唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第102話

「ふぅ……30分位しか話してないのに疲れたわ」

 

草壁は廊下を歩きながらそう呟く。つい先程まで俺達は上層部相手にプレゼンをしていたが、気の強い草壁も海千山千の上層部が相手はキツイようだ。

 

「まあそうだな。圧迫面接されてる気分だったぜ」

 

並の精神の人間ならあの空気で平然とするのは無理だろう。

 

「何にせよ、データが来るならそっちを確認しようぜ。確認はウチの作戦室で良いか?」

 

データを2人で確認する時は大型モニターがあると便利だが、大型モニターを使うから作戦室が一番だ。そしてここからだと草壁隊作戦室より太刀川隊作戦室の方が近いからな。

 

「ええ。それで良いわよ」

 

草壁が頷いたので、俺達は太刀川隊作戦室に向かう。

 

到着して部屋に入るが、誰も居なかった。どうやらまだ誰も来てないようだ。

 

俺はモニターの電源を入れて、ソファーに座りパソコンの電源を入れる。

 

 

草壁が隣に座るのを確認しながらパソコンを操作する。そして同じタイミングでメールが来る。確認するとファイル付きのメールだった。これが来月入隊する隊員のデータだろう。

 

俺はパソコンを操作してモニターに新入隊員のデータを表示する。

 

「来月入隊するのは38人みたいね」

 

ファイルには沢山の名前があり、名前の横にはトリガーの名前が、一番左上には38人(仮入隊3人)と書かれている。そして名前の横に星マークが付いている人が仮入隊なのだろう。

 

「しかしレイガストでスタートする奴はいないな」

 

データを見直すがレイガストの文字は存在しなかった。

 

「唯我先輩を見てると便利だと思うけど、C級にレイガストを使いこなすのは難しいわよ」

 

「まあそうだな」

 

C級隊員は1種類のトリガーしか使えない。それはオプショントリガーも例外ではなく、レイガストに必須のオプショントリガーのスラスターを使えない。

 

そしてスラスター抜きのレイガストをC級隊員に使いこなせるのは草壁の言うように至難だろう。攻撃手が相手ならまだしも、射手や銃手とは致命的に相性が悪く蜂の巣にされるのがオチだ。

 

そう思いながらも仮入隊した人のデータを見てみるが……

 

(全員2000以下……これは不作か?)

 

入隊時に与えられるポイントは1000だが、仮入隊で結果を出した人はそれに幾らか上乗せされる。

 

原作によれば木虎が3600スタートで、歌川が2950、菊地原が2800で新3馬鹿は2000ポイント前後。そう考えると今シーズンは余り期待出来な……ん?

 

(よく見りゃ緑川の名前があるじゃねぇか)

 

リストの中には、原作で目の前にいる草壁のチームに入っている緑川駿の名前があった。どうやら緑川は仮入隊してないようだ。

 

そう考えるとそこまで悪くないだろう。緑川の記録は4秒だし。

 

「とりあえず唯我先輩は当日に優秀な隊員が入ってるか見てきて。私はオペレーターの方に顔を出さないといけないから」

 

「わかった」

 

草壁はデータを見ながら俺にそう言ってくるので、了承の返事をする。

 

(まあ緑川は速攻でB級に上がるから問題ないが、他はどれだけやれるかわからないし正式入隊日には注意しておかないとな)

 

金の卵は緑川だけだと思うが、銀の卵や銅の卵もいるかもしれないし、ソイツらにはやる気を出して貰わないといけない。

 

(いっそモチベーションを上げる為にC級限定のトーナメントをやるのもアリかもな)

 

ポイントが1000代のみでやるトーナメントや2000代のみでやるトーナメントをやり、上位入りできたら500ポイント……みたいな感じでやるのも悪くない。

 

まあこれについてはある程度してからだな。今は最優先なのはB級に上がれるポテンシャルを持ちながらも上に上がれず燻っている連中の強化だし。

 

「宜しく。それとデータを見る限り今期は銃手が多いから、入隊日には銃手を多く集められるように手配しないといけないわね」

 

「確かにな。そうなると犬飼先輩とか柿崎先輩あたりか?」

 

まあ柿崎さんは万能手だと銃手よりだし大丈夫だろう。

 

「そうね。間違っても弓場さんやウチの里見先輩や唯我先輩は無理ね」

 

否定はしない。銃手は距離をとってじっくり削るのが基本中の基本だ。

 

それに対して……

 

距離を詰めてからの早撃ちを十八番とする弓場

 

弓場の技術と変則両攻撃二宮の戦術を合わせた里見

 

レイガストを利用して攻撃手の攻撃を捌いてから至近距離で攻める俺

 

「ハッキリ言って異端すぎるわ。少なくとも入隊したばかりの人間に教えて良い人間じゃない。というか入隊時点からリボルバー銃が使えたら問題だわ」

 

「まあな。とりあえず署名してくれた人間の中から正式入隊日に用事がない人間を調べないといけないな」

 

「加えてポスターの仕上げや教本製作の進捗具合の確認しないといけないわね。唯我先輩はレイガストに関する教本を担当してるけど、進捗は?」

 

「殆ど完成してる。けどレイガストはスラスター抜きだと扱いが難しいし、強くなるにはひたすら防御って感じだから余り書くことがないんだよな」

 

他のトリガーでも実戦経験は必須だが、レイガストはトリガーの中でも扱いが難しいので訓練の質や量が重視される。B級の人間なら複数のトリガーを使えるからまだしも、C級だと違うトリガーを使う方が合理的と考えてもおかしくない。

 

「ま、いざとなったらレイガスト関連はB級以上の人間に教えれば良い」

 

「あら?当てはあるの?」

 

「何人かレイガストについて話を聞いてくる正隊員もいるからな」

 

最も聞いてくるのは辻や笹森、熊谷のようにチームの防御や援護をする攻撃手だがな。実際レイガストは仲間のガードという点では便利だし。

 

「大方ガード担当の人ね。っと、話が逸れたわね。とりあえず今日明日にはポスターを完成させたいから私は今から加賀美先輩か橘高先輩の所に行ってくるわ」

 

「加賀美先輩は絵が得意だからわかるが、何故橘高先輩?」

 

原作を読んで無いし、王子隊とは接点がないからどんな人間かわからない。凄く美人ってのは知ってるけど。

 

「橘高先輩はデザイン科のある高校に通ってるからポスターのデザインも出来ると思ったのよ」

 

へぇ。そんな経歴なのか。ボーダーの人間って戦闘以外も優秀な人って多いんだな。

 

「なるほどな。じゃあ任せる」

 

どちらも俺と接点がないから草壁に任せた方がいいだろう。

 

「ええ。唯我先輩はデータチェックをお願い」

 

草壁は席から立ち上がった時だった。

 

「っ?!」

 

突如体勢を崩し俺の方に倒れてくる。予想外の展開に俺は草壁の方を見ることしか出来ず、草壁に巻き込まれる形で倒れてしまい……

 

 

 

ちゅっ

 

背中に衝撃に走り、頬に柔らかな感触が伝わってくる。トリオン体なので痛くはないが、予想外の展開に硬直してしまう。

 

何と草壁が倒れた拍子に俺の頬にキスをしていたのだ。しかも咄嗟のことだったからか俺の右手は草壁の背中に、草壁の両手は俺の背中に回されていた。

 

同時に野球ボールがコロコロと床を転がる。このボールは確か以前出水が米屋とキャッチボールをした云々言って作戦室に持ってきたものだ。

 

多分草壁は地面に落ちていたボールを立ち上がった拍子に踏んでしまったのだろう。

 

正直言ってこの体勢は役得だが、この状態を長く続けていたら草壁に下心があると思われるので残念だが厳しい態度を見せないといけない。

 

「おい草壁。身動きが取れないから身体を「何をしているのかな〜、尊君?」起こ、せ……?」

 

いきなりのんびりとした口調ながら冷たい声音が聞こえてきたので横を見れば……

 

 

 

 

 

 

 

「まさか作戦室で堂々とイチャイチャしてるとはね〜、お姉さん驚いちゃったよ〜」

 

作戦室の入り口にて、柚宇が額に青筋を大量に浮かばせながら笑顔を浮かべていた。

 

「ひぃっ……」

 

これには草壁もビビってしまっている。今まで柚宇が怒ってるのは見たことあるが、今回のそれは次元が違う……

 

俺は死の気配を明確に感じながら土下座する事も視野に入れつつ、如何にして余り怒られない方法を模索するのだった。

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