日本帝国で訳の分からないクーデターが発生した。どうやら烈士様(笑)がやっちまったらしい。
原作では烈士たちの暴走だったが、今回はなんと帝国軍や五摂家などの武家も加担していたと言う何とも豪華メンバーである。
当然ながらそれはアトランティス支部の定期会議で話題となった(別に緊急性がなかった為にあくまで定期会議である)。
「どうやら今回のクーデターの火付け人はアメリカのようです」
「なるほど、日本帝国が目障りになったと言う訳ね。それで榊是親は?」
「残念ながら原作通り沙霧尚哉大尉に殺されました。また他の閣僚達も国賊として抹殺されたようです」
その場のメンバー達は眉を顰める。確かに榊是親は彼らからすれば厄介事を持ち込んで来る嫌な奴であるが、それでも同族である彼が殺されたと聞いて不愉快になるのは当然だった。
「マブラヴ世界の人間は恩知らずなようね。妾たちの投資が無駄になったわ」
そもそもカリンたちは慈善事業でマブラヴ世界を助けた訳ではなく、あくまでトリッパーの支援の為だ。そのトリッパーを殺したとあってはアトランティスにとっては恩を仇で返された形であった。
「沙霧尚哉も原作と変わっていないみたいね」
沙霧尚哉は将軍を無視して統帥権干犯を度々行う内閣と軍上層部に反感を抱く帝国軍将校たちの勉強会である戦略研究会の代表者だ。
最もカリンから言わせれば、日本の皇帝、将軍、内閣の三重構造や統帥権の不透明さがそもそもの問題であり、まずこの辺りを改革するべきなのだ。
それに彼らが考えているような将軍が国家の舵取りをすればよくなると思う理由がさっぱりわからない。将軍と言っても所詮は世襲で受け継がれているだけの地位にすぎない。
ちなみにカリンはアトランティスでは狂気的な信仰を受けているが、それは比類なき実績によるものだ。それはチート能力や監察軍という強力な後ろ盾があって初めてなしえたものであったが、肝心なのはカリンが世襲ではなく本人の実績で地位を得たことだ(いくらカリンでもチート能力も後ろ盾もなしではここまで実績を出すことは不可能だった)。
これらを踏まえて原作を振り返ってみれば、将軍といっても超人的な能力を持っている訳でも強力な後ろ盾がいる訳でもない。原作を見ても特に役に立っているようには感じられない。何故そんな将軍が国家の舵取りをすればいいと本気で思うのが理解できない。
むしろ改革で将軍や武家など潰して、皇帝が権威を担当して内閣が権力を振るうという形にすれば政治構造が最適化できるだろうにと、彼らが聞いたら間違いなく激怒する事を考えていた。
「まったく誰が国賊なのだか」
資料に目を通しながらカリンは嘲笑う。
資料には人類を救済した英雄である榊是親を抹殺して軍事独裁政権を構築した日本帝国が諸外国から顰蹙を買っている事が記されていた。
それはそうだろう。国際世論からすれば現在のクーデター政権はどうみても好意的に見える訳がない。
榊是親が必死の努力で向上させた日本の国際的地位は今や見る影もなく、これで国の為になると本気で信じているのなら余程おめでたい頭をしているのだろう。
「こうなるとあの世界は用無しね。ラインを切断しようと思うけどどうかしら?」
カリンは幹部達を見渡すが、誰も反対はしていない。
三千世界監察軍は死神由来のユグドラシル・システムを使って異世界間を移動している。本来下位世界は膨大な数に及び、更にそれぞれの下位世界が無限の並行世界を内包している為、狙った世界に移動する事は砂漠の中の一粒の砂を探すような物であった。
しかし、監察軍は異世界間を特殊な回線のようなもので繋ぐことで無限に広がる並行世界の中から特定の世界に移動する航路を確保する事に成功していた。この回線を繋ぐことを監察軍では“ラインを接続する”といい、回線を切断するときは“ラインを切断する”という言葉を使っていた。
当然ながらラインを切断した場合その下位世界には二度と干渉できなくなる為、本当に用済みにならない限りラインを切断することはない。
「損切りと割り切るしかないですな」
幹部たちとてマブラヴ世界の人間達が恩を仇で返した事には腹立たしいものがあるが、だからといってマブラヴ世界に人間達に制裁を加えるなどという無意味なことなどしない。
そんな下らない事をする位なら現存する同族(トリッパー)を支援する事に力を注ぐほうがよっぽど建設的だ。
マブラヴ世界の人間がこれからどうなるかは彼らしだいだ。勿論、地球上のBETAは排除されたのだから現存する人類が協力し合えば十分に生き残っていくことが可能だろうが、マブラヴ世界ではそれは望めないからお先真っ暗だろう。
しかし、アトランティスから言わせればそんな事は知ったことではない。
後書き
今回はAルート(榊是親死亡ルート)を書いてみました。榊が死亡するとマブラヴ世界は用無しになってしまうのであっさりと終わってしまいました。
次回はBルート(生存ルート)を書いてみます。