臣民の生産を開始して四年。
年間一万人体制で生産を続けているので、現在マクロスシティは四万人近くの子供と十万体のアンドロイドで運営されていた。
カリンは20万人の臣民を生産する事を目標にしていたが、20万人をいきなり作ると次の年代がなくなってしまう。そこで年間で一万人ずつ作ることで調整していた。
こうすれば先に成長した者たちが新たに子供を作るだろうから、子供の数もそこまで変化しないだろう。
こうして生産された赤ん坊たちはアンドロイドによって育児が行われていた。
通常家庭のように家族という構成ではなく、孤児院と学校が一体化したような施設はマクロスシティのあちらこちらで存在しており、集団管理されていた。
当然彼らの教育もアンドロイドが担当しており、教え込む言語はエスペラントを採用した。
ちなみにエスペラント(Esperanto)とは、ルドヴィコ・ザメンホフが考案した人工言語で、国際語とも言われている。これは英語などの既存の自然言語に比べれば習得と運用がやりやすい言語です。
使用言語は日本語でも良かったが、別に日本語に拘る必要はなかった。
日本語はかなり難しい言語であるし、なにより現代において長くて言いにくく、おまけに覚えにくいという欠点がある。だから21世紀の日本では大量の和製英語が使われている。
正直、日本語の利点といったら漫画に使いやすいぐらいしか思いつかない。
実は他にもベルカ語が有力候補になっていた。それはアンドロイドの基本言語もベルカ語で、更に将来的にブリタニアとも国交を持つ予定であるので、その際にベルカ語をわざわざ外国語として教え込むよりも国語として採用すれば手間がかからないという理由からだ。
しかし、アンドロイドに関してはエスペラントを使えるように情報を入力するだけで済む。
ついでにカリンたちはブリタニアと違いベルカ式魔法を使うわけではないのだ(ブリタニア貴族はベルカ式魔法を使う為使用言語がベルカ語の方が便利である)。
それにブリタニアと国交を持つといっても現実世界にように密接に関わるつもりはなかったので、言語を同一にしておくメリットが少なく、それよりも使い勝手を重視しました。
カリンたちトリッパーにしてもエスペラントを学習装置(テスタメント)で覚えれば事足りる。
ちなみに監察軍に所属するトリッパーたちは学習装置(テスタメント)でベルカ語を覚えこんでいる為、かつて監察軍に所属していたことのあるカリンもベルカ語を日本語と同じように使えた。
ある程度の頭数が揃ったのでそろそろ国を作る。国名は『アトランティス帝国』で皇帝は勿論カリン・エレメントだ。
まぁ国家といっても所詮トリッパーたちの玩具でしかないから、別に国名なんてどうでもいいが、なんかこの方がトリッパーたちの受けがいいだろう。なんせ伝説の国家の名前だからね。オタクにはたまらないネタだよ。
宰相とかにガ○ゴイルのコスプレとかやらせるのもいいかも(笑)。
ついでに帝国だから王朝名が必要なので、エレメント王朝にしておいた。
ホモ・サピエンスが未だ文明が欠片もない旧石器時代だから、ネアンデルタール人の国家たるエレメント朝アトランティス帝国は、間違いなく最古の国家にして最古の王朝だ。
カリンも始まりの君主にして始まりの皇帝なので、秦の始皇帝など目じゃない存在です。
国家としての体制を作るために省庁を用意しておく。内務省、法務省、農林水産省、経済産業省、運輸省、文部省、環境省の七つだ。
外務省は国交を結んでいる国家がなく外交自体が存在しないので設立していないし、軍務省も外敵がいないため作っていない。財務省も現時点で税収入が存在しないので、これもなし。基本的に内務省が様々な権限を集中させる形式となっている。
国家機能が未熟な内に分散させすぎると行政効率が低下する恐れがあるからね。国家運営が軌道に乗れば、おいおい分散させればいいだろう。
このようにまだまだやるべきことは多いが、とりあえずハリボテとはいえ国家ができたので、愛国心と皇帝に対する忠誠心をみっちり教育する。
やっぱり教育は大事だよ。戦後日本の日教組みたいなおかしな教育は嫌だしね。というか、何でも日本が悪いと教え込んで、中国や朝鮮が主張する事実と確認できない事や明らかに事実と異なる事まで受け入れて、日本を悪者にするのはどうなのよ?
そんなに日本が嫌いなのか? だったら国籍を変えて日本人を止めればいいのにと思うね。
またカリンは自らを女神として信仰する新興宗教『カリン教』を立ち上げた。これは勝沼紳一(絶望~青い果実の散花~)の華梨教を参考にしたものだ。
紳一の場合は客もとい信者を獲得するために度々奇跡を起こしていたが、カリンの場合は洗脳教育によって信者を確保するのに重点を置いている。
ここで洗脳といっても別に薬物を使う必要はない。幼いころからみっちり教育して教え込んでいけば民衆の思想は調整できるのだ。
他にも紳一は唯一神兼教祖として君臨していたが、カリンは女神兼教祖になったという違いがある。これは一神教と多神教の違いだ。
カリンは自らを唯一絶対の神としてではなく、数多く存在する神々の一柱として扱うことにした。
そうしたのは、一神教にした場合、自らの崇める神以外は認めないという不寛容な思想になりがちで、後々に予定されている異世界との交流で異教徒との宗教戦争を招きかねないからだ。
そんな十字軍の真似事は御免なので、ある程度の寛容さは必要だろうし、実際に下位世界が上位世界人たちによって創造されている以上、一神教よりも多神教の方が妥当だろう。
下位世界人にとっては上位世界人やトリッパーは創造主、つまり神様だ。しかし、彼らは単独の存在ではなく数多く存在しており、どうしても多神教という形にしないと事実と異なる信仰になってしまう。
宗教なんて集団をまとめる手段でしかないから別に嘘でもかまわないと割り切ってしまってもいいが、むやみに嘘をつく必要はないだろう。
こうして宗教団体カリン教は立ち上がったが、信者といってもまだ臣民が五歳にも満たない子供ばかりだから宗教活動は下火だね。本格的な活動を開始するには、もっと時間がかかるだろう。
まぁそれはともかく、カリンは正式に女神にして皇帝という立場となった。これにあわせて一人称を私から妾(わらわ)に変更した。いつまでも私という一人称を使っていたら、権威に悪影響が出るからね。
カリンは別に余(よ)でもよかったけど、その場合シドゥリとかぶってしまう。妾というのは、女性の貴人が使う一人称としては悪くないし、むしろ雅でいい。