旧石器時代からスタート   作:ADONIS+

30 / 44
28.後悔(アトラス暦30052年=西暦2002年)

アメリカside

 

 アメリカ合衆国はマブラヴ世界では覇権国家として君臨していたが、それも今では過去の話であった。アメリカが主導で進めていたオルタネイティブ7によってもたらされた人類史上最悪の大災害(人災)によってアメリカの覇権は文字道理ぶっ飛んでしまった。

 

 月の崩壊によって宇宙戦力どころかオルタ5で建造を進めていた宇宙船すらも失い、隕石が国土に降り注いでいくつもの大都市が消し飛んでいった。更にその後の天変地異で散々に痛めつけられていた。

 おまけにG弾を使用してこんな事態を招いた事から残存する地球人類からアメリカとアメリカ人は目の敵にされてしまい、世界各地で反米が狂気じみて激化した。今ではアメリカは村八分どころの騒ぎではなく人類史上最悪の犯罪国家として悪魔のように扱われる始末。

 そんなアメリカではあるプロジェクトが推進していたが、それは上手くいってはいなかった。

 

「そうか。未だに我々のメッセージに対する返答は無いか」

 と、ホワイトハウスの最高権力者であるアメリカ大統領はその報告に肩を落とした。

 

 大崩壊によって地球人類が滅亡必死の状況に追い詰められた為に、アメリカは藁をも掴む思いで外部勢力に救援を求めることにしたのだ。

 皮肉にも現在のアメリカがやっているのはアメリカが排除した榊是親が推進していたオルタネイティブ6だった。つまりアメリカはアトランティス帝国に救援を求める通信を宇宙に送っていたわけであった。

 

 これはカリンからすれば「恥知らずが!」と、軽蔑の視線を向けられる事間違いなしの行動だった。

 そもそもアトランティスがしぶしぶマブラヴ世界を助けたのは、同じトリッパーである榊是親の為だった。その榊是親の排除を企み、危うくアトランティスの投資を無駄にするような愚挙を行ったアメリカが、アトランティスに助けを求める資格などなかった。

 

「こうなってみると、榊是親を排除させたのは拙かったな」

 それは彼ではなく前任の大統領がやったことであるが、それでもアメリカがやったことには違いなかった。

 ちなみに榊是親を排除して、オルタネイティブ7を推進していた前大統領は暗殺された。最も前大統領は暗殺されなくともあの大失態によってどのみち政治的には死んでいたから大差はないだろう。

 こうして副大統領から大領領に昇進した彼であるが、その前途は多難どころの騒ぎではなかった。どこをどうみても救いなどなく絶望しか存在しない。

 

「やはり榊是親はアトランティス帝国と何らかのコネクションを持っていたという事でしょうか?」

 補佐官の言葉に大統領は頷く。

 それは以前から検討されていたことだった。そもそも1987年のアトランティス帝国とのファーストコンタクト以降各国は彼らと接触しようとしたがいずれも失敗しており、彼らと実際に交渉して支援を引き出す事に成功したのは榊是親だけであった。

 そのコネが使えないとなると厳しいと言わざるを得なかった。最も同じような後悔をしていたのはアメリカだけではなかった。

 

 

 

日本帝国side

 

「何故だ。どうして、こんなことになったんだ!」

 

 議場の者たちは今日も成果がでなかったことに誰もが頭を抱えていた。

 日本帝国ではクーデター後に軍事政権が成立していた。彼らは軍縮を行おうとした榊に反発していたグループが主流だっただけあって軍事独裁政権となり国力を無視した軍備増強に及んだ。この経済を無視した行動は日本という国家を蝕んでいった。

 

 更に彼らは世界的に英雄として絶賛されていた榊首相をクーデターで排除した事から各国から顰蹙を買い国際的に孤立してしまったが、これにはアメリカの動きも大きかった。

 アメリカは自分たちの対抗馬になりうる日本帝国を徹底的に叩いて国際評価を低下させていったのだった。勿論、クーデターを裏から仕掛けたのはアメリカであるため、裏事情を知る者からすれば自作自演でしかないが、それを知る者がいなければ大義名分として成り立つのだ。

 

 こうして見る影もなく国威が低下していた日本帝国は、アメリカのオルタネイティブ7に反対したもののまったく相手にならずに大崩壊を迎えて、隕石の落下や大津波によって大被害を受けた。

 おまけにその後の地球環境の激変とBETAの出現で滅亡寸前まで追い詰められた彼らは、榊の前例にならい二匹目のドジョウを狙って、オルタネイティブ6を発動してアトランティス帝国に助けを求めるメッセージを宇宙に向けて連日発信していた。これにはオルタネイティブ4の主導者だった香月夕呼も動員してのなりふり構わぬものであったが、その成果は一向に出なかった。

 それでも最初の一週間は彼らも冷静だった。しかし、一ヶ月がすぎた今でも全く返答がなく、軍部を大いに焦らせていた。

 

「榊の時は上手くいったのだ。我々もやれる筈なのに何故だ!」

 議場の軍人の一人がわめき散らすが、彼らは肝心の事が分かっていなかった。

 そもそも彼らは榊是親の事を何も知らなかった。それなのに安易に榊是親を排除してしまった事のしっぺ返しは強烈な物だった。

 

「それが榊是親はどうも元々アトランティスと独自のコネクションを持っていたようなのです」

「なんだと、どういうことだ!」

 それは聞き捨てならない事だった。

 

「調べてみたのですが、榊は我々のようにメッセージを宇宙に発信するといった行動を一切やっていません。それなのに榊だけがアトランティスと交渉できています」

「……つまり、榊はかなり前からアトランティスと繋がりがあったから、オルタネイティブ6を推進していたというワケか?」

「ええ、そうとしか思えません。それならアトランティスとの取引を榊しか知らなかったのも頷けます。榊がいればそのコネを使えたのですが…」

「いない奴のコネなんか使いようがないだろう。あいつはクーデターの時に重傷を負ったまま行方不明になったのだからな」

 

 榊是親はクーデターの際に沙霧尚哉に斬られて死んだと思われていたが、いつの間にかその死体がなくなっていた。勿論その捜索はされたが一向に発見されず、クーデター政権は面子の問題もあって榊是親は国賊として処刑したと発表した。

 まぁ普通に考えれば死亡したとしか思えない重傷であったし、榊是親に逃げられたと公表しては内部に不安が広がると判断したからだ。

 

「そうですね。念の為に再度榊の自宅の捜索や家族の尋問をしたのですが、何も情報はありませんでした」

 彼らは是親の娘である榊千鶴にも厳しい尋問をしていたが、彼女は何も知らなかったので軍部は情報を得ることはできなかった。

 

「……我々は早まったのか?」

 一人の男がポツリと呟く。それに議場の者がギョッとする。それは誰もが内心では思っていた事だった。

 

「い、今更そんな事を言っても仕方ないだろう!」

「そ、そうだ。それに我々の決起を否定するつもりか!」

 その男に対して周りが文句を言う。彼らにとってそれは認めたくない事だった。

 

「そうは言わない。しかし、結果が全てだろう」

 自分たちの行動の結果がこれだ。そう突きつけられた彼らは誰もが沈黙した。

 

 

 

 

 

 そんな彼らと同じようにオルタネイティブ6が一向に成果が上がらないことに絶望していた女性が京都にはいた。彼女の名は煌武院悠陽。日本帝国の現将軍である。

 

「そうですか。今日も駄目でしたか」

 

 そう話す彼女の表情は絶望に染まっていた。

 彼女に仕える月詠真耶はそんな主を慰める言葉をかけたかったが、それはできなかった。今の日本いや地球そのものには明るい話など全くない。まさにお先真っ暗な状態だったからだ。

 

「残念ながら日本政府だけでなく、殿下のお名前でも救援を求めるメッセージを発信しておりますが、未だに何の応答もありません」

「榊がいればこうはならなかったのでしょう」

 

 悠陽は今更ながら榊是親の重要性を思い知らされた。

 榊是親は将軍を無視してオルタネイティブ6を進めて人類を救済するという快挙を成し遂げた。その結果日本帝国の国威は大いに高まったものの将軍の権威は大幅に低下してしまった。

 悠陽としては榊の独断に思うところはあったもののそれでも大きな成果を出した榊を認めていたが、他の五摂家を初めとした武家はそれを認めることはできなかった。

 

 彼らが軍部と結託してクーデターを起こした時、悠陽はお飾りの将軍に過ぎなかったために何もできなかった。しかし、もしあんな愚かな行動を止める事ができたらと、何度思った事か。

 そして、結果として将軍である自分がオルタネイティブ6を進めても全く成果が出せないという状態になってしまった。

 

「私たちはアトランティスに見捨てられたのですね」

「……」

 

 主のその言葉に返す言葉はなく、月詠はアトランティスに対して怒りを抱いた。

 状況から判断すると、アトランティスは恐らくはこの地球を観察しているだろう。そしてかつては榊と接触して交渉していたにも関わらず、現在では殿下が求められてもアトランティスは無視していた。そんな無礼なアトランティス帝国の行動に腸煮えくり返っていた。

 

 最もそんな月詠の内心をカリンが知れば「貴方たちは何様のつもりですか!」と、彼女の傲慢な考えに不快感を示しただろう。

 大体、アトランティスは、無限に広がる下位世界を一々監視しているワケではなかった。そんな余裕などないのだ。

 勿論、偵察用の無人機を配置するなどの処置も可能であったが、万が一にも鹵獲されて技術や情報が抜き取られる事を恐れて、必要な時だけステルス機能に長けた航行艦で偵察するに留めていた。

 

 当然ながらマブラヴ世界の技術では監察軍が存在する異世界に通信を送るなど不可能なので、マブラヴ世界がいくら宇宙に向けて通信を送ってもアトランティスに伝わる事はなかった。まぁ仮に伝わっても相手にされなかっただろうが。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。