暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 作:黒ハム
僕は屋上……に向かうことなく一人階段を降りていた。予想が正しければアイツの中で誰か一人欠けてもそれが渚でなければ気にしないはず。
『気でも違ったか鷹岡、防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒たちをウィルスで脅すこの凶行……!』
『おいおい烏間、俺は至極真っ当だぜ?お前らが大人しく要求通り、チビ二人にその賞金首を持ってこさせりゃ俺の暗殺計画はスムーズに仕上がったんだけどよ』
律に誰かのケータイから流して貰ってる。どうやって、殺るつもりだったんだあの野郎は。
『計画ではな、茅野とかいったか?女の方を使う予定だったんだ。部屋のバスタブに対先生弾がたっぷり入れてある、そこに賞金首を抱いて入ってもらう。その上からセメントで生き埋めにする、対先生弾に触れずに元の姿に戻るには…生徒ごと爆裂しなきゃいけないって寸法だ。生徒思いの殺せんせーはそんな酷いことしないだろ?大人しく溶かされてくれると思ってな』
やべぇ。想像の100倍ひでぇ。……ん?それだと、僕らって大人しく従ってたとしても薬返してもらえなくね?薄々予想はしていたけどさ。
『これでも人道的な方さ、お前らが俺にした……非人道的な仕打ちに比べればな』
何が人道的だよクソ野郎。ッチ。
『屈辱の目線と騙し討ちで突きつけられたナイフが頭ん中チラつく度にかゆくなって、夜も眠れなくてよォ!落とした評価は結果で返す、受けた屈辱はそれ以上の屈辱で返す。特に潮田渚、俺の未来を汚したお前は絶対に許さん!』
やっぱり。こいつの狙いは渚への復讐と殺せんせー暗殺。
『背の低い生徒を要求したのは……渚を狙ってたのか』
『カンペキな逆恨みじゃねーか!』
『へー、つまり渚くんはあんたの恨みを晴らすために呼ばれたってわけ。その体格差で本気で勝って嬉しいわけ?俺ならもーちょっと楽しませてやれるけど?』
『イカレやがって、テメーで作ったルールの中で渚に負けただけだろが。言っとくけどなあの時テメーが勝ってようが負けてようが俺らテメーの事大ッ嫌いだからよ』
聞いた感じ向こうは戸惑いより怒りが強くなってるなぁ。これは急がないと。
『ジャリ共の意見なんて聞いてねぇ!俺の指先でジャリが半分減るってこと忘れんな!』
忘れてねぇよ。でも、僕は知ってるよ……
『チビ、お前ひとりで登ってこい。この上のヘリポートまで』
『渚!いったらダメ』
『…………行きたくないけど……行くよ』
『早く来いオラァ!』
『あれだけ興奮してたら何するかわからない。話に合わせて冷静にさせて、治療薬を壊さないよう渡してもらうよ』
一言で言えば不可能……か。
八階の階段にいたおじさんは……まだ寝てるな。よし、持っていこう。コンサートホールの方は、
「やっぱ、復活してたか……おじさんたち」
そこには三人のおじさんたちが。やっべ、このおじさんたち殺し屋なんだよなぁ。
一方屋上は鷹岡が渚とのリターンマッチをしたいらしい。だが、一瞬で決着がついても晴れないから土下座しろって言ってるみたいだ。渚の性格上やるだろうなぁ。
「お前は……さっきのガキの一人か」
「その様子……一人だけでやってきたようだぬ」
「何の用だ?」
やっべぇ。三人そろうとヤバい勘半端ねぇ。
「話がある。コイツは人質だ。僕としては、穏便に済ませたい。今ばかりは停戦しないか?そうすれば、コイツの拘束を解き解放する」
「ほう。俺たちだけでなく、ジャックまで倒していたか。見たとこ寝ているな。やっぱ、お前たちは甘ちゃんだな」
ジャック……それがコイツの名か。いざとなったらコイツを
「いいだろう。話を聞いてやる。解放しな」
「……分かった」
そして、解放しようとした時にスマホから響く爆音。……やりやがった。予想通り薬を爆破しやがった。
「今の音は何だぬ」
「アンタらのボス……雇い主が治療薬を爆破したんだよ。こっちの奴に土下座までさせといてな」
鷹岡の笑い声がコンサートホールに響く。やべぇな。……だがな。
「だからさ、毒使いのおっさん。頼みがある――」
だが、僕は一縷の望みにかける。ただで終わらせる気はねぇ。鷹岡への復讐?そんなことよりも重要なことがある。もう誰も失うわけにはいかないから。
そして、屋上では渚が荒い呼吸で、『殺してやる』と言っていた。
屋上。そこには頭に血が上った渚がナイフを持って構えた。
このままでは渚が鷹岡殺してしまう。止めようとする殺せんせーより前に、一本のスタンガンが渚の背中に投げつけられた。
「チョーシこいてんじゃねえぞ渚!!てめえ、クスリが爆発された時、俺の事を哀れむように見やがったな!いっちょ前に気遣ってんじゃねえよもやし野郎が!ウイルスなんざ、寝てりゃ治んだよぉ!」
投げつけたのは寺坂だ。
「そんなクズでも息の根止めりゃ殺人罪だ。テメーはキレるに任せて百億のチャンス手放すのか?」
「寺坂君のいう通りです渚君。その男を殺しても何の価値もない。逆上しても不利になるだけです。そもそも彼に治療薬に関する知識などない。下にいた毒使いに聞きましょう。そんな男は気絶程度で充分です」
寺坂と殺せんせーの言葉。それに反応したのは鷹岡だった。
「おいおい、水差してんじゃねえよ……こいつの本気の殺意を屈辱的に返り討ちにしてようやく俺の記憶は……」
「渚君、寺坂君のスタンガンを拾いなさい」
「……」
「その男の命と先生の命、その男の言葉と寺坂君の言葉。それぞれどちらに価値があるのか考えるんです」
渚は黙ったまま話を殺せんせーの話を聞いている。
倒れ込む寺坂。駆け寄る木村と吉田。
「やれ渚、死なねぇ範囲でブッ殺せ」
その言葉が渚に響いたのか響かなかったのか。渚はスタンガンを拾いはしたがしまってしまう。
渚、鷹岡共に上着を脱ぎ捨てる。煽る鷹岡に何も言わない渚。
「烏間先生。もし、渚君の生命に危機がきたら……迷わず撃ってください」
殺せんせーがここまで言う。それほどまでに今の状況はヤバいのだ。
「あぐッ……ゲホッゲホッ」
「おらどうした?殺すんじゃなかったのか?」
渚が暗殺に持ち込もうと歩き始める。が、鷹岡の蹴りが飛んでくる。
今の鷹岡に前回のような油断はない。最初から完全に戦闘モードに入ってる。心が狂気で満たされた精鋭軍人。今の鷹岡にいかなる奇襲も通じないだろう。
「勝負にならない……」
「勝てるわけねーよあんな化物」
顔が腫れはじめ、血を吐く渚。それに対し、一方的に攻める鷹岡。
速水や菅谷の言うように勝負にならない。
「手足切り落として標本にしてる、手元に置いてずっと愛でてやるよ」
「烏間先生!もう撃ってください!渚死んじゃうよ!」
ナイフを拾った鷹岡。一方的な状況に茅野は悲痛な叫びをあげる。
「手出しすんじゃねぇ」
「まだ放っておけって寺坂。俺もそろそろ参戦したいんだけど」
「訓練サボってたてめぇは知らねぇだろうな。渚の奴、風人と同じように隠し玉を持ってるようだぜ……」
渚は思い出していた。ロブロさんに教えてもらったことを。
(ロブロさんの言ってた必殺技の条件は……)
1つ、武器を2本持っていること。
2つ、敵が手練であること。
3つ、敵が殺される恐怖を知っていること。
(良かった……全部揃ってる。…………鷹岡先生、実験台になってください)
歩み始める渚。先ほどとは違う雰囲気を纏っている。
ロブロが渚に教えたのは必ず殺すための技。風人に教えられた技とは違い、こちらの方が渚向きだ。
「この……クソガキぃ」
鷹岡は集中力を高めていく。以前のようにやられないように。渚の一挙一動を逃すまいと。
(タイミングは……ナイフの間合いの少し外。敵に接近すれば接近するほど、敵の意識はナイフに集まる。その意識ごとナイフを空中に置くように捨てそのまま……)
鷹岡の意識は完全にナイフを向いていた。
パンッ
響き渡る音。傍から見れば多少大きい音程度だが、全神経を集中していた鷹岡に取っては音の爆弾のように感じただろう。
反射的に仰け反る鷹岡。そのあからさまな隙を
流れるような動きで
「ハァ……ハァ……」
膝をつく鷹岡。予想以上の出来事に殺せんせーまでもが固まってしまう。
「トドメをさせ渚、首あたりにたっぷり流しゃ気絶する」
寺坂の言葉を受けた渚は鷹岡の首にスタンガンを当て、顎をスタンガンで持ち上げる。
(殺意を教わった、抱いちゃいけない種類の殺意があるって事。その殺意から引き戻してくれる友達の大切さも。殴られる痛みを、実戦の恐怖を、この人から教わった。酷いことをした人だけど、それとは別に授業には感謝をしなきゃいけないと思った。感謝を伝えるなら――)
(やめろ……)
(――そういう顔をすべきだと思ったから)
(その顔で終わらせるのだけはやめてくれて……その顔が一生悪夢から離れなくなる)
次の瞬間、渚は笑顔をつくり、
「鷹岡先生、ありがとうございました」
電流に流した。鷹岡は気絶。
「よっしゃああ、ボス撃破!」
喜ぶE組。
そして、皆ヘリポートに上がる。
「よくやってくれました。無事でよかったです」
「うん。僕はよかったけど……皆の薬が」
一まず烏間先生がヘリを呼び、毒使いのもとへ行こうとした時。
「フン、テメーらに薬なんざ必要ねぇ、ガキどもこのまま生きて帰れると思うなよ?」
暗殺者たちが現れた。
ケイドロの時、風人は泥棒側?それとも警察側?
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泥棒
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警察