、時間が無い、こいつは我々がエレベーターで来ると思っているはずだが。交渉期限まで動きが無ければ流石に警戒を強めるだろう。個々に役割を……」

 

 烏間先生がこれからの作戦を指示する。あれ?何か寺坂の様子がおかしくね?

 

「寺坂くん、まさかウィルス……んっ!?」

「黙ってろ渚。それに風人もだ。俺は体力だけはあんだからよ。こんなもん放っときゃ治んだよ」

「そんな……無茶だよ」

「烏間の先公がガス浴びちまったのは……俺が下手に前に出たからだ。それ以前に俺のせいでクラスの奴らを殺しかけたこともある。こんなとこで脱落してこれ以上足引っ張れるわけねーだろ」

 

 あー、寺坂(爆)事件のことか。

 

「寺坂くん……」

 

 でも、潜入作戦もあと少し。大丈夫だと信じたいけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最上階の一室。九階で見張りが持っていたカードキーを手に侵入。

 部屋は少々スペースがある。焦らずかつ静かに。少しずつ黒幕との距離を詰めて行く。

 

「かゆい」

 

 黒幕の言葉に動きを止めざるを得ない僕ら。残り数メートルとはいえ、気配は全員消してたはず。ただの、独り言?

 

「思い出す度にかゆくなる。でもそのせいかな、いつも傷口が空気に触れるから……感覚が鋭敏になってるんだ」

 

 聞き覚えしかない声。いや、でも前聞いた時と声の調子が明らかに違う。

 バッと落とされる数個のリモコン。……偽物じゃねぇだろうな。全部本物だ。本物だからこそヤバい。リモコン……一個ボタンのある簡易な作りだ。だが、その中にも執念みたいなのを感じる。

 

「連絡がつかなくなったのは四人の殺し屋のほかにもう一人身内にもいた。防衛省の機密費と共に俺の同僚が姿を消した。どういうつもりだ……鷹岡ぁ!」

 

 最悪の敵だ。僕の考える中でかなり面倒な敵だ。……この男は僕たちを憎まないわけがない。

 

「悪い子達だ……恩師に会うのに裏口から来る。父ちゃんはそんな風に教えた覚えはないぞ……仕方ない、夏休みの補修をしてやろう……さあ、屋上へと来い」

 

 やべぇ。ツッコミだらけだ。恩師?お前が?裏口……まぁ、最初はね。父ちゃん?だからちげぇよ。補修?嫌だよ。

 状況が状況なだけに迂闊なこと言うと薬を爆発しかねない。スーツケースについてる爆弾。今爆破されれば薬を失うだけで済まない。確実に今無事な人間にも被害が出る。

 歩き出す鷹岡。こいつは………………本当に厄介な敵だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。