幕が上がる。
祐 中央で合掌 スポットライトが当たる。
祐 「母さん・・・」
顔を上げ、悲痛な面持ちの祐
祐 「僕は東方祐。高校一年生だ。・・・まあ、普通の高校生とは少し違うと思うけど。今はお墓参り中。僕の母さんのね。・・・僕の母さんは僕が小学四年生の時に交通事故で亡くなった・・・はずだ。はずだっていうのは、母さんが亡くなった時の事を僕自身あまり明確に覚えていないんだ。・・・普通こんなことありえないって思うだろうけどね」
祐 自分語りをする
「・・・でも、最近思うんだよ。なんで自分の母親が亡くなった時の事を覚えてないのかって。自分の母親の死に際を覚えてない・・・そんな非情な人間なのかな、僕は・・・」
祐 俯き悲痛な表情になる
杏佳が舞台袖から出てくる
杏佳「・・・祐」
祐 杏佳の登場に少し驚く
祐 「・・・姉さん?なんでここに・・・て、当然か」
杏佳「何言ってるの。私実の母親の命日を忘れるほど非情な人間になったつもりはないんだけど」
祐 「・・・非情か。僕に嫌味でも言いに来たの?」
杏佳「え?・・・別にそんなつもりはないけれど・・・」
祐「いや・・・なんでもない。気にしないでくれ」
二人が黙る 気まずい雰囲気になる
祐 「・・・とりあえず手を合わせていきなよ」
杏佳「そうだね、そうする」
杏佳が合掌する 祐がそれを眺める
舞台袖からローブを着た謎の男がゆっくりと歩いてくる
謎男「・・・・・・」
祐 「え・・・?」
杏佳「・・・貴方、誰ですか?・・・」
杏佳 警戒しながら男を見つめる祐は状況をつかみ切れていない様子
謎男「・・・お前が東方祐、だな。早速だがお前に用がある」
杏佳「なんですか貴方。急に現れて・・・そんな現代離れしたような恰好をして・・・私たちに何の用があるっていうんですか」
祐 「姉さん、待って。・・・僕にどんな用があるんでしょうか?」
杏佳「祐!そんな奴の・・・」謎男「物分かりがいいようでなによりだ」
謎男が杏佳のセリフを遮るように言う
祐 段々と冷静になり始める 杏佳はまだ謎男を警戒し、睨み続ける
謎男「話の前に東方杏佳。お前は私たちの会話を聞く必要がない。立ち去れ」
祐 「ちょ・・・そんな言い方はないんじゃないですか!」
杏佳「・・・祐の言う通りよ。普通初対面の人にそこまでの物言いする人見たことないわ。大体貴方、自分が何者なのかすらも言っていないじゃない。せめて名前くらいは名乗ったらどう?」
謎男「今はお前たちが知る必要も時間もない。・・・東方祐。お前には過去に行ってもらうぞ」
祐 「過去?・・・過去って言うと、タイムマシンとかで行ける過去に行けるってことですか!」
祐 過去という単語に反応し、謎の男は祐の反応の速さに驚く
謎男「ずいぶんと物分かりがいいな。・・・だが、その通りだ。東方祐、お前には取り戻しておかなければならない過去の記憶がある」
祐 「取り戻しておかなければならない過去の記憶?・・・それって」
杏佳「!祐、そいつの話をマトモに聞いてはダメよ!過去になんて・・・戻れるなんて話、聞いたこともない!」
杏佳 何とか祐を考えを正そうと必死になる
祐 「・・・姉さんはさ、僕が母さんの記憶を無くしていることを知っていて僕に話してくれないじゃないか。僕が何度も知りたい、教えてほしいって杏佳に言っても相手にしてくれなかったよね。その時の僕は純粋だったから何も疑問に感じなかったけど、今なら分かる気がするんだ。・・・母さんが死んだときに、僕が知っていたらマズイことでもあったの?」
祐 何かを察したように語る
杏佳「それは・・・」
祐 「・・・まあいいよ、話してくれないんだったら無理に聞く必要もないから。・・・それじゃあ僕を、過去に連れていって下さい」
杏佳「祐、待って!早まらないで!」
祐 「・・・早まるも何も、姉さんが話してくれればそれで済んだ話だよ。それがこうなったのは姉さんの自業自得だろ」
杏佳「・・・・・・」
杏佳 何も言い返せずに俯き走り去っていく
謎男「姉弟喧嘩は終わったようだな。では東方祐、目を閉じろ」
祐 「はい!・・・で、僕は何をすれば?」謎男「じっとしていろ」
謎男がそういうと祐の首に手刀を打ち付け気絶させる
暗転
明転
祐 道のど真ん中で倒れている
しばらくしてゆっくりと起き上がる
祐 「ここは?・・・ホントに昔に戻って来た・・・のかな?こんな場所は僕の記憶に無い、というか見覚えがないんだよな・・・引っ越して5、6年も経ったら忘れるなんて、記憶力無さすぎだろ、僕・・・」
祐 自分が住んでいた場所を覚えていない事を知り自分の記憶力に絶望する
祐 「というか・・・そもそもここが本当に僕が住んでいた町だっていう確証も無いし・・・はあ、やっぱり騙されていたのかな・・・」
祐 自分が謎の男に騙されていたと決めつけ落胆する
しばらくして舞台袖から女性がこちらに向かって歩いてくる
楓 「貴方が東方祐様・・・ですね」
祐 「はい、そうですけど・・・貴方は?」
楓 「私のことは・・・そうですね。楓とお呼び下さい。・・・私はユアン様の依頼を受け、東方様のご案内をさせていただく者です」
祐 「あ、ご丁寧にどうも。・・・ご案内ってことは僕が行きたい所が何処かも、知っているんですか?」
楓 「ええ。東方様は一度ご実家に戻りたいのでしょう?それならばこちらです。着いてきて下さい」
祐 「・・・まだあまり信用はしていないですけど、分かりました。使える手は使っておかないと。ここが僕の住んでいた町ってことが分かっただけでも万々歳ですけどね」
楓 「・・・そうですか、それはなにより。・・・事態は一刻を争います。急ぎましょう」
祐 「はい!」
祐と楓 走って舞台袖に向かう
暗転
明転
早姫と勲が口論をしながら出てくる
早姫「アンタねぇ・・・最近仕事ばっかで、全然家に帰ってこないじゃない!どういうことよ!」
勲 「しょうがないだろ、俺だって仕事があるんだから!大体君も家事をマトモにやっているようには見えないんだが?」
早姫「ほぉ~ら、自分の立場が危うくなったらすぐ人に擦り付ける!アンタ昔っからそこんとこは変わんないわよね。ほんっと腹立つ!」
勲 「君だって自分が満足に家事をしていないことを棚に上げて、無かったことにしようとしているじゃないか!僕には君の言っていることの方が、到底理解できないけどね!」
早姫と勲 さんざん口論してそっぽを向く
祐と楓が出てくる
祐 「・・・あの二人、あんなに仲が悪いはずがない。父さんはいつも定時には仕事を終えて家族みんなで夕飯を食べていたはずだ。母さんだって家族のことを第一に考えて、家事は自分の役目だって言って全部滞りなくやってたはずなのに・・・そもそも喧嘩したことだって・・・」
楓 「・・・どうやら貴方の記憶と実際の貴方の両親とは、随分かけ離れているようですがね。まるで正反対ではないですか・・・普通こんなことはあり得ない。誰かが記憶を操作したとしか・・・それとも母親が死んだことがそれほどにショックだったのか・・・」
楓 独り言のようにぶつぶつと語る
祐 「・・・楓さん、如何して貴方はそんなに冷静でいられるんだ?僕には理解できない・・・」
楓 「理解できないって・・・私は当事者ではありませんし、東方様の記憶についてもユアン様からお話を伺っただけであって・・・それに私はこういう場に慣れてますから」
ここは後で付け足しする
幼少期の祐が入ってくる
幼祐「・・・お母さん、お父さん。えっと、その・・・」
早姫「・・・何?今は祐に構ってる暇は無いんだけど。それより祐、アンタ風呂掃除は?後皿洗いに・・・ピー(洗濯機の鳴る音)・・・ああ、洗濯物もあったわね。やってきな、祐」
祐 「でも・・・お母さん、今日は!」
早姫「うるさい!アンタに今日も明日も関係ない!大体ねぇ・・・アンタなんかが生まれてこなけりゃ、こんなことにはならなかったのよ!」祐 「・・・!」
早姫 机を叩き祐に向かって怒鳴る
幼祐 先の言葉にびくっとなる
勲 「お、おい。さすがに言いすぎだろ!元はと言えば・・・早姫「アンタは黙ってろ!」勲 「・・・・・・」
早姫 勲の言葉を遮り怒りまくる
勲 何とか早姫を抑えつけようとする
祐と楓の会話 要付け足し
幼祐「・・・お母さん、僕が生まれてこなければいいなんて思ってたんだ。じゃあさ・・・・・・死んでよ」
早姫「・・・・・・え?」
幼祐 机の下にあったナイフを早姫の首元に突き刺す
早姫「は、え嘘・・・」
祐 「え?・・・そんな、僕が、僕自身が、母さんを、殺してた?そんな、そんなことって・・・」
祐 目の前の状況に混乱し薬を使ったかのように動きだす
祐 「・・・ああ、そうか。だから杏佳は僕に教えてくれなかったのか・・・ああ・・・なるほど、全部分かった。全部、全部。だから僕の記憶が無くて、それで」
祐 ニヒルに笑いながら狂ったように語りだす
祐 「あはっ、はははははははは!あはは、はは、は・・・・・・」
祐 狂ったように笑うと力尽きたように倒れる
全体的に付け足し必須
暗転
明転
祐がお墓の前で寝そべっている
ユアンが祐を上から見下ろしている
ユアン「どうだ・・・これがお前の取り戻さなければならない過去の記憶の真実だ」
祐 ユアンの声に反応してゆっくりと目を開ける
祐 「・・・まさか僕自身が母さんを殺していただなんて、夢にも思いませんでしたよ」
祐 ハハハと苦笑しながら言う
祐 「・・・僕が殺してたってことは僕は逮捕されちゃうのか・・・あ、それとも出頭ってやつをした方がいいのかな」
ユアン「知らん。それはお前が勝手に決めることだ。だがな・・・」
祐 「・・・?」
ユアン「・・・いや、お前には真実を知っていてほしかっただけだ。それでは」
祐 「待って下さい!」ユアン「・・・・・・なんだ」
祐 「あの、貴方は結局何者なんですか?僕、ユアンさんって言う名前しか知らなくて・・・」
ユアン「・・・・・・」
祐がそう言うとユアンがフードで隠していた顔を始めて晒す
祐 「・・・え?それって、ぼ、く?」
ユアン「そういうことだ。結局は過去の自分に本当の事を知っていてほしかった、というだけさ、・・・それじゃあな」
ユアン 舞台袖に去っていく
祐 ユアンの後ろ姿を呆然と見送る
終わり
※全体的に付け足しの必要あり