転生者「ハイスクールD×Dをバッドエンドにしようと思う」 作:岸寄空路
――ある一人の少年がいた。
世間的に見れば一般的で凡庸な少年。類稀なる身体能力が有るわけでも、とびきり優れた知能が有るわけでもない。一般家庭の生まれで特殊な血筋と言うわけでもない。秘匿しなればいけないような技術も異能も持っていない。
その代り少年には前世の記憶が有った。
逆に言うとそれだけであり、それ以上に変わった処も無い。前世の記憶と言うものが有っても少年にとっては知識が有るから人より大して勉強しなくても良いという以外に役に立たないし、むしろ前世の経験の所為で同級生より精神年齢が上な為に上手く友達を作れない為に親に心配掛けてしまう。
そんな少年には幼馴染の少女がいた。
少女は少年に淡い恋心を抱き、少年も少女に魅かれていた。このまま大人になっても一緒に居ようと約束もした。将来的には結婚して新しい家族と共に幸せな家庭を築いたことだろう。少年達の家族もそんな未来を期待していた。そんな未来を当たり前の様に信じていた。
少女が、
「う、あ……あ」
少年は苦しんでいた。全身に重傷を負って、少年の命は風前の灯と化していた。
「いやぁ! ■■!」
「おとなしくしろ!」
目の前で幼馴染の少女が連れて行かれるのをただ見ている事しかできない。少年の両親も少女の両親も既に命を絶たれた。少女を手に入れようと画策した悪魔の手によって。
少年は知らなかった。この世界が前世のラノベ『ハイスクールD×D』に酷似した世界であることを。気づく要素は有った。有名な漫画に『ドラグ・ソボール』と言う前世の漫画によく似た作品があることぐらいだが。それぐらいしかヒントは無く、仮に気づけたとしても何の力も無い少年にはどうしようもなかった。
「安心しろ。そいつの事は忘れる。今日から貴様は俺様の眷属だ」
「いや、いや! いやぁ……」
悪魔が少女の額に手を翳すと少女の瞳から光が失われていく。洗脳されてしまったのだ。
「では帰るとしよう」
「……はい」
その光景を最後に少年は意識を、命を落とした。
『これは……?』
命を落としたはずの少年が意識を取り戻した。奇跡的に助かったのかと少年は自身の体を見た。しかし、その体は透き通っており、とても生気が感じられなかった。
『そうか、俺死んだのか……』
少年は自分が幽霊になってしまった事を理解した。同時に少年の心に沸き上がったのは“後悔”と“憎悪”、そして“絶望”の感情だった。
『俺に、力が有れば!! ■■を、家族を守れたのに!! ハイスクールD×Dの世界だって気づいていれば!! どこかの神話を頼ることができたかもしれないのに!! 腐った教会の連中にしつこく狙われることも! 堕天使や悪魔の好き勝手にさせる事も無かったかもしれないのに! ああ、それ以上に――』
全てが「たら・れば」でしかない。所詮は一般人でしかない少年の高望みでしかない。だが、それでも、少年は後悔し続ける。
『なんで俺には前世の記憶しか無いんだよ!!』
転生者と言う特殊性故にそんな思いが沸き上がる。何故、物語の主人公の様に異能を持っていないのか。何故、原作に関わっていないのに人外に殺されなければならなかったのか。何故、自分の幼馴染が神器所有者なのか。前世の時も長い時間を生きた訳でもなく、だからと言って大きな悪事を働いたわけでもない。それなのに何故。自身に訪れた理不尽を嘆く以外の事が今の彼には出来なかった。
『どうして、だよ』
――なんで
『俺が……』
――私が
――僕が
――私達が
こんな目に合わないといけないんだ。
『……え?』
そこで初めて少年は気づいた。この空間に自分以外の存在がいる事に。
『これは……!』
――いや、やめて、殺さないで!
――家族は、家族だけは見逃してくれ!
――苦しい、痛い。神器を抜かないで!
――やめてくれ! 俺は人間のままでいたいんだ!
――何故、神は我々を助けてくれないのですか!
それは自分と同じ幽霊。悪魔に、堕天使に、天使に命を奪われてきた人々が怨霊となっていた。
『ここにいる全員が同じ……』
神器を抜かれた者、無理矢理家族を悪魔に変えられ殺された者、冤罪ではぐれ悪魔と断じられ処理された者、異教徒として教会に殺された者、死んだ事どころか存在した記録も記憶も奪われた者、三大勢力に対するあらゆる恨みを持つ者達の魂が集まっていた。
『あ、あぁ……』
自分だけではない。数えきれないほどの人間が三大勢力の人外達によって殺されている。存在すら無かったことにされている者もいる。
同時に全ての者が一つの願いを持っていた。
――復讐したい。
それは少年自身も抱いている思い。幼馴染の少女を、家族の命を奪った悪魔への復讐を。だが既に自分は死人。どうしようもないと諦念しか浮かばない。だが――
『ふざけるな……!』
それで納得できるわけがない。
『ただ日常を送っていた俺がこんな目に遭ったのに――』
きっと原作通りなら主人公は変態行為を行い誰かの心を傷つけているのに。
『今度こそ親孝行するはずだったのに――』
『ただ幼馴染と結ばれたかっただけなのに――』
『ふざけるな……』
『ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナ……』
原作を知らなければ、あるいはこの世界が『ハイスクールD×D』に酷似していることを知らなければ、ここまで負の感情を持たなかっただろう。彼が兵藤一誠が嫌いでなければ妬まなかっただろう。知っているからこそ妬ましい。三大勢力を知っているから恨む。主人公が兵藤一誠だから憤怒する。
もし別の作品であれば我慢できたかもしれない。主人公が別人ならここまで怒りを覚えなかったかもしれない。自身が神器を持っているなら諦めがついたかもしれない。
目の前で家族を、幼馴染を奪われた彼の怒りと悲しみ、憎悪は周りの怨霊と同調して膨らんでいく。
『憎い、にくい、ニクイ……!』
三大勢力が憎い。と全ての怨霊と同調した時、一つの異能を目覚めさせた。
『…………』
彼の手には拳銃に似たアイテムが握られていた。それは彼が死ぬまで目覚めなかった異能『具現武装』によって生み出された。強い思いがトリガーとなっていたこの異能は彼の強い憎悪によって幽霊となってから発動した。
『復讐を……いや、八つ当たりをしよう』
先程までの狂ったような声と違い、冷静に彼は言葉を告げる。
『これから行うのは俺達死人による八つ当たりだ……善意も正義も無い、どうしようもない邪悪として――』
その目には憎悪以外の感情は宿っていなかった。
『三大勢力を滅ぼす!』
手に持った銃を怨霊達に向けて宣言した。
『お前たちに形を与える!』
それは彼が前世で知る中で強く、悪をなした者達の姿。それを具現化させる。
『まずは戦闘技術の自信が有る奴等、お前らは――『仮面ライダーエターナル』だ』
無数の怨霊が実体を得ていく。
『次に、魔力が多い者、お前らは――『仮面ライダーワイズマン』』
恨みを、憎しみをぶつける為に。
『優れた頭脳を持つ奴、お前らは――『仮面ライダーゲンム』』
正当性など考えず、ただ我慢できないから。
『神器や異能を持っていなかったお前らは――『仮面ライダーエクストリーマー』』
加害者であることから目を背けている三大勢力に、罪が有る者も無い者も関係なく八つ当たりするために。
『そして、神器を奪われた奴等は俺と一つになれ!』
彼らは現世に戻った。
『コブラ!』
『蒸血……』
『ミストマッチ!』
『コッ・コブラ……コブラ……ファイヤー!』
『俺は、俺達は『ブラッドスターク』だ!』
これは
悪人が悪事を為して訪れる
この作品は他の方から頂いたアイデアで思いついた作品です。
原型が欠片も残っていませんが……。
正直、アンチがきつめなので好き嫌いが分かれると思うので活動報告にて連載希望が十人以上いたら続き書きます。