唯我尊に転生?上等だコラァ!ブラック企業で鍛えられた忍耐力を武器にマトモな唯我尊になってやらぁっ!   作:ユンケ

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第110話

「はい尊、あーん」

 

右に抱きつく桐絵がクッキーを突き出してくるが、桐絵の柔らかな身体を押し付けられてそれどころじゃない。一緒に風呂に入ったり寝たりした事はあってもそれとこれは別である。桐絵は普段の強気な姿は見せず甘えん坊となっている。

 

「尊君、ジュースのお代わりも飲んで」

 

左に抱きつく玲は空になったカップにりんごジュースを注いでくる。普段美しい玲が艶のある表情で酌をしてくれるが理性をゴリゴリ削ってくる。

 

玲のランク戦に関する相談が終わってから、俺のランク戦のお疲れ会に移ったが、2人の奉仕行動は凄く魅力的であり最高の時間である。これで柚宇も居たら幸せ過ぎて昇天するかもしれないな。

 

「それにしても尊君の戦い方は勉強になるわ。また新しい戦術を考えてるの?」

 

「一応考えてますね。それとトリガー開発の方にも目を向けたいと思ってます」

 

武器は使い手によって強くなったり弱くなったりするので鍛錬は重要だ。しかし優れた武器を作るという事も重要であるからな。

 

「トリガー開発?どんなものを考えてるの?」

 

桐絵は不思議そうに首を傾げるが、その仕草は反則だろう。

 

「五感に悪影響を与えるトリガーについて作れないかと思ってます」

 

「?それって閃光玉みたいなもの?」

 

「他にも悪臭を放つ玉と音爆弾とかですね。ボーダーのトリガーを使う場合、コンピューターによって五感の共有や五感を失う事も出来ますから」

 

例えば音爆弾を作った場合、投げた瞬間に聴覚をOFFにすれば相手だけが苦しむだろう。

 

「なるほどね。確かに相手の集中力を乱せるのは大きいわね。あたしはメカ系はダメだけど、頑張って欲しいわ」

 

「私も尊君には頑張って欲しいし、何か困ったことがあればいつでも言ってね」

 

「ありがとうございます。お二人にそう言ってもらえると精神的に力が出ます」

 

どのみち遅かれ早かれトリガー開発の方には手を出すつもりだった。理由?面白そうだからに決まってるだろ。

 

未知なる技術に触れるなんて男の夢だ。少なくとも上司の顔色を伺っての書類作業や取引先にペコペコ頭を下げる仕事なんかより遥かに有意義であるからな。

 

「どういたしまして。それにしても尊君って本当に大人みたいな雰囲気ね」

 

「あ、わかる。年齢が10歳くらい上って言っても信じそう」

 

そりゃ実年齢は唯我尊よりも10歳以上も上だからな。

 

しかし俺の正体について話すべきだろうか?2人からはそれなりに信頼を得ているし仮に話しても絶交ってことはないだろう。多少気まずくなるかもしれないが、戻せるとは思う。

 

問題はひょんなことからバレてしまう事だ。柚宇の時は何度か助けた事によりバレた後も変わらずに仲良くしているが、2人が同じとは限らない。バレる形で知られたら関係が悪くなるかもしれない。

 

(良し、話すか)

 

俺は覚悟を決めて話す事にした。既に柚宇に知られてる。ハーレムを目指すならいずれバレるのだから今のうちに話すことにしよう。

 

万が一2人との関係が悪くなり過ぎだら仕方ない。もうハーレム計画は諦めて柚宇だけにアプローチをかけよう。

 

そう判断した俺は一度深呼吸をする。

 

「玲、桐絵」

 

そして意識を切り替えて前世の雰囲気を出すように心がけると、2人は軽く目を見開く。

 

「ど、どうしたの尊君。いきなり呼び捨てにして……あ、別に嫌って訳じゃないけど驚いちゃったわ」

 

「な、何かあったの?」

 

「実はだな……」

 

そう前置きして俺はトリガーやボーダーが存在しない別世界の人間であり、いつのまにか唯我尊という人間の身体に乗り移った事、乗り移った際に唯我尊の知識と記憶を知り唯我尊はダメ人間であると知った事、改善するためにあらゆることに真剣に取り組んでいこうと決心して実行した事全てを話した。

 

それを聞いた2人は絶句するが、最初に桐絵が驚きながら口を開ける。

 

「いやいやいや!幾らあたしが騙されやすいからって、流石に騙されないわよ!漫画やアニメじゃないんだし!」

 

桐絵は最もな事を口にする。対する俺は下手に反論しないでジッと桐絵を見ると、桐絵も俺が本気で言っているとわかったのかいつもより真剣な表情を浮かべる。

 

「……本当なの?」

 

「ああ。お前は玉狛支部で元太刀川隊の烏丸から疑いの言葉を聞かなかったか?」

 

「まあ確かに……尊に対して頭を打って性格が変わったとか二重人格とか色々言っていたわね」

 

酷い言われようだが前世の唯我尊がアレだから仕方ない。

 

すると玲も真面目に言っているのがわかったようで真剣な表情になる。

 

「その話が本当と仮定するけど、何でそうなったの?」

 

「知らん。気づいたら出水から蹴りを食らって、立ち上がると唯我尊の知識と記憶が俺本来の脳に書き加えられた」

 

転生した理由については未だにわからん。まあ漫画とかでも転生なんていきなりのパターンが多いし、気にしないでおこう。

 

「なるほど……ちなみに前世では何歳だったのかしら?」

 

「26」

 

「26……柚宇さんから成績が良いって聞いたけど、26歳なら納得ね」

 

「発想力も社会人としての経験から得たのかしら?」

 

年齢を答えると2人は納得したように話し合っている。どうやら信じてもらえたようなので締めに入ろう。

 

「改めて話すが今まで黙っていて悪かった」

 

そう頭を下げると桐絵が不思議そうな表情で質問する。

 

「でも何でわざわざ自分から話したの?内容的にデリケートだし話したくないんじゃないの?」

 

「否定はしないが理由はある。お前らと関わっていると幸せを感じるんだが、俺の正体をバレる形で知られたら余り良い未来にはならないと怖く思ったからだな」

 

「は、はあ?!い、いきなり何を言ってんのよ?!あ、あたし達といると幸せだなんて……」

 

「事実だ。まあもちろん話したくなかった。けど2人を騙すと考えたら心苦しくて先伸ばしにしてな」

 

まあ嘘ではあるが信じてくれるだろう。内容が内容だし。

 

そう思っていると玲が真剣な表情に不安の色を加えながら質問する。

 

「えっと……尊君、じゃなかったわね。えっと……」

 

そういやまだ前世の名前を言ってなかったな。

 

「前世では神城竜賀って名前だったな。どちらで読んでも良い。後敬語は要らないから」

 

別に敬語なかろうとどうでも良いからな。

 

「ありがとう。竜賀さんに2つ聞きたいんだけど、竜賀さんはいつこの世界に来たの?」

 

言うなり玲の表情に不安の色が増す。何故俺がこの世界に来た時期を聞くだけで、あんなに不安そうなんだ?

 

何にせよ答えないとな。幸いにもインパクトが強過ぎたからハッキリと覚えている。

 

「ん?今年の5月16日だな」

 

そう返すと玲の顔に見えた不安の色が薄くなり、安堵の色が生まれてくる。

 

「じゃあ2つ目の質問なんだけど、私と過ごした時間は楽しかった……?」

 

「当たり前だろ。学生時代に戻った気分になれて最高だった」

 

それだけでもこの世界に来た甲斐がある。社会人になってからは学生時代が恋しくなることなんてザラにあるが、転生先がボーダーがない世界の学生だろうと喜んでいたと確信している。

 

 

「そっか……良かったわ。私と知り合う前にこの世界に来たなら、関係は変わらないわね」

 

「あ、確かにそうね」

 

あ〜、なるほどな。玲や桐絵からしたら、知り合ってある程度仲良くなってから俺がこの世界に来たと思ったら、抵抗感を抱くのは当然だ。

 

とはいえ2人と知り合う前からこの世界に来たので、2人はそこまで忌避感を抱かずように済んだようだ。

 

「そう言ってくれるとありがたい。俺もお前らと過ごせて楽しかったからな」

 

そう言うと2人は恥ずかしそうに目を逸らしながら俺の目の前で内緒話を始める。

 

「(前から大人っぽい所もあったけど、中々良いわね)」

 

「(桐絵ちゃんの言いたいことはわかるわ。前から甘えたかったけど、今はもっと甘えたいわ)」

 

なんか変なことを話してないよな?

 

そう思っていると2人は頷くと俺の両腕に抱きついてくる。

 

「……うん。話を聞く前と同じ気分だわ」

 

「尊……じゃなかった。竜賀さんはこれから2人きりの時は桐絵って呼んで」

 

「私も呼び捨てにして……」

 

桐絵と玲はそう言ってくる。2人とも俺を前世の名前で呼びタメ口で行くようだ。まあ俺からしたら2人から嫌われてないならそれで良いだろう。

 

 

 

それから俺は2人を思い切り甘やかしたが、途中で柚宇も俺の正体を知っていると言ったら物凄く不機嫌になったので宥めるのが凄く大変だったのは言うまでもないだろう。

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