アトランティス帝国の介入によりBETA大戦が終結した。しかし、これで平和になってめでたしめでたしといかないのがマブラヴ世界だった。
確かにアトランティス帝国のハイヴ爆撃により、地球上のBETAは一掃され、これまでBETAに国土を占拠されていたユーラシア各国の亡命政権や難民たちも本国に帰還できるようになった。ここまではよかった。
しかし、いざ復興という段階で彼らは青ざめた。
「これで、どうやって復興するのだ?」
この言葉が示すように、ユーラシア大陸の現状は目を覆わんばかりだった。かつて人間達が作り上げた建造物はBETAに全て破壊されて地形すら大きく変わっていた。更に資源の多くがBETAに毟り取られていて期待していた資源は得られない。
それだけでも不味いが、これに放射能と重金属の深刻な汚染と言う大問題が発生していた。最も放射能や重金属に関しては人間がばら撒いた物の為、自分で蒔いた種であったが、これらの汚染は深刻で、居住だけでなく食糧生産でも足かせになっていた。
これでは復興しようにも自力では無理である。だが、だからといって彼らにしても「いっそのこと諦めろ」とは口が裂けても言えない立場である為、とにかくできる事からやらねばならなかった。
まず、復興予算の足しにするためにアフリカに流し込んでいた欧州資本を引き上げる(この影響でアフリカの経済成長が止まった)。
次にアメリカから支援を引き出す事(つまりアメリカに集った)にしたが、アメリカがそれを拒否したため、それは上手くいかなかった。
そもそもアメリカがいくら超大国だからといって予算が無限ではない。
勿論、各国の復興を支援する事でアメリカの影響力を強化しようという意見は存在したが、そんな彼らにしてもユーラシア復興に必要とされる予算の試算を見て、顔を引きつらざるを得なかった。
それは、とてもじゃないが世論が許さない程の金額だった。というよりも大増税をしても賄えないほどだ。
アメリカ国民から言わせれば「大戦で散々支援してやったのだから、これ以上面倒見切れるか!」となるし、そんな国民から選ばれる政治家にしても支持率は気になるから、「各国の復興の為に私達のお金を使いましょう」とは言えない訳で、こうなると「BETA大戦が終わったから後は自分達で何とかしろ!」とある意味突き放した意見がアメリカの主流になるのは当然と言えた。
つまり復興支援が欲しい各国と、そんな出費は出したくないアメリカとの外交のやりとりが活発になったわけである。
こうした問題に加えてBETAという地球人類共通の外敵がいきなり消滅した事で、これまで地球人類が抱えていた様々な問題が再発してしまい、これが復興の大きな妨げになっていた。
まずBETAによって国土を蹂躙されたユーラシア各国が残された国境線や資源をめぐって激しく対立。中国では中華人民共和国と中華民国の協力体制が崩壊して現在では正統政府の地位を巡り対立。アフリカでは欧州各国が本土復興の為に欧州資本の引き上げを行った為に経済が大混乱を起してしまい、そこに民族問題が爆発してしまった。
カリンside
「……というわけでして、地球の情勢は我々の想定通りですね」
「そう、やはり地球人類との接触を極力控えたのは正解だったわね」
地球の情勢を聞いたカリンは呆れていた。
「ええ、やはりあの世界の人間は精神性に問題があります。折角BETAから助けてやったのにこの有様ですから」
情報担当の幹部も呆れた表情をしていた。
「まぁ元から可笑しな世界観の下位世界でしたから仕方がないでしょう。何しろ人類滅亡の瀬戸際でも足の引っ張り合いをするような連中ですから、BETA大戦が終わったからといって「仲良く復興しましょうね」とは行かないのでしょう」
「まったくです。あんな世界に執着する榊是親の気がしれませんよ」
「そうね」
実の所、アトランティス帝国によるマブラヴ世界への干渉は国内では公表されていない。それは何故かと言えば、あの世界に介入しても国益にならないからだ。
誰がどう見てもただの予算の無駄遣いにしか見えず、そんな事を公表すれば国民から文句が出てくるだろう。
ちなみに「絶滅の危機に陥っている知的生命体を保護する為に活動した」という大義名分を掲げる事もしなかったのは、もしそんな事をして「マブラヴ世界の人間に助けるだけの価値があるのか?」と突っ込まれたら非常に困るからだ(爆)。
トリッパーから見てもマブラヴ世界の人間の精神性は理解できないのだから、アトランティス人からすれば猿にも劣る蛮族にしか見えないだろう。