暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~   作:黒ハム

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二人の時間

 倒した二人を縛りあげると共に僕と烏間先生は皆の捕まってる牢屋の前にいた。

 

「ぐっ……!くそ……!何とかこいつだけを閉じ込めたまま殺す方法は無いのか……!?」

 

 烏間先生は死神から奪ったタブレットを見ながら、何とかしようとしている。てか、あのゾンビが死神だったのか……何というか……うん。これからはゾンビに改名だね。

 

「というか~今皆が殺せば解決だよ~さぁやるんだ~」

 

 と言っては見たものも牢屋にいる皆は殺る気がないらしい。むぅ。

 

「考えても無駄ですねぇ烏間先生。風人君もです。というか、出ようと思えばこんな檻はすぐ出れますよ。マッハで加速して壁に何度も体当たりしたり、音波放射でコンクリートを脆くしたり。ただそれはどれも一緒にいる生徒にとても大きな負担をかける。だから烏間先生。あなたに死神を倒してもらったんですよ」

「はぁ……言われなくてもわかるさ、お前がクラスの結束を強めるために、最小限しか手を出してないこともな」

「あれ~?僕牢屋に入ってないよ~?」

 

 クラスの結束というか、あ、僕だけあの超体育着着てないし仲間外れ?

 とまぁ、いろいろあって解放。えぇーもう解放するの~?諦めが早いよ~

 

「風人君!」

「おっと……」

 

 解放されると同時に抱きついてくる有鬼子。

 

「もう!無茶ばっかして!」

「あはは……ごめんなさい」

 

 いやぁ……ねぇ。まぁ無事だったからよかったということで……

 

「でも……その。こんな時だけど…………初めて……風人君が私のこと……好きって言ってくれて…………嬉しかったよ」

「………………え?ちょっと待って。何で知ってるの?」

 

 おっかしいなぁ。あそこからここまでどうやって聞こえたんだろう?え?聞こえるはずないよね?なら何で……?

 

「和光くーん。ポケットにあるスマホを見てみ~」

 

 中村さんが声をかけてくる。スマホ?あーずっとポケットに入ってたか……そういや出した記憶はないなぁ。

 取り出してみると、トランシーバーアプリがONに…………まさか?ONにしたのは……ここに潜入した直後……。

 

「ま、まさか……?」

「お察しの通りだよ。風人」

 

 ピッ

 

『――――大好きで大切な彼女を失いたくないからに決まってんだろうがぁっ!』

 

 カルマのスマホから再生される声。誰の声?僕のである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………酷いや」

 

 僕は隅で膝を抱えていじける。

 

(((そこ怒るか恥ずかしがるとこじゃないの!?何でコイツいじけてるの!?)))

 

 ふんだ。もういじけてやる。

 

「よしよし。私も大好きだよ。風人君」

「……ふーんだ」

 

(((甘ったるいなぁ……ブラックコーヒーが欲しい)))

 

 ふぁぁああああ。何か眠くなってきた……あれ?何か前にも似た感じの……この意識が遠のく感覚………………

 

 ドサッ

 

「風人君!?」

「無理もないです。あれだけの怪我、傷でよくここまで意識が持ってました。烏間先生!彼を早く病院へ!」

「既に医療班も手配してある。医療班!彼を運んでくれ!特に出血が酷い。血液型は確かABだったはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。風人君」

「千影か……」

 

 真っ白な空間。さっきと同じような空間で、そこにいるのは僕と千影のみ。

 

「ありがとね。お陰で助かったよ」

「ううん。私は風人君の背中を押しただけだよ」

 

 彼女にとってはたったそれだけの事かもしれない。でも、そのことが僕を支えてくれたのは、僕を正しい道へと進ませてくれたのは事実だ。だから、 

 

「ありがとう」

 

 僕は再び感謝の言葉を口にする。

 

「どういたしまして……かな?」

 

 そういえば久し振りに会話をする気がする。

 

「ところで(千影)は何者なの~?」

「うーん。分かんない」

「へ?」

「風人君の心の中に居る幻想としての和泉千影かもしれない。幽霊としての和泉千影かもしれない。もしかしたらまた別の……まぁ、自分では分かんないかな」

 

 ……えぇー。そんなのあり?

 

「そういやさ」

「ん~?」

「風人君はこの世界で自分の生きる意味を価値を……見出せた?」

「……まだ分かんない。でも、少なくとも僕がいなくなると有鬼子が悲しむだろうから」

 

 なんとなくだがそんな気がする。

 

「私はさ。本当はこの世界に生きる意味がわかんなくなっていたんだ」

 

 そう言うと語り始めた。

 

「日記読んだんでしょ?死ぬ前日の以外さ、すがすがしいまでにきれい事ばっかりなんだ。それって一見するといいことに見えるけど、結局私は本音を誰にも、どこにも言えなかったんだ。お母さんには言えなかった。この目のことで私が壊れそうなくらい苦しんでいることを。本当は日記に書きたかったけど見られたら意味ないからね。もう何のために日記つけてたかわかんないよね?でさぁ。本当は死にたいって何度も思ってたんだ。風人君は……明らかに考えていなかったよね」

「まぁ、千影が死ぬまでは……ね」

「でも、私は生きる意味を一つ見出したの。それが風人君の更生。性格の矯正。それが私の生きる意味だと思ったの」

 

 恐ろしい話だ。まさか、そう思われていたとは。

 

「最初は私なしじゃ生きられないくらいだった。だから、私は何度も踏みとどまれた。君がいたから。でも、次第に性格にはある程度歯止めがきくようになっていった。それは嬉しい変化だよ?でも、私からすれば徐々に生きる意味を失わせていった」

 

 すると、クスッと笑った。

 

「最低だよね。勝手に生きる意味にして、勝手に生きる意味を失わせていく要因にさせて。本当はこんなに嫌な女なんだよ。私って。そしてあげくには間接的に君を殺そうとした」

「卑下しないでよ。それに最後のは違う。あれは僕の選んだ道だよ」

「ありがと。ねぇ、風人君」

「なに?」

「パラレルワールドって知ってるよね」

「うん」

 

 パラレルワールド、平行世界とも呼ばれる世界はたらればの仮定の世界とも言われている。

 でも急にそんなの持ち出してどうしたんだろう?

 

「もしさ。私に才能なんてなくて目が完全なただの女の子だったら。君と仲良くなっていたかな?」

「なれたよきっと。そういう千影こそ僕がどこにでもいそうな男の子でも仲良くなってたでしょ~?」

「うん。きっとね。…………あーあ、やっぱり死にたくなかったなぁ……」

「少なくとも今はあの時自殺がうまくいかなくてよかったと思えるよ」

 

 だってこんなに面白い奴らと会えたから。

 

「もし、私が死ななくて、仲直りがうまくいってたらどうなってたかな?」

「うーん。どうだろ?」

「風人君とデートしてたり、何なら神崎さんと私と風人君の三人でどこか遊びに行ったり」

「一緒に殺せんせー暗殺しようとしてたり」

「キスだけじゃなくてその先も」

「いや、それ以前に幼なじみじゃなくて恋人になっていたりでしょ」

「あーあ。…………そう思うと悔しいね」

 

 暗くなる千影。

 

「仕方ない。そこは平行世界の私に期待だね。それか来世の自分!」

「来世って……」

「うん。来世もきっと風人君を好きになってみせるよ」

「はーい」

「でもすぐ来たらダメ。今はこの世界で生きて」

「分かってるよ~」

 

 今はただこの世界を生きる。目が覚めた僕はきっと少しマシになってるはずだ。

 

「そうだ、風人君。これだけは覚えておいて」

 

 真面目な表情の千影。

 

「私は貴方をずっと見ているよ」

 

 ふむふむ。

 

「…………え?ストーカー?」

「ねぇ。こういう真面目な時くらいそういうことを言わないでいたら?だから神崎さんに怒られるんだよ?」

 

 いやぁ、ずっと見ているとかもはやストーカー発言そのものじゃん。

 

「うーん。気が向いたらね~」

「こりゃあ、神崎さん大変だね」

 

 それは仕方ない。僕はただ元に戻っただけだ。ただの自由奔放な自分に。

 

「はぁ。全く」

「あはは……」

「それと私を思い出すのはこの日だけでいいからね。それ以外の日は忘れていてもいいよ」

「うーん。あと、誕生日くらいは思い出すよ~」

「忘れる気満々だね……」

「でも、きっと無理だよ~何度も思い出すかな」

「いいよ。私が肉体として存在しなくても、貴方のここに私はいるからね」

 

 そう言って僕の胸を指す千影。

 

「今の風人君なら大丈夫。もう支えてくれる人はいるからね…………大切にしなさいよ。泣かせた日には蘇ってでも怒りに行くよ?」

「分かってるよ~」

 

 すると、千影の身体から光が溢れ始めた。

 

「もうすぐ風人君は目が覚める。またお別れだね」

「千影。色々と言いたいことも話したいこともあるけど、これだけは言わせて」

「何かな?」

「今までありがとう。大好きだったよ千影のこと」

「ふふっ。こちらこそ。大好きだよ。風人君」

 

 最後の言葉を残し千影は消えていった。

 

「…………ありがとね」

 

 届かないと知っていても感謝の言葉を口にする。

 そして、僕は消えた彼女に背を向けて歩き始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を醒ますと白い天井だった。

 

「ここはどこ?僕はだ」

「風人君!」

「い、いたいいたい」

「あ、ごめん」

 

 やっぱり最後まで言わせてくれない。うーん。寝起きにネタを仕掛けるからかな?いや言ってみたくない?『ここはどこ?僕は誰?』って。

 

「もう。昨日一日、目が醒めなくて凄い心配したんだからね!」

「え?」

 

 日付を見ると、あの潜入から二日……昨日一日寝ていたそうだ。わぁー

 

「あれ~?学校は~?」

「烏間先生が、朝の面会を特別に許可するように頼んでもらってね。この後、殺せんせーに運んでもらうつもりだよ」

 

 ほへぇ……

 

「色々言いたいことはあるけど……目を覚まして本当によかった」

「あはは……心配かけました」

「本当だよ!無茶ばっかして!」

「ごめんなさい……」 

 

 こればかりは謝るしかない。いや、実際問題途中までは分かれていた僕のせいだと思うんだ。だから僕は無実…………なわけないか。

 

「あのさ……風人君。私は風人君のこと好きだよ」

 

 今なら僕も言えるかな。

 

「僕も有希子のこと。好きだよ」

「えへへ……風人君~」

 

 腕に抱きついてくる有鬼子。ど、どうしたんだ!?あ、そっか。まだ僕夢の中に居るんだ。そっかそっか。そうでないと、こんなに有鬼子が甘えて来るわけがない。……でも、痛みを感じてるんだよねぇ……リアルな夢だなぁ。

 

「千影さんのことでここ最近は遠慮してたからね。今日からは甘えさせてもらうよ?」

「あはは……お手柔らかに」

「手加減なしだよ?」

 

 マジかぁ……

 

「よく考えたら私たち。恋人なのに甘えたりしてないよね?」

 

 そうかなぁ?ときには説教され、ときには雷を落とされ、ときには鬼ごっこをして…………あれ?恋人って何だろう?

 

「これからは一杯甘えさせてもらって、一杯説教するからね♪」

「おかしいなぁ~後半余分じゃない?」

「さぁ?」

 

 何だこの有鬼子。一周回ってちょっと怖くなって来たんだけど。いや、前からか。うん。前からだな。

 

 コンコンコン

 

「失礼するよ。君の担当医の者だ。目が醒めたようだね」

 

 入ってくる白衣を着た人。あれ?何で目が醒めたって分かったんだろう?エスパー?

 

「私がナースコールで呼んでおいたよ」

 

 仕事が早いことで。

 

「君の現状を簡潔に述べておこう。まず、全身打撲。肋骨の数本をはじめとしいくつかの骨にヒビ。左肩から右脇腹にかけての大きな切り傷及び前面にもろもろの切り傷。以上だ」

 

 わー骨にヒビはいってるのか……てかあんだけ喰らっといて折れてないんだね。じょーぶだなぁ……。

 

「まぁ、若いから骨のヒビもすぐ治るだろうが、二週間は安静にしていなさい。後数日は入院してもらうことになってる。じゃあ、何か問題があったら呼んでくれ。ああ、そうだ。面会に来た君。昨日と同じ先生が迎えに来てるよ」

「分かりました。ありがとうございます」

「ありがとうございます」

 

 頭を下げる僕ら。なるほど。数日は暇かな。

 

「あれ?治療費とかどうなるんだろ~?」

「最初に気にするのそこなんだ…………全部防衛省が負担するって言ってたよ」

「じゃあいいや~」

 

 何かわざわざ個室まで取ってくれてるらしいし~のびのびゲーム出来るね。

 

 コンコン

 

「はーい」

「失礼します。本日の昼間の看護担当させていただきます」

 

 ほへぇ。若い女の人だ。まぁ、担当の看護師といっても僕は重傷人(僕基準)でもなければ、老人でもないから補助的なのはいらないと思うけど。

 

「では、体温と血圧、心拍を」

「はーい」

 

 と、一通りやったが全部正常。頭の中は異常でもこれは正常だ。

 

「失礼しました」

 

 さて……

 

「なに~?その眼~?」

「……風人君。いくら看護師が綺麗な人でも色目使ったりデレたら怒るよ」

 

 もう怒ってると思うのは僕だけだろうか?

 

「だいじょーぶ。だいじょーぶ。僕を信用してよ!」

「風人君だから信用できないんだよなぁ……」

 

 酷い。彼女が彼氏を信じてくれない。

 

「じゃあさ、信用するために…………キス……していい?」

「ほへぇ?」

 

 と、答えを言う前に既にキスされた。

 

「いってきますのキス。じゃあ、いってくるね」

「……いってらっしゃい」

 

 出ていく有鬼子。

 

「ところで…………いってきますのキスって……何?」

 

 いってらっしゃいのキスは聞いたことあるけど……うーん。新しい日本語かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よかったですね神崎さん。風人君が目覚めたようで。何かありましたか?」

「いえ、何も」

 

(あああああぁぁぁぁぁ。『何がいってきますのキスね』って、ああああああ!何でそんな恥ずかしいセリフがスラスラと言えるの!?ということはただいまのキスも……あぁぁぁ想像するだけで恥ずかしい……)

 

 なお、有鬼子はその後にすごい恥ずかしさがこみあげてきたらしい。何を今更。

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