建国して法が必要になってきたので、アトランティス帝国憲法を制定した。これは帝政国家であるブリタニア帝国憲法を参考にしただけに、自由と民主、平等と人権などは省いている。
ここで憲法と言えば政府の権威や合法性が憲法の制限下に置かれている立憲主義が主流である為にそういう物だと思う人は多いが、実は憲法の定義はかなり広く、単に国法であれば憲法という事ができるのだ。
アトランティス帝国はその名の通り、皇帝が君臨する国家だ。それも立憲君主制などではなく専制君主制にしている。その為、帝政にそんなもの邪魔でしかないし、そもそもそんな概念自体がないからね。それにブリタニアはそれで上手くいっているのだから、こちらでもやり方さえ間違えなければ問題ない。
民主主義の理念を重視する一部のトリッパーは反発するだろうが、実際のところ21世紀の日本人は民主主義にそれほど幻想を抱いていない。少なくとも、「民主主義であれば理想の国家になれる」などという夢想家はそうはいない筈だ。
何しろ、リアルで「銀英伝の銀河連邦や自由惑星同盟みたいだな」とつっこみたくなるほどの衆愚政治を見続けたのだ。これでは幻想など壊れて砕けるだろう。だからごく一部を除いて、トリッパーは民主主義ではないというだけなら不満に思わない。
そもそも史実で専制君主国家が倒れていったのは権力者たち、つまり君主や重臣たち、または貴族などの特権階級の腐敗が大きな要因だ。アンシャン・レジーム下のブルボン王朝は聖職者と貴族の腐敗が酷く、これが亡国の原因となったほどだ。
逆をいうと、聖職者や貴族が腐敗しなければいいのだ。
だからアトランティス帝国では帝政であるが、世襲で家柄がいいだけで特権を持てる貴族制度は採用していない。
カリンから言わせれば権力とは国家の為に有効活用できるものが持つべきもので、それができない者は、権力を持つ資格はないのだ。
はっきりいって『銀河英雄伝説』の門閥貴族のようなバカ共はいらない。
聖職者にしても、政教分離を教義にして、政治に口出ししないようにしている。イスラム教みたいに聖職者が政治に口出ししては邪魔だ。だからカリンも”カリン教の教祖”として政治に口出ししてはいない。カリンは世俗の権力者たる”皇帝”として政治を動かしているのだ。
これは立場を切り替えているだけで、同一人物がやっているからある意味ズルイのだが、これぐらいの狡さがなければ君主などやっていられない。
それと宗教には免税権も与えていないので、宗教法人でも税は納めないといけない。このように権力というものは与える必要のないものには徹底して与えない。
この辺りは21世紀の日本よりも厳しくしている。
臣民たちが順調に成長してきたので、義務教育制度を作って順次学校に入学させた。
もっとも現在、アトランティス帝国の臣民は親がいない子供しかいないので、実質的には孤児院と小学校が合体したような感じだ。
義務教育は現代と同じ9年間で、6(7)歳~15歳までの小学生と中学生を対象にしている。
ただ小学校とか中学校とか一々分けずに幼年学校で統一している。
生徒たちはこの幼年学校に入学する前に学習装置で、大学卒までの知識を入力しておくので、この幼年学校で学ぶ事は集団行動や社会常識、倫理道徳の復習などに重点を入れている。
これらは記憶力などの問題を技術によって克服したため暗記などの学習が無意味となったからだ。
それゆえテストなどもない(というよりも制度上ペーパーテストでは差がつきにくい)。
一応、これよりも上の各種専門学校も計画しているが、それはまだ実現しておらず、現在ではこの幼年学校を卒業したものは順次社会に出て行くことになる。
このように後数年で労働力を確保できるので、厚生労働省を立ち上げた。
労働基準法を制定して、労働環境や最低賃金などを設定しておいた。
現在は、臣民の企業家がいないので民間企業など存在せず、すべて国営企業なのでこの手の問題は何とかなる。
しかし、そのうち民間企業ができるから必ず劣悪な労働条件で労働者を扱き使う企業が出てくる。手っ取り早く収益を上げようとすると、どうしてもそうなる。
確かに利益を上げるだけならそれでもいいだろうが、カリンとしては別にそこまでして多額の収益を無理やり出す必要はない。むしろ、そんなことをすれば貧困層が拡大してしまい、社会の不安定化を招いてしまう。
長期的に考えると、労働者の権利を最初から認めておいたほうが国益になる。
アトランティス帝国がそんな選択ができるのは無理をする必要がないからだ。
例えばかつての大日本帝国は、外敵に備えるために無理をして国力に見合わぬ軍事力を保有していた。それらは当時の日本政府の無能さが招いた部分も大きかったが、外的要因も無視できないだろう。
一方、この世界で敵になりうる地球人(ホモ・サピエンス)は原作開始の三万年前とあって脅威足りえない。おまけに彼らは放置しておけば勝手に自滅するというおまけつきである。
ならば、あせらずじっくりと統治していけばいいのだ。
これまで臣民たちの生活は、集団生活をする孤児院で食事を取り、衣服や文房具などの必要な道具は配給で受け取るという体制だった。つまり貨幣による売買はおろか物々交換すらまともに行われていなかった。
これではまともな経済活動はできないので、新たに財務省を設置して、財務省発行の政府紙幣を流通された。
これによって金本位制を飛び越して、一気に管理通貨制度に移行していった。
ちなみに金本位制というのは、兌換紙幣によって金(金貨)や銀(銀貨)などと交換できる制度で、これは金や銀の価値=紙幣の価値だ。政府や国家に信用が無くても、通貨の価値は保障されているので信用が高い。
一方、管理通貨制度は、通貨の発行量は金銀の備蓄量に依存しないから、景気や物価調整に合わせて通貨寮を調整することができるが、通貨の価値は政府や中央銀行の政策時代で暴落するリスクがあるため信用が不安定だ。
カリンが真っ先に管理通貨制度を採用したのは、金銀の価値に問題があったからだ。
ブリタニア帝国では、技術が発達したため金銀などいくらでも精製できる。こうなると、金銀の価値などそこらの鉄屑と変わらなくなる。
そもそも金本位制が成り立つのは金銀そのものに価値がある場合であり、金銀が大量生産できて、価値が暴落している状態では制度自体が成り立たない。だから選択の余地は最初から無かった。
また、管理通貨といっても、政府が発行する政府紙幣と、中央銀行が発行する銀行券がある。
21世紀では、中央銀行が発行する銀行券が多くの国で採用されているが、アトランティスでは政府紙幣を採用した。
もしも銀行券を採用した場合、通貨当局(この場合中央銀行)と政府の関係(独立性と協調性)が常に問題になる。
中央銀行の独立性が強すぎた場合、中央銀行の失策が致命的な混乱をもたらす恐れがあるし、中央銀行が政府と強調せず、中央銀行が自らの組織の利益を追求して国益を損ねるリスクがある。だから政府紙幣にして財務省に管理させておけば面倒が無くていい。
この政府紙幣はただの紙であるため、偽造されるリスクがある。
その対策として、紙幣には監察軍の技術を用いた偽造対策を施しているが、法律でも通貨の偽造は例外なく死刑と定めた。つまり通貨の発行元である財務省以外が通貨を作れば即座に死刑になるわけだ。
ちょっと厳しいが、これぐらいやらないと偽造はなくならないだろう。
アトランティス帝国の通貨単位は“ギル”にした。
ちなみにブリタニア帝国では帝国マルクだ。
別にドルやユーロでも良かったけど、現実世界の通貨ではなく、ファイナルファンタジーシリーズの通貨単位にした。
補助通貨はセント。
セントはギルの百分の一の価値で、100セント=1ギルとなる。
紙幣は100ギル札、50ギル札、10ギル札の三つ。硬貨は5ギル硬貨、1ギル硬貨、50セント硬貨、10セント硬貨、5セント硬貨、1セント硬貨の六つとなる。
1ギルは100円ぐらいになるように調整している。だからアトランティスでは100円ショップではなく、1ギルショップが出店することになるだろう。