暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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風人の時間 過去 序

 私の世界は灰色だった。

 

 

 

 僕の世界は退屈だった。

 

 

 

 私は色を見たかった。

 

 

 

 僕は楽しみたかった。

 

 

 

 私の願いはいつの日か灰色以外の色を見ること。

 

 

 

 僕の願いは誰かがこの退屈を壊してくれること。

 

 

 

 私の願いは途絶えてしまった。

 

 

 

 僕の願いは叶えられた。

 

 

 

 これは私が死に。

 

 

 

 僕の中に『私』と『オレ』が生まれるまでの物語。

 

 

 

 彼が彼女と出会うまでの物語。

 

 

 

 これは灰色の少女と。

 

 

 

 これは空虚な少年の。

 

 

 

 結末の見えている。

 

 

 

 10000字程度の長さしかない。

 

 

 

 二人の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が自分の異常に気付いたのは、五歳頃でした。気付いたというより、自覚したのがでしょうか。この世界は本来青空が広がってるらしい。夕方になれば空はオレンジに染まるそうだ。でも、私はそれが分からなかった。だって、私の見る世界が普通だと思っていたから。

 

 

 

 

 

 

 僕の世界は退屈だった。それを齢五歳にして分かってしまった。僕は生まれながらの天才らしい。あらゆる面で才能があり、あらゆることをそつなく完璧にこなしてしまう。もうこの頃には、同い年に僕と並ぶものなんていない。だからこその退屈。並ぶ者がいないから。

 

 

 

 

 

 そんな時()彼女()の存在が身近にいることを知った。

 

 

 

 

 

 彼は一言で言えば、異常。彼は私と同じくらいの才能を持つ反面一人では生きて行けなさそうな人間でした。

 

 

 

 

 彼女は一言で言えば、孤独。彼女は僕と同じくらいの才能を持ちながら他人と自身の距離を離す人間だった。

 

 

 

 そして僕たち(私たち)は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風人君。ダメだよ。授業中に寝てたら」

「えぇー。だって~暇なんだもん~」

 

 小学校一年生の時。私と風人君は同じクラスで、席も隣でした。

 天才という存在は何かを代償に比類なき才能を持つ。私はそう捉えている。

 努力の天才や努力した天才は普通の人と大差ないだろうが、生まれながらの天才たちにはこれが当てはまると少なくとも私は思う。

 風人君も生まれながらの天才。ただ、その代わりに、性格……というより精神にかなり難がある。マイペース過ぎるのだ。未来の彼は知らないがこの時の彼は興味あることはとことん。興味の無い事は一切って感じ。どこか……というよりかなり抜けている。欠陥だらけの人間だ。

 

「だって~ひらがなとか今更じゃん~せめて、漢字をもっと教えてほしいよ~」

「ダメでしょ。それでも、授業でくらい他人に合わせなきゃ」

「……むぅ~千影こそ暇じゃないの~?」

「いい?風人君。合わせるという事は大人にとって大事になるの」

「じゃあ子どもでいいや~」

「よくないの。それだと自立できないでしょ?」

「じゃあ、自立もしない~千影がずっと傍にいてくれれば~」

「風人君。そういうことはもっと雰囲気を出して言ってね」

 

 別に風人君は私に依存していたわけではないです。風人君は学力や運動神経とかなら上の方ですがそれに見合った精神的な発達をしていない。その点は私が異常に大人過ぎている。

 私も風人君と同等の才能を持ち、小学校一年生にして精神的には高校生レベルはあると思います。だから、彼を子ども扱いする反面少しの恋心を抱き始めていました。

 

「私は風人君を支える。だから、風人君は私を支えてね」

「えぇ~」

「そこははいって言ってよ」

「はーい」

 

 帰り道。私と風人君。後は風人君の従兄弟の涼香ちゃんの三人でいつも帰ります。学校に行く時も同じですが。

 

「千影ちゃん。私ね。ひらがなが書けるようになったよ」

 

 涼香ちゃんだけはこの中で普通の子でした。私たちみたいな天才ではない。風人君みたく、誰かの支えがなければならないほど性格に欠陥があるわけでも、私みたく、障害を抱えているわけでもない。至って普通の女の子。

 

「よかったね涼香ちゃん」

「普通じゃないの~?」

「風人には分かんないよーだ。これでも私のクラスの中では私が一番なんだから!」

 

 胸を張る涼香ちゃん。私たちに影響されたのか涼香ちゃんも、多少は出来ることが多いです。

 まぁ、風人君のこの一言言っちゃうのは、もうすでにこの頃からだったりしますが。

 

「あ、二人とも!危ない!」

 

 突如呼び留められる私たち。

 

「赤信号は渡っちゃいけないんだよ?」

 

 私が風人君の御目付け役なら涼香ちゃんは私と風人君の保護役。万が一の時に彼女は助けてくれます。

 

「もう。千影ちゃんは目が悪いんだから、風人がしっかりしないと!」

「ふぁ~い」

 

 風人君には私の目について説明してあります。……まぁ、本人の性格上アレですが。

 涼香ちゃんには言っていません。私が色を識別できないことを。

 私は所謂『全色盲』すべての色が白黒、又は灰色に見える病気です。この世界には色んな色があるようですが私には見えません。全てが白黒テレビの画面や漫画の世界のように見えるそうです。だから、車の信号を見ても、今が皆が言う青なのか赤なのかがよく分からなくなってしまう。特に赤信号でも車が通ってない時はそうです。

 

「でも涼香がしっかりしてれば問題なし~」

「そうじゃないでしょ風人君?涼香ちゃんが居ない時はどうするの?」

「千影が何とかしてくれる~」

 

 私のこの眼は一生治らないと言われました。一生私は青い空を。緑の山を。七色の虹を。見ることは出来ないかもしれない。でも、風人君は違う。風人君の性格は矯正すればまだ治る。何不自由なく過ごせるようになる可能性がある。だから。

 

「ダメだよ。頼ってばっかじゃダメになるよ」

 

 私は風人君の性格を矯正する。これが今の私のやることだから。これが今の私に課せられた使命だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は千影のことを尊敬していた。あれは小学校五年生くらいかな。

 

「大丈夫~千影」

「あ、ありがと……」

 

 千影の色が見えないという事は思わぬ形でもないが、露呈してしまったのだ。その教科は今で言う美術。昔から千影は絵が上手かった。でも描くのは全て鉛筆のみの黒一色。それは、単に黒以外の色が見えなくて使えないから。

 人間という生き物は自分より上の生き物を見ると凄いと崇めるか、羨ましがるかのどっちかだと思う。反面自分より下の生き物に対しては自分が何してもいいと思ってる。強者が力を誇示するためだけのただの生贄。特に小学生中学生の精神年齢的にはそう思う。だからいじめが起きる。実にくだらない。

 

「帰ろっか~」

「うん……」

 

 千影はいじめにあっていた。いや、正確には未遂か。全て僕が潰していたから。ずっと前に彼女が言っていた。『私たちは支え合って生きる』って。

 この頃から僕は彼女に感謝するようになっていた。まぁ、言葉には出さないけど。

 

「酷いよね~些細なことでバカにして~」

 

 色が見えない。世間の人からすれば普通の人と重大すぎる違いだが、普通に扱われたい人間にとっては些細な違いだ。色が見えないだけでバカにされる。これはあってはならないだろう。

 人は醜い。千影を虐めようとしていた人たちは学力はもちろん、容姿でも運動神経でも性格でも何事においても彼女に劣る。だから、自分より勝ってる千影を妬み。自分より下のところを見つけるとそこしか言わない。…………あぁ、実にくだらねぇ。

 

「いい加減大人にならないかな~あの雌豚共」

「ダメだよ風人君。人のこと雌豚って言ったら。後、大人になるのは風人君もだよ」

「ふぁ~い」

 

 この頃には千影も自分の眼の扱いも、日常生活にほぼ支障はなくなったし、僅かな支障も僕や涼香が排除する。という関係が構築されていた。流石に五年六年一緒だったから。

 

「さてと、教師陣に報告と対応を求めようか」

「だね~」

 

 いじめが隠蔽される原因の一つは被害者が誰にも訴えないことにある。もしくは、証拠不足とかで訴えても裏で継続されるからだ。でも、僕らは違う。千影はいじめに遭いそうな時はさりげなく監視カメラの方とかまで誘導するし、大概僕か涼香が向かえる場所に誘導している。何より僕らには『誰にも言うなよ』という類のありふれた脅しは効かなかったし。

 

「風人君は強いよね」

「千影に比べたらね~」

 

 この時は僕らの関係がこのまま続くと思っていた。いや、続いていくのだろうと心のどこかで当たり前のように感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも、このささやかな当たり前は唐突に消え去ってしまった…………。

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