暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 作:黒ハム
入院三日目。
「こほっこほっ。ああ。あの葉っぱが落ちたら僕も死ぬのかなぁ……」
「……………………」
「ああ、有鬼子。ごめんね。先に行くよ」
「……………………」
「もう眠いや……ああ、お迎えが来たみたいだ」
「……………………」
「だから……ね。どうか……最後くらいは……」
「……………………はぁ」
ため息をつく有鬼子。
「風人君――――」
そして有鬼子はベットで横になる僕に向かって告げた。
「――――――宿題が終わるまでゲームは没収です」
「ちくしょぉぉぉぉぉおおおおおおおお!」
現在入院生活三日目。いぇい。スマホと昨日お母さんが持ってきてくれたゲーム機で遊んでいて徹夜して眠いです。宿題?はっはっはっ。一切手をつけてないよ。受験?どっか消えた。
世間は土曜日です。入院している僕にとっては関係ないけど有鬼子たちは休みです。
「この鬼!僕は信じてたよ!ここまでしたらさすがにゲームを返してくれるって!」
「はぁ?」
「あ、ごめんなさい……僕一応重症人ですので暴力は……あぅ」
彼女のげんこつは何故かジョーカーのパンチよりも痛かったです。
「うぅ……僕だって遊びたいお年頃なんだよ!」
「反省してないのかなぁ?」
「あ、反省してます……ごめんなさい。反省してますので……」
今日は彼女にとっても休日。なのに面会時間が始まってからずっといる。どうにも僕が心細いからって言ってたんだけど、僕は悲しいです。
「うぅ……真面目なんだよ……有鬼子は……」
「風人君が不真面目なだけです」
僕は(心の中で)泣きながら宿題を進める。一方の有鬼子も自分の勉強をしている。
「出会った頃はもっと不真面目だったのに……」
「見た目がでしょ?」
「うんうんうんうんうんうん」
それは激しく同意する。というか首を縦に振りすぎて頭がクラクラしそう。
「同意しすぎ…………あ、そう言えば、風人君は将来、何になりたいとかあるの?」
「何で~?」
「もうすぐ面談やるんだって。確か医者だっけ?」
「ほへぇ~でも多分医者にはならないかな~あれは千影のためだったし」
「そうなんだ。ニート以外ならなんでもいいよ」
「じゃあ敢えてのニートで~」
「そんなおかしなこと言っちゃうのかなぁ?」
「あぅ。ぐりぐりはやめてください……」
おかしい。何故彼女は重症人の彼氏にここまで暴力行為に出られるのだろうか。
「そーいう有鬼子はなんなのさ~」
「私は介護士だよ」
介護士……?ま、まさか……!
「ダメだよ有鬼子!入居者が自分の指示に従わないからって暴力にでたら!」
暴力介護士だと!?この御時世すぐに捕まるよ!どうしよう!彼女が犯罪者になっちゃう!
「そんなこと、風人君相手じゃあるまいししません」
「あ、そっか~じゃないよね!?……よく考えたら今の僕って介護される立場じゃない?」
だってこの前の脱走劇を見た医者曰く、『入院日数を増やされたくなかったらおとなしくしてなさい』と言われ『常人ならあんなに動けるはずないんだけどなぁ……あの状態で』とまで言われているんだ!そうだ!きっと介護される立場に違いない!
「介護してほしいの?」
「介護というか……優しくしてほしいです」
「へぇ……それってまるで私が優しくしてないみたいだね」
「え?あれで優しくしてたの?」
「してないよ」
「だよね~」
あれは優しくしてたんじゃなくて手加減していたんだ。はき違えちゃダメだ。
「「あはははは」」
僕らは向き合って笑い合う。そして、
「……ごめんなさい」
本日何度目かの謝罪をするのだった。
「……ふふっ」
静かに笑う有鬼子は本当に恐ろしかったです。
お昼ご飯は入院患者(とてもそうは見えないそうだが)ってことで病院食です。そろそろ飽きてきました。後、プリン食べたいです。プリンじゃなくてもいいのでスイーツ食べたいです。きっと僕の頭がおかしくなってるのは甘いものが不足しているに違いありません。
「は……はい。風人君。あーん」
目の前には有鬼子が一口分持って僕の口に入れてこようとしてきます。僕は抵抗することなく、
「あーん」
食べます。
有鬼子の提案により(発端は僕だが)何か介護されることになった僕。言っておくと僕の両手は
「も、もう一口……あーん」
「あーん」
対する有鬼子は(どこからか)借りてきたナース服を着ています。
おかしい。介護士と看護師。読み方はどことなく近いかもだけど、介護士はナース服を着ないです。じゃあ、何で着ているかと聞かれたら、
『か、風人君って、私にナース服着てほしい……?』
と聞かれたのでとりあえず何も考えずに「うん」と答えたらこうなりました。ちなみに提案者は
「よく似合ってるね~」
「そ、そうかな……?」
昼食も食べ終わり、動けない僕の代わりに運んでくれた有鬼子。
何だろう。ナース服を着た彼女は鬼の要素を一切感じない。不思議だ。ナース服のイメージがきっと彼女の持つ鬼の要素を打ち消したのだろう。うんうん。
「とても可愛いよ~」
「あ、ありがと…………」
なんだこの可愛い生き物。なぜだ。あの目を覚まして以来僕の中で何というか……有鬼子が凄い可愛く思えてしまう。なんだこの気持ち。そうか……!これが……!
「保護欲ってやつか……」
「…………?」
なるほど。僕はまた一つ賢く…………はっ!今ならゲーム返してもらえるのではないだろうか?
「風人君……!」
「有鬼子!?」
そう思った矢先、なぜか僕のおなかの上に馬乗りになってくる有鬼子。すみません。僕けが人です。
「もう我慢できない!大好き!」
すると何か抱きついてくる。え?えぇ!?
「好き好き大好き!」
な、なんだこれ……!?急に甘えてきてるんだけど……!?
「ど、どうしたの……!?」
「私は寂しいよ……」
ごめん。よく分からないけど、まず手錠外して。あと、ゲーム返して。
「最近全然会えなかったもん!だからいっぱい甘えるの!」
ああ。なるほどね。これが彼女の持つ人格の一つか。
きっと、僕に会えなかった不満と欲望と心配していたのと性欲と甘えられなかったのと願望が混ざった結果がこれか。…………ん?なんか一つ、僕の現状からさらっと非常にまずいものが混ざっていたような…………?
「えへへ~♪」
まぁいいや。つまるところ、僕のせいでぶっ壊れたと。なるほど。
…………いや最初から壊れてるか。うん。彼女は最初から壊れている。
「大好き」
そしてあの時のこれからはいっぱい甘えさせてもらうってこれか。
「ねぇ。キスしよ?」
「……いいよ」
「やった」
と、僕の頬に両手を添え、キスをしてくる有鬼子。
ドサッ
「……お兄ちゃん?」
キスをしている中、何か荷物を落とす音と涼香の声が聞こえる。
「涼香さん。ここは見なかったことにしていったん引き返しましょう」
続いて雷蔵の声も……あれ?これ何かマズくない?有鬼子もそう思ったようで、僕の唇から自身の唇を離す。
「そそそうだね……二人ともごゆっくり……」
閉じられた扉。目を合わせる僕ら。
「…………あぁ…………!」
正気に戻る有鬼子。そして、ゆっくり僕の上から降りてベッドの傍らで……
「………………恥ずかしい……!」
耳まで真っ赤にして蹲る。
「いやいやいや!あの二人絶対誤解してるよね!?いや、誤解の余地なんて微塵もなかった気がするけど!とりあえず追いかけて弁明してこないとダメだよね!?」
「………………うぅ……!」
ダメだ。僕は拘束されて動けないし有鬼子は恥ずかしさのあまり動けない。
「律!雷蔵にメールを!『何もないから病室に入ってきて』って送って!」
『了解です…………と、返信が来ました』
「早っ!?なんて来たの!?」
『「大丈夫です」だそうです』
「何が大丈夫なの!?」
結局、僕が頑張って拘束を自力で抜け出し、雷蔵と涼香を追いかけていった。
ちなみに何故か追いかけるときに僕自身が看護師たちからも追いかけられていた。なにこれ?僕そんなに有名人?