旧石器時代からスタート   作:ADONIS+

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エヴァンゲリオン編
1.ネアンデルタール人


 天の川銀河太陽系第三惑星地球。それは多くの下位世界で舞台となる惑星。主に20世紀から21世紀を舞台とすることが多いが、この地球の時代は紀元前二万八千年前頃だった。

 そんな農業すら行われていない旧石器時代の地球近郊の宇宙空間に一隻の宇宙船が存在していた。

 

 ガーティ・ルー級巡航艦「レキシントン」。ガーティ・ルー級の原型は『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』で登場した特殊戦闘艦である。

 その最大の特徴はミラージュ・コロイドによるステルス性能だが、その他にも砲撃能力や母艦機能なども備えており、ブリタニア帝国軍では中途半端な艦船と酷評されていたが監察軍では重宝されている。

 

 この評価の違いは両者の艦隊運用の違いが影響していた。

 ブリタニア帝国軍は集団戦、つまり数万から数十万もの大艦隊による艦隊決戦を想定して軍を整備しているので、戦艦なら戦艦に特化した艦が、空母なら空母に特化した艦が求められた。

 一方、監察軍は主に下位世界の調査の為の艦隊を整備していた。あくまで調査目的なのだから、わざわざ多くの艦隊をそろえる必要はない上に、コストの問題もあり、自然と単独での調査が主流となる。そうなるとステルス機能や砲撃能力、空母機能などのさまざまな機能を搭載した万能艦が求められていく。中でもステルス機能が特に重視されたのは、現地世界に発見されない為であった。監察軍にとってあくまで下位世界は調査対象にすぎず、直接交流を持つ対象ではなかった。

 そんなレキシントンのブリッジにカリンとアンドロイドたちがいた。

 

「これが三万年前の欧州か。見事に何もないわね」

 カリンが地球とモニターに拡大された欧州の映像を見る。この世界は『新世紀エヴァンゲリオン』の原作開始の約三万年前の時代だ。

 

『時代が時代ですから、欧州どころか地球全体が文明0です』

 そんなカリンの如何にもロボットという感じのアンドロイドが答えた。

 

「まぁそうでしょうね」

 現在、このレキシントンにはカリンとアンドロイドしかいない。このレキシントンにしても、カリンが立ち上げたトリッパー増員計画のために監察軍が用意した物に過ぎない。

 

 そもそも下位世界を作り上げた観測者たちの中でも下位世界にトリップした者がトリッパーと呼ばれていた。

 そんなトリッパーが必要とされたのは、下位世界創造の副作用として出現する破壊神ベヅァーを無力化するためだ。彼らが下位世界に存在していることで下位世界の安定性が高まりベヅァーの力が中和される。

 この仕組みは割りとよく効き、長きに渡りベヅァーを押さえ込むことに成功したが、それに痺れを切らしたベヅァーが不完全なままで出現してトリッパーたちを排除するという事件が発生した。

 これが第一次ベヅァー戦争であるが、この一件でトリッパーたちの総数が激減してしまい、それの補充に死神がてんてこ舞いの忙しさとなってしまった。

 

 その為、死神が姫神みこにトリッパーを作ることを要請することになるが、それを受けたみこやカリンもこれに困った。

 トリッパーを揃える上で問題となっているのが転生特典だ。記憶を残したままトリップさせるだけならいいが、転生特典もつけるとなると手間がかかりすぎてとてもじゃないが、量産向きではない。

 そもそも肝心なのは上位世界人の魂を宿している点なのだから、転生特典など省いてかまわない。だから転生特典を必要としない下位世界に転生特典をもっていない憑依型のトリッパーを大量に送り込むというのは効率がいい方法なのだ。

 そこで前世の記憶だけでも活躍して内政チートができる二つの計画を立ち上げた。

 

 最初に考えたのは、仮想戦記のように過去の日本にトリップして日本を魔改造させることだった。これならトリッパーたちに『僕の理想とする日本』を作り上げるという明確な目標を与えられるだろう。最もカリンはこれを自分で実行するつもりはなかったので、監察軍に提案して彼らに実行させた。

 

 そして、もう一つは従来とは全く異なる新国家を建国して、トリッパーたちに内政チートをやらせるというものだった。ここでカリンは斬新さを求めてホモ・サピエンスではなく、ネアンデルタール人による国家を作り上げることにした。ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)とは、約二十万年前に出現し、二万数千年前に絶滅したとされるヒト属の一種で、現在の地球人であるホモ・サピエンスに最も近い近縁種だ。

 

 現在の下位世界に存在する人間は地球人だけでなく、ブリタニア人などの異世界人であっても種族としてはホモ・サピエンスが主流で、これは上位世界人がホモ・サピエンスのみで構成されている影響だろう。この誰もやったことがないという意味では面白みがありそうだ。

 

「それで、ネアンデルタール人のDNAサンプルは集まったかしら?」

『はい。すでに千人分以上のサンプルが集まっています』

「上出来ね。それだけ集めれば国民いえ臣民も製造できるわ」

『確かに可能ですが。本当によろしいのですか?』

 科学技術の発達により、人間を増やすのに自然出産に頼る必要はない。だが、まるで工業製品のように人間を製造するのは抵抗があるのだろう。アンドロイドのくせに妙に倫理的な奴だな。

 

「……私たちが現地のネアンデルタール人達をかき集めて国家を作れば、この世界の歴史に干渉しすぎてしまうわ。これは余計な干渉を避けるために必要な事よ。監察軍とブリタニア帝国の許可も貰っているわ」

『分かりました』

 カリンは許可を取っている以上文句をいわれる筋合いはないと、言外に主張していて、それを理解したためアンドロイドもすんなりと引き下がった。

 ふん、アンドロイド風情が口答えするとはね。

 

 ちなみにカリンが使っているアンドロイドはいかにもロボットという外見をしていた。その気になれば、人間の美少女にそっくりな姿をしているアンドロイドも用意できる。

 しかし、カリンはアンドロイドと人間の区別がつきにくく紛らわしいとして、必要以上にアンドロイドの外見を人間に似せるのを嫌った。

 勿論、逆に人間そっくりのアンドロイドを重宝するトリッパーもいて、その辺りはトリッパーの好みが分かれていた。

 

 カリンが先ほど言った“現地世界の歴史に干渉しないため”というのは表向きの理由に過ぎない。本当の理由は手間を省くためだ。

 この世界のネアンデルタール人を集めようとするなら、会話による意思疎通が必要になる。

 言葉という物の歴史は古く、文字が誕生する遥か昔から存在していた。それを考慮すれば、この時代の原始人であっても言葉ぐらいはあると思うが、当然ながら彼らが使う言語は現代の日本語や英語とかとはまるで違う筈だ。

 一々、言葉がまるで違う原始人を説得して国家を作るなんてどれほどの手間がかかるか分からない。はっきり言ってナンセンスだ。そんな事をするぐらいなら、一から臣民を作り上げた方がいいだろう。

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