西暦1987年。BETA『Beings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human race(人類に敵対的な地球外起源生命)』との戦いで敗戦を続け、未だにこれを覆す力は人間には存在しなかった。
もはや人類滅亡を遅らせるぐらいしかできることはない。地球に住まう人々に絶望が満ちていた。
しかし、そんな地球圏(地球近郊の宇宙空間)にいきなり10万隻もの謎の宇宙艦隊が現れた。突如として出現した大艦隊に各国は混乱し、大騒ぎとなった。
そして、艦隊から送られたメッセージが各国を困惑させた。
『我々はアトランティス帝国軍第七基幹艦隊だ。この惑星のホモ・サピエンス種の滅亡が決定的となったが故に救済処置として地球に来航した』
宇宙人(実際は資源回収ユニット)とのコンタクトは大失敗に終わった彼らに、宇宙人と思われる宇宙艦隊(実際は異世界人の艦隊)から彼らにも理解できる言語(英語と日本語)でコンタクトを取ってきたのだ。
この状況で各国が即座に会談に応じるわけではなく、警戒するのが当然といえた。
しかし、警戒するといっても相手は10万隻である。こっちから喧嘩を売るわけには行かない。
そんな中で『我々はホモ・サピエンス種の救済処置として地球各地に存在するハイヴに爆撃を加えることを検討している。それゆえ国内にハイヴが存在する全ての国家との会談を申し込むものである』というメッセージが伝わった。
これに中国、ソ連、EU(共に該当国家)が反応した。彼らは新たな宇宙人が対抗不可能な存在であることは理解できた。
しかし、交渉すれば何らかの支援を引き出せるのではと考えたのだ。特にBETA大戦で消耗してしまったソ連はアメリカを出し抜いて地球代表としてアトランティスと交渉することが国益になると判断した。
これらの国々が動き出すと、アメリカは敏感に反応し、対抗上自分達も参加しようとするが、ソ連や中国は当然それに反発していった。
アメリカが「これは地球全土に関わる問題だ。ソ連、中国、EUだけにまかせていい事ではない」と主張すれば、該当国家は「彼らは我々との会談を申し込んでいるが、貴国は対象外だろう」と反論していく。
更に日本やオーストラリアなどの国家もこれに加わり、壮絶な主導権争いが勃発していった。
当然ながらアトランティスの技術力からすれば地球の暗号通信などは筒抜けであり、これらの動きはアンカー大将たちの知るところとなる。
「これがマブラヴ名物の主導権争いか」とアンカーが揶揄したような壮絶な内ゲバをやらかして時間を浪費していった。
「あいつらは一体何をやっている!」
膠着すること三日、会談そっちのけで主導権争いをやっている地球各国に参謀長はキレかかっていた。
「仕方あるまい。会談には希望するすべての国家の参加を認めると通達したまえ」
「よろしいのですか?」
参謀長が計画にない行動に確認を取る。
そもそも該当する国家と交渉するだけでも面倒なのに、この上他国まで加えると交渉が上手くいかないのではないのか、と不安に思っているのだろう。最もそれは無用の心配でもある。
そもそもアトランティスにとって交渉を成功させるつもりなど最初からないのだ。
「このまま時間を浪費するよりマシだ。ただし我々が譲歩するのはそこまでだと伝えてやれ」
「わかりました」
「さて次はどこで会談するかだが、宇宙でと思ったがこの分だと地球上でやらざるをえないだろうな」
恐らく会談には残存するすべての国家や亡命政権も参加してくるだろう。そうなると、こちらの艦に乗り込んで来いとは言いづらい。だから地球でやればいいが、それに最適な場所といえば…。
「ふむ、ついでに会談は国際連合本部ビルでやる事と、この艦を地球に降下させる旨も伝えておけ」
「はっ!」
これらの通達が伝わった結果、各国は慌しく会談の準備に取り掛かっていく、これらの作業が終わるとアンカー達の旗艦がニューヨークに降下した。
「これが宇宙人の戦艦か」
各国の要人達だけでなく、ニューヨークにいる住民達がその艦に注目していた。
新たなる宇宙人、それは第二のBETAになりうる存在なのか?という不安もあるのだろう。
お気楽な空気はない。だが、彼らはその艦艇から降りてきた人物を見て固まった。
「に、人間だと?」
その人物は黒髪であるが肌の色などから白人と分かる40代ぐらいの男性だった。BETAのような醜悪な化け物の次に現れたのが人間そっくりだったのだから驚くのは無理もない。
ニューヨークに降り立ったアンカー大将は、そんな周囲の反応に薄く笑った。