旧石器時代からスタート   作:ADONIS+

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※この番外編では、もしもマブラヴ世界のトリッパーが榊是親だけでなく百人以上いたら、という設定の話です。


番外編 マブラヴif
EX1.宴会(アトラス暦30049年=西暦1999年)


 1999年。日本帝国のとあるホテルで彼らは集まっていた。その表向きの名目は同好のグループによる宴会だった。実際、彼らは同じ企業の人間ではないのでそう表現するしかないだろう。人数にしても五十人ほどの中規模の宴会という形だった。

 しかし、そこで行われていたのはただの宴会ではなかった。それは日本帝国いやこのマブラヴ世界の運命すらも左右する話し合いが行われていたことなど、外部の者は知る由もなかった。

 

「まったく恩知らずな奴らだよ」

「そうだな。あいつらのうのうとしていられるのは誰が苦労したおかげだと思ってやがる!」

 と、彼らはクーデターを起こした者たちを揶揄した。

 

 彼らは元来この世界の存在ではなかった。『マブラヴ』という作品がパソコンゲームとして登場している世界の人間で、いつの間にかこの世界に人間に憑依していたのだ。それはこの場にいる者たちだけでなく、彼らが把握しているだけでもその人数は百人を超えていた。

 

 こうして図らずもこの世界に生活することを余儀なくされた彼らは、この世界がマブラヴ世界であることを知って総じて頭を抱えた。

 何しろ人類が絶滅の危機に瀕している世界だったのだ。こんな世界に来てしまった不幸を嘆きつつも何とかしようと彼らは独自に動きだしたが所詮は百人程度にすぎず、後に首相にまで上り詰めた榊是親を除いてこれと言った地位にいなかった彼らにできることはたかがしれていた。

 

 大したこともできずに焦る彼らに天の助けとなったのがアトランティス帝国との接触だった。

 これによって三千世界監察軍の支援を受けてマブラヴ世界を救おうとしたのだが、ここで問題が発生した。ハイヴが地球の国家の領土内にあることであった。

 これがまだどの国家もはっきりと領有していない月や火星であったなら問題にはならなかっただろう。しかし、地球であった為に政治的に動きにくくなったのだ。これを解消するために彼らの仲間である榊是親が、オルタネイティブ6を立ち上げて何とかそれを軌道に乗せた。

 正直、BETAの日本侵攻にギリギリ間に合ったというきわどいタイミングであったが、それでもこれほどの計画を実行できた榊の手腕は彼らも称賛したものだった。それだけに榊を排除した日本に彼らは失望したのは無理もないだろう。

 

 

 

「軍部だけでなく五摂家を初めとした武家連中が動いていたからな。流石に分が悪かったな」

「将軍に武家か。本当に忌々しい奴らだ。大体、あいつらの所為で日本支部の支援を受けることができなかったんだ!」

 

 元々彼らは他のマブラヴ世界の日本人と違い、前世において上位世界の平成日本にいた。それ故、将軍や武家に対する視線は厳しかった。

 それだけでなく、それが原因でこの世界の救済に支障が出てしまったのだ。

 

 言うまでもないが、彼らから見れば異種族であるネアンデルタール人で構成されるアトランティス帝国よりも、同じ日本人である大日本帝国に支援を求める方が何かと都合がよかった。その為、アトランティスに接触して監察軍の情報を入手した彼らは真っ先に日本支部に支援を求めたが、大日本帝国は政治問題からそれに答える事ができなかったのだ。

 

 そもそも大日本帝国はトリッパーたちが理想の日本を作り上げようとして誕生した国家だ。トリッパーたちは幕末の直前から∀ガンダムの世界に干渉していた。この干渉の結果色々と歴史が変わっているが、真っ先に影響を受けたのが徳川幕府だった。

 

 徳川幕府は史実でも明治維新という一大改革によって滅びてしまったが、大日本帝国の場合より徹底的に叩きのめされていた。大政奉還も行われず、江戸城無血開城もない。薩摩と長州によって力ずくで滅ぼされたのだ。

 これは当時の薩長を動かしていたのがトリッパーたちであり、彼らが監察軍の支援を受けていたため幕府など相手にもならなかった為だ。

 

 薩長というか日本支部がここまで徳川幕府や武士に厳しかったのは、史実において中途半端な形で徳川が残ることで、その後に武家の反乱が頻発してしまい日本の発展が大いに遅れてしまったからだ。

 言うまでもなく、唯でさえ欧米列強に比べて大きく遅れていた当時の日本にとってこれは痛かった。

 

 それゆえ日本支部は史実の過ちを繰り返さないように情け容赦なく徹底的にやり、結果として徳川は史実のように爵位を得ることもなく滅びた。その徹底ぶりはかつて徳川が豊臣を徹底的に潰したのを再現したかのようだった。

 その影響もあり、徳川幕府や武家は史実よりも悪く扱われていた。

 

 ここまで説明すれば誰の目にも明らかであるが、大日本帝国は将軍や武家が存続しているマブラヴ世界とは水と油だった。下手に彼らを支援すると政治問題になる可能性も否定できず、日本支部は彼らの要請を拒絶したのだった。

 

 これには彼らも唖然としたが、納得せざるをえなかった。そもそも将軍だの武家だのと言うのは封建社会であれば存在意味があるだろう。

 しかし、近代化を進めようとすればそれらは必要ない。というより、なまじ地位や既得権益を持つ彼らは邪魔でしかない。だから史実でも幕府も武家も滅んでいるのだ。

 

 そう考えるとマブラヴ世界が将軍や武家が存続したまま近代化したのは異常としか言いようがなかった。当然そんな無茶苦茶な状況になると権力体制が可笑しくなる。マブラヴ世界の摩訶不思議な体制もなるべくしてそうなったものにすぎなかったのだ。

 

 彼らにとって将軍や武家など時代遅れの遺物という扱いではなく、老害または有害物質以外の何物でもなかったから、「今時武家社会? 馬鹿じゃね」と、内心で嘲笑していた。

 

 

 

「まぁいい。すぎたことは今更言っても仕方ない。幸い榊さんはアトランティスに助けられて本部に送られたから大事はない。今後我々が日本帝国に干渉することが不可能になったのは痛いが、今の情勢ならば何とかなるだろう」

 

 彼らにとってクーデターで榊政権が潰されてしまったのは痛かったが、すでにやるべきことはやっていたので致命的ではなかった。

 オルタネイティブ6によるアトランティスのハイヴ殲滅で、この地球上からBETAが駆逐されている。

 後は月や火星から飛来する着陸ユニットを迎撃すればいい。それはアメリカ宇宙軍や国連宇宙軍に任せればいいのだ。

 

 その時、彼らはそう考えていた。その為、彼らにはまだ余裕があった。だが、彼らはこのマブラヴ世界の愚かさを甘く考えてしまった。

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