唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第106話

「ここで試合が動いた!唯我隊員の弾丸より早く、風間隊長の投げたスコーピオンが奈良坂隊員を撃破!」

 

「あぁ!惜しい!」

 

モニターに映る得点表にて、風間の横に1点が追加されると武富が叫び、桐絵は残念そうに頭に手を当てる。

 

「唯我先輩からしたら残念ね。多分唯我先輩は奈良坂先輩を倒したら風間さんを撃破、もしくは刺し違えて2点取るつもりだったと思うわ」

 

テンションが高い2人に対して草壁は冷静な声で解説する。

 

「そうなると唯我先輩は風間隊長を撃破して、上層に加勢に行きたいというところでしょうか?」

 

「それは厳しいわね。仮に風間さんを撃破しても上層まで距離はあるし、唯我先輩は射程が短いから。何にせよ風間さんと戦うのは絶対ね」

 

風間を上層に行かせるのは悪手であるのは明白。草壁が唯我の立場なら勝てなくとも上層に行かせないようにするだろうから。

 

「ちなみに風間隊長と唯我隊員のどちらに分があるでしょうか?」

 

「尊なら風間さんが相手でも勝ってくれるわ!頑張れ尊ぅ!」

 

武富の問いに桐絵は即答する。草壁は桐絵に対して「私情を丸出しにした解説で良いのか?」と呆れながらも口を開ける。

 

「単純な実力なら風間さんの方が上だけど、唯我先輩は初見殺しの戦術を数多く持ってるから判断が難しいわ」

 

草壁から見て唯我の戦術は大半が奇想天外であり初見当然として、初見でなくても対応が難しいものばかりである。

 

それはボーダーでも有名なので風間も迂闊に攻めないだろうからか、実力の劣る唯我にもある程度勝ち目はあると草壁は考えている。

 

そうこうしている間にも戦況は動く。

 

「おっと!古寺隊員もベイルアウト!三輪隊長と米屋隊員が追いつく前に太刀川隊長が撃破!これで太刀川隊と風間隊が1点で並んだ!」

 

モニターでは太刀川が古寺を切り捨てて、それから出水の方に向かおうとしたが、三輪と米屋に捕まって楽しそうに笑っていた。

 

「これで狙撃手は全滅ね。そうなると太刀川隊と風間隊は警戒しないで済むわ」

 

「最初に出水先輩に釣られたのが痛いわね。とはいえ今のところどの戦況も硬直してるし、結果はまだわからないわ」

 

草壁の言うように狙撃手2人が落ちたが、まだ結果はわからない。

 

現在、市街地Cでは3つの戦場がある。

 

最上層の高台に出水がいて、詰め寄ろうとしている歌川と菊地原を迎撃している。平地で戦えば出水が不利だが、地形を利用しているので不利ではなくなっている。

 

上層と中層付近では太刀川が三輪と米屋の2人を相手している。タイマンなら太刀川が圧倒的ではあるが2人がかりな上、鉛弾を持つ三輪がいる以上、太刀川もいつもより慎重になっている。

 

そして戦闘区域の隅の低層では唯我と風間が戦いを始める。実力差はあるが、初見殺しの戦術と一撃必殺を持つ唯我にも勝ち目はある。

 

 

3箇所で戦闘が行われているが、1番上の戦闘で動きがあった。

 

「のわぁ!出水隊員、エスクードを発射台にして苦労して上ってきた歌川隊員を吹き飛ばしたぁ!」

 

モニターではエスクードの勢いにより大空を舞う歌川の姿が映り、客席にはドン引きの空気が生まれる。

 

「これは出水の案じゃなくて絶対に尊の案ね」

 

「同感。歌川先輩を飛ばした方向には誰もいないし、距離からして2、3分は戻ってこれないから菊地原先輩は必然的に出水先輩と1対1になるから厳しいわね」

 

唯我を良く知っている桐絵と草壁はそう返しながらモニターを注視する。

 

そこでは風間相手に一歩も引かずに真剣な表情で迎撃する唯我が映っているが、草壁はそれを見て好奇心を持ち、桐絵は心臓が高鳴るのを自覚しながら両手を組み祈るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

ドパッ!ドパッ!

 

 

リボルバー拳銃から2発の弾丸を放つと風間は軽いジャンプで回避するが、風間が地面に着地した瞬間にレイガストを消して、風間の周囲270度シールドを展開する。シールドがない部分は正面、俺がいる方向だ。

 

勿論シールドの耐久力は低いが、壊す際に若干の隙が出来るから問題ない。

 

 

そう思いながら俺は銃口を風間に向けようと手を動かすが、同じタイミングで手の軌道上にシールドが展開されてぶつかってしまう。

 

同時に風間は突撃してくるので俺はシールドを消してレイガストを展開する。無理に狙っても当たらないからな。

 

風間は俺がレイガストを構えると横に跳びながらスコーピオンを投げてくるがガードしようと構えるが、風間の足元にヒビが入ったので後ろに跳ぶ。

 

瞬間、さっきまで俺が居た足元から刃が出てくる。スコーピオンの投擲でモグラ爪に気付かれないようにする嫌らしい作戦だ。

 

さっきやってきたリボルバー拳銃を持つ手の動きをシールドで妨害した戦術は俺が以前やった戦術だが……

 

「風間さんも中々いい性格してます……ねっ!」

 

「否定はしないがお前ほどじゃない」

 

互いに言葉を交わしながら風間の右手に持っているスコーピオンをレイガストで防ぎながら、一歩前に踏み込もうとすると風間は左手のスコーピオンを鉤爪のようにレイガストに引っ掛ける。

 

多分スラスターによるシールドバッシュで吹っ飛ばされないようにしているだろうが……

 

(生憎今回はスラスターを入れてないんだよ)

 

内心そう呟き、レイガストを手放してバックステップをしながらリボルバー拳銃の引き金を3回引く。

 

ドパッ!ドパッ!ドパッ!

 

対する風間はレイガストに引っ掛けたスコーピオンを動かして、弾丸の軌道上にレイガストを置く。

 

ガガガッ

 

徹甲弾を3発受けたレイガストは壊れてしまうが問題ない。

 

(しかし俺が捨てたレイガストを利用するか……面白い使い方だ)

 

そう思いながらも俺は接近戦を仕掛けてくる風間の足元にシールドを展開する。

 

いきなり現れたシールドに風間はバランスを崩すが、同時に分割したシールドを俺の右腕周辺に展開して、リボルバー拳銃を風間に向けれないようにしてくる。

 

僅かに生まれた隙の所為で風間が立ち上がったので俺は後ろに下がろうとするが、いきなり後ろ足首に衝撃が走り、バランスを崩してしまう。チラッと下を見ればシールドが展開されていた。

 

(ちっ、俺と同じ事をしてきたか。今更だが俺の戦術って凄いイラッとするな)

 

ウザい技とわかってはいたが、実際にやられると想像よりうざい。

 

え?やられて嫌なことをするなって?細かいことは気にすんな。

 

そこまで考えていると上層にてベイルアウトの光が見える。位置的に考えて菊地原だろう。歌川はさっき出水がエスクードでぶっ飛ばしたから。

 

(何にせよこれで太刀川隊は2点目だ。カードを1枚切って3点目が俺が風間を倒して手に入れる)

 

そう思いながら俺はリボルバー拳銃の銃口を上空に向けてから1回引き金を引く。

 

ドパッ!

 

それに対して風間は出水に対する合図と思ったのか一瞬上層を見るが……今の1発は出水に対する合図ではなく……

 

「エスクード」

 

「っ!」

 

エスクードの発動を気付かれないようにする為の意識誘導でしかない。

 

エスクードを食らった風間は驚きながら上空に飛び上がる。ただし今回は地面に垂直に展開したので真上に飛び上がる。

 

同時に俺は風間の真下に向かい、銃口を風間に向ける。周囲には住宅地がそこまで多くないのでスコーピオンを利用した移動術は使えないし、既に風間の真下から狙いを定めているのでシールドを腕にぶつける妨害についても問題ないし、風間のトリオン量なら徹甲弾を防げない。

 

それに万が一の保険も準備してある。

 

「俺の勝ちだ……柚宇さん。距離が20メートルになったら合図を!」

 

『オッケー』

 

柚宇が了解するタイミングで最高到達点に着いたからか風間が落下し始める。

 

そして……

 

『距離20』

 

柚宇がそう言った瞬間に俺は引き金を4回引く。

 

ドパッ!ドパッ!ドパッ!ドパッ!

 

放たれた弾丸は高速で風間に向かい、風間の身体を穿つ……直前だった。

 

「グラスホッパー」

 

風間はグラスホッパーを展開して斜めに逃げる。その際に弾丸は両腕を吹き飛ばすが、スコーピオンは手がなくても使えるので戦闘に支障はない。

 

俺同様にカードを隠していた風間に驚きながらも、残りの2発を撃つべく風間に銃口を向けようとするが……

 

「ちいっ!」

 

風間が展開したシールドに腕をぶつけて銃口を向けれない。俺の作戦、本当にウザいな……

 

それにより隙を生んでしまい、慌てて逃げようとするがそれよりも早く風間は距離を詰めてながら両手にスコーピオンを出して俺の両腕を斬り落とす。

 

俺は風間の腹に蹴りを入れて仰け反らせてからバックステップで風間から僅かに距離を取る。今の攻防によりお互いに両手がないが今回の俺はリボルバー拳銃とレイガストしか攻撃トリガーを入れてないので風間を倒す手段はない。

 

両腕を落とした俺に対して風間はトドメを刺そうとしてくるが……

 

「(もしもの時の保険を使うか)……エスクード!」

 

俺はエスクードを自身の足元に展開して自身の身体を飛ばす。

 

ただし方向は左方向、出水達がいる上層方向ではなく戦闘区域外の方向だ。

 

自分の周囲60メートル以内に敵がいるときは自発的にベイルアウト出来ないが、戦闘区域外に進出した際は自発的にベイルアウトした事と同じ扱いになる。

 

よって攻撃手段を失った俺には逃げるしか選択肢はない。奈良坂を低層に追い詰めてから風間と対峙して以降、万が一に備えて少しずつ戦闘区域外に近づいていたが功を弄したな。

 

点数調整の露骨な自殺はペナルティがあるが、敵から逃げてベイルアウトするのはアリだし問題ないだろう。

 

 

そう思っていると俺の身体は戦闘区域外に出て……

 

 

 

 

『エリアオーバー、緊急脱出』

 

そんなアナウンスが流れて、俺の身体は光に包まれるのだった。

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