暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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プレゼントの時間

 次の日。

 

「すやぁ……」

「風人君……連れてくる意味あった?」

 

 カルマ君の背中で気持ちよさそうに寝ている風人君を指して渚君が聞きます。

 

「何か最近寝ても寝ても疲れがとれないんだって」

「よし、そっとしておこう」

「ねぇ誰かこいつ持つの変わってよ」

 

 私たち修学旅行の四班組の七人は買い出しに来ていました。

 昨日。あれから新しい体操服を貰った私たちは、殺せんせーの前で性能の披露をし、答えは暗殺で返すと言った。そしてその後には、ビッチ先生がこの女子の超体育着のデザインを考えるのに一役買っていたことが発覚。まぁ、ビッチ先生の初期案は水着みたいなので……ぶっちゃけ何も守れてないと思うが。

 そして発覚したのはもう一つ。ビッチ先生の誕生日が実は私たちがわかばパークで働いていたときに過ぎていたことだ。しかも烏間先生はその時に誕生日プレゼントを渡さずビッチ先生もそれで不満を漏らしていた。

 そんなわけで、素直になれない大人のために南の島の時のようにくっつけ大作戦をやろうって話である。

 

「だってなぁ……」

 

 今さっきまで前原君から連絡担当の杉野君に現状報告がなされていた。

 教室では今、ビッチ先生と烏間先生の引き離しとビッチ先生の足止め……というか時間稼ぎ?が成功したとのこと。つまり、後はプレゼント購入係の私たちの働きにかかっているというわけなのだが……

 

「ビッチ先生。大概のモノもらったことあるからなぁ」

「難しいね」

「クラスのカンパは5000円ちょっと。これで大人の女性一人を喜ばせるプレゼントなんて……」

 

 厳しいのは仕方ない。私たち中学生が出せるお金なんて決まっていますからね。

 

「ねぇ。君たち。あの後大丈夫だったかい?」

 

 と、ここで急に話しかけてきた青年。……あの後?あの後って一体……?

 

「ほら。おじいさんの足の怪我」

「ああ。救急車を呼んでくれた……」

 

 なるほど。この方が救急車を。

 

「はい。けがの方も今は治って……あの時はありがとうございました」

「それはよかった。ところで、プレゼントとか大人にふさわしいとか聞こえたんだけど……」

「はい」 

「なら、こういうのはどうだい?」

 

 すると花屋さんは私に綺麗な花を一本差し出してきた。受け取って見てもやっぱり綺麗な花だ……。

 

「たった1週間程度で枯れるものに数千~数万も使うなんてって思うかも知れないけど、実はブランド物よりもずっと贅沢なんだよ。人の心なんて色々。このご時世、プレゼントなんて選び放題なのに……未だに花が第一線で通用するのは何故だと思う?」

 

 そう言われて少し考えます。うーん……。

 

「心だけじゃない。色……形……香り……そして儚さが人間の本能にピッタリと当てはまるからさ」

 

 凄い説得力のある言葉だ。

 

「すごい演説だったよ。電卓さえなかったら文句無しの完璧だったのにねぇ」

「ははは。一応商売だからね……目を瞑ってくれると嬉しいな」

 

 カルマ君の言葉に花屋の人は電卓をポケットに仕舞いながら苦笑いを浮かべる。

 

「でもどーする?今だったら花の縁と言うのもあって特別に安くしとくよ?」

 

 考えるまでもなく私たちの心は決まってました。

 

「ふぁああああ」

 

 とここでカルマ君の背中から大きなあくびが。

 

「やっと起きた?バカゼト」

「あぁ?……あーオレは起きたな」

 

 そしてカルマ君の背中から降りる風人君……え?……オレは……?

 

「で?アンタ誰?」

「そっか。風人君は寝てたしあの場にいなかったから知らないんだね。この人はこの前の松方さんの時、救急車を呼んでくれた親切な花屋さんだよ」

「ふーん」

 

 (見るからに)興味なさそうに聞き流す……が、その目は確かに花屋さんの方を見ている。

 

「で?アンタ何者?」

 

 そして、今度は何故か花屋さんをにらむように……腹の内を探るように声を出す。

 

「もう寝ぼけてるでしょ」

「ごめんなさい。この人は凄いマイペースなので」

「ははっ。気にしなくていいよ」

 

 こっちの人格の風人君は、いくらなんでも初対面の人に警戒心むき出し過ぎだ。普通の花屋さんなのに。

 

「あっそ」

 

 片手であくびを押さえながらもやはり警戒心は解かれていない様子だった。

 

「じゃあ、これにします」

 

 でも、もう買い物そのものは終わってるのでお金と商品の花束を交換して、

 

「毎度あり」

「ありがとうございました」

 

 私たちはこの場を立ち去りました。……未だ警戒を解かない風人君を連れて。うーん。何だろう。あの花屋さんを警戒する理由は分からない。でも、風人君は風人君。誰に対しても警戒心をあらわにすることはしないはずだから……?一体風人君は何を考えているんだろう?

 

(あれが、和光風人……情報とはまるで別人だったな。だが、奴だけは僕の中に不信感を感じていたようだ。まぁいい。どのみち彼は何をしてくるか分からないんだ。ああいう何をするか予測不能なタイプは早めに手を打った方がいい。そうでないと計画に支障しかきたさないだろうな) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん~よく寝た気がする~あれ?買い物は~?」

「もう終わったよ?」

「へぇ~何買ったの?」

「花束だよ」

 

 花束?ほへぇ~なんか意外。

 

「でも、風人君。寝起きとは言えあんな態度はダメだと思うよ?」

「へ?態度って何ですか?ししょー」

「え?覚えてないの?花屋の店員さんに向かって『アンタ誰?』って言ったんだよ?」

「うーん……記憶にないな~そんなこと言ったの?」

「思い切り言ってたよ?何か寝起きの不機嫌そうな感じで」

 

 ダメだ。全然思い出せない。うーん……?

 

「そ、それよりも早く烏間先生に渡してこよ?」

「そうだね」

 

 有鬼子が会話を続けさせたくないと言わんばかりに僕らの話を切った。うーん。ま、気のせいかな?

 で、外にいるビッチ先生に見つからないように職員室に入る僕ら。

 

「イリーナに誕生日の花束?何故俺が?君らが渡したほうがあいつも喜ぶだろ?」

 

 可哀想なビッチ先生だ。今の聞かれてたら泣くよ?あの人。 

 

「烏間先生。あのビッチが必要な戦力だと思うなら、同僚の人心掌握も責任者の仕事じゃね?」

 

 おぉ。カルマがそれっぽいこと言ってる。

 

「あ、俺らが用意したのはナイショで」

 

 そう言われて烏間先生も納得し、花束を持っていった。

 で、僕らは職員室から出ると、ステージを次の段階に移行する。

 外でビッチ先生を相手していた組は用事があるとか何とか言って帰った。

 と口では言っても、本当に帰ったわけではいない、僕らと同様に職員室の近くで聞き耳を立てている。

 ビッチ先生はひとりぼっちになり、そのまま職員室に戻ると、そこには烏間先生がいた。

 

「ちょっと聞いてよカラスマ!ガキ共が……」

「丁度いい、イリーナ。誕生日おめでとう」

 

 突然の事態に、ビッチ先生は困惑している。 

 

「…………え?うそ。アンタが……?」

「遅れてすまなかった。色々と忙しくてな」

 

 ビッチ先生は嬉しそうに花束を貰う。

 

「まさか、なんか企んでたりしてないでしょーね?」

「バカ言え。祝いたいのは本心だ。恐らくは最初で最後の誕生日祝いだしな」

「え…………?何よ、最初で最後って」

 

 ビッチ先生は一転して冷めた口調で言うと、烏間先生は話を続ける。……あれ?空気が想像と違う方に向かってない?

 

「当然だ。任務を終えるか地球が終わるか。2つに1つ。どちらにせよあと半年もしないで終わるんだからな」

 

 ビッチ先生は悔しそうに、そして悲しそうに烏間先生を見て、そのまま窓のほうまで歩いて来た。あれ?やばくない?

 そう思ってると思いっきり窓を開け、こそこそと隠れて見ていた僕らを冷たい目で見下すビッチ先生。

 

「……こんなことだろうと思ったわ」

 

 と言うと、ビッチ先生は本物の拳銃を取り出し、発砲した。

  

「おかげで目が覚めたわ。最高のプレゼントありがと、カラスマ」

 

 そう言葉を残し、ビッチ先生は花束を烏間先生に返した上で、荷物を持って去ってしまった。

 

「烏間先生、流石にアレは無いと思うんですけど……」

「まさか、まだ気づいてないんですか!?」

「そこまで俺が鈍く見えるか?」

「見えますよ~?」

「……………………」

「というか一言も二言も余計なんじゃないですか~?」

 

(((いやそれはお前だからな!))) 

 

「まったく困りまいてっ!」

「はいはい。ちょっと静かにしていようね」

 

 うぅ……黙らせるために暴力振るうなんて……酷い話だ。 

  

「非情と思われても仕方ないが、あのまま冷静さを欠き続けるのなら、俺は他の暗殺者を雇う。色恋で鈍るような刃なら、ここで仕事をする資格は無い……それだけのことだ」

 

 そしてその日を境にビッチ先生は学校に来なくなってしまった。

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