榊是親side
「ここは?」
榊是親は気が付けば見知らぬ場所にいた。
確か私は沙霧尚哉に斬られて倒れた筈だ。それなのにこんな場所にいるという事はまさかここは死後の世界なのか?
「いいえ。ここは妾の皇宮よ」
内心の疑問に答えるかのように不意に話しかけられた。私はその言葉に状況を理解した。
「……なるほど、皇帝陛下の計らいでしたか」
「その通りよ。妾がお前を助けたのよ」
そこにいたのは私の予想道理の少女だった。といっても少女なのは外見だけで彼女が三万年以上も生き続けている古参のトリッパーであることを知っている。そう彼女がエレメント朝アトランティス帝国皇帝カリン・エレメントだ。
「それにつきましては、誠にありがとうございます」
と、私はカリンに礼を言っておく。
しかし、彼女が私を助けてくれたのは意外だった。これまで散々迷惑を掛けてきたので、かなり嫌われているのでは、と思っていたのだ。
「それは別にいいわ。まぁそれにしても災難だったわね。危うく折角の投資を無駄にされる所だったわ」
そう言うカリンの言葉には呆れや嫌味が含まれていたのは理解できた。
カリンから見ればマブラヴ世界の人間は愚かにしか見えないのだろう。それ故、カリンの言葉にはトゲがある。
「ちなみに日本ではクーデターが成功して軍事政権が成立しているわ。日本帝国の現体制はお前を国家反逆者として指名手配しているから日本に戻ろうなんて思わないほうがいいわ」
「……そうですか」
それは予測できた事だ。少なくともクーデターを起こした者たちを私を快く思ってはいない筈なのだ。
しかし、そうなると本当に何もできなくなった。いや、最早自分のやるべきことは終わったのだろう。
「それと怪我は治しておいたから動いても問題ないけど、あまりうろちょろしないでね。今のお前の扱いは何かと面倒だから」
「わかりました」
ここがアトランティス帝国の皇宮ならば、本来ならば私などが立ち入れる場所ではない。一応、客人として迎えているのだろうが、その立場は不安定なものであろう。立ち振る舞いには注意しなければいけない。
それに私も少し疲れた。ここは大人しく休んでおこう。
カリンside
クーデターが発生して榊是親が殺されそうになった際に、妾はあいつを助けてやった。
正直厄介事ばかり持ち込んでくる榊是親を迷惑な奴と思っていたが、だからといって同族の榊をワザと見殺しにするのは何かと拙い。しぶしぶ助け怪我を治してやって本国に連れてきたが、その後の対応を考える必要がある。
「…と、いうわけでお前たちの意見が聞きたい」
カリンは監察軍アトランティス支部の会議でその話題をだした。
「そうですな。彼はこちらに戸籍はありませんし、そもそも異種族ですからね」
そう、アトランティス人はネアンデルタール人という種族で、榊はホモ・サピエンスだから民族どころか種族が異なる。そんな相手を受け入れるのは問題があるだろう。
アトランティス支部の人間ならば同じトリッパーという事もあり理解してくれるだろうが、それ以外の臣民にどう説明するのかが問題だ。
「なら榊を本部に送りつけましょう」
私はそう提案しておく。
アトランティス支部は、アトランティスにまとめて憑依させられたアトランティス人のトリッパー達が集まる組織なので榊の居場所はないが、本部は様々な世界のトリッパーが寄り集まった多種多様な場所だ。それだけに榊が厄介事を持ち込まない限りは簡単に受け入れられるだろう。
「宜しいのですか?」
ガーゴイル(宰相)が聞いてくる。というか宰相はここ最近会議ではこの恰好だよ。臣民の目に留まらないからといって趣味に走っているね。
「大体、妾たちだけが榊の面倒を見なきゃいけないのは不公平でしょ。本部にも少しはやってもらわないとね」
「確かにそうですな」
これには他の部下たちも頷いている。
これまでの経緯から面倒なことを本部や日本支部に押し付けられたという意識が彼らにあった。それに対して彼らも面倒事を可能な限り避けて効率よくやったが、それでも余計な手間を掛けさせられた。だからお前たちも少しはやれという思いが彼らには存在していた。
こうして、榊はブリタニア帝国の監察軍本部に送られる事になった。本部もアトランティス支部にばかり面倒事を押し付けているという自覚はあったのか、それを了承する事にした。