旧石器時代からスタート   作:ADONIS+

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EX7.女神(アトラス暦30052年=西暦2002年)

 アトランティス帝国の干渉によって地球は救済されていった。滅亡必死のどん底の状態がら救い出された地球人にとってアトランティスはまさに救世主そのものであった。

 

「崩壊した月を直し、地球環境を回復させた彼らはまさに救世主だな」

 

 キリスト教を初めとする宗教界が大いに騒ぎ始めていた。彼らからすれば現状は終末の後の救済であった。それは自国が推進したオルタネイティブ7によって世界を滅ぼしかけたアメリカでは一際だった。

 

 その状況でそれを煽ったのがアトランティス帝国皇帝カリン・エレメントがアトランティスにおいて女神として崇められていることだった。

 普通ならば自称神という扱いになるだろうが、カリンがアトランティス帝国建国以前から三万年以上も老いずに生き続けており、また様々な奇跡を起こしている事が知れ渡ると、彼らは目の色を変えた。

 この影響もあって、スミス大統領との会談の場でもそれが話題となった。

 

「そんなことで騒ぎ出すとは困ったものですね」

「まったくです。しかし、彼らの気持ちもわからなくもありません。そこで失礼を承知でお尋ねしますが、皇帝陛下は神なのでしょうか?」

 と、スミス大統領は真剣な表情で聞いてきた。

 彼自身もカリンが女神であるという話は半信半疑なのだろう。

 

「そうですね。地球における神の定義が統一されていないので一概には答えられませんが、アトランティスの考えでは私は異世界の神に当たる存在で、この世界の神ではありません」

「異世界ですか?」

「そうです」

 

 

 

 地球では神の定義は本当にバラバラである。世界を創造した者、また主神だけでなくそれに仕える神、様々な物を司る神、もしくは単に人を超越した者など、統一されていないためにどれが正解か答えづらいが、アトランティスの場合は国教であるカリン教の教えによって神の定義が統一されている。

 

 そこで、まずカリン教の世界創造の神話を簡単に説明します。

 カリン教の教えでは、数多存在する三千世界の上位に高位次元世界(上位世界)があり、その世界には創世種族と呼ばれる存在がいる。

 彼らは一人一人ではたいした事はできないが、数万~数十万人規模で力を合わせると世界を創造する力を発揮する種族であり、彼らによってアトランティスが存在する世界を含めて多くの世界が創造された。

 

 こうして創造された多くの世界では知的生命体として誕生したネアンデルタール人が滅びて、ホモ・サピエンスが地球で文明を起こすというパターンが一般的で、ネアンデルタール人が生き残る世界は皆無であった。

 そんな中で自らが創造した世界でネアンデルタール人がことごとく滅びてしまう事を憂慮したカリン・エレメントは彼らを救い導くことにして、自らが創造した世界の一つに降臨することにした。

 

 しかし、創世種族は下層に位置する三千世界に直接干渉できない。その為、彼らは三千世界で活動するための器を用意して、その器に宿って活動する事が多く、カリンもある程度の力をふるう事ができる器を用意してそれに宿った。

 

 その後、カリンはネアンデルタール人たちを導きアトランティス帝国を建国することになる、という流れだった。

 カリン教の教えは、幾らかぼかしている所もあるが、これは真相に近いものであった。

 

 これらの教えによって、アトランティスでは創世種族の中で”実際に世界の創造を行った者”が神であるとして定義していた。つまりアトランティスでは単に人を超えた力を持つ者は神と扱わず、超人や超越者などの扱いになる。その為、カリンはアトランティスが存在する世界を創造した多くの神々の一人という扱いだった。

 

 実の所これは間違いではなく本当の事であった。

 上位世界人(現実世界の人間)は想像具現化能力を持っており、多くの上位世界人が創作物を知り認識する事で、上位世界人たちが持つ想像具現化能力がその創作物を元にして働くのだ。そうなると、その創作物の内容そのままの下位世界が創造される事になる。

 

 カリンはトリッパーになる以前の上位世界(現実世界)にいた頃に『新世紀エヴァンゲリオン』を見て、その物語を周知していた。

 つまりカリンもエヴァンゲリオン世界の創世に関与しており、その世界の人間からすればカリンは自分たちの世界を創造した神々の一人だったのだ。

 

 ちなみにカリンは上位世界にいた頃は『新世紀エヴァンゲリオン』は知っていたが、『マブラヴ』は知らなかったからマブラヴ世界の創世には関与していない。その為、カリンはマブラヴ世界の神ではなく、あくまで異世界の神でしかなかった。

 実際、後にカリンが監察軍で活動する中でマブラヴを知った頃にはマブラヴ世界は既に存在していたわけであるから関わりようがなかったワケである。

 

 まぁこれは仕方ないだろう。何しろ創作物の数は膨大な物である。例えアニメや漫画が大好きなオタクであってもそのすべてを網羅するのは無理だろう。

 そういった意味ではマブラヴ世界はカリンとは無関係なのだが、カリンの同族たちが創造した世界ではあったのだ。

 

 

 

「ですから、貴方たちは気にしなくていいですよ」

 と、カリンが微笑むが、スミス大統領は顔を引きつらせていた。

 

 スミス大統領としてはカリンに否定してほしかった。しかし、実際には我々の世界を創造した神々の同類という予想だにしなかった回答だったのだ。

 

「数多の神々ですか、それではカリン様は唯一絶対の神は存在しないと言うワケですか?」

 

 それは一神教であるキリスト教の教義と真っ向から否定する考えであった為に抵抗もあるのだろう。しかし、それはカリンにとってどうでもいい事だった。

 

「その通りですよ。ですがその世界を創造した方々はこの世界には直接介入するつもりはないので貴方達が何を信じても文句を言ってこられないので安心してください」

 

 言外に創作小説(聖書)を信じても構いませんよと、カリンは言っていた。その意味が分からぬスミスではなかったので、彼はため息をついた。

 

 

 

アメリカside

 

 スミス大統領はアトランティス帝国皇帝の神様問題をどう解決したものか頭を痛めていた。

 彼としては宗教関係者が騒ぎ出したので、それを抑えるべく皇帝陛下から答えを聞こうとしたが、それは思わぬ地雷だった。

 

 アトランティスの定義をそのまま受け入れると、地球のすべての宗教は否定されて大混乱になるだろう。特に一神教を否定されるキリスト教とイスラム教の被害は大きい。

 

 そうなると、一部の過激派が反発してアトランティスに対する宗教テロが起こりかねないが、そんなことになったら恐らく地球は終わりだ。

 アトランティスからすればわざわざ助けてやったのに、地球人が恩を仇で返した事になるから、その報復は苛烈な物になるのは間違いない。

 

 ではカリンは神ではないと否定してアトランティスの教義は嘘っぱちだと公表するという選択もあるが、それをしたらアトランティスの不興を買うだろう。

 アトランティスの温情で滅亡の危機から救ってもらった辺境の弱小国家風情に自分たちの宗教を否定されて笑っていられるか?

 それは考えるまでもない事だ。

 

 そうなると、こちらの宗教関係者が暴発しないように宥めつつも、アトランティスの不興を買わない公式見解が必要になる。

 

 くそ、何でこんな問題が起こるんだよ。

 スミス大統領はこちらの苦労も知らずに無責任に騒ぎ立てる宗教関係者たちを罵りつつも必死に打開策を考えて苦心の末に無難な案をひねり出していった。

 

 

 

 後日、スミス大統領は宗教関係者たちにアトランティス帝国皇帝カリンはアトランティス帝国が存在する異世界を創造した神々の一人であるが、この世界とは無関係な存在で、あくまで異世界の女神であると説明した。

 

 皇帝がこの世界の神でないのはアトランティスも認めているし、これなら国内外の宗教関係者たちもアトランティスも何とか納得できる妥協の産物と言える発表であった。

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