暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 作:黒ハム
ビッチ先生がいなくなって今日で数日が経過した。
先生がいなくなったというのは私たちの空気をほんの少しとはいえ重くさせるのに充分だった。
6時間目が終了し放課後。烏間先生はバックを持って帰ろうとしていた。
「烏間先生!任務というのは分かりますが……!」
「……殺し屋の面接がある。先に帰るぞ」
「か、烏間先生!」
「一つ言っておく。これは地球を救う任務。君たちの場合は中学生らしく過ごしてもいいが、俺や彼女は経験を積んだプロ。情けは無用だ」
そう言って出て行ってしまった烏間先生。
あの人は私たちには優しい面を見せてくれる。でも、自分やビッチ先生、部下の人たちなど大人に対しては厳しい人だ。
「もし、イリーナ先生に動きがあったら呼んでくださいね。先生はブラジルにサッカー観戦に行ってくるので!」
と、マッハで飛び立つ殺せんせー。今日はサッカーの決勝戦がブラジルで行われるらしい。それに前々から見に行くと張り切っていた。
烏間先生も殺せんせーもどこかに行ってしまい残ったのは私たちE組のクラスメートだけ。
「ビッチ先生。大丈夫かな?」
「ダメ。電話も繋がらない」
『GPSや公共の監視カメラにも気配がありません』
律でさえお手上げな状態。これでは探そうに探せない。
「まさか、こんなんでさよならとか無いよな」
「そんなこと無いよ。彼女にはまだやってもらうことがある」
優しい声が聞こえる。何か、その声を聞くと安心する感じだ。
「だよねー。何だかんだ一緒にいたら楽しいもん」
そして、さっき千葉君に答えた彼は言う。
「そう。君たちと彼女との間には充分な絆が出来ている。それは既に下調べで確認済み。僕はそれを利用させてもらうだけ」
その人が答えるとともに教卓の上に花束を置く。
「「「…………!?」」」
その瞬間、
「僕は『死神』と呼ばれている殺し屋です。今から、君たちに授業をします」
驚きのあまり声が出せない。いつから私たちの教室に?どこから会話に参加した?何の違和感も感じなかった……いや、違和感を感じさせなかったと言うべきか。
「花はその美しさにより、人の警戒心を解き、心を開きます。渚君。君たちに言ったようにね」
そして、そのさりげなく入ってきたのはあの時の花屋さんということに気付く。
「でも、花が美しく芳しく進化してきた本来の目的は虫をおびき寄せるため」
すると、律に送られる一通のメールが。
「律さん、画像を表示して」
そして律の本体に表示された画像。そこには拘束されたビッチ先生が。
「「「ビッチ先生!?」」」
「手短に言います。彼女の命を守りたければ先生たちとここに居ない和光風人君には絶対に言わず。18時までに君たちだけで僕が指定する場所に来なさい」
黒板には簡易的な人の絵と何本かの線が。
「別に来なくても構わない。その時は、小分けにして全員に届けます。そして、次の花は、君たち、E組の生徒のうちの誰かに送るでしょう」
何も言わなくとも黒板の絵の意味は分かった。
そして、この人が恐ろしいことを言ってるのも。でも、何で……何でこの人の声を聞いて安心してしまってるの?何で警戒ができないの?
「ははっ」
そしてその人は笑った。
「やっぱり。和光風人君がいないだけで話がスムーズに進む。どうにも彼には僕の話術とかは効かないみたいだからね。正解だったよ」
「「「…………っ!」」」
買い出しに行っていた私たちは全員思い出す。
あの時の風人君の妙な発言。妙な態度。…………なんて感覚をしてるんだ……流石とかそういうレベルじゃないだろう。私たちは結局一切の違和感さえ感じられず風人君がおかしいと結論付けて終わらせたと言うのに。
「ねぇ……まさか風人が今日休みなのってアンタの仕業?」
カルマ君が聞く……が、それは今回ばかりは違っている。
「それは違います。カルマ君。和光風人君はお墓参りに行っています。今日は彼にとって大切な幼馴染みの命日だからね……と僕が言ってもこんな状況では信じてくれないだろう。というわけで今のに嘘はあったかい?神崎さん」
こちらに振ってくる。どうにも情報が行き渡ってるようだ。
「嘘はないです。彼の言ったとおり風人君は幼馴染みの二周忌で休みなの」
「「「…………っ!」」」
別の意味で驚きが走る。当然だ。あの風人君がまさかそんな理由で休んでるなんて思いもしなかっただろうから。
「おうおう。勝手に色々としゃべってくれてよぉ。俺らはあんなビッチ。別に助ける義理ないんだぜ?」
寺坂君、吉田君、村松君の三人組が死神の前に立つ。
「第一、ここで俺らにボコられるとは考えなかったのか?」
「不正解です。寺坂君。それらは全部間違ってます」
全部……?
「君たちは自分たちで思ってる以上に彼女が好きだ。どれだけ話し合おうとも『見捨てる』という結論には至らないだろうね。そして……」
死神は花束の花を真上に上げる。当然ながら花が空中に舞った。
「人間が死神を刈り取ることなどできはしない。畏れるなかれ、死神が人間を刈り取るのみだ」
その言葉を残して死神は消えた。
そして教卓には地図が残っていた。
あれから私たちは誕生日の花束の中に盗聴器を発見した。死神が先生二人と風人君がいなくなるこのタイミングを狙ったのだと分かった。おそらく風人君の場合は日程が合わなければ別の手段で排除していただろうが……そんなたられば話はスルーしておこう。
その後、超体育着を全員身につけて死神の指定する場所に移動。潜入をし、一回は捕まるも脱走に成功する。
だが、そこからが問題だった。死神は私たちとは次元が違う強さで、戦闘系の人たちは全員やられた。また、ビッチ先生の裏切りによって救出に行った私たちのグループも全滅する。
結果的に、全員が首輪型の爆弾を付けられ、両手に手錠をさせられ別の檻のような牢屋に入れられた。
「練習台はもう結構。あとはもう人質でいればいいよ」
「はぁ。結局お前らだけで片付いたのかよ」
牢屋の外には死神とビッチ先生ともう一人フードを被って顔を隠している男がいる。あの男は誰?
「まぁま。君は保険だからね」
「へいへい。和光風人が来たら起こしてくれ」
そう言って壁にもたれかかり腕を組む。目元は確認できないため、本当に寝ようとしているかまでは分からない。
「彼は呼ぶつもりなかったんだけどなぁ……まぁいっか」
私たち全員が拘束された事を確認すると、死神はタブレットを開いた。
「さて、次は烏間先生と和光風人君だ。風人君はともかく烏間先生なら君たちよりかは良い練習台になるだろう」
「……ん、これは……」
隣でカルマ君が小声で呟く。見ている先は……モニター?監視カメラの映像が見られ…………あ。
「死神さーん。モニター見てみなよ。あんたまた計算違いしたみたいだねー」
「……………なぜわかった?」
「さーね。なんかあったんでしょ」
そこに写っていたのは犬の変装をした殺せんせーと烏間先生。そして、風人君だった。