旧石器時代からスタート   作:ADONIS+

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EX3.地球代表(アトラス暦30052年=西暦2002年)

 西暦2002年一月。カリンが乗り込んだ皇帝専用儀礼艦レッドノアと、その護衛部隊である第七基幹艦隊が地球近郊にフォールドアウトした。

 

「さて、問題はどう交渉するかだね」

 

 地球人類、つまりホモ・サピエンスはアトランティス人と違って統一国家を築き上げていない。妾達が存在する世界では、ネアンデルタール人がアトランティス帝国で統一されているのとは大違いだ。このてんでバラバラというのは交渉という場面では厄介極まりない。

 勿論、地球人たちの不協和音に付け込んで外交的勝利を得て国益を確保しようとするならば、この状況は好都合だろう。だがアトランティス帝国はマブラヴ世界なんかと関わっても何の国益にもならないので、可能な限り手間を省きたいカリンとしては面倒なだけだ。

 

「やはり交渉の窓口を一か所に絞るべきか。榊政権が健在だったら楽だったのに」

 

 交渉先が複数あると、それぞれの主張に振り回されてややこしくなるのは目に見えていた。

 榊是親が政権を持っていれば榊を通じて交渉できたが、それをつぶされてしまった以上は次善の手を使わなければならなかった。

 ちなみにこのマブラヴ世界には是親以外にもトリッパーは存在していた。しかし、彼らは皆社会的地位が低く国家を動かすなど到底できなかったのだ。その為、トリッパー同士の誼を有効活用した交渉は不可能になっていた。やはりあのクーデターは痛かった。

 

「榊がいない日本帝国は駄目ね。BETA大戦の被害は少ないけど、国家体制に問題がありすぎ(笑)」

 

 元から皇帝、将軍、内閣の三重構造で可笑しかったのに、クーデター後は軍人が内閣を動かしている状態で、「どの東条内閣だよ」と突っ込みどころ満載だった。

 議会も大部分が地球統合政府(銀河英雄伝説)のように軍部の代弁者という状態なため、民主主義(笑)な状態だった。

 

 最も民主主義がいいワケでないのはカリンも重々わかっているが、軍事独裁政権はもっと悪い。なんせ軍事でしか物を考えられないから軍拡しか能がない。おまけにマブラヴ世界における日本の軍人たちは世間知らずでおバカだから余計にたちが悪い。

 

「ソ連や中国などの東側諸国は論外」

 

 東側諸国は、元々BETA大戦で大きな被害を受けていた上に、例の大崩壊で崩壊寸前まで追い詰められていた。それに共産主義と帝政は水と油だ。カリンとしても共産主義者なんか大っ嫌いなのでそんな奴らと話すなど嫌だ。

 それに交渉相手はアトランティス帝国を相手にきちんと交渉できるだけの政治体制と地球代表を自称できる程度の国力がないと話にならない。これを考慮すると…。

 

「アメリカしかないわね」

 

 消去法でいけばそうなる。彼らはクーデターを嗾けたり、オルタネイティブ7で大崩壊を引き起こしたりといろいろやらかしているが、そこは仕方あるまい。それに大崩壊にしても地球人にとっては大問題だが、アトランティスからすれば他人事にすぎない。

 ここは過去は水に流して未来志向で最適のアメリカと交渉するか。

 

 

 

アメリカside

 

 ジョン・スミスはアメリカ合衆国大統領だ。元は副大統領だったのだが大崩壊後に大領領が暗殺されてしまったので繰り上がりで大統領になった為に彼には確固たる実績はない。

 最もこの時期のアメリカは最悪の状況で、それは誰もがアメリカ合衆国大統領になるのを躊躇するほどだった。

 スミス大統領もとんでもない貧乏くじに頭を抱えたが、それでも彼は投げ出さなかった。それは誰かが引き受けなければならない物であったし、政治家としての責任を放棄するワケにはいかなかったからだ。そして史上かつてないほどに追い詰められた祖国を救いたいという熱意が彼にはあった。

 

 そんなスミス大統領は皇帝がいる儀礼艦(レッドノア)に乗り込んでアトランティス帝国皇帝と会談を行う事になった。彼にとってこの事態の急変は驚きであったが、この機会を逃すワケにはいかなかった。

 こうして皇帝にあったスミスであるが、目の前にいる皇帝はどうみてもハイスクールの女学生程度にしか見えなかった。しかし、皇帝である彼女はアトランティスでは神として崇拝される不老不死の超越者で三万年以上生きているらしい。それが真実だとすれば(ここで嘘をつく必要はないので恐らく事実だろう)とんでもない存在だった。

 

「皇帝陛下このたびは会談の場を設けていただけありがとうございます」

 と、スミス大統領は礼をいった。

 

「いえ、妾も地球の代表者と話しておきたかったから構わないわ。さて早速本題に入るけどいいかしら?」

「はい」

 

 皇帝が最初から話を切り出してきた事にスミス大統領は身構えた。

 

「妾は地球の状況からこのままでは地球は滅ぶと判断しているわ。だから救済の為に地球上のBETA排除と月を修復して地球環境の再生を行います」

「そ、それは本当ですか?」

 

 皇帝の言い出した事はスミスにとって最も望んでいた事だった。だがあまりにも都合が良すぎて真実か疑ってしまった。

 

「本当です。ただし地球の代表者たる君が了承した場合です」

「し、しかし、これは私の一存では…」

 

 皇帝の言い出したことは願ってもない事だった。しかし、現在ハイヴはユーラシア大陸に存在しており、これを排除するとなるとアメリカの一存では決められないし、月の修復や地球環境の再生もそうだ。

 

「了承できないというのであれば、話はここまでです。それなら君たち地球人には自力でなんとかしてもらいます」

「わ、わかりました。地球代表として了承致します。よろしくお願いします」

 と、スミスは形振り構わず頭を下げた。

 

 スミスは皇帝の発言からそれらの行動を速やかに了承しなければ、アトランティスは地球を見捨てて撤退すると判断したのだ。これは以前の交渉決裂の経緯もあった。

 

「賢明な判断ですね」

 

 そんなスミス大領領に対して皇帝は微笑した。

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