暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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前回告知したように完全に本編とは関係ない並行世界でのお話です。
読まなくても本編には一切支障がありません。
下手しなくても過去編以上に重いと思います。
お読みになるときは『風人の時間 過去 中』を読んだ前提で、『三者面談の時間』までのネタバレを覚悟でお願いします。
では心の準備が出来た方からどうぞ。


風人の時間 IFルート 前編

 パラレルワールドを知っているだろうか。

 この世界とは違う世界。並行世界とも呼ばれるものである。

 もしもあの時の結果が違ったら?もしもあの時、別のことが起きていたら?その物語は変わっていたかもしれない。

 本編、和光風人の人生において大きな転換点となったあの出来事。

 その出来事がもし違う形を迎えていたら彼は、彼の周りの運命はどうなっていただろうか?

 これはもう一つの物語。 

 あの日別のルートを辿った彼らの物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日一日風人君に避けられていた。

 

「はぁ……」

 

 ため息をつきながら一人帰る。謝まりたいのに風人君の方から避けてくる。やっぱり、単純じゃないよね……でも、早く謝りたいなぁ。

 

「風人君の家に行こうかな」

 

 そこで彼を待って誠心誠意謝ろう。…………たとえ許されなかったとしても。

 私は横断歩道のところで立ち止まる。今は赤信号だ。

 私の気持ちはこの雲のように淀んでいる。あー私ってバカだなぁ。大バカだ。何が天才だ。いくら色んなことが出来ても人一人にすら謝れない大バカだ。

 

「千影~!」

 

 降りしきる雨の中。風人君の声が聞こえた気がした。私は気のせいかもしれないと思いながらも振り向く。

 すると、振り向いた先には走ってくる風人君の姿が。

 

「風人く――」

 

 

 風人君の名を呼ぼうとした瞬間だった。

 

 

 私の身体は押し出され道路へと出る。

 

 

 思わず倒れてしまい、左右を見る。

 

 

 迫り来るトラックが1台。

 

 

 衝突は免れない。

 

 

 私は恐怖で目を閉じる。

 

 

 

 次の瞬間。

 

 

 

 

 わずかな浮遊感と共に私の身体は地面へと打ち付けられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……」

 

 気が付くとアスファルトの上で横たわっていた……。

 降りしきる雨の中、私は雨に打たれ、雨水の中にいた。

 

「……っ!」

 

 全身がずぶ濡れでそれでいて身体が痛い……ってあれ?

 

「私……撥ねられたんじゃ……?」

 

 轢かれたことがあるわけではないが……それにしては衝撃が小さすぎる。あれ?でも確かに撥ねられたはずじゃ……。

 

「おい!大丈夫か!しっかりしろ!」

 

 すると近くで切迫した声が聞こえる。土砂降りの雨の中、雨や遠くで鳴る雷の音に負けないくらいの声でその人は叫んでいた。

 

「救急車は呼んだ!頑張って耐えろ!」

 

 私は少し痛む身体に鞭を打ち、ふらつきながらその声の元へと向かった。向かわなくてはならない気がしたからだ。

 

「お、おい!アンタ、そんなずぶ濡れでどうし――」

 

 ピカッと空が光った。眩しさの余り目を閉じてしまう。

 そして目を開けた次の瞬間、

 

「…………え?」

 

 私の目に飛び込んできたのはの倒れ込んでいる一人の少年……。

 

「嘘でしょ……?」

 

 ドーン!

 

 遠くで落雷の音がする。

 私はあまりの光景に立っていられない。思わず膝を突きそのまま彼の前に倒れ込む。辛うじて右手を付くことが出来た……が。

 

「これは……!」

 

 道路に付いた右の掌を見てみる。そこには黒い色が……。

 これは何だ?この黒い色のものはなんだ?その少年を中心に拡がるこれは……まさか、血?じゃあこの血は少年……風人君のもの?

 

「まさかさっきの……大丈夫かアンタ」

 

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!

 風人君が血を流して倒れている?

 そんなことあるわけがない!あっていいはずがない!

 

「……ね、ねぇ風人君……悪い夢かな……これって……」

 

 私は震えが止まらない手を彼に向けて伸ばす。

 

「あは、あはは……お願いだから……夢なら醒めてよ……縁起でもないよ……」

 

 その手が彼に触れる。だが今までで感じたことのない冷たさだった。

 

「ほ、ほら……身体が冷えて……温かくしないとダメじゃない」

 

 頭が回らない。身体が動かない。そして、そのまま……

 

「お、おい!しっかりしろ!」

 

 そのまま暗闇が私に訪れた。

 それは土砂降りの雨、雷の音が鳴り響く、ある日の夕方の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ……!」

 

 目を開けるとそこは天井……

 

「千影……!よかった!」

 

 身体を起こすと目の前にはお母さんが……

 

「ここは……?」

「病院よ」

 

 病院?ああ、よく見ると左手に点滴が……点滴?なんで?え?この格好……私……入院中?

 

「あなたは二日間目を覚まさなかったのよ」

 

 二日間も寝ていた?…………え?

 

「何で?」

「……っ!」

 

 何で?と率直に思ったことを聞くとお母さんは顔をしかめた。

 

「そう言えば風人君は……?」

 

 自分で口に出してからハッとする。あれ?何で今、風人君の名前が……?

 

「…………っ!!お母さん!風人君は!?風人君は何処!?」

 

 脳裏によぎるのは地面に血を流して倒れていた風人君の姿。

 私は逸る気持ちを抑えられずにお母さんに問いただす。

 

 コンコンコン

 

「……失礼するよ。目を覚ましたそうだね」

 

 現れたのは白衣を着た人。

 

「風人君は何処!?」

 

 私はそのまま質問をする。この人が何者かとかどうでもいい。今は風人君に会いたい。いや、会わなくちゃいけないと。さっきからずっと、私の中で警鐘が鳴り響いている。

 

「……残念だが君が会うことは叶わない」

 

 顔を伏せながら答えてくる。

 

「どうして!?」

 

 身を乗り出して問い掛ける。あやうくベットから落ちかけそうになるがお母さんや白衣の人に続いてやってきた女の人たちによって押さえられる。

 

「彼とは会うことができない……」

「なんでなの!?」

「落ち着いて千影ちゃん」

 

 すると、風人君のお母さんが扉を開けて入ってきた。

 

「おばさん……!風人君は?風人君は……?」

「あの子はね……目を覚ましてないの」

「…………え?」

 

 思考が停止する。頭が回らない。上手く口が動かない。いいや口だけじゃない。身体も動いていない。動かない。動けない。

 

「話によるとね……あの子は千影ちゃんを庇ってトラックに轢かれたらしいの。意識不明の重体。今も死の淵を彷徨っている状態らしいの」

 

 そんな私に対して続けられた言葉……トラックに轢かれた?意識不明の重体?死の淵を彷徨ってる?何を言っているの?

 

「嘘……でしょ?おばさん……!ねぇ……嘘…………」

 

 ドクン

 

 思い出されるのは彼に触れたときの温度……今まで感じたことのない冷たさ……。

 

 ドクンドクン

 

 私は右手を開いてみる……ああ、そうだ。あの時確かに……ここに彼の血が……!

 

 ドクンドクンドクン

 

 私を庇って?私のせいで?私なんかを助けるために?私が居たから風人君は……

 

「ああっ……!」

「千影……?」

「ああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!」

 

 そこからの記憶はない。

 後に聞くとこの時私は発狂しながら暴れ回っていたそうだ。

 辛うじて周りにいた看護師たちによって取り押さえられ、そのまま気絶したそうで大事には至らなかったらしいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その報せを聞いたのは私が目覚めて三日後。

 風人君が山場を脱して状態が安定してきたそうだ。後は目覚めればよかった。

 その頃には私も起きている間に暴れ回ることはほとんどなくなったそうだ。しかし、私自身も多少の怪我を負っていたことや精神的に色々と問題を抱えていたこと。また、食欲不振が続き食事が満足にとれないため、点滴生活を余儀なくされること。

 このような要因の結果、入院生活続行。このままでは生活に戻すことは不可能で私も危険だと判断されたそうだ。

 状態が安定して二日が経つ頃には面会も解禁された。解禁されてから私は、時間の許す限りずっと彼の横に居続けた。あの日から久しく会う彼は全身に包帯やらギプスやらが付けられていた。生きているだけで奇跡……と医者の人は言ったらしい。

 休日なんかは涼香ちゃんも私たちのお見舞いに来てくれたりして、私が目を覚まして本当によかったと抱きしめながら泣いていたのをよく覚えている。

 そしてかれこれ事故から二週間が経ったある朝。

 

「うっ……」

 

 長く閉じられていたその目はついに開かれた。

 

「風人君!」

「…………」

 

 久し振りに彼と目が合う。よかったぁ……これでもう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、現実は非情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと……」

「何かな?風人君」

「…………君は……誰?」

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