暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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ここから、今までとはかなり違いちょっと重い話が続きます。
まぁ、暗殺教室とシリアスは切っても切れないのでご容赦を……


対話の時間

 夏休みも終盤。暗殺旅行も無事(?)終わり、疲れもとれたころ。

 

「で、話とは何ですか?涼香さん。篠谷君」

 

 涼香さんにこのカフェに来てほしいと言われたので昼食も兼ねて来ている。

 

「風人君を誘ってないそうですが……」

「うん。そうだよ」

 

 この場に居るのは三人。風人君はいない。あの、デートの時に言ってたやつかな?

 

「そうですね。雑談もいいですが時間は有限。単刀直入に言いましょう」

 

 篠谷君が最初に言葉を発する。

 

「風人とは付き合わない方がいいですよ」

「…………はい?」

 

 風人君と……付き合わない方がいい?

 

「それは風人君の性格がアレだからですか?それとも、私がダメだからということですか?」

 

 前者であればそれを受け入れるだけの覚悟はある。後者は……この人たちに駄目な理由を問いただす。たとえ本人が言ってたとしても、直してみせる。

 

「ああ、誤解なさらぬよう。僕も涼香も神崎さんに何かしらの落ち度があるとは言っておりませんし、思ってもいません」

「私にはない?なら、風人君のあのマイペースが問題ということですか?」

「そうとも言えるしそうとも言えないの」

 

 歯切れの悪い言葉。でも、一体どういうことなんだろう……

 

「もしかして、付き合うと言うのは恋愛関係ではなくそれ以前の友人としての付き合いもですか?」

 

 まぁ、風人君が私のことを友達と思ってるかは別だけど。

 

「いいえ。僕たちが言ってるのは恋愛関係の方です。決して風人と縁を切れなどとは言っておりません」

「そうそう。寧ろ風人の近くに……お兄ちゃんの近くには有希子ちゃん。お姉ちゃんが必要なの」

 

 この二人が何を言ってるのかがまるで理解できない。どういうこと?付き合うのはやめた方がいい。でも、風人君には私が必要。……やっぱりどういうこと?風人君に私が必要なのだとしたら何故恋人関係になろうとすることをこの人たちは止めようとするの?

 

「えーっと……本当にどういうことですか?」

「そうですね。これから話すことは風人には秘密でお願いします」

「は、はぁ……」

「まずは質問です。あなたには風人がどう見えますか?」

「……え?」

 

 ど、どうって……

 

「そ、それは……普段は抜けているけどやる時はやるし、人を守るために無茶して怪我して心配になるけど……何というかそう言う姿を見るとカッコいいなぁって思うし……」

「そうですか。なら、風人は自由奔放お気楽マイペース超人に見えますか?」

 

 篠谷君えげつないなぁ……うーん。自由奔放というところは合ってるし、お気楽そうだし、うーん……。

 

「まぁ、そう見える……かな」

「そうですか。もう一つ。風人の左手首の傷は知っていますか?」

 

 左手首の……傷?ああ、アレかな?

 

「……はい。確か、修学旅行の時に気付いて、それ以来は触れてないんですけど……」

 

 でも、あの傷。何かしらの刃物で切ったような……しかも何回も……まさかね。

 

「実は――」

「リストカット。と呼ばれるものではないのですか?」

「――その通りです」

「で、でも待って下さい。言い方は悪いですけどあの風人君ですよ?」

「有希子ちゃん。これが今日の本題でもあるの――」

 

 今日の……本題?

 

「――風人は自殺しようとしたことが何度もあるの」

「…………………………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。一方の僕は――

 

「やぁ和光君。よく来てくれたね」

「何でしょう浅野理事長。私に御用とは」

 

 理事長室に居た。

 

「この前の旅行は大変だったそうだね」

「あはは……よくご存知で」

「えぇっ。我が校の生徒が危険に巻き込まれたという話を理事長である私が知らないわけにはいかないですからね」

 

 確かに。いくら差別されてても命を落とすようなことがあってはE組だからと無視は出来ないか。

 

「では、雑談もおいて。今日君を呼んだのは他でもない」

 

 一呼吸得て告げる。

 

「A組に入りませんか?」

「お断りします」

「ほう。即答ですか」

「はい。悩む間もありませんよ」

「ははは」

 

 すると笑い出す理事長先生。

 

「失礼。私には君がE組にいる理由が見当たらなくてね」

「理由?貴方が私をE組に配属したのでしょう?」

「あー少し訂正をしよう」

 

 訂正?

 

「君は中間テスト総合学年五位。期末テスト総合学年二位。学力は充分。授業の欠課も許容できる範囲まで激減している。本校舎復帰……君の場合は本校舎へ行くか。その権利をもうすでに持っている」

 

 まぁ、テストで総合五十位以内に入れば良いらしいからその点満たしているか。

 

「では君に問おう。君には殺せんせーを殺す理由があるのかい?」

「殺す理由……ですか」

「断言しよう。君に殺せんせーを殺す理由はない」

 

 理由が……ない?

 

「そんなこと……」

「賞金が欲しいから?違う。君は金など欲していない。地球を救うため?違う。君は私と同じで地球が爆破されようがどちらでもいいと思ってる。殺せんせーを怨んでいる?違う。君は怨みを殺せんせーには持っていない」

 

 ……あれ?じゃあ、何で私は……

 

「君自身には殺せんせーを殺す理由はない。理解したかな?」

「……たとえ」

「ん?」

「たとえそうだとしても。私はE組にいたい。それでいいはずです」

「ほう。そう来ましたか」

 

 たいして驚いた様子でもない。まるでこの答えが想定通りのようだ。

 

「今回の旅行。雇われてた暗殺者たちが使える頭があった。だから君たちは犠牲者ゼロで終えることが出来た。でも、もしその暗殺者たちが指示通りの毒を使っていたら?犠牲者ゼロで終えることはなかった」

「確かに……そうですね」

 

 あのおじさんたちが鷹岡の命令を聞かずに別の毒を使った。だから、彼らは助かった。

 

「でも、今後。殺せんせーを狙うために君たちの命が危険に晒されることもあるでしょう」

「それは否定しませんが……」

和泉(わいずみ)千影(ちかげ)さんの時のことが起こるかもしれませんよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「り、理由は何ですか……?」

「神崎さん。ああ見えて風人は心に深い哀しみを抱えています」

 

 深い……哀しみ?……あ、

 

「その顔は思い当たる節があるんだね」

「はい……」

 

 時々あった。風人君が哀しそうな眼をすることが。

 

「このことは、風人の……いえ、風人と涼香さんの幼馴染である和泉千影さん。この方が深く関わっています」

 

 和泉……千影さん。

 

「その人が……どう関わってるのですか?」

「まず始めに。彼女は既にこの世にはいません」

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何で理事長先生が知ってるんですか?」

「君が転校してくると知ったとき、君にはある程度の興味がありました。君はある時を境に欠課が増え、出席していても寝ているなど、先生方からの印象は最悪だったと聞きます。私は書類上の結果、君を素行不良と判断し、E組に落としました」

 

 そうか。E組に落とされた理由はあの時の素行不良さが原因か。

 

「ですが、不可解な点が一つ。優等生とは言わないが、君が何故いきなりそんな風に変わったのか。そして、その疑問はすぐに解決された」

「解決……ですか?」

「和泉千影さん。彼女の死です」

 

 ドクン、と心臓が大きく脈打つ音が聞こえた気がした。

 

「彼女は君と同等の天才であり、障がい者でもある」

 

 ドクン、何故……何故千影のことを知っている。何故…………!

 

「そして彼女はひき逃げによって殺された。その日は……雨の日だったかな」

「黙れ!」

「……ほう」

「はぁ……はぁ……」

「これが君のトラウマですか」

 

 僕は……あの時、彼女を守れなかった……!

 

「ですが、このままE組に残ると君は同じ悲劇を繰り返すことになる。また君は目の前で大切な人を失うことになる」

「また……繰り返す……そんなの」

「そんなの防いでみせる?無理なことを言わないほうが身のためですよ」

「……くっ」

「君は和泉さんの事で一度壊れた。辛うじて復活できたでしょう。ですが、また周りの大切な人が死んだら?暗殺なんかやってるために死んでしまったら君はこの先……生き抜く気はありますか?ただえさえ君は自身が生きようが死のうがどうでもいいと考えているのに」

「…………」

「私はね。君という才能は失うにはまだ惜しい。君という存在は現状の椚ヶ丘中学に居てくれたほうがありがたい。だから……」

「だから本校舎に行ってE組との交流を断ち、失ったとしても哀しみを軽減できるように……ですか」

「えぇ。君は赤の他人の生死に一々興味を抱かないでしょう。それと同じです」

「……考えさせてください」

「夏休み明けの始業式前。そこが期限です。いい返事を待っていますよ」

 

(和光風人君。これで私の駒となってくれればいいが、まぁいい。あの様子だと堕ちるのも時間の問題だろう。ただ、彼は予想外のことをする可能性がある。他の手も一応打っておくか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この世に……いない」

「うん……。そうなの」

「風人も涼香さんも深く傷ついた。僕は彼女と関わったことが二人に比べて断然少なかったのでそこまででしたが……」

「それで…………自殺を」

「はい。何度も手首を切ったり、首を吊ろうとしていました。その度に、止めるたびに聞いたんです。何で死のうとするのか?って、そしたらお兄ちゃん。こう言ったんです。『千影の居ない世界に価値はない。退屈な世界に生きる気はない』って」

「そんなことが……それはいつの話なんですか?」

「一昨年の秋なので、中学一年生の時です。風人の自殺未遂はそこから一年くらいは続きました……」

 

 というと、恐らく私と出会った時も……か。

 

「でも、中二の夏休み。あの時だけは自殺をしようとしてないんです」

「…………え?」

「その時なのでしょう。貴女と風人が出会ったのは」

「は、はい。そうですけど……」

「だからお願い。有希子ちゃん。風人を救って。風人はずっと苦しんでるの。でも私みたいに近くに苦しさを伝えられる人がいない。もうお兄ちゃんが壊れるのは見たくないの」

 

 風人君が……苦しんでる。

 

「最初に付き合わない方がいいと言いました……が、風人と付き合うには彼と千影さんのことを知る必要があります。もし、何も知らずに付き合えたとしても風人の中のモノは解決しない。それどころか悪化するでしょう」

「悪化……ですか?」

「はい。彼女に対しこのことを秘密にするという精神的負担。いえ、秘密にしなければならないと言う負担はいつか爆発する。可能性の一つに充分考えられるでしょう」

 

 そうか。それが今の私たちの状況か。私と話している時は胡麻化しもある。彼女に隠した分だけ風人君の心に負担がかかっていく。表面上には現れない奥深くで……そういうことか。

 

「で、でも私にそんなこと」

「貴女しか出来ないんです。方法は貴女に任せます。僕は風人の哀しみを苦しみを解決できるなんて思ってないです。ただ、風人を支えてほしい。もし、風人まで居なくなったら」

「……きっと私は耐えきれない。大切な人を。大切な幼馴染と従兄弟、二人も失うなんてきっと耐えられない」

 

 そうか。きっと風人君は……

 

「……分かりました。風人君のことは任せてください」

 

 二人の真剣な表情。おそらく、風人君のことだ。はぐらかしたり逃げようとするだろう。優しさかな。誰も自分の弱さを見せたくないし、闇も見せたくない。でも、今回は見せなきゃ始まらない。

 

「だって、私は風人君のことが好きですから」

 

 好きな人を支える。理由はこれで充分だ。

 

「……問題は話すタイミングだね。こういう話は有希子ちゃんと二人きりでないと絶対話さない。いや、話せない」

「夏休みはまだ少し残っています。どこかでタイミングが来ることを願いましょう」

 

 タイミングは……あ、

 

「……夏祭り」

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