暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 作:黒ハム
翌日。竹林は本当に来なかった。
「まぁ、そりゃそうか~」
皆、竹林のフォローというか、アフターケアというかで、本校舎に向かっている。やれやれ。
「何で僕は引きずられてるんだろう~?」
(((いつも通りだ……本当にこの二人は……?)))
竹林は困惑していた。いや、軽く驚愕していたと言うべきか。
A組の授業は非効率的でやたら早口。生徒の事情を一切考慮に入れない振るい落とすためだけの授業。放課後もすぐに塾など予定で埋まっており、五英傑くらいしか放課後にゆとりがない。E組とは大違いである。
そんな彼が思い出すのはE組での日々。訓練や寺坂とのメイド喫茶などだった。
(殺せんせーは貪欲に生徒のことを知りたがる。寺坂もだ。アイツなりに僕のことを知ろうとしてくれていた)
そんな中、竹林はふと窓の外を見た。そこには、
(何かいる……)
そこには、E組の面子が隠れていた。そんな彼らを見て竹林は思った。
(なんでまだ僕の事を知ろうとする……E組では暗殺の力にはなっていない。それは本校舎でいえば勉強が出来ないと同じだ。必要とする価値がないのと同じ。A組に戻った僕を見て何を学ぶ価値がある。……逆に僕は、何を学びにここへ戻ってきたんだっけ?)
徐々に本校舎へと戻った意味が分からなくなる竹林。そこへ、
「どうだい?竹林君。クラスには馴染んだ?」
生徒会長兼理事長の息子である浅野が声をかけた。
「突然だけど理事長が呼んでいるよ。逆境に勝ったヒーローの君を必要としているよ」
そんな会話の中、風人は思った。
(あー……ゲーム~)
耳にイヤホンを当て、それをスマホに繋いでいる。何かを聞いているようだが、E組の面々は静かにしているから放置でいっかと思い触れられていない。
「やぁ、よく来たね二人とも」
一方の竹林は浅野に連れられて理事長室にやって来た。
「明日はね、私がこの学校の前身である私塾を開いた記念日なんだよ。その創立記念の日として、集会を開く。そこで、竹林君にはもう一度スピーチをしてもらいたい」
「……スピーチ……ですか?」
「そう、私の教育の大きな成果として君を推したい。もちろん、君のご家族も喜ぶ筈だよ」
理事長は竹林にスピーチで読むための原稿を渡す。
そこには………
(……僕はE組の腐敗してきた生活を目の前で沢山見てきました。不特定多数との不純異性交遊に夢中な生徒……。暴力生徒……。食べることだけにしか生きがいのない肥満生徒……。変態行為に手を染める生徒……。コミュニケーション能力に問題を抱える生徒……。問題行動を繰り返し、人の迷惑を考えない問題児たち……彼ら彼女らには本校舎に戻れるような能力はありませんが、同じ学校に通う生徒として、少しでも更生させてあげたいと思うのです。そこで皆さんにお願いがあります。僕が彼らを更生するために、『E組管理委員会』というものを立ち上げる賛同をください………)
何とも恐ろしい内容だ。しかも、極僅かに当てはまるところがあるため一概に否定もできない。
「それを全校集会で読みあげたなら、生徒会新役。管理委員会を設立しよう」
「同級生をクラスごと更生させた。このことは中学高校だけでなく、大学への推薦も見えてくるぞ」
「君はまだ弱者から完全に抜け切れてない。そう、これは強者になるための儀式だ。かつての友を君が支配するんだ…………君が強者として彼らの上に立てるように」
(強者……)
竹林は少し間をおいて、
「やります…………」
そう答えた。
(和光風人君。君は私の想定外の事をしてくれた……が、それも無意味と化すだろう。楽しみにしてるといい)
「なるほどねぇ~……」
(さすが理事長様。さてさて、君はどちらを選ぶ?)
翌日。創立記念日での集会の時、壇上に竹林が再び上がった。
「また竹林がスピーチ?」
「胸騒ぎがする……何か大事なものを無茶苦茶に壊してしまうって感じの殺気が竹林から放たれてる……そんな気がする」
さてさて、何を語るのかな?わくわく。
「僕のやりたいことを聞いてください。僕のいたE組は、弱い人たちの集まりです……学力といった強さがないため、本校舎の皆さんから差別を受ける存在です。だけど僕はそんなE組が…………メイド喫茶の次ぐらいに居心地が良いです」
メイド喫茶の次なのね。
「僕は嘘をついていました。自分の心を押し殺していました。でも、E組の皆はこんな裏切った僕を何度も様子を見に来てくれた。先生は僕の様な要領が悪い生徒でも分かるように教えてくれた。家族や皆さんが認めてくれなかった僕をE組の皆は同じ目線で接してくれた。僕はもうしばらく弱者でいい。僕は弱いことを楽しみながら強い者の首を狙う様な生活に戻ります」
その姿に僕の時のように浅野は怒りを表して詰め寄ろうとする。
しかし、竹林は皆に見えるようにガラスで出来た盾を手に取った。
「理事長室からくすねてきました。理事長は本当に強い人です、実に合理的だ……」
そう言って竹林はレプリカのナイフでそれを叩き壊した。
「過去に理事長室でモノを壊した生徒がE組行きとなったとか……」
へぇ~そーなんだ。
「前例から考えればE組行きですね……僕も」
そう言い捨てた竹林。浅野はすぐに彼を追いかけた。
何か話してそうだけどとりあえず、
「おかえり~竹林~!」
僕は叫ぶことにしました。まる。
あれから数日後、グラウンドで烏間先生が僕らに話していた。
「二学期の暗殺に新たな要素を組み込むその一つが火薬だ。そのパワーは確かに魅力的だが、危険が多い」
そういうと寺坂の方を一瞬見た気がする。あー何かあったんだっけ?僕が来る前に。
「そのため、火薬の安全な取り扱いを一名に完璧に覚えてもらう。俺の許可とその一名の監督が火薬を使う際の条件だ。さぁ誰か、覚えてくれる者はいないか?」
(分厚いな……)
(やだよ……あんな国家資格の勉強まで)
皆が先生から目をそらす中、僕は……
「はいはーい!僕やりたいです~!」
率先して手を挙げていた。
「…………すまないが風人君以外で誰か頼む」
「えぇ~!?何で!?」
酷い!何で僕は駄目なのさ!ちょーっといたずらの幅が増えるなぁって思ってるのに!
(やべぇよ。アイツに覚えさせたらこの山が更地になってるかもしれねぇ)
(だけどあんなの覚えられねぇよ!)
(どうすればいいの……)
(もう私たちに希望は残ってないの……)
すると、竹林が立ち上がって言った。
「まぁ、勉強の役に立ちませんでしょうけど、これも何かの役に立つかもしれませんからね……それに和光に任せると碌なことにならないでしょうし」
酷い言われようだ。
「暗記できるかい?竹林君」
烏間先生の問いに竹林は眼鏡をクイッとあげて答えた。
「えぇ。二期OPの替え歌にすればすぐですよ」
「よし……任せたぞ」
(((勇者竹林だ!竹林ありがとう!)))
ブーブー。何で僕じゃダメなのさー。まぁ、カルマとか寺坂とかカルマとかじゃないから許すけどさー