旧石器時代からスタート   作:ADONIS+

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9.大日本帝国(アトラス暦101年)

 カリンが計画を実行してから百年が過ぎていた。

 この時期には監察軍が別の下位世界で進めていたもうひとつの計画が山場を越えていた。

 

 その計画の対象となったのが『∀ガンダム』世界の大日本帝国だ。それはかつて存在していた日本であり、多くのトリッパーたちは戦前という言葉で表す時代の国。

 本来ならば西暦1945年に滅亡するはずなのだが、監察軍の干渉の結果第二次世界大戦を過ぎても健在で、健在どころかより勢力を高めていた。

 そこには監察軍の後ろ盾を得ているトリッパーたちの暗躍があった。

 

 監察軍本部から派遣された佐天令子(このサイトのSS『とある少女の支配領域』を参照)が日本に降り立ち、その地に“三千世界監察軍日本支部”通称『日本監察軍』を設立した。

 彼らは日本支部長の佐天令子を中心として、時にバラバラに、特に協力して日本の政財軍を中心に権力を握り日本を実効支配していた。

 こういえば悪の秘密組織じみた存在に見えるが、日本監察軍はトリッパー達が理想とする日本を作る為に活動している組織である。

 様々な分野の人間たちが日本の為に協力しあい内政チートに励む組織であり、愛国心あふれる者たちが集まっていた。

 彼らが憑依という現象で過去の日本に現れるようになったのは幕末の直前からで、それからというもの1851年~1950年の百年間は幕末の動乱、明治維新、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、世界恐慌、第二次世界大戦と様々なイベントが発生した。

 

 これらの激動の時代をかの時代の日本人に憑依したトリッパーたちは駆け抜けていった。

 彼らはカリンのような転生特典などを持たず、未来知識以外は現地の人間と変わりない。前世知識と監察軍の支援があったとはいえ、チート能力を持たない彼らが時代を切り開けたのは組織として団結できたからだろう。

 

 日本監察軍によって幕末の頃から歴史が改変されており、坂本龍馬や大久保利通といった史実では暗殺された者たちも生き残り日本を動かした。

 ここまで歴史を変えていくと当然悪くなる所もあって、こうした影響をまともに受けたのがアメリカ合衆国だ。

 アメリカは、本来ならば第二次世界大戦で世界を二分する超大国となり、冷戦終結後には唯一の覇権国家として世界に君臨するはずが、太平洋戦争で日本に滅ばされてしまった。

 

 多くの仮想戦記では対米戦争を避けようとするが、この世界ではあえて避けなかった。これは当時の世界情勢を考えると対米戦争回避のハードルが高すぎるからだ。

 日本が発展すれば、中国市場を狙うアメリカにとって日本は邪魔でしかないので、どうしても衝突してしまう。かといって発展を抑えてアメリカの属国になる気もさらさらない。

 

 普通ならば、このジレンマで苦しむものであるが、この日本監察軍の場合は話が違う。確かに日本監察軍によって日本は史実よりも強化された一方で、アメリカは史実よりも弱体化していたが、これを考慮しても日米では差が存在していた。まともに戦えば敗北するのは目に見えていた。

 しかし、日本監察軍は最初からまともに戦う気などなかった。謎の大地震、謎の大爆発などなどの天変地異が開戦直後のアメリカで猛威をふるい、アメリカが壊滅した(勿論、これらは全部自然災害などに偽装した監察軍の裏工作)。

 後は、無傷の日本が蹂躙するだけ。ネタばれをしてしまえば、捻りがないがそれで事足りた。

 

 しかし、その山場を越えた。リアルチート、仮想戦記のラスボスであるアメリカ合衆国は滅亡し、日本が覇権国家として君臨する状態に移行しつつあり、こうなると未来知識は役に立たなくなる。

 しかし、あの世界はガンダム世界だから、黒歴史関係で他にもイベントがある。というよりもMSという人型ロボット兵器が活躍して大いに燃えることができる世界だけに、トリッパーたちを楽しませてくれるだろうが、それはまだ先の話だ。

 

 

 

「かくして彼らの戦いは峠を越えてしまったと……」

 同胞たちの活動を見て、カリンは笑みを零す。

 

 ここまでやってしまうと、後は戦後処理という地味で面倒な仕事ばかりだ。未来知識が役に立たない状態をカバーするために監察軍もテコ入れをしているらしいが、まぁその辺りはどうでもいい。トリッパーにとって大切なイベントは大体こなしているので、憑依先を大日本帝国一筋という形だったのを変更する事になる。

 

「これで、こちらも動けるわね。カリン」

 そんなカリンに姫神みこが確認を取った。

 

「ええ、百年かけて体制を整えてきましたから何時でも可能です」

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