「何で寝てんのよっちゃん!」
ふぁぁと大きく息を吐き体を伸ばす。
どうやらアルバイト中に寝ていたようで、同じくアルバイト中の幼馴染の高海千歌が「仕事中に寝るなんて!」とプンプンと聞こえそうなほどに頬を膨らまして自分を見つめていた。
「別に構わないだろ、閑古鳥鳴いてるし。」
「ほへ?パン粉鳥?そんな鳥いるの?」
あたりにパン粉鳥がいないかキョロキョロと店内を見渡す幼馴染見て頭に手を当てた。店内には閑古鳥どころか人っ子一人いない。幼馴染の半分脅迫に近い形で喫茶のアルバイトをやらされているのだが、まあ暇なこと。少しでも客が来れば眠くはならないというのに。
「いや〜ついに!ついに!明日から学校だよ!」
そう、今日は春休み最後の日明日から新年度晴れて高校二年生になるのだ。普通なら春休み最後の日では明日なんて来て欲しくない、世界が滅亡しても構わないと思うのだが千歌っちはなにやら野望があるらしい。
「私のスクールアイドルライフが始まるんだよ!」
つい先日東京に行った際ユーズ?ミーズ?なにやらすごいスクールアイドルをみて私もなる!といってきかない。今の千歌っちにはやると言ったらやるそういった凄みがある!
まあ、すぐに飽きるのが常である。なんなら10ポンドかけてもいいよ。
「へいへい。」
「その顔は信じてないな!絶対スクールアイドルになってやるからな!」
千歌っちの元気な声を聞きさっきまでいたはずの眠けもどこへやら、さていっちょ働きますか!
そう心に決め箒とちりとりを持ち店前を掃除しようと扉に手をかけようとすると後ろから
「サボったら、美渡ねぇに言いつけるよ。」
そう確かに聞こえた。
それはマズイ。どのくらいマズイかというと部屋に隠していた大切な本が親にバレた時くらいマズイ。いや、まだ親にバレた方が幾分かマシまである。地震カミナリ火事美渡ねぇとはよく言ったものである。とにかく千歌の姉美渡は怖いのだ。
仕方あるまい奥の手を使うか。
「ちかっち、ミカンサイダーを奢ってやろう。」
「! ここは任せてコンビニに行きな。終わったら一杯やろうぜ。」
「死ぬんじゃねぇぞ。」
そう言い残し店を後にする。こうなれば箒もちりとりもいらない店に千歌を残しもてる力を全て使いコンビニかけて行く他ない。
店を出る際に「チカァァァ!サボってんじゃないよ!」と雷が落ちた気がするが振り返ってはいけない。
ーーーー
善雄は走った、太陽が沈むよりも早く走った。店で待つ友のため。
コンビニで、お詫びの品と頼まれもののミカンサイダー、適当時間を潰せる雑誌を買いゆっくりと帰路に着いた。
危なかった、あと少し出るのが遅ければ捕まっていただろう。そうなれば………考えるのはよそう。
なんて無駄なことを考えつつお店まであと少しそんなところまで歩みを進めていると猪突猛進とはこのことを指すのであろう。そう思えるほどまっすぐひたすらまっすぐにこちらに女性後ろから向かってくる。その女性はこちらに気づくと顔を引きつらせ、道端の茂みに飛び込んだ。
きっとあの女性は頭のネジが春一番とともに飛んでいってしまったんだろう。今年風強かったし仕方ないよね。だれも責めない、私見てない。
するとまた後ろから足音ではなく今度は知った声が聞こえてきた。
「善雄!こっちに女走ってこなかった?とびきり美人の!」
息を切らしながら声をかけてきたのは高校の同級生であった。
肩で息し、倒置法を使うあたり相当美人な人だったんだろう。あいにくこちとら不審者一歩手前の女性しか見ていない。
「いや見てないな、と言うより何してんの?」
「何って追いかけてたんだよ。」
逃げたら追うって、猿かお前は。
「てか、お前課題やったんか?俺はナンパしてるようなやつに見せるつもりはないからな。」
「えっ、お前のノートあてにしてるんだやめてくれよ。」
自分でやるという選択肢はないのか。
こういったやつは嫌いだ。なにか力を借りたい時だけ友達ぶり、なにもない時は赤の他人。自分にとって利用価値があるかないか、それだけでしか見ていない。
「見せて欲しければ少しくらいやってみせろ、誠意ってやつだ。」
そういうと渋々納得し、踵を返した。
「もう出てきても大丈夫ですよ。」
完全に姿が見えなくなってから、草むらから頭が見えている女性に一応声をかけ、こんな怪しいやつと一緒になんていられるか!俺は先に帰らせてもらう!そう言わんばかりそそくさとその場を後にしようとすると「あのぉ……」蚊の鳴くような声で引き止めてきた。
「その、ありがとうございました!」
礼儀正しいお辞儀、ぴったり90°腰から曲げ頭を深々と下げる。こちらとしてはお礼をされるほどのことではないと思っているのでどこかむず痒い気分になる。
「いやぁ、そんなに丁寧なお辞儀されるとちょっと困るんで頭上げてもらえます?」
自分の言葉を最後まで聞き終えるとゆっくりと顔上げた。
女性を花に例えることがよくあるが、なるほど確かに適当だ。触れれば壊れてしまいそうな可憐で儚げなところ、しかししっかり人を見せる美しさ。女性を花に例えた先人は偉大である。
今まで女性を花に例えることがなかったためある種の新鮮さを感じた。
なにかわいらしい女性がいなかったわけではない、自分と仲の良い女性が皆タイプが違うのだ。道端にひっそりと咲く花ではなく、コンクリートを元気よくぶち抜いて存在をこれでもかとアピールしてくる奴らだったという話だ。
「あのどうかされました?」
どうにも見惚れて長いこと固まっていたらしい、不安そうにこちらのぞいてくる。
「いや別に、少し考え事してただけですので。」
赤くなっているであろう顔を見られまいとくるりと向きを変え、手をヒラヒラと降って見せた。
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危ねぇマジで恋に落ちる3秒前だったわ。いやぁ、一目惚れがあるとしたらあんな感じで落ちるんだろうな、おじさんびっくりだよ。きっとラブコメなら行く先々で出会い恋に落ちるのだろう、ラブコメならな。
なぜか少し後ろを一定距離を保ち付いてくるのでる。なんで?刷り込み効果で親と勘違いした?それとも仲間になりたそうにこちらを見ているのか。まあ、迷子が妥当なところだろ。
「私についてきても駅前には出ませんよ。」
「そうじゃなくて、そのぉ……なにかお礼がしたいなぁって。」
なんだそんなことのためにわざわざ付いてきたのか。世の中には珍しい人もいたもんだ、普通お礼言ってはいお終い。そんなもんが日常で、いちいちお礼をしについてくるこの人は変わった人なのだ。そう言われても大したことしてないもので、この人の厚意に甘え「じゃあ!」となにか頼むのも厚かましさがある。
「私に出来ることならなんでもしますので。」
ん?今なんでもするって言ってよね?
なんて冗談は置いておき、なんでもか………これは名案だ。
ーーーー
一度大きく息を吐き覚悟を決め入り口の扉に手をかける。
扉を開けると鈴がチリンチリンと鳴り店にだれかがやってきたことを伝える。 するとカウンターの奥から笑顔を顔に貼り付けながらゆっくりとこちらへ向かってくる。
「今までどこに言ってたのかなぁ?」
こっわ!笑顔なのに全くにこやかな気持ちにならない!千歌っちのことは残念だったよ。
「客引き!客引きに行ったんよ!ほ、ほら入って」
そう言い扉の後ろに隠れている女性を手巻きし中に招き入れる。
美渡ねぇは2、3度瞬きをし営業スマイルへと仮面を変える。
そこら後はマニュアル通りの機械的な対応変な気さえ起こさなければあっさり終わるものである。
駅までの道は分かっているようで食事を済ますとあっさりと女性は退店した。
「よっちゃん、今の人知り合い?」
「いんや、たまたまこれ買いに行く途中会ったひとよ。」
「あんま見ないひとだよね?どっからきたんだろ?すごいオシャレだったし東京とかかな?私もあんなオシャレな人になりたいなぁ。」
「まあ頑張れ。」
「すっごい棒読みだね。」
心にもない応援をし時計を確認する。そろそろ終業時間だ。明日からの学校生活に期待や不安を抱え制服を脱ぎ日常へと歩みだす。
「なに帰ろうとしてるの?」
美渡ねぇは激昂した。
基本カメ投稿なのであまり期待せず見ていただけると幸いです。
必要に応じてタグは付け加えていきます。
誤字脱字多くて読みづらいものになっていたらすみません
のんびりやっていくのでよろしくおねがいします!